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雨の国の王者

探偵小説好事家本人のためのノート

その90交叉点と交差点の差

2014-11-13 21:02:40 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 ※警告!
 以下は、フレッド・カサック『殺人交叉点』あるいは『殺人交差点』の内容に触れる部分がございます。未読の方は、お読み飛ばしいただくのがよろしいかと存じます。
















 




 ※警告!!
 フレッド・カサック『殺人交叉点』あるいは『殺人交差点』未読の方は、ご遠慮いただけば幸いかと存じます。





















 さて、わたくしにとって苦い思い出のあるフレッド・カサック『殺人交差点』。
 記憶を辿ると、それは、遡ること何年前か。ミステリ・マガジン誌の、山口雅也氏の連載コラム<プレイバック>で、その書名を知ったのが、発端だったろうか。
 山口氏は、そこで、ワセダミステリクラブ員が、選んだミステリの十傑のようなものを挙げていたのではないかと記憶する(確信はまったくない)。
 第一位と第二位が、ロス・マク夫妻(『さむけ』と『殺す風』)だったかなあ。
 そのベストテンに堂堂と食い込んでいたのが、フレッド・カサック『殺人交叉点』だったのだ(と思う)。
 また、わたくしが惹かれたのは、その煽り文句で「読後、家の中を走り回った」とのミステリクラブ員の感想。
 おお、これはまさにわたくしの『アクロイド殺害事件』体験の既視感ではないか。これは読まずばなるまいと意を固くしたのだけれども、入手方法が問題だ。
 だって、地方の片田舎に、創元クライム・クラブを置いている古書店なんてありはしない。というより古書店の存在すら皆無なのだ。わたくしは、都市圏のめぼしい古書店に足を運んだり、在庫を問う手紙を送りつけることが出来るような積極てきな性格の人間ではない。
 と、そこへ偶然にも、わたくしの気持ちを察したかのように、東京創元社の創元推理文庫から、『殺人交叉点』を『殺人交差点』という書名へ変えて、改訳版で、復刊するとの吉報がまいこんでくる。そうして、待ちに待った発売日、新刊書店にて、うはうは喜びながら購入し、帰宅するなり即一読。
 そして溜息。
 これはいけない。鈍いわたくしでも、途中で、そういうことなのかと見抜いてしまったのだ。
 誤訳という話をよく聴くが、それは違う。訳者は、探偵小説に詳しくないのだ。だから、丁寧に訳しすぎたのだね。
 この訳で読んだひとは、わたくしを含めて、ご愁傷様。
 ちなみに、問題の箇所は、旧版の『殺人交叉点』では、67頁。

 「立たないで、可愛い人」

 との訳出だ。
 これを、改訳版では、ちがう言葉へ変えただけのことで、必殺の大ワン・トリックがみごとにぶちこわされようとは、げにおそろしきものだなあ。
 翻訳書は、フィルタがかかり、そのフィルタ如何で内容の良し悪しが左右されることを、わたくしはこの時点で苦い思いと同時に勉強したのだった。
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その89続・罷り出でたるは「曽我拓也」なり!

2014-09-28 21:33:21 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 ようやく念願の、山下諭一『曾根達也無法ノート 危険猟区』双葉社(双葉新書)を入手したのだけれど、謎は深まるばかり。
 というのも、この<思考機械>に以前記した『推理ストーリー九月号(第八巻第十一号通巻第八十九号)』に載っている<“曽我拓也無法ノート(第5話)”港の灯>は、そっくりそのまま『曾根達也無法ノート 危険猟区』の第5話なのだ。
 ただひとつ、掲載誌と異なるのは、主人公の名前だけ。
 つまりは、

 “曽我拓也”=“曾根達也”

 だったのだ。 
 ううむ。
 どういうことだろう。
 これがだよ、たとえば『曾根達也無法ノート 危険猟区』発行の十年前ぐらいに『推理ストーリー』誌に掲載したというのだったら話は判る。だって“曾根達也”登場前だもの。名前を変えて颯爽とデビュウてなことだ。けれども、もうすでに『推理ストーリー』誌に掲載した時点で“曾根達也”は誕生しているのだ。
 なぜだ。
 何ゆえ、変名で活躍させたのだ。
 また、(嬉しい)悩みが増えたではないか。

 誰が、真実をご教示いただけないかしらん。
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その88ミステリィ?

2014-08-27 21:24:16 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 (略)
 由来、ミステリィは刑事にしろ探偵にしろ犯罪を捜査する人間が面白くなければならない。
 (略)
 ミステリィでもう一つ大事なのは文体。大抵のミステリィはどこか一カ所か二カ所は読んでいて飽きがくる。(略)
 ミステリィだからむろん謎解きも大事。しかし人物の創造と文体の力がそれ以上に大事なのである。(略)

 以上は、とある新聞朝刊(2014年8月14日)の文芸欄の、ロバート・ガルブレイス『カッコウの呼び声 上・下』講談社の、書評の一部を、わたくしが勝手に抜粋したもの。
 これを書いたのは、わたくしは知らない名前だが<渡辺保>という人物。
 わたくしは、この人物にぜひとも訊きたいことがある。
 
 ひとつ。あなたが読む“ミステリィ”という代物は、必ず犯罪を捜査する人間が登場するのですね。
 ふたつ。あなたが読んだ大抵の“ミステリィ”とそれ以外の“ミステリィ”を少しでよいので教えてください。
 みっつ。あなたの云う理想とする“ミステリィ”とは、人物の創造と文体の力>謎解き、というものなのですね。

 わたくしは世間で云うところの“ミステリ”を好んで読むのだが、この<渡辺保>というひとの云う“ミステリィ”は、わたくしの考える“ミステリ”とはずいぶんと隔たっているようだ。
 また、このひとの、他を貶して、自ら書評する本を持ち上げる発言は、わたくしは大嫌いで虫唾が走る。 
 
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その87事実は小説よりも奇なり

2014-06-09 07:12:15 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 わたくしたちがこの地に引っ越してきて数年。近所には築数年の家屋もちらほらあるのだが、そのうちの一軒の家族が、半年前に引越しをした。お家をたててすぐじゃあないの。せっかくの新築なのにちょっとの間しか住むことができないなんて、さぞかし残念なことだろう。近くだが、班が違うからお付き合いはなかったけれど、どういう事情で離れるのかしらん。売却するのかなあ。と訝しんでいたところ、すぐさま次の入居者が決まったようで、数週間後には引越しトラックがやってきた。新入居者は精力てきで、休日には家族総出で庭の草むしり、業者へ依頼し伸び放題だった垣根代わりのレッドロビンをばっさり剪定するなど家の手入れに余念がない。こんなに手をかけるなんて、やっぱり購入したのだなと思っていたところ、昨日配偶者から意外なことを聞かされる。
 実は、その家は、現在住んでいるこの家族がもともとの持ち主で、今までは知人に貸していたのだったとのこと。
 やあ、びっくり。
 世界が反転した。
 なるほど、これは、北村薫「砂糖合戦」ではないか。あるいは、泡坂妻夫の発想の現実版。
 「新築家屋だから、住んでいるのは当然家の持ち主」だという先入観が、わたくしにはあったのだ。
 降参だ。
 
 ・・・・・・そして、連想が飛んでしまうわたくしは、今何を考えているかというと、その泡坂先生の衣鉢を継いでいるのは、誰なのか。そういうわたくしを愉しませてくれる奇矯な探偵作家は、今いるのかということをぜひ知りたいのだ。
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その85幻の名作はコレだ!『このミス』誕生以前の傑作を探し出せ!(私家版)

2014-01-16 22:18:43 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 本ブログのカテゴリのうち、『思考機械』(その84定吉七番は永遠に)で、記したものの追加です。

 批判ばかりでは、どこぞの国の政党みたいで、あまりにも情けなく、探偵小説好事家と自称しているのならと、わたくしのそれについて挙げさせていただきます。
 国産探偵小説については、以前同様に近い趣向のものをとりあげていますので、今回は翻訳探偵小説に絞ってみました。

 それでは、まずは、これ。

 
 J・P・マンシェット『狼が来た、城へ逃げろ』

 
 何度か書いたかもしれませんが、わたくしは自分の性格がそうだからかもしれませんが、ねちねちしたフランスの探偵小説が大嫌いで毛嫌いしていたのですが、これを読んでびっくり。フランス産探偵小説を見直しました。(でも、今になって思うと、結局好きだったのは、マンシェット作品だけだったのですが。)
 ネットで調べてみたら、改訳改題で翻訳が出ているようですね。

 二番めは、これです。

 ジェフリー・ハウスホールド『影の監視者』

 1960年作らしいけれども、その十年後の1970年の訳書ですから、対象作品の候補には当てはまりますよね。
 代表作と謂われる『追われる男』ばかりに注目が集まっているようですが、これも、傑作のひとつです。
 

 最後は、これ。

 
 ルシール・フレッチャー『スタンフォードへ80ドル』

 じつは、カトリーヌ・アルレー『目には目を』を推すつもりだったのですが、1960年作の1961年翻訳で、対象期間から外れていました。
 『スタンフォードへ80ドル』は、見過ごされがちな、いかにもしゃれた都会風のサスペンスで、日本でも映像化したそうですね。小ぶりな作品ですが、お薦めです。
 

 最後に、おおもとの企画では、三作品の選出となっていたようですが、わたくしは企画に参加していません(呼ばれてもいません)ので、あえて四番めに、とっておきの、

 ルイ・C・トーマの、・・・

 と、思ったのですが、残念ながら、書名が出てきません。
 たぶん『死のミストラル』ではなかったかと思うのですが、案外『悪魔のようなあなた』かもしれませんし、ひょっとすると『カトリーヌはどこへ』かも。
 しかしながら、最終てきには、わたくしは、岡村孝一氏の翻訳書が一等の好みだったようです。 
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その84定吉七番は永遠に

2014-01-13 16:29:34 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 十数年ぶりだろうと思うのだが、『このミステリーがすごい!』(宝島社)を新刊書店で購入する。
 理由は、表紙に、『このミス』誕生前の傑作を探し出せ! 復刊希望!(国内編・海外編)幻の名作ベストテンとあるのが目についたからだ。
 でも、結論から述べると、正直がっかり。
 “幻の”名作ではなく、ただの名作ばかりの羅列なのだ。
 だって、都筑道夫や結城昌治の諸作がどこが“幻”なの。ちゃんちゃらおかしいよ。
 “手に入りにくい”=“幻”とは、わたくしはまったく考えなかったね。
 わたくしは、傑作だけど、皆が知らずにいる探偵小説に注目して、それらを挙げてくれているのだとばかり思っていたのさ。
 
 と不満だったのだけれど、ひとつよいくだりを発見した。
 それは、133ページ、細谷正充氏のベスト6の第一位、

 東郷隆『定吉七番の復活』

 おお、<定吉>が、ほんとうに戻ってきたらしい。
 『小説現代』に連載していたことも知らなかったから、喜びはひとしおだ。
 さっそく購入しなければ。
 わくわくするなあ。
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その83ベスト1(2012年)

2012-12-31 13:21:35 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 今年のベストは、なんといっても、

 グラディス・ミッチェル『ソルトマーシュの殺人』国書刊行会(世界探偵小説全集28)

 だね。
 ・・・と自慢げに語ってはいるが、今年、机上殺人現場にアップしたのは、たかだか59冊だとはなんとも情けない次第。
 来年は、捲土重来を期す?
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その82すきま風

2012-12-03 21:19:14 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 小説トリッパー編『この文庫が好き!ジャンル別1300冊』朝日文芸文庫

 わたくしは、こういう類の本が、それこそ好きで、折りを見ては、頁を捲っている。
 このなかで「ミステリー通になるための100冊(海外編)」という章は、法月倫太郎氏が記しているのだが、そのうち、警官探偵小説と警察捜査小説を取り上げている項の表題が“あいつの名はポリスマン”というのだ。
 わたくしは、今日の今日まで、このタイトルが何なのか気がつかなかった。今朝、ベッドでぱらぱらとこの本を眺めていて、急にふと思い出したのだ。
 おお、これは、杉良太郎先生主演『大捜査線』主題歌“君は人のために死ねるか”の一番の歌詞のサビの部分“あいつの名はポリスマン♪”ではないか!
 なんということだ。あの名曲“君は人のために死ねるか”をころりと忘れていたとは。
 わたくしの脳髄にも、すきま風が吹いているに違いない。

 以下、上記とは、関係ないお話し。
 当時、毎週愉しみに観ていた『大捜査線』での、杉良太郎先生射撃の際、思わず眼を瞑ってしまうのが、難点だと指摘があったように思い起こすが、わたくしも、それを聴いて、日本刀の抜き差しは巧くても、ひさしぶりの現代劇で、火器の取り扱いは、さすがの杉良太郎先生も、苦手なのかと残念に思ったことは確かだ。
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その81馬は走るか死ぬしかないのか?

2012-09-12 22:36:07 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 書庫をごそごそしていて、読みかけの本のなかに帯が栞がわりに挿入してあるのを発見する。
 ハヤカワ文庫の帯だ。
 ウォーレン・マーフィーの<トレース・シリーズ>のカヴァイラストが、おもて面に刷ってある。
 わたくしが興味深かったのは、うら面。
 ディック・フランシスの文庫版の書名を列挙しているのだが、その書名の幾つかを、わたくしはサインペンで○印をしている。おそらくこれは、その時点での、読了済の本ということだろう。
 それは、上段左から順に、『大穴』『重賞』『本命』『度胸』『血統』『罰金』『査問』、下段に移って、『煙幕』『転倒』『追込』『障害』『試走』『利腕』『配当』。
 逆に○をつけていないのは、『興奮』『飛越』『混戦』『骨折』『暴走』『反射』の六冊だ。
 それで、今、未読なのは、邦題が競馬関係から遠のいたぐらいからではないかと思うのだが、記憶はあいまいだ。
 ディック・フランシスは、わたくしが最も好きな探偵作家のひとりなのに、その自分がこんなことでは我ながら情けないなあ。
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その80諦観でもなく

2011-08-24 21:55:49 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 gooブログをご利用の方には釈迦に説法だろうが、日ごろは有料の「アクセス解析」が、この一週間ほどお試し期間で無料であった。
 それで、このブログの“閲覧数”“訪問者数”“閲覧数の多いページ”“どのサイトかのアクセスが多いのか”“検索キーワード”などを、ほいほいと日ごとにチェックしてみると、おやまあ、なんとそれが、わたくしが既に見切った<はやみねかおる>に関しての“閲覧数”が最も多かったのだ。その関係で来訪いただいているのは、多分に年少の読者だと思うが、作者も罪作りだなあ。
 わたくしは、この作者はもっと読者に対して配意すべき・・・子どもを真直ぐに成長させるのは大人の役目のひとつ・・・だと、そう思う。
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