※警告!
以下は、フレッド・カサック『殺人交叉点』あるいは『殺人交差点』の内容に触れる部分がございます。未読の方は、お読み飛ばしいただくのがよろしいかと存じます。
※警告!!
フレッド・カサック『殺人交叉点』あるいは『殺人交差点』未読の方は、ご遠慮いただけば幸いかと存じます。
さて、わたくしにとって苦い思い出のあるフレッド・カサック『殺人交差点』。
記憶を辿ると、それは、遡ること何年前か。ミステリ・マガジン誌の、山口雅也氏の連載コラム<プレイバック>で、その書名を知ったのが、発端だったろうか。
山口氏は、そこで、ワセダミステリクラブ員が、選んだミステリの十傑のようなものを挙げていたのではないかと記憶する(確信はまったくない)。
第一位と第二位が、ロス・マク夫妻(『さむけ』と『殺す風』)だったかなあ。
そのベストテンに堂堂と食い込んでいたのが、フレッド・カサック『殺人交叉点』だったのだ(と思う)。
また、わたくしが惹かれたのは、その煽り文句で「読後、家の中を走り回った」とのミステリクラブ員の感想。
おお、これはまさにわたくしの『アクロイド殺害事件』体験の既視感ではないか。これは読まずばなるまいと意を固くしたのだけれども、入手方法が問題だ。
だって、地方の片田舎に、創元クライム・クラブを置いている古書店なんてありはしない。というより古書店の存在すら皆無なのだ。わたくしは、都市圏のめぼしい古書店に足を運んだり、在庫を問う手紙を送りつけることが出来るような積極てきな性格の人間ではない。
と、そこへ偶然にも、わたくしの気持ちを察したかのように、東京創元社の創元推理文庫から、『殺人交叉点』を『殺人交差点』という書名へ変えて、改訳版で、復刊するとの吉報がまいこんでくる。そうして、待ちに待った発売日、新刊書店にて、うはうは喜びながら購入し、帰宅するなり即一読。
そして溜息。
これはいけない。鈍いわたくしでも、途中で、そういうことなのかと見抜いてしまったのだ。
誤訳という話をよく聴くが、それは違う。訳者は、探偵小説に詳しくないのだ。だから、丁寧に訳しすぎたのだね。
この訳で読んだひとは、わたくしを含めて、ご愁傷様。
ちなみに、問題の箇所は、旧版の『殺人交叉点』では、67頁。
「立たないで、可愛い人」
との訳出だ。
これを、改訳版では、ちがう言葉へ変えただけのことで、必殺の大ワン・トリックがみごとにぶちこわされようとは、げにおそろしきものだなあ。
翻訳書は、フィルタがかかり、そのフィルタ如何で内容の良し悪しが左右されることを、わたくしはこの時点で苦い思いと同時に勉強したのだった。
以下は、フレッド・カサック『殺人交叉点』あるいは『殺人交差点』の内容に触れる部分がございます。未読の方は、お読み飛ばしいただくのがよろしいかと存じます。
※警告!!
フレッド・カサック『殺人交叉点』あるいは『殺人交差点』未読の方は、ご遠慮いただけば幸いかと存じます。
さて、わたくしにとって苦い思い出のあるフレッド・カサック『殺人交差点』。
記憶を辿ると、それは、遡ること何年前か。ミステリ・マガジン誌の、山口雅也氏の連載コラム<プレイバック>で、その書名を知ったのが、発端だったろうか。
山口氏は、そこで、ワセダミステリクラブ員が、選んだミステリの十傑のようなものを挙げていたのではないかと記憶する(確信はまったくない)。
第一位と第二位が、ロス・マク夫妻(『さむけ』と『殺す風』)だったかなあ。
そのベストテンに堂堂と食い込んでいたのが、フレッド・カサック『殺人交叉点』だったのだ(と思う)。
また、わたくしが惹かれたのは、その煽り文句で「読後、家の中を走り回った」とのミステリクラブ員の感想。
おお、これはまさにわたくしの『アクロイド殺害事件』体験の既視感ではないか。これは読まずばなるまいと意を固くしたのだけれども、入手方法が問題だ。
だって、地方の片田舎に、創元クライム・クラブを置いている古書店なんてありはしない。というより古書店の存在すら皆無なのだ。わたくしは、都市圏のめぼしい古書店に足を運んだり、在庫を問う手紙を送りつけることが出来るような積極てきな性格の人間ではない。
と、そこへ偶然にも、わたくしの気持ちを察したかのように、東京創元社の創元推理文庫から、『殺人交叉点』を『殺人交差点』という書名へ変えて、改訳版で、復刊するとの吉報がまいこんでくる。そうして、待ちに待った発売日、新刊書店にて、うはうは喜びながら購入し、帰宅するなり即一読。
そして溜息。
これはいけない。鈍いわたくしでも、途中で、そういうことなのかと見抜いてしまったのだ。
誤訳という話をよく聴くが、それは違う。訳者は、探偵小説に詳しくないのだ。だから、丁寧に訳しすぎたのだね。
この訳で読んだひとは、わたくしを含めて、ご愁傷様。
ちなみに、問題の箇所は、旧版の『殺人交叉点』では、67頁。
「立たないで、可愛い人」
との訳出だ。
これを、改訳版では、ちがう言葉へ変えただけのことで、必殺の大ワン・トリックがみごとにぶちこわされようとは、げにおそろしきものだなあ。
翻訳書は、フィルタがかかり、そのフィルタ如何で内容の良し悪しが左右されることを、わたくしはこの時点で苦い思いと同時に勉強したのだった。