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雨の国の王者

探偵小説好事家本人のためのノート

その79罷り出でたるは「曽我拓也」なり!

2011-08-21 20:27:21 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 閉店の心配をしていた古書店を数週間ぶりに覘くと、やあ、ちょっとは綺麗になって開店しているではないか。まずは一安心。わたくしは、いつもどおり、入口左に坐った店主に礼儀正しく一礼をして入店する。
 以前と異なると感じるのは、小説類では、ストレイトノヴェルの割合が増えているぐらいだろうか。もっとも他の多くを占める音楽や映像関係のそれらについてはさっぱり判らぬが。
 わたくしが購入した書籍については、別途記すけれども、ぶつぶつ独り言を呟きながら手にとったひとつは、
 
 『推理ストーリー九月号(第八巻第十一号通巻第八十九号)』

 店内には同誌が、他にも何冊か無造作に乱雑に重ねてあったが、それらを無視して、なぜ、これ一冊のみに惹かれたかというと、他には、名前を確認できなかった<山下諭一>という作者名を、この上記九月号には、発見したからで、もちろん、うはうは云いながら買い求める。
 それまでは、良かったのだが、運よく坐ることができた帰り(行き)の電車のなかで、待ちきれず、読み始めようと、いそいそと、頁を開いて、びっくり仰天することに。
 あなた、同誌をお手持ちであれば、ちなみに129頁を開いてご覧あれ。
 
 “曽我拓也無法ノート(第5話)”港の灯

 と眼に入るだろう。
 あれれ?
 とは思いつつ、ここまでだったら、ははあん誤植だな、と思って本文に眼をやると・・・。
 参った。
 降参だ。
 “曾根達也”ではないのだ。
 あなた、“曽我拓也”なのだよ。
 ううむ。
 どうしてくれよう。
 わたくしはてっきり、“曾根達也”が活躍する“曾根達也無法ノート”だとばかり勘違いしていた。
 嗚呼、誰か助けておくれではないか。
 “曽我拓也”とはいったい何者なのだ。
 “曾根達也”の変装か。
 それとも、ただ、出版社に遠慮しただけの変名なのか。
 また、(嬉しい)悩みが増えたではないか。
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その78続続続一人二役

2011-06-18 17:41:28 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 シナリオ作家協会編『シナリオ1971・5』の《第21回新人シナリオ・コンクール入選作品》「血と薔薇は暗闇のうた」の、作者略歴と写真を観て、思わず嗤ってしまう。一度観ているはずだが、まったく記憶になかった。その作者略歴の冒頭部分を勝手に引用させていただく。「昭和22年2月29日釧路生まれ。」ここで普通はおやと思うのではないか。昭和22年は閏年だろう。誕生日自体が存在しない架空の日にちなのだ、これを見逃している時点で、もう作者のしかけた術中に嵌まってしまっているのだ。あとになって経歴や性別の詐称を云云するよりも、それを見抜けなかった選者たちが甘いのではないか。その読みの甘さは、例えば、

 「これ作者名がわからないで読んでいる場合でも、女性だとわかる作品ですね。」(山田信夫)
 「それはもう如実に女を感じるね。男は書けないわ、こりゃ。」
 「大変失礼な言い方かもしれないけれど、この作者は男を知らないのじゃないかなァ・・・・・・・<力>の描き方を見るとね、そう感じるな。」(早坂暁)

 という「最終審査会から」での審査委員の発言でも頭からこれを女性の手になるものだと信じて疑わないのを、作者はにやにやしながら読んでいたに違いない。わたくしも「血と薔薇は暗闇のうた」よりも、この「最終審査会から」がはるかに面白かったというのは、謎とき探偵小説を既に読み了えた者が、読書中の人間をうすら嗤いの横目で眺めているようで、ひとが悪いか。
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その77ベストテン

2011-06-15 21:34:04 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 季刊『推理文学』新春特別号(通巻5号)を斜め読みしていて、そのなかのアンケート、内外推理長編ベスト10を眺めていて、ふと気づいたのだけれども、国内篇では、国産探偵小説でも超重量級の、

 夢野久作『ドグラ・マグラ』
 中井英夫(塔晶夫)『虚無への供物』

 の二作品がなんとそれぞれひとりの選者(順に、石沢英太郎、大内茂男)にしか選ばれていないのだ。
 ううむ。今からでは考えられないような結果だなあ。
 それから、ハードボイルドや冒険小説がほとんど挙げられていないのも時代を反映しているのか。ちなみに、そのジャンルで選ばれているのは『殺意という名の家畜』(宮崎惇選)及び『野獣死すべし』(山田多賀雄選)の二作。外国作品では、レイモンド・チャンドラー、ディック・フランシス、ギャビン・ライアルは、複数名が列挙しているのに。(でも、チャンドラーは人気が高いけれど、この時点では、ロス・マクドナルドは、まったく無視されているのはとても興味深い。)
 
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その77続・桜田忍の謎

2010-09-27 14:33:59 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 さて。
 今はほとんど使用していないが、以前は、未所持の書籍を記入していたわたくしのシステム手帳をひさしぶりに繰ってみると、

 桜田忍 <1><4><9><17><18>
 桜田 『二重死体』『密封死体』『殺人回路』
 福田 『夜の手配師』『闇の逃亡者』『恐喝相続人』『復讐相続人』『殺人者を葬れ』『飢狼のブルース』『背徳の街』(このうち、『殺人』『飢狼』『背徳』は、○印で囲んでいる)

 という記述をしているのだね。
 おそらく当時の春陽文庫の桜田忍(福田洋)作品未所持分を書き込んでいるのではないかと推測する。○印で囲んでいるのは、後に入手したということであろう。書名を列挙している方は、それで間違いないだろうといいきれるのだが、冒頭の方の<1><4><9><17><18>という数字の意味が判らない。書いた本人は、通番ではないように思えるが・・・・・・。
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その76桜田忍の謎

2010-09-25 21:32:56 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 今日は、丸半日かけて、書庫の整理をしたのだが、春陽文庫の「桜田忍(福田洋)」を通番順に並べてみた。
 欠けているのは、わたくしの今手もとにある通巻では、最終巻<15>の『他殺地帯』の末尾にある既刊目録から拾うと、

 『恐喝の街』<1>
 『闇の逃亡者』<5>
 『恐喝相続人』<6>
 『復讐相続人』<7>

 の四冊。<>内は、既刊目録と、わたくしの所持している本と照らし合わせて、推測した通番だ。
 そして、目録に載っていない通番で未所持のものはというと、<15>を最終巻とすると、<11>~<13>となる。
 そこで、わたくしが四年前に作成した“桜田忍作品リスト”をみてみると、おやおや、

 『密封死体』桜田忍(86.4)<11>
 『殺人回路』桜田忍(86.8)<12>
 ※『殺人者を葬れ』福田洋(87.7)<13>
 『夜の手配師』福田洋(88.10)<16>
 『華やかな荒野』福田洋(89.5)<17>
 ※『顔のない情婦』福田洋(89.9)<18>

 の四冊(下記の再追記で※印を追加し六冊へ変更)が、春陽文庫入りしていると記述しているではないか。
 確かに、わたくしは、『華やかな荒野』は、所持している(ひょっとすると欠番も実家に置いていて、結局は全巻所持しているのかもしれない。)記憶がある。 
 その巻末の既刊目録から、“桜田忍作品リスト”の一部を作成したのだろうかしらん。
 わたくしのリストが正しければ、計15巻が、春陽文庫から上梓した「桜田忍(福田洋)」作品となるのであろうか。

 (追記)
 文庫入り年と名義から推理して、わたくしなりの通番を<>にて付けくわえてみた。
 当っているかなあ。
 2010.9.25

 (再追記)
 ぎゃふん。
 まったくもって・・・・・・リストの追加だよ。いやになっちゃう。
 計18巻が正当なのか(涙)。
 2010.9.25
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その75影山荘一を追え!

2009-06-09 20:44:47 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 昔から気になっていることがある。気が向けば、調べてみようと、そのときは、考えるのだが、気が向くことがない。
 だいたい、気になっているという表現は正しくなく、ほんとうのところは、不思議だ、という感覚がいちばん近いかもしれない。
 それが、“影山荘一”なる人物の存在なのである。
 探偵小説ファンのかたは、もちろんご存知であろうと思うが、この“影山荘一”というひと、わたくしの浅い知識では、知る限り、斎藤栄先生御付の解説者なのだ。
 で、わたくしの推理するところ、この、“影山荘一”というのは、実は、斎藤栄先生の別筆名ではないかと、前前から、睨んでいるのだが、如何に。
 その理由は、と大上段に振りかぶっても、他には思い浮かばないのだが、他の探偵小説家の作品解説では、ついぞ名前を見たことがない、という事実だ。
 あれだけたくさんの(斎藤栄先生の)解説をかきまくっているにもかかわらず、他の作家作品の解説者にどうして起用されないのだ。あれだけ見事な、斎藤栄先生の探偵小説の読み込みをして、小説の内容を越えるような、すばらしい解説を行なっているにも関わらずである。これは、疑問を通りこして、何かあるのではいか、と勘ぐりたくなるのは、当然ではないか。
 そこで、いつものとおり、インターネットで“影山荘一”を検索してみたのだが、思うようなヒットがない。
 何故だ。大人気作家の斎藤栄先生お抱えの“影山荘一”だぞ。
 どこか、ひとつのサイトぐらい、その正体を知っていてもおかしくはなかろう。
 なんだか、無性に知りたくなってきたぞ。
 “影山荘一”の謎は、謎のままで終わってしまうのだろうか。
 情報を求む!
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その74痛快版

2009-05-27 20:47:36 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 わたくしは、その肩書きは、翻訳探偵小説家あるいは探偵小説家だと信じている-当の本人は、そうは思っていないようだが-中田耕治氏、のインターネットサイト(所謂、オフィシャルHP)<中田耕治ドットコム>(http://www.varia-vie.com/)内の「コージートーク」(これは“耕治”と“cozy”のダブルミーニングにちがいない)は、とても刺激てきだ。探偵小説に関することは、たまにしかとりあげられないが、それでも、中田耕治氏の率直なことばは、読んでいて気持ちがよい。連載も1000回を越えて、いったん小休止するのではないかと心配していたが、杞憂に終わり、無事、つづいていくようで、なにはともあれ、目出度いのだが、その、連載1016回目〔2009/05/25(Mon)〕の末文が、痛快だ。当然のことながら「本ページ内に掲載の記事・写真などの一切の無断転載を禁じます。」ということから、引用はさしひかえるけれども、そこに挙げられた作家の著作は、わたくしは残念ながら未読でも、とても読んでみたい誘惑に駆られるのであった。興味のあるかたは、上記URLへぜひアクセスあそばせ。そして、あなたが、国産ハードボイルド探偵小説好きであって、なおかつ中田耕治氏の著作を未読であれば、せめて『危険な女』と『暁のデッドライン』ぐらいは、読んでおいて損はなかろうと思うのだが、どうだろう。タフな川崎隆くんのラビットパンチは、なかなかのものだぜ。
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その73時代の終わり

2009-05-27 15:08:26 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 インターネットで、栗本薫氏の逝去を知る。わたくしには、泡坂妻夫氏のあとを追うような格好にみえてしかたがない。
 わたくしは、栗本薫氏のよき読者ではないが、氏のデビュウといえるであろう探偵小説専門誌『幻影城』世代であり、少なくとも、氏の最初期の活動においては身近な読者であった。初初しい才媛を、誰もが、弱冠と形容しているのを聴いたのは、つい昨日のような気がする。
 合掌。
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その72反転

2009-02-28 20:39:47 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 図書館で、『オール讀物3月号』を立ち読みする。目的はむろん、連城三紀彦の<追悼泡坂妻夫「最後のドンデン返し」>だ。
 読みおえたあと、その図書館においてある他の、眼につくかぎりの、月刊エンタテインメント小説誌にも、ざっと眼をとおしてみたが、泡坂妻夫についての記述は、どの雑誌にもなかった。
 これが、泡坂妻夫に対する出版界の扱いかと、嘆息する。
 
 「DL2号機事件」のラストを思い出してほしい。
 あの写真の、雲を泡坂妻夫、飛行機を探偵小説と、誰もが、みているに違いない。
 いまの探偵小説の、それがある一部にしても、まぎれもなくそれは、泡坂妻夫がつくりだしたものなのにもかかわらず。
 あとになって、あなたたちは、その真実を思い知るのだ。
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その70灰色の脳細胞の秘密

2009-01-25 20:03:09 | 思考機械(旧題・探偵小説のこと)
 ※以下、水上勉『銀の川』の内容に触れる箇所がございます。未読の方は、充分ご注意ください。 

 まずは、長くはなるが、三年前の7月16日の<机上殺人現場>から。

 表紙裏からのあらすじから
 「秩父の景勝地、荒川上流にある長瀞の下流玉淀で、ある秋の朝、一つの変死体が発見された。
 前日の夕方、崖っぷちの旅館に投宿した、井田美保子と名乗る30歳すぎの女性で、熊谷市議会議員堂島の後妻、短歌をたしなむ美貌の持主であった。
 さらに操作の進展につれて、美保子の秘められた過去が明らかにされてゆく。貞淑な風姿の裏に隠された、奔放な男性遍歴。一方、豚肉業界の黒い霧がしだいにクローズアップされてくる。
 錯綜するどす黒い人間関係と、妖しい女の欲望に彩られた、著者初期の長編名作ミステリー。」
 
 閉鎖てきな山奥にひっそりと隠れ里のように身をひそめて暮すひとびとのいる集落。その陽のあたらない陰のようなうらびれた暗くもの悲しい日本の田舎を、水上勉は描くのがとても巧い。
 それが、わたしの水上に惹かれる一因でもあるのだが、この『銀の川』という美しい題名の探偵小説も上記あらすじで紹介したように、内容はとても暗鬱な色調だ。
 また、その結末も暗く哀しい。
 2006年7月16日読了。

 次に、九年前の9月23日<机上殺人現場>の文章。

 なぞなどたいしたものではない。ほんぽうな妻と強欲な夫。犯人は夫なのだけれども、首吊り死体描写のおぞましさと密殺(豚)のおどろおどろしさは、天下一品だ。
 2000年9月23日(土)読了。

 参ったのは、これがどちらも、水上勉『銀の川』に対しての私の読後コメントなのだ。また、まったく気がつかずに、再読している。これなんぞ、読書ノートをつけていたから、判明したようなもので、読書ノートをきちんととりはじめたのは、ここ最近のことなので、今まで、同じことを何度繰りかえしていることやら。空恐ろしい。水上勉の探偵小説を“金太郎飴”だと、わたくしは批判しているが、当たり前だ。『薔薇海溝』のときもそうだったが、同じ本を二度読んでいるのだもの。同じじゃなくちゃ理屈は合わないよ。
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