goo blog サービス終了のお知らせ 

授業で「こんなこと・あんなこと」をやりました。また授業に関連する資料としてニュース等の転載をしています。

現在、「授業日誌」は、更新していません。
他のサイトは不定期ながら更新しています。
ご覧ください。

「いきなり!ステーキ」はなぜ成功したのか

2016年03月09日 10時02分00秒 | 生き方(Life)
立ち食いの「いきなり!ステーキ」はなぜ成功したのか
ダイヤモンド・オンライン
2月18日(木)8時0分配信

立ち食いの「いきなり!ステーキ」はなぜ成功したのか


銀座6丁目店開店時の様子。
回転率の高さを維持できるかどうかが、
「いきなり!ステーキ」成功の肝だ


定番化する商品・サービスには、いくつかの「法則」がある。
2013年末に登場し、定番化しつつある「いきなり! ステーキ」にも、
これらの戦略が応用されていた。
その内容はアサヒビールの「スーパードライ」や
「ユニクロ」のヒットに近い。
一瀬邦夫社長へ取材した。

「ステーキを日常的に食べたい」 というニーズがあった
注文カウンターへ向かうと、炭火が入ったグリルの隣に、
大きな塊肉が並ぶ様子が見える。
メニューはリブロースステーキが1グラム6円、
「本格熟成国産牛サーロインステーキ」が
1グラム10円など量り売り。
特筆すべきは「立ち食い」であること。
顧客の滞在時間は、ランチタイムで20分程度、
ディナーでも30分程度でしかない――定番化した
「いきなり! ステーキ」のシステムだ。

いままで「立ち食い」と言えば、駅のそば、
そして大阪の串カツなど安価な店が多かった。
ではなぜ、このようなシステムを考えたのか?  
ペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長が話す。
「ステーキは今まで『高級品』のイメージがあったと思います。
私自身、そう思っていました(笑)。
しかし世の中に『ステーキを日常的に食べたい』という
ニーズが生まれた、と読んだのです」

同じく立ち食いシステムを導入している「俺のフレンチ」
「俺のイタリアン」が流行していることを考えても、
いまの日本には「パッと食べたい」という需要があったのだ。
そしてこれは、アサヒビール「スーパードライ」の
ヒットとよく似ている。

スーパードライの発売は1988年。
開発のきっかけは、元銀行マンが社長に就任し、
徹底的なマーケティングを実施したことだった。
調査の結果は、日本人のニーズが劇的に変化したことを如実に示した。
高度経済成長期、つまみは野菜などが中心で、
ビールには麦の旨みが求められていた。

しかし80年代後半はバブルの時期。
日本人の食生活は豊かになり、肉や揚げ物など、
脂っこいつまみが増えていた。
そこで消費者はビールに別のものを求め始めていた。
肉や揚げ物の旨みとぶつかってしまう「麦の旨み」でなく、
爽快なのどごし、いわゆる「キレ」を求めつつあったのだ。
そこで同社は、あえて麦の旨みを抑え、
痛快なのどごしが際だったビールをつくった。
これが「スーパードライ」ヒットのストーリーだ。

原価率は70~80% 平均滞在時間は30分
先の一瀬社長の発言を、この文脈で捉えると興味深い。
バブル期に食生活が豊かになり、
いつしか肉は高級品の代名詞ではなくなっていた。
だが、肉を食べようと思うと、
高そうなテーブルに座らされ、
うやうやしく前菜やスープが出され…と
飲食業界は旧態依然の店しかなかった。
「これだと時間がかかってしまいます。
現代のビジネスパーソンは、お金があっても時間がありません。
だから『いきなり! ステーキ』のユーザーには
『高級肉を食べたい、でも時間はない』
といった層が多いのです」(一瀬社長)

食文化は、時代によって大きく変化する。
所得が高く、同時に時間がない層は、
飲食業者よりも先に進み
「ステーキをパッと食べたい」と望んでいたのだ。
このズレを是正したのが「いきなり! ステーキ」がヒットした、
第1の理由と見ていい。

ヒットの理由2番目は、価格を安く抑え、大量に売る方向性だ。
例えばユニクロ。同社はフリースの価格を、
当時の市価の半分以下に抑え、大ヒット商品とした。
理由は簡単。
「低価格化のスパイラル」を描けたからだ。

まず、大量発注する。すると、スケールメリットが生じて、
1着あたりの価格は下がる。あくまで仮の数字だが、
10着発注すれば1着あたり1万円のものが、
100着だと5,000円になり、1000着だと3,000円になる…といった形だ。
そして、ユニクロはこれを消費者に還元した。]
市価より大幅に安く売ったのだ。
このため、より大量発注が可能になり、
さらに安くなれば、さらに客数は増える。
これが「低価格化のスパイラル」だ。

「いきなり! ステーキ」も同様だ。
こちらは、あえて「立ち食い」にすることで、
顧客の店舗滞在時間を短くした。
「客単価が3,000円で、お客様の平均滞在時間が
1時間の店があったとします。一方、客単価が2,000円でも、
平均滞在時間が30分の店があるとします。
すると、後者の方が売り上げは大きいですよね? 」(一瀬社長)

だから一瀬社長はまず、銀座に小さいお店を構えた。
ランチやディナーの1時間に、1席あたり顧客が2回転して
成り立つビジネスモデルだけに立地は重要だ。
また、坪数が少なければ、賃料が抑えられ、
結果的に顧客にいい肉を安く提供できる。
売り上げが伸びれば、スケールメリットも
期待できるに違いない。

ただし、課題がないわけではない。
まず、原価率が高すぎる。
ステーキ単品の原価率は、
外食産業では異例の70~80%。
少しでも客足が遠のけば、
ビジネスモデルとして成立しなくなってしまう。
また、顧客が30分に1人のペースで規則的に来てくれるならよいが、
行列ができてしまうと「すぐ食べたい」というニーズは満たせなくなる。
例えば、13時~18時など、比較的店が空く時間帯には
何かの特典がつくなど、
ビジネスモデルのさらなる成熟が必要だろう。


一瀬社長はなぜ このビジネスモデルに気づいたか
いずれにせよ「いきなり! ステーキ」のヒットは、
このような経済的合理性の視点で生まれたものだった。
だが、一瀬社長に話を聞くと、少し意外な面が見えた。
この案は、コンサルタントなどから提案を受けたものでなく、
自分自身で気づいたものだったという。

なぜ気づけたのか。
最後に一瀬社長はこんな話をした。
「実は、高校を卒業し、コックの修行を始めた日に、
忘れられない思い出があるんです」
彼は先輩から、入社記念に
「好きな物食べていいよ」と優しい言葉をかけられ
「ビフテキが食べたい! 」と言った。
しかし先輩は、あとで何か理由をつけ、
一瀬氏にポークソテーを振る舞った。
時は昭和35年、メニューを見れば、ビフテキは
一瀬氏の初任給と同じ額だった。
さすがに、これは振る舞えなかったのだ。

「もちろんポークソテーも、貧乏だった私には
目が飛び出るほど旨かったですよ。でも、
やっぱりビフテキが食べたくて、私はあとで、
捨ててしまう牛肉の脂身を焼いて、口にしました。
『うまい、うまいなぁ』と思って、
でも言葉にならなかったことを覚えています。
『旨い肉をたらふく食べてほしい』。
これが私の商売の原点なんです」

そんな思いがあって、
初めて気づけたニーズだったのかもしれない。

夏目幸明

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160218-00086498-diamond-bus_all