バレーの亜種として誕生した新しいスポーツ。2000年頃にスペインで誕生し、日本でも競技人口が着実に増え、2015年には、初めて埼玉県で全国大会が行われた。バレーとおおよそ同じ大きさのコートで行う。バレーとの違いとして、まず、水着で行うことが挙げられる。これはビーチバレーから発想を得たものである。そして最も大きな違いは選手の中にヴォーカルがいること。コートの両脇には2本のマイクスタンドが立てられており、自分のチーム側にボールがある間はヴォーカルが歌を歌うのだ。そして、それに合わせて他の選手たちが踊る。もちろんボールを触っている選手以外である。
一曲が歌い終わるまでの間、どちらのチームがより多くの時間歌っていたか(ボールを長く持っていたかということになる)と、どちらが会場を沸かせたか。の、2つの基準で採点が行われる。ボールを持っている方のチームのヴォーカルが歌っている間、相手チームは、合いの手で歌の邪魔をしたり、声をかき消して聞こえにくくして良いことになっている。ただし、あくまでも合いの手である必要があり、ただ叫んで邪魔をするなど、合いの手の範疇を超えた行為についてはペナルティーが与えられる。
全体の盛り上がりに関しては、選曲が非常に重要となるのは勿論、試合会場を巻き込んだライブ感がモノを言うため、チーム専属のブラスバンドを持っているチームも最近では見られるようになった。これは日本独自の現象であり、海外では見られることは今のところ無いが、本場スペインからの視察があるなど、注目を集めている。初期は倖田來未のキューティーハニー、宇宙戦艦ヤマトなどの楽曲がよく選ばれていたが、これはあくまでもブラスバンドメンバーに、学生時代、演奏したことがある人が多いため、選曲されていたと予想される。最近ではボールが相手チームに動くたびに演奏を止めることにもブラスバンド側が慣れてきたチームが多いため、試合でも多彩な楽曲の演奏が見られる。
私も先日、近所に新しくできた小学校の見学会に参加した際に、体育館でママさんバスェートチームがたまたま練習を行っている場に遭遇し、初めてプレーをしている姿を目にした。
年齢層は25〜45歳までと広いが、若い層の比率が多くエネルギッシュなチームだった。それぞれ体育館に集まると皆さんまず水着に着替える。殆どの人はTシャツやワンピースの下に水着を着た状態で来ており、体育館の隅でそのまま服を脱いでいた。チームカラーの若草色のビキニには、小さなお花のフリルが散りばめられており、一見下着にも見えるそれに、私は初め、耳を赤くしてしまった。ある程度の人数が集まると、水着に着替えた選手たちは体育館の中を数周ジョギングして体を温めたのち、各々が持参した加湿器とヒーターを円形に並べたその中でホットヨガを1時間程度行って体をほぐしていた。私はその頃には、建物見学の趣旨から1人ずれ、ほかの参加者が帰宅した後も体育館に残ってバスェートの今を見届ける決心をしていた。
外に黒のワンボックスカーが一台止まり、女性が降りてきた。大きめのピアスと厚めの化粧は、ほかの選手とは少し違う雰囲気。体育館に入るとみんなから次々と声をかけられ、慕われているのがわかった。そしてこの女性が、このチームのヴォーカルであることもすぐにわかった。