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気どりのない暮らし

2012-11-21 10:03:14 | 日記
沢村貞子
『わたしの脇役人生』 を読んで

気どりのない暮らし

選ばれた人たちが、おかしいほど憧れる普通の暮らし・・・・・その言葉をきく度に私は自分の育った東京の下町、浅草を思い出す。

そこにはフンワリと暖かくて肩の張らない生活がたしかにあった、ごく平凡な毎日が・・・・・。

   (中略)

「ここで一ばん美味しいおそばは?」ときけば、すぐに、
「ハイ、ざるそばでございます」という返事がかえってきた。

天婦羅や鴨南ばん、独特の鍋焼きも評判だったけれど、その頃五銭のざるそばこそ、そば屋の看板 ― それを食べて下さるお客さまが一ばん大切、というのが、店の主人の信条だったという。 

   (中略)

庶民ののぞみは、とにかくつつましかった。
毎日セッセと働いた上で住んで着て食べられれば、それで人並み ― ありがたい仕合わせだ、と暮らしの不満はめったにきいたことがなかった。

   (中略)
特別席、特別講演 ― 劇場は毎月、特別公演、俳優は特別出演。
デパートもスーパーも年がら年中、特別大売出しをしている。
特別の好きな人は ー ほんとうに多い。 

普通の暮らしに戻りたくて、特別席を逃げ出したみなさん・・・・・ホッと肩の力をぬいてゆっくりくつろげる場所がみつかりましたか?
なかなか思うようにゆかないでしょうけれど ― 是非さがして下さいね。

私も何とか普通のおばあちゃんの暮らしをつづけようと一生懸命です。

老脇役でも女優ですから多少むずかしいこともあるけれど ― でも、並みの暮らしってホントに素敵ですものねえ・・・・・(そう思うのは・・・・・へそ曲がりかしら?)



東京の下町、浅草の暮らしが味のある文章で描かれ〝映画〝寅さん〟を思いだす。

「普通のおばさんになりたい」
「普通の女の子に戻りたい」
芸能界でトップまで上りつめた人のファンに対する別れの一言だ。

「やめたくてもやめられない」
悩んでいたスターの望みは ― 普通の暮らしがしたい、ということらしい。
それだけ種々のプレッシャーがかかる仕事だ。

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