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世界中が「得」する願望

2012-11-22 05:26:07 | 日記
沢村貞子
『わたしの脇役人生』 を読んで


世界中が「得」する願望


Aさんの望むことがBさんの迷惑になり ― 一人の得が、他の一人の損となるのは、人それぞれの考え方、暮らし方の違いだとわかってはいるけれど、とにかく、当惑するような問題が多すぎる。

そのきしみが日増しに大きくなって・・・・・まるで、焙烙(ホウロク)の中で豆がはじけるように、あちらでもこちらでも、地域エゴの争いが起きている。

カラオケの騒音から日照権、ペットの飼い方から託児所、老人ホーム、ゴミ焼却炉の設置をめぐるトラブル ― 隣家の落ち葉の処理まで、かぞえたらきりがない。

どうやら、すべての人間にとって得になるということはないらしい。

(中略)

なんとなくゆううつなある日、フト手に入れた一冊の本をひらいて ― 私は思わず声をあげた。

あった。ここにあった。
すべての人の得になることがあった。
それも日本だけでなく、世界中、すべての人の得になることが・・・・・その名は、平和。

(中略)

イギリスの物理学者バーナード・ベンソン氏の著書『平和の本』 ―

(中略)

やさしい言葉にきれいな線描きの簡単な漫画を添えて ― 一見、お伽ばなしの本のように見えるけれど・・・・・感動するのは、子供だけではない。

私も、私の夫も、頁をめくるに従って頬が赤らみ、目がうるみ、胸の中が熱くなって、読み終わってからしばらくは、何も言えなかった。

(中略)

この本の裏表紙に作家井上ひさしさんの言葉が載っている。

「・・・・・平和と、その平和をどうすれば手にいれることが出来るか、が書かれています・・・・・主人公の子供が大統領三人と交わす会話などは思わず、手に汗を握ってしまいます」

私はもう、三度読みかえした。
そして、世界中の人たちが、一人残らず得をする ― それは、世界中が平和になること以外にはないのだ、とあらためて考えています。
皆さんも、そうお思いになりませんか。



【沢村貞子さん 人物紹介】

女優としてよく知られていますが、随筆家としても多くの作品があります。
自伝的随筆『私の浅草』は下町の風情を生き生きと綴りあげた名著です。

1996年8月16日心不全のため死去。87歳。本人の遺志により、葬儀では身内だけで納棺式を行い、火葬の後、遺骨は先立った夫・大橋恭彦の遺骨とともに相模湾に散骨されました。

※ 大学中退後、左翼演劇運動に従事、投獄経験もあります。

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