「おもやい」

〝老いを楽しく生きるには〟と言うテーマで「おもやい」を運営。

ニーズに基づくイノベーション

2012-12-10 14:47:29 | 日記
12月10日
ニーズに基づくイノベーション

ニーズを見つけるとは、文字通りニーズがなければならないが、イノベーションが新たなニーズを造り出すこともある。

ドラッカーは、プロセス、労働力、知識などのニーズを挙げる。
そしてニーズに基づくイノベーションが成功するためには、
①完結したプロセス
②欠落が一ヵ所
③目的が明確
④目的達成に必要なものが明確
⑤受け入れ態勢整備
の5つの前提と、
①ニーズの明確な理解
②必要な知識の入手
③使う者との価値観の一致
 の条件が必要だと言う。

【作家、江川剛 氏・銀行支店長時代の経験談】

「すしざんまい」はマグロを最高値で落札して話題を取った24時間営業の寿司チェーンだが、私が築地支店長時代の取引先だ。

当時のみずほ銀行築地支店は2500億円の貸出金があったが、不良債権も膨大だった。
私は新しい取引先を獲得する必要に迫られていた。
だが取引先の寿司屋などはバブル時代に銀行の甘言に乗り、不動産投資などに明けくれ、バブル崩壊後は借金地獄にあえいでいた。

ところが一店、すしざんまいだけは賑わっていた。
私は社長に会った。
社長は、コンビニや弁当屋など多角的に経営していた。
利益はトントンくらいだった。
私は社長に「24時間営業というのは他にないノウハウだ。もしこれに特化し、いつでも新鮮なネタを提供する寿司屋を展開するなら融資をさせていただきたい」と言った。

当時、どの銀行も支援していない状況だったので社長は喜び、私のアドバイス通りにした。
その後の発展は目覚ましいものがあった。

「すしざんまい」の事例をドラッカーの考えに当てはめて考えてみよう。

①予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事。
 24時間寿司を提供するというサービスが意外なほど受けた。実際、夜から深夜にかけて客が多かった。電通やテレビ局の深夜族が店にやってきたのだ。予期せぬ思いがけない成功だ。

②ギャップを探す。
 なぜ寿司屋は夜には閉店するのだろうか。深夜でも早朝でも食べたい時に寿司を食べたいというギャップが面白い。

③ニーズを見つける。
 24時間、寿司を食べたいというニーズは確実にあった。また24時間、新鮮な寿司を提供できるという物流ノウハウがあるかと言えば、築地市場の近くであること、冷凍、冷蔵輸送の発達が、24時間新鮮な魚の提供を可能にした。

④産業構造の変化を知る。
 寿司屋が衰退する理由はなにか。高くて安心できない。では回転寿司はどうか。安いが接待などでは利用できない。回転寿司ではない、手ごろな寿司屋を造りたい。これも立派な産業構造の変化だ。

⑤人口構造の変化に着目する。
 人口構造の変化は、深夜族の増加だ。深夜働く人が多い。芸能人、広告関係者などが築地周辺に多く、深夜、早朝に食事をしたいというニーズがあった。

⑥認識の変化をとらえる。
 寿司を深夜に食べるなんて新鮮なネタがないに違いない、という思い込みを否定してみせた。深夜から早朝にこそ、市場に新鮮な食材が届くのだ。

⑦新しい知識を活用する。
 物流拠点を考え、新鮮なネタが提供できる場所に店舗を配置する。

なぜ24時間、新鮮なネタの寿司を提供できないかと考え、24時間寿司を提供してみたら、思いがけなく深夜、早朝の客が多いことに気づき、これを推し進めてみたら大成功したということだろう。

いずれにしてもイノベーションには、企業家の自らへの問いかけ、すなわち「なぜ私たちは消費者を満足させられないのか」が、最も重要なのだろう。飽くなき消費者満足の追求がイノベーションを起こすのだ。

     【逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓ー】

「イノベーション」

2012-12-09 13:30:21 | 日記
12月9日
「イノベーション」

広辞苑によると
①刷新、新機軸
②生産技術の革新だけでなく、新商品の導入、新市場・新資源の開拓、新しい経営組織の実施などを含む概念。
日本では技術革新という狭い意味に用いることが多い」とある。


作家 江上剛氏は、次のように言っています。

【私はイノベーションを「新しい価値の創造」という意味で使っている。
日本の現状を見ると、あらゆる場面で新しい価値を創造していかねばならないという危機感を持っている。】

ドラッカーのイノベーションの考え方を見てみよう。

イノベーションとは、富の創出能力を増大させるもの、全てだという。
そして「供給に関わる概念よりも需要に関わる概念、消費者が資源から得られる価値や満足を変えることと定義することができる」と言う。

既存の資源であろうと、技術であろとなかろうと、物であろうとなかろうと、なんだって構わない。
もち論、ドラッカーはイノベーションを供給側、需要側のどちらの概念で捉えるかはケースバイケースだと慎重に断りながらも、新しい需要、市場を創造するものという考えが強いと思われる。

彼はイノベーションの七つの機会として次のように言う。

"①予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事。
②ギャップを探す。
③ニーズを見つける。
④産業構造の変化を知る。
⑤人口構造の変化に着目する。
⑥認識の変化をとらえる。
⑦新しい知識を活用する。"

予期せぬ成功や失敗などはほとんど気付かないが、それに気づくことが大事なのだ。

           【逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓ー】