Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

スティーヴ・ハミルトン「解錠師」

2013-12-28 16:30:49 | 読書感想文(海外ミステリー)



8歳の時のある出来事がきっかけで、言葉を失ったマイク。
しかし、彼には才能があった。絵を描くことと、どんな錠でも開くことができること。
高校生になったある日、マイクは友人が起こしたいたずらに巻き込まれ、プロの金庫破りの弟子になり、
愛する少女のために非情な犯罪に手を染めることになり…


ミステリー小説なので、ネタバレ感想は避けようと思っていたところですが、ふと文庫本の表紙を見たら、

表紙がもうネタバレやんけ!

…いや、まさかそんな、ね…表紙にマイクのあの秘密のヒントがあるとはね、思いもよらなかったですよ。マジで。
(私はいつも文庫には買った時のカバーをかけているので、読み終わるまで気づきませんでした)

そういうわけで、これから読む人は表紙に気をつけてください。というか表紙を気にしないでください。

小説の冒頭は、すでに刑務所に収容されているマイクの独白から始まります。
そして物語はマイクがまだ高校生だった頃の話と、プロの金庫破りになってからの2000年以降の話が交互に語られます。
この二つの話が、状況はまったく異なるけれどそれほど時間の間隔があいてないので、読んでいて少し混乱しました。
まあ、私みたいにちびちび読まないで、最初から最後まで一気に読めば問題ないと思います。

小説のカテゴリーはミステリーですが、実際読んでみると、この小説はミステリーというよりも主人公マイクの成長を描いた青春小説でした。幼い頃の出来事から負った深い心の傷、マイクの孤独、運命の人との出会い、犯罪の世界でしか金庫破りという許されざる才能を発揮するできないという葛藤、そして過去からの脱却と再生…金庫破りの話と聞いて、スカッとする痛快な小説かと期待していたのですが、思っていたのとはだいぶ違いました。これはこれでよかったですが。

…なんか、ここまで書いてこの小説の内容全部ばらしてしまったような気がしますが、これはほんのさわり程度なので気にしないでください。ええ。

さて、タイトルが「解錠師」の割には、マイクが金庫を開ける場面はそんなに出てきません。いや、それなりに出てくるけど、マイクが金庫の鍵を開けることで物語が大きく動くかというとそうでもない、って意味で。どっちかというと解錠に失敗した時とか、解錠しようとしたらその必要がなかった時のほうが、物語の展開の振幅が大きかったです。金庫が開けられなかった時、捕まりそうになった時、マイクがどう動くのか。はらはらしながらページをめくりました。最初は、成功よりも失敗が目立つのは残念な小説なのではないかと思いましたが、失敗のほうが成功よりも意味があるのは当たり前のことで、何より金庫破りはともかくまだ犯罪者としてアマチュア(変な日本語だ)のマイクがほいほいうまくやりこなすのは出来過ぎな感じで興ざめです。やっぱりこの小説は、ミステリーというより、プロの犯罪者としてではなく、過酷な宿命を背負った、まだ10代の青年であるマイクが主人公の青春小説です。

しかし、いくら青春小説だからと言って、マイクが運命の女性・アメリアとあっさり出会ってあっさりフォーリン・ラブしちゃうのには、ボッチの私は思わず

このリア充めが!

と毒づいてしまいました。ふぅ。

途中、暴力描写がきつくて読むのがつらかったのと、終盤で二つのパートがつながったときに登場人物の関係に少し戸惑いましたが、冒頭ですでにマイクが刑務所に入っている(=オチがわかっている)ので、なんとか最後まで読み切ることができました。映画化したら面白いかなーと思いますが、そういう話はないんでしょうか。もし映画化するなら、主人公のマイクはジェシー・アイゼンバーグにやってほし…はっ、しまった、

マイクはイケメンだから無理!

でした。ざんねーん!それ以外の設定は彼にぴったりの役なのにぃ。



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おもしろそう! (カイシャ)
2013-12-30 23:06:13
早速、図書館で借りてきます。こっちでは「The lock artist」ですって。このHamiltonはシリーズものも書いているんですね、おもしろかったですか?ことしもたのしいエントリーをありがとうございました。来年も楽しみにしています。良いお年をお迎えください。
返信する
おもしろかったですよ (もちきち)
2013-12-31 00:20:39
>カイシャさん
こんばんは~。
この作者はハヤカワから日本語訳が数冊出てるみたいなので、また今度読んでみます。
「解錠師」は、金庫破りの場面がスリリングで、読んでてドキドキしました。ぜひハリウッドで映画化してほしいですね。

いつも読んでくださってありがとうございます。拙い文章ですが来年もよろしくお願いします。良いお年を!
返信する

コメントを投稿