※ここから先に書かれているのは、すべて私個人の主観によるものです。
春休み前の3月に公開したのに、5月の連休もいまだにガンガン上映しているという、大ヒット中の「アナと雪の女王」。
劇中でエルサが歌う「Let It Go」も、オリジナル版だけでなく日本語吹き替え版で松たか子が歌うバージョンも大好評。(MayJバージョンに対する評価は知りませんが)私も3月に映画館で吹替え版を見ましたが、映画も歌もいろいろとツボを刺激される、素晴らしいものだったと思います。
でも、ここまでヒットするといろいろ批判する人も出てくるわけで…話題になったのは伊集院光と爆笑問題の太田光のラジオでの発言でした。関係ないけどどちらも名前が「光」なんですね。
伊集院の批判はストーリーがつまらない、中身がないといったもので、太田のは「アナと雪の女王」にドハマりしている大人の女性たちへの批判でした。
まあ作品に対する評価は人それぞれなので、伊集院にとってはこの映画はつまらなかったんだなと思うし、コメントの最後で“『アナと雪の女王』よりもこっちを見るべき”と紹介された劇場版クレヨンしんちゃん最新作はとんだとばっちりだなと同情します。太田のは作品がどうこうよりも大の大人の女が映画館で嬉しげに「ありのーままのー」と歌うのが気持ち悪い、という映画批判というより“流行に乗っかる女性批判”だったので、太田の言うことに同意はできないけど、これもスルーできる話。
というか私も、この「アナと雪の女王」は、ありのままで、自分を解放して生きることの困難さをじわっと表現している話だと思うので、そうのんきに「ありのーままのー」って歌っていいものかと思うんですよね。
だってあなた、自分以外誰もいない雪山で「ありのままの姿見せるのよ~」って、誰も見る人いないじゃん!
人目のないところで「人目なんて気にしないわ!」って歌うのって、逆にものすごく人目を気にしてるってことなのでは?
日本語吹替え版の訳詞はオリジナルよりマイルドになってるのでちょっとわかりにくいですが、「Let It Go」が歌われるのは映画のクライマックスではなく序盤、起承転結で言えば「承」あたりじゃないでしょうか。この歌の歌詞はこの映画の大事なテーマのひとつですが、これがすべてではありません。もしこの歌だけで映画が完結するのなら、エルサは氷の城から一歩も出ることがなく、姉妹の王国は雪に閉ざされ、滅びてしまいます。
「アナと雪の女王」はとてもいい映画だと思うけれど、抑圧された城での生活から解放されたエルサの高らかな歌声のインパクトが強すぎて、マスコミや配給会社がそればっかり取り上げるのがとても残念です。
それともうひとつ、私が残念だな、もったいないなと思ったのは、映画の中で姉エルサの孤独と苦悩は詳しく丁寧に描写されてるのに、アナに対しては結構雑だったことです。人には言えない不思議な力を持ってしまったエルサの宿命には同情するけれど、アナだって理由も知らされずにエルサと共に閉ざされた城の中で生活させられたわけなのですから。
エルサの戴冠式の日、「生まれてはじめて」を歌いながら城の外に飛び出したアナは、健康的でまっすぐで明るくて、影というものを知らないように見えましたが、途中でアナがはしゃぎながら「今日だけでも 1日だけでも」と歌うのを聞いてはっとし、とてもせつなくなりました。光を浴びられるのは、恋ができるのは1日だけ。次の日には、また城の門も窓も閉ざされてしまう。絵の中の人たちに語りかける日々に逆戻り。どうして自分がそんな生活をしなくちゃならないのかわからないのに。ものすごくストレスがたまりそうな生活なのに、そのことに疑問を感じないアナは、ものわかりがよすぎるんじゃないかともやもやしました。まあ、基本子供向けアニメだし、そこまでほりさげると尺が足りなくなるからなんでしょうけど。
あと、アナがその日はじめて会ったハンスと「結婚してこの城に住む!!」と舞い上がったのは、エルサの言うとおり軽率だと思いますが、アナの申し出を断固拒否するエルサの頑なさにもぞっとしました。エルサは、アナを自分と一緒にこの城に一生縛り付けるつもりなのかな、と。それじゃ「ずっとお城で暮らしてる」と一緒やーん!!
以前書いた感想でも、エルサの不思議な力を「ハンディキャップ」に置き換えると云々と書きましたが、白状すると私は上記の場面を見たときに「もしかするとこの映画は“きょうだい児”がテーマのひとつなのかな?」と思いました。エルサの力を隠すため、妹のアナにも閉ざされた城の中で孤独な生活を送らせ、その挙句2人を遺して亡くなった両親。遺された2人はどう生きればいいのか―この映画のように、きょうだい仲良く助けあって生きられればいいですが、現実はそううまくいくとはかぎりません。それを考えると、めでたしめでたしのラストに不満が残ります。
先日、ネットで「アナと雪の女王」の続編が作られるという噂が流れましたが、どうやらそれは根拠のないものだったようです。
でももし続編が作られるなら、こんどはアナの内面を掘り下げて、その上でエルサとの姉妹愛を描いてほしいと思います。アナとクリストフが結婚して、エルサにもお相手があらわれてカップル成立!なんてイージーなものではなくて。
もちろん、車椅子に乗ったつるっぱげと変なヘルメットのじいさんがエルサを奪い合う展開でもいいけどね!!(まだ言ってる)
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