Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

映画「パーマネント野ばら」(9月12日)

2010-09-14 21:14:10 | 映画


「ずっと好き」はどこにもないから 私は毎日、小さな嘘をつく―

夫と別れ、娘を連れて高知の港町にある実家にもどってきたなおこ(菅野美穂)。
なおこの母まさ子(夏木マリ)が女手ひとつで切り盛りする美容室“パーマネント野ばら”は、町の女たちでいつもにぎわっている。彼女たちがパンチパーマをあてながら口にするのは、子供に聞かせられないような際どい男女の話ばかり。「なおちゃんも早く新しい男つくらなあかんよ」と言われるたびに、笑いながらはぐらかしていたなおこだったが、実はなおこには秘密の恋人カシマ(江口洋介)がいて…。



映画「パーマネント野ばら」公式サイト



※ここから先はネタバレがあります。要注意!!





どんな恋でもないよりましやき―



原作の西原理恵子のマンガは、当然ながら既読。ラストのどんでん返しには、衝撃を受けるというより「えー、そんなオチ!?」とがっかりした記憶があります。後づけ設定なんじゃないかなーとかんぐってみたりもしました。まあ、今となっては納得してるんですけど。


で、映画。

映像が美しすぎて、サイバラ漫画独特の薄汚さがなかったのは少し物足りませんでした。でも夏木マリのきっついパンチパーマ姿とか、町のおばちゃんたちのリアルな下品さとか、30年前から時間が止まっているような町の雰囲気などは原作そのままでした。というより実写にすることで原作から更に進化した感じすらしました。紙の上に描かれた存在から、生身の人間、実在する町として生命を吹き込まれたというか…ってそれは大げさかな。はは。

でも、そうなると今度は漫画のセリフがそのまんま使われてる場面になんだか違和感が。この漫画に出てくるセリフは名言が多いので、そのまんま使っちゃうのもわかるし、全体でいえば映画の世界にすんなり溶け込んでるセリフのほうが多いんだけど。でももうちょっとうまく加工してほしかったかなぁ、と思うセリフもいくつかありました。まあ、そんなにものすごく気になったわけではないんですが。

上にも少し書きましたが、この映画のキモはラストのどんでん返しにあります。“どんでん返し”と言ってもそんな「シックス・センス」みたいに冒頭で“まだ見てない人に結末を言わないでください”と念を押されるほどの大きな仕掛けではないんですけどね。早い段階からどんどんヒントが出てくるし。そもそも私なんて原作読んで結末を知ってるから、ヒントが出てくるたんびに「ああ、ここは伏線になるんだな」と1人で納得しながら見ちゃいました。“高校の階段で女子生徒とすれ違うシーン”のようにわかりやすいものもあれば、“海の見える温泉宿でカシマとじゃれあっていたなおこが目を覚ますシーン”みたいにちょっとひねりがきいてるものまで、いろいろ。でもこの温泉宿の場面はホントに切なかった…あんなに楽しそうにじゃれあってたのに、目を覚ましたなおこがワンピースを着たまんまってことは…と。カシマと出かけるためにドレスアップしたなおこが、とてもきれいでかわいかっただけに、なおこの世界のほころびから透けて見える現実に、胸が痛くなりました。一番泣けたのはラスト直前、みっちゃんが「(なおこはカシマと)デート中」と言った途端、お店でパーマをあてていたおばちゃんが一斉に振り返ったシーン。ああ、この人たちは皆知ってて、なおこを見守っててくれたんだな…と。これは原作にはない設定&シーンですが、下世話な話をしつつもなおこを心配してくれていたおばちゃんたちの優しさが胸にしみて、自然と涙がこぼれました。いや、下世話な話は好きでやってたのかもしれなけど。

なおこを演じた菅野美穂は相変わらずの芸達者ぶりで、子供がいて離婚歴のある大人の女性の顔と、十代で時間が止まってしまっている少女の顔の両方をうまいこと演じていました(もしセーラー服姿が出てきたらどうしようとは思ったけど)。なおこの友人でフィリピンパブのママ・みっちゃん役の小池栄子は、テンションが高い役なのでオーバーアクト気味になるのではと心配でしたが、出す時は出す、ひっこめる時はひっこめるで緩急のついた演技を見せてくれてました。注文をつけるなら、あと10キロくらい太って貫禄をつけてほしかったかな。なおこのキャラがふわふわして現実味がない分、“リアルな田舎町のオバちゃん(元ヤン)”のみっちゃんが見たかった。もう一人のなおこの友人・ともちゃんは、原作に出てくるともちゃんと少し違いましたが、演じている池脇千鶴がかわいかったので許します。こんなにかわいいのに“カスみたいな男にばかりひっかかって、いつも不幸のメインストリートにいる”女の役がぴったりはまっているのがすごいです。とくにかわいかったのは、なおこが恋人カシマのことを告白したときのともちゃんの表情。一瞬ひるんで、その後ゆるゆると柔らかく微笑んで、なおこを優しく受け止めたその笑顔にノックアウトされました。スクリーンで池脇千鶴を見たのは久しぶりですが、やっぱりすごい女優です。貧乏くさいTシャツとスカートに包まれたトシの割にはおばちゃんくさい体型も、きっと役作りのためにわざとそうしたものなんでしょう…きっと。

男性陣で一番よかったのは、みっちゃんの父親役の本田博太郎でした。特にトシ取って壊れてからの博太郎が素敵すぎました。逆になおこの恋人カシマ役の江口洋介は、かっこよすぎてリアリティに欠けてたかな。もしカシマみたいな高校教師がいたら、女生徒の間で激しい争奪戦が起きて、秘密の恋なんてしてられないと思うから。まあ、だからといって原作に合わせて温水さんみたいな人が出てきても困るんだけど。あ、あとみっちゃんのダンナ役の加藤虎之介も素敵でした。もし四草に落語がなかったら、あんな風になってしまったのかしら。

ここのところ、サイバラ作品の映像化が続いてますが、今の時点ではこの「パーマネント野ばら」が一番好きです。某テレビドラマは残念な出来だったようですが。これから先も、鴨ちゃん原作で浅野忠信主演の「酔いがさめたらうちに帰ろう」、キョンキョン&永瀬の「毎日かあさん」の2作品が公開されますが、果たしてどんな映画になるのかなぁ。というかこの2つって、基本的に内容が一緒になるのでは…。



コメントを投稿