Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

夏休み島観光レポート 魔女、旅に出よ 福田編

2014-08-14 00:46:25 | ローカル


オリーブ公園で昼食をとった後、われわれ一行は島の北東部にある福田地区を目指しました。
なぜ福田なのかというと、前日に近所を散歩していたとき、次女ちゃんが

「久しぶりにしそジュースが飲みたいな」

と言ったからです。彼女が言うしそジュースとは、1年前に福田を訪れた時、福武ハウスの横にあるアジア食堂で飲んだ、しそのシロップ入りソーダのこと。

「次女ちゃん、去年しそジュース飲んだの覚えてるの?」

と聞いたら、

「うん」

と答えました。おやおや。去年福田に行った直後は、遠かっただの面白くなかっただのと文句をたれるだけだったのに。

「去年ジュース飲んだとこで芸術作品見たでしょ?どんなのがあったか覚えてる?」

「忘れた」

「……」

福田でどんな作品を見たのかは、全然覚えてないのに、食べ物(この場合飲み物)のことは覚えているんですね。まあ、私も旅行の思い出は食べ物の思い出に直結してますが。

というわけで、福田に行きました。まずは去年の瀬戸芸のときにつくられた福武ハウスへGO。今年は去年とは違う作品が展示されています。



旧福田小学校の玄関に、巨大な板ガムがたてかけられています。これぞ芸術です。嘘です。

受付で入場料(大人500円、15歳以下は無料)を払って中へ。福武ハウスの中は撮影禁止なので、写真は撮れませんでした。なので公式サイトのリンクを貼っておきます。

台湾歴史資源経理学会

福武ハウス-アジア・アート・プラットフォームのパートナー組織を紹介するコーナー。台湾の絵本が展示してあったのですが、日本の絵本にはない画風のものがたくさんあって、読みたくなりました。なんて書いてあるのか全然わからないけど。窓辺に飾ってあった、紙で出来た立体のみかんがかわいかったです。ショップで売ってなかったのが残念!

ナウィン・ラワンチャイクン「ホームタウン」

タイのチェンマイ出身のアーティストが、自身が活動する福岡とチェンマイという二つの「ホームタウン」それぞれをテーマにした作品二つを展示しています。これらは今回の展示のために新しく作られたものではなく、過去作品を再構築したものだそうです。福岡をテーマにした作品は、数十枚の小さなキャンパスに、“福岡で地下鉄工事の穴に幼い娘と共に落ちた主人公(作者)が、過去の福岡にタイムスリップする”という内容の漫画が描かれていました。小学校の教室の中、カラーで丁寧に描かれた絵の一枚一枚が机の上に整然と並んでいる様子に、「こんな斬新な展示方法があるのか」と驚きました。以前に別の場所で展示したときは、どんな風にしたんでしょうね。あと、漫画の中に福岡の電車の歴史が詳しく出てきたので、鉄道オタクの義兄が見たら喜ぶだろうなぁと思いました。来れたらよかったのに…。

もうひとつの、チェンマイがテーマの作品は、長い間海を漂い続けてきたような、古びた小さなガラスのボトルを、床から天井まで円柱状にびっしり並べたオブジェでした。教室の真ん中にそびえたつその柱の中(中に人が2、3人入れるくらいのスペースがあります)に入ると、柱の内側のボトルには作者がチェンマイで出会った人たちの写真が入っていて、こちらをじっと見つめていました。天井近くまで積み上げられているボトルのひとつひとつが、じっと、こちらを見つめていました。次女ちゃんは怖がっていましたが、私にはこのボトルの積み上げられた様子がまるでカタコンベのように思えて、なにやら神妙な気持ちになりました。ボトルの中にいる人たちは、自分が今どこで、どんな人たちに見つめられているのか知っているのでしょうか。名前も、どんな生活をしているのかも知らない人と、ガラス越しに出会っているなんて。

福田地域文化紹介展示

福武ハウスの2階にあります。ここも撮影禁止。廊下に福田地区の漁船の大漁旗がいろとりどりに飾られていました。これは写真に撮りたかったなぁ。

福武ハウスを出る前に、入り口のショップで靴下を買いました。



小さくて分かりにくいですが、にわとりの柄です。かわいい。この他に色違いが2種類あります。姉も姪っ子たち用に2足買ってました。ちなみに1足700円。



パッケージもかわいい。でも取っておいても使い道がない…。

福武ハウスを出たら、次女ちゃんお待ちかね(?)のしそジュースを飲みに、小学校の体育館を利用した福田アジア食堂へ。午後3時を過ぎていたのでドリンクメニューしかありませんでしたが、しそジュース(正確にはしそソーダ)はあったのでこれを注文。ジュースができるまで体育館の中をぶらぶらしていたら、すみっこにバングラデシュのリキシャ(人力車の自転車バージョン)がありました。これはおそらく、去年の瀬戸芸のときに高松港近くで展示してあったものと同じだと思うのですが、アジアつながりで福田に持ってこられたみたいです。

リキシャをぼーっと眺めていたら、スタッフのおじさんが「乗れるよ」と声をかけてくれました。
なので次女ちゃんに「乗りたい?」と聞いたら、「乗りたくな~い!!」と断固拒否。その後も乗りたくない乗りたくないとぶつくさ言ってましたが、しばらく眺めているうちに気が変わって、

「乗りたい」

と言い出しました。なのでおじさんにあらためてお願いして、次女ちゃんはリキシャの座席に座らせてもらいました。体育館の中なので、走ることはできませんでしたが、次女ちゃんは満足したみたいです。ここに載せることはできませんが、リキシャに乗った次女ちゃんの横に姉と長女ちゃんが並んで立って、記念写真も撮りました。長女ちゃんは写真を撮るときはいつも、なかなかカメラのほうを向いてくれないので、横を向いてたり下を向いていたりする写真ばかりなのですが、ラッキーなことにこの時は偶然こちらを向いた瞬間に撮ることができ、家族3人の顔がはっきり写った写真が撮れました。もっとも、その写真が撮れるまで長女ちゃんは母親である姉の前までなかなか移動してくれず、私は何度も
「長女ちゃん!長女ちゃん!ママの前に立って!!」
と大声を上げ、ようやく母親の前に立ったと思ったらこちらを向いてくれず、
「長女ちゃん!こっち見て!おばちゃんのほう見て!!」
と、何度も何度も呼びかけなくてはいけませんでした。それもあって、上手く写真が撮れたときは感激もひとしおだったのですが。

でも、最初はリキシャに乗るのを拒否していたのに、すぐ後で気が変わった次女ちゃんを含め、周りにいる人には私たち4人はどんな風に見えたのでしょう。気にしていてはキリがないのはわかっているけど、複雑な気分になります。たまにしか会わない私には、何も言うことはできないのはわかっているのですが…。

リキシャで記念写真を撮った後、屋外のテーブルでお待ちかねのしそソーダを飲みました。しかし長女ちゃんはストローで飲むのが苦手で、いつも飲みながらストローを噛んでつぶしてしまうので、なかなか飲み終えられません。仕方ないので我々の飲み終わったストローも長女ちゃんのコップに突っ込んで、長女ちゃんがストローを噛んで潰したら引っこ抜いて新しいので飲んでもらい、また噛み潰したら引っこ抜いて新しいのを…という方法を取りました。まるで、「七人の侍」のクライマックスの戦いで、三船敏郎が地面に刺した何本もの日本刀を引っこ抜いては使い、折れたらまた引っこ抜いては使いしていたような感じで…ってわかりにくいわ!つか喩えが古すぎるわ!!

しそソーダで休憩した後、福田「家プロジェクト」きょく 陳宣誠+徐佳伶「ブリッジ・ハウス」を見に行きました。台湾のアーティストの作品です。
こちらは写真撮影OKだったので、これから写真をばんばん載せます。上記のリンク先にある画像は、イメージ画像なので実際とはかなり違います。

まずは外観。かつて郵便局だった場所を使っています。



置いてあるのは赤い自転車。配達に使うんでしょうか。使いませんね。イメージですね。青いTシャツを着た人が写ってますが、地元のスタッフの方です。

アジア系外国人の若いお兄さんスタッフにチケットを見せて、玄関で靴を脱いで上がりました。すると



まあ大変。床がありません。向こうの部屋に行くには、橋を渡らなくてはいけません。向こうの部屋には何があるのでしょう。(手紙を書くスペースがあります)

橋の途中で振り返りました。



家という日常的な建物と、その中にある非日常的な橋が同時に存在しているのが面白いです。

橋の下には、福田の石と、石に見立てた発泡スチロールが置いてあります。それらには、いろんな国の言葉で「久しぶり」と書いてあります。





「好久不見」「久しぶり」「Long time no see」…どれも手紙の冒頭に書かれる言葉です。

橋を渡りきったところには、オリジナルの絵はがきと鉛筆がありました。ここで絵はがきを書いて切手代を払えば、福田の消印で届けてくれるんだそうです。それを知って、私も誰かにはがきを送ろうかなと思いましたが、できませんでした。送りたい相手はいても、宛先がわからないし、何を書いたらいいかもわからないし。

姉にすすめられて、次女ちゃんは仕事で小豆島に来れなかったお父さんに絵葉書を送ることにしました。そこからがひと苦労。大阪の自宅の住所も、お父さんの名前も、次女ちゃんは書いたことがありません。ひとつひとつ口頭で説明して、本人に書いてもらいます。途中、義兄の名前の漢字が上手く説明できなかったので、便箋用の紙に書いてみせたりもしました。

次女ちゃんがお父さんに充ててはがきを書いている間、福武ハウスで写真を撮れなかった反動なのか周りに置いてあったものを撮りまくる私。しかし肝心の全体像を引いて撮るのを忘れてました。とほほ。



昔懐かしい公衆電話。電話機の右下にあるイラストがかわいいです。



「小包でーす」「はーい」そんな会話が聞こえてきそうなイラスト。しかしこのシュールな人物は一体…。



郵便ポストの貯金箱(切手代を入れるために置いてあったのを後で知る)と、郵便局のマスコット。台湾では郵便局のイメージカラーは緑なんですね。



戸棚の上に、緑色のバイクのミニチュアがありました。台湾ではこれに乗って郵便配達するのかな。ぶるんぶるん。



これも郵便局のマスコット?瞳の中にハートがあるのがすごい。手に持ってるのはラブレター?もしや自分で書いたの!?
緑色なのに情熱的ですね。というか郵便局員が自筆のラブレターを配達しに来るのって…。

私がばしばし写真を撮ってる間に、次女ちゃんははがきを書き終えました。あとは玄関まで戻って、切手代を払って投函するだけ…だったのですがここで次女ちゃんは
「やっぱりもうちょっと書く~」
と言って奥の机まで戻っていきました。その間、姉と長女ちゃんには先に車まで戻ってもらい、私は玄関で次女ちゃんがはがきを書き終えるのを待ちました。横で見られてると、書きにくいからあっち行ってと言われたのです。

ようやく書き終えた次女ちゃん、はがきを投函して(切手代は私が払っておいた)、車に戻りました。
以上が今年の福田訪問記です。去年の瀬戸芸の時に比べ、今年はただ作品を見るだけでなく乗り物に乗ったり手紙を書いたりして、作品を体験することもできたので、次女ちゃんは満足した様子でした。もしかすると、私たち以外の見学者がいなかったので、リラックスできたからかもしれませんが。


帰りの車の中で、今更ですが気がついたことがありました。ほんとに今更ですが。
オリーブ公園の魔女の宅急便のハーブショップで、次女ちゃんはほうきを持って記念写真を撮ることを頑なに拒否しました。そして、福田ではバングラデシュのリキシャに乗ることを、最初は拒否しました。でも、しばらくするとリキシャに乗る気になりました。もしかするとオリーブ公園でも、もっと時間をかけていればほうきを持ったりまたがったりコスプレしたりして、記念写真を撮ることができたかもしれません。

次女ちゃんは気まぐれなのではなく、「〇〇しない?」と自分がしたことがないことを提案されたときに、それを受け入れるまでに時間がかかっているだけなのでしょう。自分がいままでにしたことがないこと、詳しく知らないことに対して、失敗を恐れるあまり、強い言葉で拒絶してしまう。でも、時間が経つにつれて、それが大して難しくないことだとわかると、ようやく「する」気になる。傍からは単なる気まぐれやわがままに見えるかもしれないけど、彼女の中では筋が通っているのです。

ダウン症の長女ちゃんは、見た目ですぐに障害がある事がわかりますが、広汎性発達障害の次女ちゃんは、外見から障害があることがわかりません。時に攻撃的な言葉で相手の提案をはねつける彼女は、彼女のことをよく知らない周囲から誤解を受けるおそれもあります。ただでさえ、発達障害は誤解を受けやすい障害です。社会的地位の高い人や政治のリーダーの中にも、発達障害の存在を認めず、「単なるあまえ」や「親のしつけがなってないだけ」などと切り捨てる人が多くいます。

そして今回、最後に行ったブリッジ・ハウスのスタッフが外国の人だったことに次女ちゃんは反感を持ったようで、帰ってからもそのことを蒸し返していました。もちろん、日本語でのコミュニケーションも苦手な彼女が、日本語が通じない相手に対して拒否反応を示すのはある程度仕方がないのですが。赤の他人に向かって言ってるのではなく、身内の私たちに言ってるのだから、幾分気を許して甘えているところもあると思いますし。

でも、言葉が通じないから、何を言ってるのかわからないから、なんとなく恐いから、だから自分は外国なんて絶対行かない、外国人とは関わりたくない、と完全にシャットアウトすることを、自分とは違う相手を拒絶することを肯定するのは、社会が次女ちゃんを、ハンディキャップのある人を受け入れないのを肯定するのと同じです。本人はそこまで考えて言ってるわけではなく、ただ自分の今までにいなかった存在(外国の人)をすぐさま受け入れられないだけなのでしょうが…。

ただ、バングラデシュのリキシャのように、少し考える時間があれば、次女ちゃんは未知なるものも受け入れることができます。少し時間があれば。経験を積めば。都市部に住んでいる次女ちゃんたちは、田舎に住む年寄りの私たちと違って、これからいろいろな国の人たちと出会う機会があるでしょう。その時にはなから拒絶して終わるのではなく、少しだけ時間をかけて、コミュニケーションすることができればいいなと願います。そうすれば、今年の福田での「初めて異国の人に会った」体験も、よい思い出に生まれ変わるかもしれません。そうなることを祈っています。

いつか、彼女の視野がもっともっと広がって、もっともっと広い世界に飛び立てますように。いつかきっと。


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