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Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

宮部みゆき「レベル7」再読

2011-08-07 18:39:16 | 読書感想文(国内ミステリー)


この前、「魔術はささやく」を読んだら、宮部みゆきの過去作品を読みたくなったので、
ものすごく久しぶりに「レベル7」を読んでみました。



「レベル7まで行ったら戻れない」
謎の言葉を残して失踪した女子高生。
記憶を失って目覚めた若い男女の腕に記された「Level7」の文字。
少女を探すカウンセラーと、自分たちが何者なのかを調べる2人。
それぞれが謎を追いかけた先には、1年前に起きた凶悪な殺人事件の真相があった―


最後に読んだのがかなーり昔だったので、内容をほっとんど忘れておりました。
「記憶を失った男女」が出てくることはかろうじて覚えていたのですが、行方不明になった女子高生の
ことは頭の中からきれいさっぱり消えていました。うーん。なんでだろう。
私も「レベル7」で記憶を消されていたのかしら?
最近こういうことが多いんですよねぇ。昨日の晩御飯に何食べたかが思い出せないとか。
きっと誰かが私の記憶を消してるんですね。怖いわぁ~、おほほのほ。

それはともかく(キリッ)。

謎の男がデパートの屋上にたたずむプロローグから始まって、「レベル7」によって狂った歯車が
元通りに収まるエピローグまで、ストーリーが綿密かつ完璧に構築されていて、まるで精緻な
からくり時計のような作品でした。プロローグに出てきた女が、まさか物語の主要登場人物の一人だった
なんて、思いつきませんでしたよわたしゃ。それと、失踪した女子高生と記憶を失った若い女性が
同一人物なのかどうかも予測がつきませんでした。ドラマや映画などの映像作品だったら、登場人物の
顔がバーンと出てきちゃうから、すぐバレちゃうんですけど。こういう叙述トリック(?)が
使えるところが、ミステリー小説の醍醐味ですね…って、

お前以前にこの本読んだことあるんだろうが、おい。

いやー、マジで半分くらい読んでも内容が思い出せなくて、「この先どうなるんだろう?」って
ハラハラドキドキしながら読んじゃったんですよね、私。多分、最初にこの本を読んだ頃、宮部みゆきの
他の作品を次から次へと大量に読んだので、いろんな作品をごっちゃにして記憶してたんだと思います。

でも、唯一、はっきり覚えていたことがありました。それは、田中美奈子。

作中で、行方不明になった女の子を探す手掛かりとして「田中美奈子と同じ美容院に通っていた」というのが
出てくるのです。前後の文章から察するに、実在の田中美奈子のことなんでしょうが、なんというかその、
「ああ、この小説が発表された当時は田中美奈子の絶頂期だったのね…」
と、懐かしい気持ちになり、強烈に印象に残ったのだと思います。今だったら誰でしょうねぇ。綾瀬はるかとか?

話がそれたので、軌道修正。

この「レベル7」では、“人間の記憶を消す”という、ちょっと信じがたいような科学的トリックが
物語の重要なカギを握っています。この前読んだ「魔術はささやく」で、“他人を意のままに操る”ことが
できたように。作中では科学的な説明もされていますが、肝心なところはぼかして書いてあったりして、
どうしてもにわかには信じがたい、というかうさんくさい感じがしてしまいます。ドラッグで記憶が飛んで
しまうとかならまだわかるのですが、そんな一時的なものではなく、4日間記憶を失ったままでいなくちゃ
いけないから、そういう設定になってしまったんでしょうね。これがもっとSFチックもしくはオカルティックな
設定(時代とか場所とかが)だったら納得できたんでしょうけど。思い切りコテコテの現代(20年前だけど)が
舞台なので、“記憶を消す”という突飛な行為が特に違和感なく描かれているのにはひっかかりました。

でも、そういった無理矢理感があっても、2つの謎が突き詰めていくうちにやがてある事件へとつながり、
そこから一気に真相が明らかになるまでの展開はスピーディでとても面白く、一気に読んでしまいました。
(すでに一度読んでいるというのに!)
若い男と女は、なぜ記憶を失ったのか。女子高生の残した謎の言葉の意味は。
章が変わるごとに視点が変わり、登場人物の立ち位置も変わる。誰が味方で、誰が敵なのかわからない。
そのめまぐるしさは万華鏡のようで、いつまでも見続けたいほどでした。

小説のメインテーマは凶悪な殺人事件の真相を究明することでしたが、それ以外で少し個人的にひっかかる
エピソードがありました。それは、失踪した女子高生・みさおが中学時代に巻き込まれたある事件の話。
ある男子生徒を巡った三角関係の果てに、クラスメートの女生徒にあてつけのように自殺され、みさおは
他人とコミュニケーションできなくなります。その話を聞いて、カウンセラーの悦子は自殺した少女に憤りを
感じるわけですが、私は悦子に同調できませんでした。悦子は自殺した少女に
「死んだ者には勝てない」
と、勝ち逃げをしたかのように怒ります。私にはそれが理解でません。
死んで勝ち逃げなんて、そんなことあるわけないじゃないですか。確かに、クラスメートの自殺でみさおは
傷ついたけど、みさおを傷つけたのは死んだ女の子ではなく、死の責任をみさおに負わせた周りの人間です。
まだ中学生なのに、失恋で自殺した少女は哀れだし愚かだと思います。でも、「ずるい」とか「卑怯」とまでは
思い至れません。宮部作品はとても面白いけれど、時折こういった独善的な主張が鼻についてしまうのが
玉にキズです。もう少し、主人公側にも人間の影の部分があればいいのにな、と思ったことが何度もあります。
同時に、それもまた、安心して読める理由の一つではあるのですが。

作中に登場する精神科の病院は、実在するある病院がモデルになっていると思います。最初に読んだときは
この病院のことも病院で起きた事件のことも知らなかったので、今回改めて読み返してそのことに気づき、
宮部さんがこの作品を通して表現したかったことの一つを知ることができました。実際の事件の責任者は、
この小説のような厳しい罰を受けたのかどうか、それはわかりませんが。

どの場面に誰が登場してるのかがわからないのがこの作品の面白さなので、映像化することは難しいと
思います。でも、なぜか最近「火車」「魔術はささやく」と宮部作品の映像化が続いてるので、もしかしたら
この「レベル7」もドラマか映画で映像化するかもしれませんね。もしそうなったら、記憶を失った若い男の
役は向井理君がいいなぁ。でもそしたら若い女のほうは「ぎゃぼー!」の人なのかそれともゲゲゲの女房?
謎の男・三枝役は内野さんか上川さんにやってほしいけど、存在感というかうさんくささありすぎで厳しいかな。

ま、どっちにしろこの小説は宮部作品には珍しく“かわいくて利発な少年”が出てこないので、映像化しても
宮部さんはキャストに興味ないかもしれませんけどね…ははっ。



4 コメント

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私も (瀬李南)
2011-08-15 13:07:15
私もレベル7読みました^^
と言っても新しくしたレベル7ですが・・・
内容が少し変わっているようです;;
詳しい内容だったので
すぐ読み終わりました♪
返信する
そんなのが出てるんですね (もちきち)
2011-08-15 17:40:50
>瀬李南さん
こんにちは。コメントありがとうございます。

>新しくしたレベル7
そういうのが出てるんですかー。
内容が少し変わっているとのこと、気になります。
今度書店で見かけたらチェックします!
返信する
初めまして。 (上月香)
2011-09-16 10:39:44
初めまして。
私も「レベル7」好きです。
旧作(?)の方は、かなり昔に、風間トオルさんと浅野ゆう子さんでドラマ化されましたよ。
原作とはほど遠い別のドラマみたいでしたけど^^;
返信する
コメントありがとうございます (もちきち)
2011-09-16 23:42:14
>上月香さん
はじめましてこんばんは~

>旧作(?)の方は、かなり昔に、風間トオルさんと浅野ゆう子さんでドラマ化されましたよ。
えぇぇ~!?
なんだかとってもバブルのかほりがするキャストですね!
時代を感じます。

>原作とはほど遠い別のドラマみたいでしたけど^^;
う~ん、やはりそうなっちゃうか…
「模倣犯」なんて最後とんでもないことになっちゃうし。
NHKでやってた時代物は割と違和感なかったんですけどね。
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