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ミーターの大冒険 第九部 エピローグ 第12話 ダリバウ(Daribow )

2023-02-06 04:55:58 | エピローグ
194第12話ダリバウ(Daribow )
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ
第12話 

ダリバウ(Daribow )


あらすじ

 ファウンデーション暦491年(西暦25058年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号は太陽系の第4惑星の火星でついに、待望のダニール・オリヴォーに面会できた。

 それからダニールの月面基地から地球の放射能除去溶液と装置の準備を調(ととの)えて地球に降下して行った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウは、不死の従僕ダニール・オリヴォーに助けられて、主人アルカディアの志しをいまや成就させようとしていた。

 彼らの地上での行動はミーターは別として、2時間と制限されていた。

 そのイルミナのリードによって北上したアース・オービターは、無事にニフのフニ山頂上に着いた。

 放射能除去に必要なポニェッツ仕様のラヴェンダーエキスとオーストラリア産のデオライトの混入液を水蒸気発生装置でフニ山頂から昇化させ、地球上の各地山頂から同様に実施させていった。

 案の定、双子座流星群は降ってきた。この年は例年とは違い、幸運にも何ヵ月も継続した。

 流星群は成層圏に拡散している特殊水蒸気の雲に注ぎ、水蒸気を雨化させ、地上に雨を降らせ始めた。

 ミーターは、北アメリカ大陸の頂き、南アメリカの頂きを踏破し、残りのアフリカ大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸をも踏破していった。

 その間にイルミナは、アルファのモノリーさんのお土産である粉末の分析が完了していた。

 その粉末の正体は、ナノサイズに加工した地球上のほぼ全種類の植物の種だった。雨が降れば、地球の緑化が再生する。

 ミーターがその特殊蒸気発生機の最終段階で、かつてオーストラリア大陸と呼ばれていた地域のタウンゼント山頂で早朝シルクベットから起き上がった時だった。しっかりとして威厳のある響きが頭上からあった。

 ダニールはミーターに、2つの任務を依頼した。

 地球の古代の伝説「ノアの方舟」にあるような大量な雨が1ヶ月以上も地表に降り注いだ。

 その結果、大気中の放射能濃度は、驚くほど減少していった。

 1番目のダニールからの任務依頼を終了後、約束していたミーターはニフの中央東に位置する海岸から切り立った小高い山頂に夜明け前に到着した。

 そこにダニールとペイリー・リャン(当時19歳)が待ち受けていた、3人は、海中から浮かび上がる緑色の光を目撃する。

 それからほどなく、東の水平線上に陽が昇って来た。

 ダニールは、ミーターに「カビレ」の本当の意味を解き明かす。そして地球放射能除去の段階の終了を宣言する。

 ダニールはミーターに養女ペイリー・リャンをミーターにファー・スター2世号の新メンバーに加えてもらうよう頼む。

 彼らは、アルカディアの残りの悲願に向かってファー・スター2世号に改めて乗り込む。

 ミーターは、自分の胸ポケットの秘密を隠しながらも、ペイリーのイヤリングに注意がいく。

 ペイリー・リャンはまた彼女の名前の由縁も解き明かす。

 そこから、イルミナの歴史消滅以前の情報量が異常に増えはじめ、またたくまに全銀河の図書館にそのデータを拡散させていった。

 イルミナの歴史消滅からの復興という大事業の伸展の裏で、彼女のホントの正体を遠回しに吐露する。

 ミーターは、それに知ってか知らずにイルミナに向かって、「アルカディアの魂君」と呼んだ。

 新たな旅がはじまろうとしていた。
 このとき旅には小さな夢も、第一歩からはじまって、次の一歩を踏み出すのも「真摯さ」が大事であろう。
 しかし、それは素晴らしい旅となることには違いないが、その旅には終わりがあろうともなかろうともそれを一歩一歩味わうことに意味がある。
 彼らの帰途、ガール・ドーニックの故郷惑星、シンナックスに立ち寄り、3人(?)は、長旅のバカンスを取ることにした。

 そして、彼らの帰途、ターミナスに悪い予感を抱いた3人は、もうひとつの惑星に下船した。

 ファウンデーション暦493年、ミーター、イルミナ(?)、ペイリーはターミナスに着いた。ジスカルド・ハニスとは地球への音信以来連絡が途絶え、ターミナス全土を探したが、見つけられなかった。

 アルカディア農園は無事だった。ハニスとコンパーが上手に政府の力から手練手管で守っていたからである。

 代理人としてジム・ヘンダーという50代の男が農園を維持していた。

 ミーターは、ジムの履歴正体をつまびらかにする。

 後日、二人はターミナスのアルカディア記念博物館に隣接しているサルヴァー・ハーディン博物館にムン・リー・コンパーを変装して訪ねた。ヘルダーを通して申し合わせしていたからである。


194

コンパー 無事でなにより!ミーター君、君は全銀河の誉れだ!君の8年間に亘る数々の武勇伝は大まかにハニスさんから聞いている。
 ご苦労様です。
 
 そちらが地球の衛星から来られたペイリー・リャンさんですね? ようこそターミナスへ。宜しくお願いします。私が、ムン・リ・コンパーです。

 第2ファウンデーションを代表して第1発言者からの伝言をあなた方に伝える。

「今回のあなた様のご活躍によってセルダン・プランが本来の大筋に戻れました。篤く御礼いたす。そしてこの銀河の歴史消滅結束点以前の全歴史が復活し始めました。このことはそのままドーニック・プランの完成への緖に就くことを意味します。今後は、どうにかして第1ファウンデーションが我らを敵視から連合への転換によって全銀河の福祉と豊かさを造り出して行きたいものです。それともう一つのグループともに。」

 あなたたちの活躍については詳しくはヘンダーから聞いてます。
 あらためてご三人に感謝いたします。もっともイルミナちゃんはここにはいませんけどね。

ミーター 畏れ多いことです。こちらこそ、過分なご謝意、ありがたいことです。

 ところで、ハニスさんのことが心配です。
 ハニスさんの行方についての新しい情報はありませんか?

コンパー 僕は一ヶ月前にダリバウにいたハニスさんから伝言をもらって以来、連絡は途絶えています。

ペイリー ダリバウ?

ミーター ターミナスからほぼ50パーセクの離れているスミルノに近い惑星です。

 そこでハニスさんは地下政治活動をしていたんですね?

コンパー そうなんだ。僕はブラノとコデルらの取り締まりが以前より一層厳しくなるから、一旦中止した方がいいと言ったりもしたんだが、ハニスさんの信念を変えられなかったんだよ。
 すまん、ハニスさんを守れなくて。

    ・・・・・・・・・・・

ミーター ペイリーさん。ここは2つの行動を同時に進めなくてはならなくなったみたいだね。

ペイリー わかりました。そういうことですね。
 それにしても、何ですか、あのムン・リーとかいう人のスタイルは?
 ほかのターミナスの人たちとは全然違うんですね!
 いけすかないわね。「イルミナちゃん」とか言っちゃって!
 男のくせして女のような風体、ブロンドの髪を長めにウエーブして、瞳は青く、それに眉の下にも青のアイシャドーなんか塗って!

ミーター そう言わないで、ペイリーさん。ハニスさんからの報告では、わざと目立つようにしているみたいですよ。政治家を目指しているらしいからね。それに彼はシリウス星系のコンポレロンの出身だからね。ここ保守的なターミナスでは、そういう自意識が必要なんだ。

ペイリー そうかしら?でもイルミナさんに「ちゃん」はないですよね。

ミーター イルミナの完成にはコンパーさんの尽力なしでは不可能だったんだ。
 ペイリーさん、そう言わないで、もう少し彼を理解してくださいよ。

Photo 発展しつつあるターミナスの首都モーヴ(Mauve)


ミーターの大冒険 第九部 エピローグ 第11話 帰還

2023-02-05 19:48:33 | エピローグ
193第11話帰還
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ

第11話 

帰還

あらすじ

 ファウンデーション暦491年(西暦25058年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号は太陽系の第4惑星の火星でついに、待望のダニール・オリヴォーに面会できた。

 それからダニールの月面基地から地球の放射能除去溶液と装置の準備を調(ととの)えて地球に降下して行った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウは、不死の従僕ダニール・オリヴォーに助けられて、主人アルカディアの志しをいまや成就させようとしていた。

 彼らの地上での行動はミーターは別として、2時間と制限されていた。

 そのイルミナのリードによって北上したアース・オービターは、無事にニフのフニ山頂上に着いた。

 放射能除去に必要なポニェッツ仕様のラヴェンダーエキスとオーストラリア産のデオライトの混入液を水蒸気発生装置でフニ山頂から昇化させ、地球上の各地山頂から同様に実施させていった。

 案の定、双子座流星群は降ってきた。この年は例年とは違い、幸運にも何ヵ月も継続した。

 流星群は成層圏に拡散している特殊水蒸気の雲に注ぎ、水蒸気を雨化させ、地上に雨を降らせ始めた。

 ミーターは、北アメリカ大陸の頂き、南アメリカの頂きを踏破し、残りのアフリカ大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸をも踏破していった。

 その間にイルミナは、アルファのモノリーさんのお土産である粉末の分析が完了していた。

 その粉末の正体は、ナノサイズに加工した地球上のほぼ全種類の植物の種だった。雨が降れば、地球の緑化が再生する。

 ミーターがその特殊蒸気発生機の最終段階で、かつてオーストラリア大陸と呼ばれていた地域のタウンゼント山頂で早朝シルクベットから起き上がった時だった。しっかりとして威厳のある響きが頭上からあった。

 ダニールはミーターに、2つの任務を依頼した。

 地球の古代の伝説「ノアの方舟」にあるような大量な雨が1ヶ月以上も地表に降り注いだ。

 その結果、大気中の放射能濃度は、驚くほど減少していった。

 1番目のダニールからの任務依頼を終了後、約束していたミーターはニフの中央東に位置する海岸から切り立った小高い山頂に夜明け前に到着した。

 そこにダニールとペイリー・リャン(当時19歳)が待ち受けていた、3人は、海中から浮かび上がる緑色の光を目撃する。

 それからほどなく、東の水平線上に陽が昇って来た。

 ダニールは、ミーターに「カビレ」の本当の意味を解き明かす。そして地球放射能除去の段階の終了を宣言する。

 ダニールはミーターに幼女ペイリー・リャンをミーターにファー・スター2世号の新メンバーに加えてもらうよう頼む。

 彼らは、アルカディアの残りの悲願に向かってファー・スター2世号に改めて乗り込む。

 ミーターは、自分の胸ポケットの秘密を隠しながらも、ペイリーのイヤリングに注意がいく。

 ペイリー・リャンはまた彼女の名前の由縁も解き明かす。

 そこから、イルミナの歴史消滅以前の情報量が異常に増えはじめ、またたくまに全銀河の図書館にそのデータを拡散させていった。

 イルミナの歴史消滅からの復興という大事業の伸展の裏で、彼女のホントの正体を遠回しに吐露する。

 ミーターは、それに知ってか知らずにイルミナに向かって、「アルカディアの魂君」と呼んだ。

 新たな旅がはじまろうとしていた。
 このとき旅には小さな夢も、第一歩からはじまって、次の一歩を踏み出すのも「真摯さ」が大事であろう。
 しかし、それは素晴らしい旅となることには違いないが、その旅には終わりがあろうともなかろうともそれを一歩一歩味わうことに意味がある。
 彼らの帰途、ガール・ドーニックの故郷惑星、シンナックスに立ち寄り、3人(?)は、長旅のバカンスを取ることにした。

 そして、彼らの帰途、ターミナスに悪い予感を抱いた3人は、もうひとつの惑星に下船した。

 ファウンデーション暦493年、ミーター、イルミナ(?)、ペイリーはターミナスに着いた。ジスカルド・ハニスとは地球への音信以来連絡が途絶え、ターミナス全土を探したが、見つけられなかった。

 アルカディア農園は無事だった。ハニスとコンパーが上手に政府の力から手練手管で守っていたからである。

 代理人としてジム・ヘンダーという50代の男が農園を維持していた。

 ミーターは、ジムの履歴正体をつまびらかにする。

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ジム・ヘンダー ご帰還おめでとうございます。お帰りをお待ちしておりました。私はここアルカディア農園の留守番役のジム・ヘンダーです。
 ここの農園は、今では、議会の決議で政府の特別保護地区になってしまいました。
 あなた様にご連絡しなくて大変申し訳ありません。
 こうするしかなかったのです。
 要するに、ハニスさんの強いご依頼で、コンパーさんのお知恵で第三者の私が、コンパーさんの代理人としてここを管理させて頂いております。
 ミーターさんにはよくご理解されて、この事情をご了解して頂きたいと、主人コンパーさんが申しておりました。
 
ミーター いいや、お礼を言うのはこちらの方です、ヘンダーさん。有り難くご配慮に従います。何しろ、8年間も留守していたんですから。
 
ヘンダー ミーターさん、ご理解くださって、肩の荷がおりました。

ミーター ところで、申し訳ないが、一通り、あなたに質問させてもらいます。

 あなたとコンパーさんとの関係は?たんに、金銭的契約関係ですか?

ヘンダー 表だっては、そういうことになっています。
 ご存じのように、コンパーさんは第2ファウンデーションのエージェントです。政府には完全に秘密にしておかなければなりません。
 私はコンポレロンの出身ではありませんが、祖父がコンポレロン出身で父は惑星コノム(Konom)出身です。
 代々、第二ファウンデーションのシンパサイザーをやってきています。
 ご安心ください。

ミーター それでは、この大農園の地下が、政府の探知機にキャッチされないで、この格納庫にファー・スター2世号が収まるのもご存知なのですね。

ヘンダー はい、存じておりますが、ちょっとだけ厄介なことが起こりそうなのです。

ミーター 厄介なこと?

ヘンダー 例の政府の公安局長のリオノ・コデル(Director of Security Liono・Kodell)が帝国辞書編纂図書館のからくりに気づきそうなのです。

イルミナ (人間の聴覚では把握されない精神感応波で)まあ、そうだったのですね。
 ヘリコンの時、感じてた胸さわぎと言うのがそれだったんだわ!

ヘンダー そうです。亡きアルカディアさんの最大の遺産の秘密が暴かされそうなのです。時間の問題なのです。

イルミナ ヘンダーさん、あなたも感応力波をお使いになるのですね?

ヘンダー 完璧とは言えませんが、多少ながら。

イルミナ そうなると、一大事ですよ。オリンサスさんのご苦労が無駄になるばかりでなく、「わたし」も存在しなくなってしまいます。
 それに、歴史消滅以前の膨大な情報・データも消滅してしまうわ。全銀河の図書館との連関も途絶えてしまうわ。
 せっかく地球まで出向いた成果がプッツリと途切れてしまうわ。どうしましょう!

ミーター ヘリコンからの帰り道で立てた戦略を一旦中止するほかないらしいな。
 銀河再生の心臓であるアルカディア記念図書館(帝国辞書編纂図書館)を守ることが先決だ。どうにかしてコデルらの陰謀を阻止しなくてはならない。

ペイリー そうだわね、イルミナさんを失うのは、断然許されないですよ。

ヘンダー そちらのお美しい方は?

ミーター 言い遅れました、こちらは地球の衛星から同行して来ました。我らの新メンバーの月女ペイリー・リャンさんです。

ヘンダー ああ、コンパーさんが言っておられた美貌の不死の従僕様の養女の。

ペイリー よろしくお願いいたします、ヘンダーさん。でも私はれっきとした人間です。決して不死ではありませんから。

ヘンダー わかりました。
 わたしをジムと読んでください。

 当分は皆様、ここの地下格納庫のまたその下のお部屋でお過ごし頂きます。

 そうと決まれば、明日からでも、ジスカルド・ハニスさんを探し出しましょう。

ミーター 宜しく頼みます、ジム。

https://youtu.be/0qhKeT3GM7U


ミーターの大冒険 第九部 エピローグ 第10話 全体主義からの克服

2023-02-04 06:49:03 | エピローグ
192第10話全体主義からの克服
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ

第10話 

全体主義からの克服


あらすじ

 ファウンデーション暦491年(西暦25058年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号は太陽系の第4惑星の火星でついに、待望のダニール・オリヴォーに面会できた。

 それからダニールの月面基地から地球の放射能除去溶液と装置の準備を調(ととの)えて地球に降下して行った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウは、不死の従僕ダニール・オリヴォーに助けられて、主人アルカディアの志しをいまや成就させようとしていた。

 彼らの地上での行動はミーターは別として、2時間と制限されていた。

 そのイルミナのリードによって北上したアース・オービターは、無事にニフのフニ山頂上に着いた。

 放射能除去に必要なポニェッツ仕様のラヴェンダーエキスとオーストラリア産のデオライトの混入液を水蒸気発生装置でフニ山頂から昇化させ、地球上の各地山頂から同様に実施させていった。

 案の定、双子座流星群は降ってきた。この年は例年とは違い、幸運にも何ヵ月も継続した。

 流星群は成層圏に拡散している特殊水蒸気の雲に注ぎ、水蒸気を雨化させ、地上に雨を降らせ始めた。

 ミーターは、北アメリカ大陸の頂き、南アメリカの頂きを踏破し、残るはアフリカ大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸をも踏破していった。

 その間にイルミナは、アルファのモノリーさんのお土産である粉末の分析が完了していた。

 その粉末の正体は、ナノサイズに加工した地球上のほぼ全種類の植物の種だった。雨が降れば、地球の緑化が再生する。

 ミーターがその特殊蒸気発生機の最終段階で、かつてオーストラリア大陸と呼ばれていた地域のタウンゼント山頂で早朝シルクベットから起き上がった時だった。しっかりとして威厳のある響きが頭上からあった。

 ダニールはミーターに、2つの任務を依頼した。

 地球の古代の伝説「ノアの方舟」にあるような大量な雨が1ヶ月以上も地表に降り注いだ。

 その結果、大気中の放射能濃度は、驚くほど減少していった。

 1番目のダニールからの任務依頼を終了後、ミーターは、約束していたミーターはニフの中央東に位置する海岸から切り立った小高い山頂に夜明け前に到着した。

 そこにダニールとペイリー・リャン(当時19歳)が待ち受けていた、3人は、海中から浮かび上がる緑色の光を目撃する。

 それからほどなく、東の水平線上に陽が昇って来た。

 ダニールは、ミーターに「カビレ」の本当の意味を解き明かす。そして地球放射能除去の段階の終了を宣言する。

 ダニールはミーターに幼女ペイリー・リャンをミーターにファー・スター2世号の新メンバーに加えてもらうよう頼む。

 彼らは、アルカディアの残りの悲願に向かってファー・スター2世号に改めて乗り込む。

 ミーターは、自分の胸ポケットの秘密を隠しながらも、ペイリーのイヤリングに注意がいく。

 ペイリー・リャンはまた彼女の名前の由縁も解き明かす。

 そこから、イルミナの歴史消滅以前の情報量が異常に増えはじめ、またたくまに全銀河の図書館にそのデータを拡散させていった。

 イルミナの歴史消滅からの復興という大事業の伸展の裏で、彼女のホントの正体を遠回しに吐露する。

 ミーターは、それに知ってか知らずにイルミナに向かって、「アルカディアの魂君」と呼んだ。

 新たな旅がはじまろうとしていた。
 このとき旅には小さな夢も、第一歩からはじまって、次の一歩を踏み出すのも「真摯さ」が大事であろう。
 しかし、それは素晴らしい旅となることには違いないが、その旅には終わりがあろうともなかろうともそれを一歩一歩味わうことに意味がある。
 彼らの帰途、ガール・ドーニックの故郷惑星、シンナックスに立ち寄り、3人(?)は、長旅のバカンスを取ることにした。

 そして、彼らの帰途、ターミナスに悪い予感を抱いた3人は、もうひとつの惑星に下船した。

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ミーター イルミナ、どんな国も政府も最初は高邁な理想を啓蒙して国民の幸福に寄与するけど、それが時とともに国や政府の横暴が目立ってくる。国全体の保全を重視して、個人の自活を保障するように見せかけて、個人の権利を剥奪してくる。
 他方、国民一人一人は、全体の保全にかこつけられて、一個の歯車のひとつとしてみなされ、使い捨ての部品のように磨り潰されて、消耗品化されてしまう。

イルミナ 仰る通りですね。ハッキリ言って、今のファウンデーションは、往時のインドバー政権より悪質だわ。まるでおとぎ話に出てきた世界でしたわ。
 科学力と軍事力によって、他の星々に圧力をかけ、おおっぴらに星々の人々から生産利益を収奪するようになってきてます。
 恥知らずで嘆かわしいことだわ。
 こんな状態で、銀河の復興、混沌からの回帰などできやしないわね。まるで真逆な圧政です。

ペイリー ファウンデーションのトランターってもっと人々が幸せに過ごしてる世界だと思っていましたが、実際はそうでもないのですね。
 ミーターさん、どうされますか?
 わたしたちができることなにかありますか。

ミーター ペイリーさん、そんなに焦っても。
 俺らがここヘリコンに来たのは、まず、その権力志向の実体を根本から凝視して、それからしかるべき戦略をたてることからはじめなくてはならないんだ。
 あのハリスさんも何度も失敗したからな。
 慎重に進めなくてはならないんだ。

イルミナ そうですよね。武力による解決では、かえって状況は悪化して、もともこうもなくなりますからね。
 それで、ミーターさん、ここで、この乾燥した惑星に降りて、何か気がついたことがおありですか?

ミーター うん、この乾燥しきった環境からハリ・セルダンは、なにを考えていたのであろうか。水資源の豊富さと、緑の大地、密林のような生物多様な世界を夢想していたに違いない。
 極度に少ない生産手段から、知恵のかけらを拾い集めて、広大な発展の構想を練る。

 イルミナ、ハリの心理歴史学の根底を支える発想について、それはどうだったか、参考になる理論や逸話かなんか知らないか?

イルミナ そうだわね、確か、ハリ・セルダンは長い心理歴史学の構築のあと銀河復興の戦略的段階のはじまりとして、当時発見されたばかりの銀河辺境の端のまた端に心理歴史学の本拠地を設立することを思いつきました。
 それは、当時の圧政者であったリンジ・チェンの思惑を逆手にとった兵法を使ったと記録されてます。

ミーター その兵法とやらのからくりの中身は?

イルミナ 相手の「虚」を衝くという行動よ。
 正確には「虚を敢えてつくりだす」っていう手ですね。

ミーター 具体的には、どうやって?

イルミナ チェン家は代々、銀河帝国以前から宰相を出す家系だったそうよ。
 そしてその初代先祖のリンタイ・チェンが、かなり凄いやり手だったとの言い伝えがありますよ。
 ガールの記録にも、「かれのとった策略があまりにも奇抜過ぎた」と残ってるわ。

ミーター だから、どんな手を使ったんだ?

ペイリー ミーターさんたら、ご自分を棚に上げてますよ。もっと冷静に、冷静に。

ミーター すまん、そうでした。

イルミナ リンタイ・チェンは当時の専制全体主義のある大国に対して憎しみを抱いて相当苦々しく思っていました。
 彼はひとつの戦略を立てて、ひとつずつその計画を進めて行きました。
 まず、二つの行動を同時に行って、ひとつはその国のトップに近い地位まで進みます。もうひとつはその国に隣接する島に密かに潜りこんで、その島の島民を誇りのある自由で民主制のゆき届いた豊かな理想的状態にもっていったのです。

 そしてその大国に、隣の島を占領する絶好の機会だと思わしめて、侵攻させたのです。
 その時の世界の国々は、その大国に反旗を上げてその国との貿易を中止したのです。
 その大国は突然、経済的にも行き詰まってしまいます。
 そして占領された島へ、流入した大国の人たちは、今までの生活がどれだけ惨めで、国から圧政を受けてきたかをかえって知るようになったのです。
 また島の住民は大国に入って、彼らの自由でおおらかな暮らしぶりを大いに宣伝して回ったものですから、その後、しばらくしてその国に民主化の革命が起きて、あっという間にその全体主義の専制国家は滅んだ、というのです。
 
 その方式を、ファウンデーション=ターミナスは同じく進めた、という具合だったのです。

ミーター なるほど、そうだったのか?
 じゃあ、基本的には今回もこの手を使えばいいんだな。

イルミナ ええ、原理的には、そうですね。

ミーター 少し長い期間が必要だなぁ!

イルミナ そうですね。でも工夫次第で期間を短くできるかもしれませんね。

ペイリー 面白がってはいけないことはわかってますが、実際、面白いわね!
 そうとわかれば、今度こそターミナスに直行ですよね。もうここの埃まみれの気候はまっぴらごめんですから。


ミーターの大冒険 第九部 エピローグ 第9話 ハリの故郷惑星ヘリコン

2023-02-03 00:26:57 | エピローグ
191第9話ハリの故郷惑星ヘリコン
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ

第9話 

ハリの故郷惑星ヘリコン


あらすじ

 ファウンデーション暦491年(西暦25058年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号は太陽系の第4惑星の火星でついに、待望のダニール・オリヴォーに面会できた。

 それからダニールの月面基地から地球の放射能除去溶液と装置の準備を調(ととの)えて地球に降下して行った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウは、不死の従僕ダニール・オリヴォーに助けられて、主人アルカディアの志しをいまや成就させようとしていた。

 彼らの地上での行動はミーターは別として、2時間と制限されていた。

 そのイルミナのリードによって北上したアース・オービターは、無事にニフのフニ山頂上に着いた。

 放射能除去に必要なポニェッツ仕様のラヴェンダーエキスとオーストラリア産のデオライトの混入液を水蒸気発生装置でフニ山頂から昇化させ、地球上の各地山頂から同様に実施させていった。

 案の定、双子座流星群は降ってきた。この年は例年とは違い、幸運にも何ヵ月も継続した。

 流星群は成層圏に拡散している特殊水蒸気の雲に注ぎ、水蒸気を雨化させ、地上に雨を降らせ始めた。

 ミーターは、北アメリカ大陸の頂き、南アメリカの頂きを踏破し、残るはアフリカ大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸をも踏破していった。

 その間にイルミナは、アルファのモノリーさんのお土産である粉末の分析が完了していた。

 その粉末の正体は、ナノサイズに加工した地球上のほぼ全種類の植物の種だった。雨が降れば、地球の緑化が再生する。

 ミーターがその特殊蒸気発生機の最終段階で、かつてオーストラリア大陸と呼ばれていた地域のタウンゼント山頂で早朝シルクベットから起き上がった時だった。しっかりとして威厳のある響きが頭上からあった。

 ダニールはミーターに、2つの任務を依頼した。

 地球の古代の伝説「ノアの方舟」にあるような大量な雨が1ヶ月以上も地表に降り注いだ。

 その結果、大気中の放射能濃度は、驚くほど減少していった。

 1番目のダニールからの任務依頼を終了後、ミーターは、約束していたミーターはニフの中央東に位置する海岸から切り立った小高い山頂に夜明け前に到着した。

 そこにダニールとペイリー・リャン(当時19歳)が待ち受けていた、3人は、海中から浮かび上がる緑色の光を目撃する。

 それからほどなく、東の水平線上に陽が昇って来た。

 ダニールは、ミーターに「カビレ」の本当の意味を解き明かす。そして地球放射能除去の段階の終了を宣言する。

 ダニールはミーターに幼女ペイリー・リャンをミーターにファー・スター2世号の新メンバーに加えてもらうよう頼む。

 彼らは、アルカディアの残りの悲願に向かってファー・スター2世号に改めて乗り込む。

 ミーターは、自分の胸ポケットの秘密を隠しながらも、ペイリーのイヤリングに注意がいく。

 ペイリー・リャンはまた彼女の名前の由縁も解き明かす。

 そこから、イルミナの歴史消滅以前の情報量が異常に増えはじめ、またたくまに全銀河の図書館にそのデータを拡散させていった。

 イルミナの歴史消滅からの復興という大事業の伸展の裏で、彼女のホントの正体を遠回しに吐露する。

 ミーターは、それに知ってか知らずにイルミナに向かって、「アルカディアの魂君」と呼んだ。

 新たな旅がはじまろうとしていた。
 このとき旅には小さな夢も、第一歩からはじまって、次の一歩を踏み出すのも「真摯さ」が大事であろう。
 しかし、それは素晴らしい旅となることには違いないが、その旅には終わりがあろうともなかろうともそれを一歩一歩味わうことに意味がある。
 彼らの帰途、ガール・ドーニックの故郷惑星、シンナックスに立ち寄り、3人(?)は、長旅のバカンスを取ることにした。

 そして、彼らの帰途、ターミナスに悪い予感を抱いた3人は、もうひとつの惑星に下船した。

191

ミーター ペイリーさん、ブルー・ラグーンはどうでしたか、月とは、全然違ったでしょう?

ペイリー まるでおとぎ話に出てきた世界でしたわ。海っていうのね。波や空気はとっても気持ちよかったですよ。ありがとう、お二人さん。

イルミナ また来ましょうね、ペイリーさん。それに、お月様に帰還したら、もう地球にもきっとおんなじ世界がありますよ。

ミーター ところで、ペイリーさんに訊きたいことがある。

 あなたのパパはトランターで皇帝に次ぐ位にいたのですね。

ペイリー そうです。そしてこの銀河全体のコントロールをパパは一手に引き受けていたんです。パパは全エネルギーが尽きるまで働いたそうよ。でも、パパでさえも、力が及ばない事件でその地位から退かなければならなかったと言ってました。人間社会は複雑怪奇で無秩序が実体だとも。
 それで、パパが何回も絶望した時、宇宙の大霊に「祈った」と言ってました。
 そして、後任にハリ・セルダンを指名したとか。

ミーター そうだったんですね!あなたのパパは、いうならば全銀河の苦悩を一身に背負っておられたんですね。そんなことが一ロボットの身で可能であろうか?
 ダニール・オリヴォーというお方はなんという崇高な存在なんであろうか。
 その有り様が、「真摯さ」というものであろうね!
 感服するほかない。

ペイリー パパは、わたしに、「わたしの経験してきた2万年というものは、ずっと宇宙潮流に導かれれ、ロボット第零の法則を遵奉してきたに過ぎない」と言ってました。

ミーター イルミナ、その「ロボット第零の法則」の宇宙像がハリ・セルダンの「心理歴史学」という形で投影しているんだな。

イルミナ そうですね。ハリ・セルダンがトランターに来た当初、ある逃避行の最終場面のワイ市の反乱の際にハリがトランターに導かれた理由をそれとなくペイリーさんのパパはハリに悟らせた、ということなんじゃないんですか。
 ハリがトランターに導かれた理由。
 それが、「心理歴史学」を完成させることだったんです。
 そうですよね、ペイリーさん。

ペイリー はい、そう聞いています。

ミーター イルミナ、古代の地球に、「故郷喪失」と言った哲学者がいたよな?

イルミナ はい、まさに、人類は、地球という故郷を記録もろとも消されて今日の銀河に散らばって行きました。

 そして、古代の地球に、やはり人類は「鉄の檻」に入れられてる、と言った社会哲学者もいましたね。マクシマムとかいう学者でした。

ミーター 実際、ベイリーさんたちスペーサーが地球から宇宙に脱出して行った当時には人類は硬いコウラに囲まれた鋼鉄都市に住んでいた。
 それが、人類の習性でコンポレロンでも、ずっと後のトランターでも硬い殻の中で安住していたんだからな。

ペイリー その殻を破って、出ていくことが大事になるっていうんですね。

ミーター そうなんですよ。それでパパは何回も何十回も、人類が繰り返して来た「脱皮」を指導し、誘導してきたということですね。積み木倒しのようにね。果てしのない努力の連続ですね!

イルミナ 涙ぐましい苦労ですね。

 ミーターさん、わかりました。
 あなたは、もしかして、ハリ・セルダンの故郷惑星、ヘリコンに行って人類の恐怖の全体主義からの克服できる世界を覗こうとされるんですね。

ミーター ああ、イルミナ、なんで、そこまでお見通しなんだ!

 そうだ、心理歴史学をその誕生地から再考できないかどうか探ってみたくなったんだよ。

ペイリー また寄り道ですね。ターミナスには直行しないんですね。

イルミナ お嫌なんですね?

ペイリー いいえ、その逆ですよ。ヘリコンってタバコの産地ですよね。タバコってどういうものか、みたいと思ったもので。

ミーター そういう狙いで、ですか?

ペイリー ダメですか?

ミーター いいや。