太田浩司さんは「淡海歴史文化研究所」設立に伴い、湖北地域の歴史に関する書籍2冊を発表した。
論文集「石田三成 関ケ原西軍人脈が形成した政治構造」は、長浜市出身の戦国武将で1600年の関ケ原合戦で西軍を率いた石田三成を取り巻く人間関係を探った。太田さんら研究者の論文15本を収め、太田さんが編集した。
西軍の武将たちは同合戦を領国運営の主導権奪取や一族内の政敵の弱体化に利用する目的があったと主張。全国統治の覇権を巡る東軍との対決という単純な構図にとどまらない重層的な権力闘争を描き出した。
出版の背景には、三成を主人公にしたNHK大河ドラマ制作への期待がある。太田さんは「虚構をいかに正確に描くかで質が決まる。設定などの迫真性を高め、物語に厚みを持たせるのに役立てば」と話す。
「北近江地名考 土地に息づく歴史」は湖北地域を中心に地名に秘められた歴史を扱った著書。「地名の来歴から人間の歴史も見えてくる」と論じる。
現在の地名にも多く残る中世の荘園の名称を巡り、領主がつけた名称から地元中心地の呼称を冠した名称に変化したと解説。自治の発達が影響したとして、「住民が慣れ親しんだ地名こそ定着する」とする。
合併協議会で決まった「西近江市」から住民運動で古来の旧郡名に変わった高島市の事例を高く評価し、「地名の持つ個性は地方再生の端緒になる」と述べた。
<中日新聞より>