
春の訪れ
私の名前は「哲学の木」。ポプラの木なんだ。
みんなが生まれる前から、この畑の営みをずっと見つめてきた。
なぜ、そんな名前なのかと言えば、
私が少し斜めに立っている姿が、考えごとをしているように見えるからだ。
雪が溶けて、畑全体に赤い土が見えるようになり、遅い北国の春が来た。
農家である私のご主人さまは、今年はこの畑で何を作るのかな。
まずは、畑を耕し種を蒔くことから始まるよ。

盛夏
美瑛の丘が一番賑やかになる季節がやってきた。
この畑も、一面がトウモロコシたちでいっぱい。
私も、枝に多くの葉をつけて、元気いっぱい。
おひさまからの光と雨水と土の栄養で、すくすくと育つことができる。
植物である私たちは、この恵みがなければ生きられないんだ
でもね、立派に育つには農家さんの努力があってこそなんだ。
麦
テンサイ(砂糖の原料)
農家さんの努力
美瑛の畑では、毎年違う作物を育てる。
なぜなら、この場所は十勝岳の火山灰で覆われていた。
そんな土を、農家さんが畑に栄養を与える工夫を何世代も受け継いできた。
その一つが、連作しない(同じものを翌年は作らない)ことだ。
同じものを続けて作ると、土の栄養分の一部が偏って作物に吸収されてしまうからだ。
そして、収穫をしてのこった幹などは、土に抄き込んで還すようにしている。
実を収穫することのためでなく、土に抄き込むための植物を育てることもある。



ヒマワリを土に抄き込む

晩秋
畑で取れた野菜たちは、美味しい笑顔を見たくてみんなのところへ旅立つんだ
そして、残った幹などは、トラクターで抄き込まれて、土に還る。
こうして、来年の作物のための土に含まれる栄養分になるんだよ。
私も、光と水と土の恵みでできたエネルギーをからだいっぱいに蓄えて春を待つんだよ。
初雪も近い。春になるまで、静かな季節がやってくる。

冬
この丘にも静かな季節がやってきた。
でも、時には吹雪で前が見えなような日もあるんだよ。
その風雪に耐えて、ここにずっと立ってきた。
一面の白い世界が広がる。
ひとつ、良い話を聞かせよう。
麦は種を秋蒔きと春蒔きのものがある。
秋蒔きの麦はこの雪の下で、小さな葉をつけたまま冬を越すんだ。
そして、春になると、雪解けのすきまから顔だし、緑のじゅうたんを広げていくんだよ。

伝えたいこと
こうして、この畑の営みをずっと見てきたんだ。
そこで、みんなにお願いです。
この町のきれいな景色をほめてくれるのはとても嬉しいです。
でも、農家さんの営みがあってこそ、美しい景色が広がっているんだ。
高い丘の上から、パッチワークに見える畑を見てごらん。
その色が異なることに気がつくだろう。
それは畑の作物が同じものでないからだ。
また、それは毎年作るものがことなるから、2度と同じ景色はないんだよ。
美瑛の丘は農家さんの長年の努力での営みがあってこそ守られているんだ。
畑は、撮って見て心で感じることはいいけれど、絶対に畑の中には入ってはいけないんだ。
そのときから、長年蓄えてきた土の栄養バランスが壊れてしまんだ。
そして、元気な作物はできなくなり、この美しい景色も見れなくなるんだよ。
いつまでも大切にしてほしい自然と人との共生の姿です。みんなで守ろうよ!