ふわふわな記憶

日々精進。

四月は君の嘘 最終話 感想 「嘘がもたらした美しい物語」

2015-02-08 01:35:00 | レビュー

四月は君の嘘 最終話 感想



以下、原作最終話(44話)の感想になりますので未読の方はネタバレにお気を付けください。


 <関連記事>
四月は君の嘘 感想 「君のために弾く音楽」
四月は君の嘘 10巻 感想





『四月は君の嘘』最終話を読みました。前話の神回に続いて、最終話も本当に素晴らしかった。
 
感動のあまり読後は放心状態になってしまいましたが、気を取り戻して今回は最終話の感想を書いていきたいと思います。

宮園かをりの選んだ道








前回の話を読んだ時から覚悟はしていましたが、かをりは公生を残して亡くなってしまいます。入退院を繰り返し、投げやりだったかをりは公生と一緒にいる時間への未練から手術を受けることを選びました。公生の一生懸命な姿に胸を打たれて、ほんのわずかな希望にでもすがりたいと前に歩き出しました。

でも、公生は再び大切な人を失ってしまう。そして、かをりは残される公生に自分の想いを綴った手紙を遺していました。


かをりもまた絵見と同じ日、公生の初めての演奏を見ていたんですね。でも、2人の選んだ道は違った。

絵見は同じピアニストとして公生を追いかける道を選んだ。あの日聞いた演奏が忘れられず、公生の背中を追い続けて、旅をするわけです。



「コーセーくんにピアノ弾いて欲しいの!!」

 
でも、かをりは公生の後ろを追いかけるのではなく、一緒に同じ舞台に立ちたいと思った。そんな彼女はピアノをやめてヴァイオリニストの道を選ぶ。

公生は40話でかをりに対する「憧れ」が「恋」であることを自覚しますが、かをりの公生に対する「憧れ」もまた「恋」なんですよね。

追う追われるの立場ではなく一緒にいて欲しいというのは絵見とはまた違った「憧れ」の形。この頃からずっとかをりは公生に恋をしていたんです。

この最終話を読んだ後だと、「やっと 帰ってきた 君がいるよ 有馬公生君」のシーンが深みを増してきて、本当に感動で胸がいっぱいになる...。






2人が一緒に演奏するのは2巻の藤和音楽コンクールの一度きりですが、5才の頃に芽生えた「公生にピアノを弾いて欲しい」というかをりの想いは14才の春のあの日にやっと実現するんです。

しかもその演奏でかをりに「アゲイン」と言われて、突き動かされた公生は再びピアニストとしての道を歩む事になるというのが熱い。

演奏後の「死んでも忘れない」というあのセリフは今となってはとても重く響いてくるセリフだと思います。最終話を読んだ後に読み返すとまた見方が変わってきて本当に素晴らしい。


 


昔のかをりはメガネをかけていました。公生と同じ中学と知って舞い上がるけれど、公生の周りには椿や渡がいて...。

3人の仲の深さに、自分が入っていくスペースなんてないんだもの...と公生を見つめ続ける日々があったとは...なんともいじらしくて等身大なおんなのこですよね。


でも、彼女には時間がなかった。入退院を繰り返し、病院で過ごす時間が長くなっていた自分の体があまり良くないことを知っていました。そして、自分が生きていられる残りの時間が長くないと悟った彼女は、走り出すことを決めました。


一つの嘘から始まった美しい出会いの物語




「宮園かをりが 渡 亮太君を好きという嘘をつきました」


これこそが、『四月は君の嘘』という物語における「嘘」でした。以前の感想でも触れましたが、公生もかをりもお互いを「君」と呼び合っていて、その独特の呼び方がまたこの2人の関係を特別に感じさせる要素になっていたと思います。

では、「嘘」とは何か?というのは多くの読者が疑問に思うところでしたが、「渡を好きだと言ったこと」だったんですね。正直な話、それはわかってたよ!という感じではありますが、でも彼女にとってこの「嘘」は必要なものだった。


かをり本人も言っているように端から見ているだけでも椿が公生のことを好きなのは明らかなわけで、椿に「有馬君を紹介して」とストレートに言うわけにもいかないですよね。でも、どうしても公生のそばに行きたかった。


渡には本当に申し訳ない話だけれど、後悔をしたくなかった。だからこそ、嘘をつくしかなかった。




そんな姑息な嘘が連れてきた「君」は、理想とは違う、でも思っていた通りの優しい人。ただ彼を見つめている時にはわからなかった本当の「君」を知って、そんな「君」といろいろな思い出を共有して...。公生と一緒に過ごしてきた日々の中でこんなにも一途にかをりは公生のことを想っていたというのは何とも感動的です。





「好きです」

そして、最初で最後のかをりの告白がついに描かれました。やっと伝えられた自分の想い。「嘘」ではない本当の気持ち。2人は両思いなんです。「君でいいや」ではなく「君でよかった」なのです。本当にこのシーンは切なくてたまらない...。


かをりと公生の出会いはかをりの「嘘」から始まりました。でも最後は偽りのないかをりの「本当」の気持ちを綴った愛の手紙で締めくくるというのがもう本当に素晴らしい。

この手紙はありったけの自分の気持ちが「君に届くといいな」という想いで書かれた手紙。公生と自分の思い出が詰まった手紙です。そして、この手紙は宮園かをりが確かに生きていた証なのです。


 




子供の頃、偶然に2人が一緒に写っていた写真を宝物にしていたかをり。かをりが公生をずっと想ってきたその証でもある宝物を最後に公生に渡すというのがもう本当に涙しかないです...。





公生は再び最愛の人を失ってしまいましたが、43話で自分の周りにいてくれた全ての人達に対して、ありったけの自分を音にすることで応えた公生の姿を見ると、きっと公生はこれからも前に向かって歩いていける強い人だと思います。そして、そんな強さを教えてくれたのは「君」との出会いでした。


きっかけは子供の頃の公生の初めての演奏。あの演奏でかをりは自分の人生が左右されるほどの強い憧れを抱いて、公生もまたかをりとの出会いで再びピアノを取り戻して...。

そんな2人の心にはずっと「君」が住み続けていくのだと思います。子供の頃からのかをりの一途な想いと公生の想いが交わった素晴らしい最終話を本当にありがとうございました。


今は、本当に素晴らしかったという気持ちでいっぱいです。単行本の11巻とアニメもとても楽しみにしています。




http://sakihuwahuwa.hatenablog.com/

「レビュー」カテゴリの記事は上記URLへ移転しました!





18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown ()
2015-02-08 05:44:16
とても良い感想記事ですね
かをりちゃんがこれまでどんな思いを胸に秘めていたのかを考えると今でも涙が止まらないです
改めて1話から読み返したい気持ちになりました
返信する
Unknown (丸猫)
2015-02-08 15:34:08
感想を拝見しました。亡くなってしまったのは辛いですが、誰かの心にそして何より公生の心に住むことがかをりちゃんの願いで、それが叶ったのはよかったです
返信する
Unknown (Unknown)
2015-02-08 18:45:22
繰り返される「好きです」が切ない。。
返信する
Unknown (Unknown)
2015-02-09 02:45:27
最後まで、読んでからまた読み返すと
いろいろと改めて大きな感動がありますね。

1巻の出会いで、カラフルに色づき始めたのは公生だとばかり思ってましたが、むしろかをりちゃんでしたね。
この場面での涙。強く吹きすぎたと言い訳してましたが、真の意味がわかると切ないですね。
またその直後の演奏の感想を聞くときのかをりちゃんの手が震えているのもまた切なくて。

「嘘」の意味が予想できた人は多いでしょうが、幼い絵見が大泣きした隣に登場させていたのに気づいていた人は、あんまりいないだろうなぁ。

素敵な感想記事をありがとうございました。
返信する
Unknown (ぷらす)
2015-02-10 23:01:47
これ1巻読んでやめてたけど、このブログみて読んでみようと思いました。

自分も漫画ブログやってるので良かったら見てください
http://fanblogs.jp/dollns777high/
返信する
Unknown (タツ)
2015-02-14 20:40:52
キャラの心情に寄り添った良い感想ですね
シェアさせて頂きました
返信する
アニメは (エイプリルフール)
2015-02-19 20:00:25
フラグどおりの残念な結末。

アニメでは違うエンドが欲しいです。


花が散るように、人はいつか死にます。
かぎりあるから美しいことも理解できますし、涙しますが、ヒロインが死ぬ事でのハッピーエンドの感動はありえません。

あらがい手術の失敗では、同じく重病で苦しむ患者の人々と周りの看ている人々に対する希望をも・・折る話になるのではないでしょうか?
返信する
追記してすみません。 (エイプリルフール)
2015-02-19 20:20:56
勝手にSAO2と比較してしたのですが「ゆうき」がやはりフラグどおり死にました。彼女が難産の輸血によるAIDSとの闘病で、あらがい頑張って生きた事とは少し違う気がします。
表現の違いも勿論ありますが、かぎりある短い命を精一杯生きて悔いなしの形と、かぎりあるかもしれないが希望をかけてチャレンジして失敗、遺書が遺る。

手術成功して自分の言葉で伝えて欲しかったですね。
返信する
ありがとう (じーパパ)
2015-02-21 20:24:07
この漫画は十数回先から読み始めていました。
全部は読んでいなかったので、それほど思い入れはありませんでした。
しかし、このところの内容には引き寄せられるモノがあり、読むのを楽しみにしていました。

今回が最終回、まさかの―

最終回は読んで心の涙が止まらなかったです。こんなにも悲しく温かく、力強いメッセージ、ピュアな想いは久しく感じていなかったから…。

あなたのこの感想を読ませていただき、さらに気持ちがホッコリとして泣けてきました。

私はこの漫画のこの内容で良かった、幸せな気持ちと勇気と愛情を感じられたから。
次は私が頑張らなきゃって思えたよ、本当にありがとう。
素敵な漫画と素敵な感想に感謝します。
返信する
Unknown (とおりすがりの鳥)
2015-02-22 02:18:33
はじめに、この作品は自分の心に住み続けるでしょう。

音楽の素晴らしさ、言葉の力、人の想い、これほどカラフルに描き、感動をくれたことに感謝したいです。

ただ、フィクションであったとしても死は辛いのです。

ただでさえ現実は不条理かつ理不尽ですから、フィクションには希望を抱いてしまいます。

僕はこの作品には生きるための希望であって欲しかった。

作者はドSですね。作品は好きですが作者は嫌いです。

今後のインタビューなどで作者の意図を汲み取ったら、意見が変わるかもしれませんが

「死してなお、誰かの心に行き続けることができる」

「死ぬ結果は不幸なだけじゃなく、どう生きたかが大切では?」

というメッセージなのでしょうか。

結末を見て二週目で読むとこんな印象を受けましたが、都合の良い解釈かもしれません。

そもそも、後々こんなに心にダメージを追うくらいなら

ヒロインが確実に死んでしまうのを断言してから始めて欲しかったなぁと思ってしまいます。

ペイフォワード、あの花、一リットルのなんたら、セカチュー

これらの作品より今回は辛いのです。
返信する

コメントを投稿