入湯求湯巡礼行記

これまでに訪れた温泉を紹介します。
時代に逆行し、写真は基本的に載せません。
変換できない残念な名称のブログです…

阿蘇内牧温泉 阿蘇乃湯 (熊本県阿蘇市) ★★★★

2021-03-28 | 九州・沖縄の温泉

内牧温泉は、阿蘇カルデラの北部に位置する温泉地で、街中にホテルや旅館、共同浴場が点在している。明治期の発見とされ、松山ののち熊本で 4 年間教鞭をとった夏目漱石も訪れている。

8 人ほど入れる内湯と水風呂、露天にも湯舟が 2 つあり、いずれも湯の投入量が多く、完全かけ流し。インターネット上では、芒硝や硫黄の味や臭いがあるとの記述も見られたが、あまりくせのない湯で、MTMM と記録した。ひょっとすると 2016 年の熊本地震で泉質に変化が起きているのかもしれない。兎角、かけ流し量が多くて気持ちの良い湯であった。


(2021 年 3 月)


◆源泉情報◆
泉質:単純温泉


あきしげゆ (宮崎県えびの市) ★★★★

2020-11-17 | 九州・沖縄の温泉

えびのの市外からは少し離れており、周りには畑や林が広がっている。元は個人所有の温泉であったが、1998 年から一般に開放されたそう。

まず、館内が広いのに驚いた。玄関からすぐの休憩スペースは 40 人は寛げるだろう。その休憩スペースの手前にちょこんと座っていた品のあるおばあさんが、オーナーさんのよう。“入場料”を支払い、浴室へ。

窓が広くとられた明るい内湯には、真ん中で 2 つに仕切られた大浴槽が 1 つ。下手側は浅くなっている。うっすら黄色く色付いた透いた湯で、日の光を浴びてキラキラと輝いているのはうっとりするような美しさだ。モール臭、弱硫黄臭、ツルスベ感、泡付きのある湯で、サラサラとかけ流されていた。他に露天もあり、黄色い円形のタライが 4 つ。そのうち、3 つは温泉で、1 つは水風呂になっていた。掲示では塩素系薬剤を使用しているとのことであったが、湯に使用しているのではなく、浴槽の清掃などに使用しているのではなかろうか。

フレッシュなモール泉に大満足で風呂から上がると、オーナーさんが休憩室で休んでいくよう勧めてくれた。なんでも、ここは寛ぎに来るところで温泉はその一部との考えで運営しているそうで、料金も“入湯料”ではなく“入場料”にしているそうだ。素敵な考えだなと思いつつ、先の旅程があるのでと丁重にお断りし、次の温泉へ向かった。


(2019 年 11 月)


◆源泉情報◆
泉質:アルカリ性単純温泉
成分:溶存物質 598.3 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 130.6 (92.66) 炭酸水素イオン 290.3 (79.47)
メタケイ酸 123.7 炭酸イオン 30.1 (16.69)

分析日:1992 年 9 月 28 日


鰻温泉 区営鰻温泉 (鹿児島県指宿市) ★★★

2020-10-10 | 九州・沖縄の温泉

幼少期に大きな影響を受けた「男はつらいよ 寅次郎真実一路」のロケ地として、一度は訪れてみたい温泉であった。「寅次郎真実一路」では、仕事に疲れ果て失踪した“課長さん”(演:米倉斉加年)を探し、寅さんと課長さんの妻であるヒロイン大原麗子が彼の故郷である枕崎まで旅をする。課長さんが車寅次郎を名乗って泊まった「うなぎ荘」も現存しているが、立ち寄りはできないので外観を見学だけし、区営鰻温泉で入浴することにした。

入れ替わり立ち代わりで人がやってくる割とにぎわった浴場で、タイル張りの浴槽に、うっすら硫化水素臭のする湯がかけ流されていた。浴室のカランに、水道水が地熱で熱くなっている場合があるので注意するよう掲示がされていたのが印象的であった。


(2018 年 2 月)


◆源泉情報◆
源泉名:鰻 1 号および 2 号
泉質:アルカリ性単純温泉
泉温:97.2℃
成分:pH6.8、溶存物質 129.7 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

カルシウムイオン 9.6 (37.04) 硫酸イオン 26.8 (40.51)
ナトリウムイオン 9.9 (33.29) 炭酸水素イオン 27.5 (32.72)
メタケイ酸 34.9 チオ硫酸イオン 3.3 (4.31)

分析日:2008 年 9 月 1 日


明礬温泉 湯元屋旅館 (大分県別府市) ★★★

2020-09-03 | 九州・沖縄の温泉

別府八湯のひとつで、他の七湯よりも高台に位置する。江戸時代には、噴出する硫化水素ガスや水蒸気を粘土中の鉄やアルミニウムに反応させることで明礬を得る方法が確立し、幕府の専売品となっていたそうだ。明礬は、薬、火薬、染め物、虫よけなどに使われていたそうで、現在でも入浴剤用として明礬を採取する湯の花小屋が点在している。

湯元屋は 2 本の源泉を有する温泉民宿で、浴室も 3 つあり、どれかを貸しきりで利用するスタイル。私が通された浴室は、3 人程が入れる湯舟に、ツンとくる酸っぱい硫黄臭と酸味のある湯が満たされていた。あとで知ったが、他の浴室は別源泉だったそう。


(2017 年 12 月)


二日市温泉 扇屋旅館 (福岡県筑紫野市) ★★★

2020-09-01 | 九州・沖縄の温泉

二日市温泉の歴史は古く、開湯は奈良時代までさかのぼる。江戸時代には、この地を領した黒田氏により御前湯が設けられ、温泉奉行が置かれた。

扇屋旅館は、公衆浴場の博多湯や御前湯もある二日市温泉のメインストリートに位置する老舗で、夜まで立ち寄り入浴も受け付けてくれる。浴室には湯舟が 2 つあり、広い方があつ湯、小さな方がぬる湯となっている。湯は、ツルスベ感のある MTMM で、掛け流しされていた。あつ湯は 45℃ くらいで、源泉は 43℃ なので沸かしているようだ。


(2016 年 4 月)


◆源泉情報◆
源泉名:二日市温泉配湯基地
泉質:アルカリ性単純放射能泉
湧出量:500 l/min
泉温:43.0℃
成分:pH8.6、溶存物質 621.9 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 187.5 (95.51) 塩化物イオン 195.7 (62.25)
メタケイ酸 55.7 炭酸水素イオン 97.7 (18.05)
ラドン 36.8 nCl 炭酸イオン 21.0 (7.89)

分析日:2015 年 3 月 31 日


嬉野温泉 嬉泉館 (佐賀県嬉野市) ★★★★

2020-08-25 | 九州・沖縄の温泉

嬉野温泉は、佐賀県の代表的な温泉地で、開湯は神話の時代まで遡るという。奈良時代には風土記などにその名が記される古湯である。


わざわざ九州、それも佐賀にまで行って (←失礼) 残念な思いはしたくないので、入念な下調べをし、ここ「嬉泉館」を選んだ。湯使いが良いと、温泉狢の評判は上々であった。明るい浴室には 3:7 ほどで仕切られた湯舟があり、それぞれトロットロの源泉が源泉が注がれ、かけ流されていた。大きな信楽の狸が置かれているが、湯口は普通の蛇口である。よくツルスベ感と表現するがここのはヌルヌルとでも表現したい。

正直に言うと、今回、佐賀県を訪れたのも「まだ佐賀に行ったことないから行ってみるか」くらいのつもりであって、絶対外せない観光の目玉があったわけではなかったのだ。だからこそ、わざわざ佐賀に来た甲斐があった」と思えるような温泉を探していた。ここ「嬉泉館」は、まさしくわざわざ佐賀に来た甲斐があった素晴らしい一湯であった。


(2015 年 4 月)


◆源泉情報◆
源泉名:嬉野温泉白川源泉
泉質:ナトリウム-炭酸水素・塩化物泉
泉温:84.0℃
成分:pH8.4、溶存物質 1399.6 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg)。


鰻温泉 うなぎ湖畔 (鹿児島県指宿市) ★★★

2020-08-11 | 九州・沖縄の温泉

薩摩半島の先端付近を地図で見ると、池田湖、鰻池、山川湾とぽっかり陸地に穴が開いているように見える (山川湾は少しわかりずらいが、砂洲だろう)。いずれもカルデラによるもので、活火山に指定されている。こと鰻池に関しては今でも熱源が近くにあるようで、あちこちに湯気が立ち上っているが、これは水蒸気を利用して蒸し焼きにするスメというものである。

うなぎ湖畔は、やや高台ににあがったところにある。内湯と混浴の露天があるが、離れているので一度服を着て移動することになる。内湯は武骨なコンクリ造りのもので、さながら共同浴場のようである。一方、露天は鰻池を一望する開放的なものである。湯はいずれもうっすら硫化水素集を感じるものだったが、気候の影響か露天は内湯よりぬるめ。鰻池を見下ろしながら湯浴みしていると、細雪が降り出した。


(2018 年 2 月)


◆源泉情報◆
源泉名:鰻 7 号
泉質:単純温泉
泉温:81.6℃
成分:pH5.9、溶存物質 121 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

カルシウムイオン 8.8 (34.92) 炭酸水素イオン 33.6 (45.08)
ナトリウムイオン 9.4 (32.54) 塩化物イオン 13.2 (30.33)
メタケイ酸 35.1 遊離硫化水素 1.7

分析日:2011 年 8 月 18 日


鰻温泉 まつまえ (鹿児島県指宿市) ★★★

2020-08-10 | 九州・沖縄の温泉

カルデラ湖の鰻池のほとりに立地する温泉で、湧き出る水蒸気を利用してサツマイモなどを蒸すスメという文化が残っている。江戸時代にはすでに知られた温泉だったようで、西郷隆盛が逗留したと伝わるが、私的には、旅への憧れや人生観に大きな影響を与えた「男はつらいよ 寅次郎真実一路」のロケ地として、一度は訪れてみたい温泉であった。

まつまえは区営鰻温泉のすぐ隣にある雑貨屋兼民宿である。脱衣所と浴場は一体となっており、内湯に湯舟が一つある。湯は高温の噴気に水を注いで造成したもので、あちこちで噴気が得られるので、温泉施設ごとに源泉は異なるが、まつまえは泉源第十四号を使用している。うっすら硫化水素臭がするものだった。


(2018 年 2 月)


◆源泉情報◆
源泉名:うなぎ温泉 泉源第十四号
泉質:単純温泉
泉温:94.0℃
成分:pH7.2、溶存物質 111.6 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

カルシウムイオン 8.8 (38.94) 炭酸水素イオン 27.0 (37.29)
ナトリウムイオン 8.9 (34.51) 塩化物イオン 14.1 (33.90)
メタケイ酸 31.2 硫酸イオン 16.4 (28.81)

分析日:2010 年 11 月 29 日


日奈久温泉 旅館幸ヶ丘 (熊本県八代市) ★★★★

2020-07-23 | 九州・沖縄の温泉

日奈久温泉は八代平野の南端付近に位置する歴史ある温泉で、江戸時代には熊本藩営の温泉となり、細川忠興の曾孫にあたる綱利の命で大浴場が設けられた。温泉街には明治から昭和初期の建造物が点在している。

幸ヶ丘は昭和 30 年代の創業とのことだが、館内は随所に歴史を感じるもので、白大理石の浴室は当時のままだそう。浴槽は P 字型で、折れた部分は浅くなっている。微硫黄臭、ツルスベ感、泡付きのある自家源泉が、鯉乗り童をモチーフにした湯口から豪快に注がれ、かけ流されていた。

熊本在住の方に「日奈久で一押し」とお勧めされて入ってみたのだが、なるほど確かに素晴らしい湯であった。


(2017 年 1 月)


◆源泉情報◆
源泉名:幸ヶ丘温泉
泉質:単純温泉
湧出量:68 l/min
泉温:43.9℃
成分:pH8.1、溶存物質 720 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 185.8 (92.71) 塩化物イオン 208.6 (57.99)
カルシウムイオン 10.2 (5.55) 炭酸水素イオン 243.8 (39.45)
メタケイ酸 40.6 硫酸イオン 9.3 (1.87)

分析日:2006 年 12 月 26 日