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嵐ファン・大人のひとりごと

嵐大好き人間の独りごと&嵐の楽曲から妄想したショートストーリー

妄想ドラマ 『Snowflake』 (5)

2009年10月03日 | 妄想ドラマ『Snowflake』
MP3を買いました

さっそく嵐の曲をガンガン取り込んでごきげん

夜、寝る時にミント(11歳)が一曲聴きたいから貸してくれと言うので貸しましたよ。

「静かなのがいいな。これにしよう」と言いながらミントが選んだのはAll or Nothing・・・静か?

最後に「電源切った?」と確認もしました。

ところが朝、夫に見せびらかそうとしたら・・・バッテリー切れの表示が

一晩中、嵐の曲を流していたのね聴こえなかったけど。


では主題歌は嵐の『Snowflake』でどうぞ。


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       妄想ドラマ 『Snowflake』 (5)



アルバイトに忙しい日々を送っていた悟は、美術部の顧問に呼び出された。

最近まったく顔を出していないので、そのことで何か言われるのだろうと思っていたが、

話は美術部のメンバーが応募した県の美術展に悟の絵が入選したというものだった。

自分でも納得のいく完成度だったので、それを認められたことが嬉しかった。


入選を一番喜んでくれたのは父親で、県立美術館に展示されると何度も見に行っているらしい。

展示期間がもうすぐ終わる12月の初め、夏葉にせかされて、悟も一緒に見に行くことにした。

展示室に入ると数点の入選作品が並び、その奥に優秀賞を取った2点が大賞作品を

はさんで展示されている。

悟は自分の絵が目に入ると、懐かしい人にあった時のように、嬉しいけど照れくさいような気分になった。


「悟の絵、熱心に見てる人がいるね」

一人の女性が腕組みをしたまま、優秀賞を取った悟の絵の前にじっと立っていた。

夏葉に引っ張られて近づくと、その人は悟に気がついて、嬉しくてたまらないといった感じで言った。

「大町悟、やっぱり君だったのね」


「知ってる人?」夏葉が聞いた。

「ひょっとして私のこと忘れちゃった?」

「覚えてるよ。映画館で・・・」

「やっぱり絵を描いてたのね。私の感ってけっこう当たるんだから」

それからまた絵を見て言った。

「いい絵だと思う。パワーがあふれていて将来性も感じるし、それになんといっても個人的に好き」

「ありがとうございます。私も彼の絵大好きなんです。だからそう言ってもらえると嬉しい」

黙っている悟に代わって夏葉が答えた。

「こちらの可愛い子は彼女?二人はデート中?」

二人を交互に見られて夏葉が恥ずかしそうに頷いた。

「私は栗原美冬、前に悟君に親切にしてもらったことがあるの。デートの邪魔して悪いんだけど、

場所を変えて少し話できない?もちろん彼女も一緒に」



3人は美術館に併設されたティールームに腰を下ろした。

「私はコーヒー、あなた達は?」

「オレンジジュースを」と夏葉が言った。

急になんだか自分たちがすごく子供に思えて、悟は珍しくコーヒーを頼んだ。


美冬の話は、美術館での展示が終わったら悟の絵を自分が任されているギャラリーにしばらく飾らせてほしいという申し出だった。

もちろん売るということではない。

まだ無名の新人を紹介するコーナーに悟の絵を展示したいということだった。

「俺みたいな高校生の絵でいいの?」

「年齢は関係ないの。その絵にパワーがあって魅力的ならね。悟君の絵は

 引き込まれるような不思議な力を感じるの。うちのギャラリーにくるお客様にも見てもらって

 何かを感じてほしいな。もちろん返事はおうちの方に相談してからでいいから」

「両親は喜ぶと思うからお願いします」

「そう、よかった。そのうち他の絵も見せてもらえない?すごく興味あるの私」

悟と美冬は携帯の電話番号を交換して美術館を後にした。


「悟すごいね。なんだか私までわくわくする。無名の新人かぁ・・・芸術家って感じ」

「バカ、まぐれで入選しただけだよ。これっきりかもしれないと俺は思ってる」

「綺麗な人だね。いつの間にギャラリーの人と知り合いになってたの?」

「この前、偶然会っただけ」

「映画館でって言ってたよね」

急に夏葉の声が沈んだ。

「悟ってやっぱり私には何も話してくれないのね。知ってるんだよ、嘘ついたの」

悟は何も言えず夏葉の手をにぎったまま、駅への道を歩いた。

息が白く見える。

もうすぐ雪がふりそうだ。


     ----------つづく--------










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妄想ドラマ 『Snowflake』 (4)

2009年09月30日 | 妄想ドラマ『Snowflake』
お待たせしました!?

では主題歌は嵐の『Snowflake』でどうぞ。



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妄想ドラマ 『Snowflake』 (4)




ニ学期になって、賑やかに夏休みの出来事を報告しあうクラスメイトたち。

夏葉は誰にも言えない、悟と二人だけの秘密が出来たことが嬉しかった。

少しだけみんなより大人になった気がした。


美術部の部室に行くと、待ち構えていた一年の女子3人に取り囲まれた。

「夏葉先輩!今ね大町先輩のこと話してたんですよ」 

「夏休みに女の人と二人で歩いているとこ、友達が目撃したの」

「その子、大町先輩に憧れてたからへこんじゃって。先輩何か知ってます?」

夏葉はちょっとためらってから

「ううん、知らない」

と答えた。

「あーショック。私達も憧れてたのに」

「でもさ、まだ彼女って決まったわけじゃないもん」


何も知らずに無邪気に騒いでいる彼女たちの声を聞きながら、

やっぱり悟はもてるんだなと思った。

包容力を感じさせる穏やかな笑顔、絵を描くことに夢中になっている時の綺麗な横顔。

先生や先輩に媚びないマイペースで飄々とした雰囲気。

夏葉は自分が大好きな悟が、一年の女子に人気があることを嬉しく思う反面、

少しだけ不安になった。

取り立てて魅力的とも思えない自分より、悟にふさわしい子が他に現れるかもしれない。

けれどその不安はすぐに解消された。



「俺、いろいろ聞かれて面倒だったから、夏葉と付き合ってるって一年に言っちゃった。
 
 まずかったかな?」 

「私は・・・なんか嬉しいかも」 

「そっか、よかった」

そういって悟は夏葉の頭をポンポンと軽く叩いて笑った。


二人のことはあっという間に周りの同級生たちの耳にも入っていて、

夏葉は学校で悟と話す時はみんなの視線が気になった。

でも悟はそんなことは気にする風ではなく、教室でも部室でも今までと変わらない。

そんな悟のことがますます好きになっていく。

始めは恋愛しているということに舞い上がっていたけれど、

体の関係をもってからは、愛されているという実感が夏葉に少しずつ自信を持たせた。

二人でいるときは、いつの間にか身に付けた明るくて物怖じしないキャラでいる必要が無い。

不器用で臆病な、ありのままでいる自分を受け入れてくれる悟のために、自分も悟の一番の

理解者で味方になろうと夏葉は思った。


やがて街路樹が秋の装いになるころ、悟はアルバイトが忙しくなって夏葉と

過ごす時間が減った。

悟が東京の美大へ行きたいこと、そして親の負担を減らすため、資金を少しでも貯めておきたいことは知っていた。

部活へはほとんど顔を出さないけれど、睡眠時間を削って絵を描いているのもわかっている。

それでも、夏葉は二人きりの時間がもっと欲しかった。

自分が悟の生活に占める割合を少しでも増やしたかった。

悟の都合に合わせていつでも会えるように、友だちの誘いもみんな断った。

夏葉の一途な想いが少しずつ悟の負担になっていったことに、彼女はまだ気づかない。


       ----------つづく-----------



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つたの葉が紅葉してきました。

実生活は食欲の秋!明るく能天気が一番!!な私ですが、

妄想は切な~くてなのにどっぷりと浸りたい気分。

ではまた
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妄想ドラマ 『Snowflake』 (3)

2009年09月26日 | 妄想ドラマ『Snowflake』
いつものように主題歌は嵐の『Snowflake』でどうぞ



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    妄想ドラマ 『Snowflake』 (3)




悟の部屋の灯りが消えた。

薄いカーテンの隙間からわずかに街灯の光が漏れる。

「怖い?」

と悟が聞くと夏葉は首を振って

「平気」

と答えた。

言葉とは裏腹に、悟の背中に回した夏葉の手はTシャツを握り締めていた。

悟は洗い立ての夏葉の髪をかき上げ、うつむきがちな彼女の顔を首を傾げて覗き込んだ。

突然、熱い衝動が全身を駆け抜けた。

「夏葉」

強く抱きしめると、ほのかにシャンプーの香りがした。

二人はベッドに倒れこむと今までとは違う濃厚なキスを繰り返した。

悟は体を起こすと自分の服を脱ぎ、それから夏葉の服を脱がせにかかる。

夏葉は心も体も悟にゆだね、されるがままだった。

ぼんやりと浮かびあがる白い肌に唇を這わせると

夏葉が静かにゆっくり息を吐いた。

そこから先はお互いの息遣いしか聞こえない、二人だけの世界。

心も体もひとつになりたい、悟に近づきたい、夏葉の願いはそれだけだった。


やがて熱い吐息は静かな深い呼吸に変わり、二人は裸のまま身を寄せ合って、

体温で愛を確かめ合っていた。

まだ未熟な悟と夏葉ではあったけれど、心は満たされていた。

「初めての人が悟でよかった」

夏葉の囁くような声が愛おしい。

悟は腕の中の夏葉の滑らかな肌をなでながら、ずっとこの時が続けばいいと思う。

それでいて、自分が初めて女性を知った日のことをぼんやりと思い出していた。



その人はアルバイト先で知り合った19歳の女子大生で由佳という名前だった。

お客の中には彼女目当てで来る男性が何人もいるくらい可愛い顔をしていて、

よく悟と同じシフトになった。

一ヶ月くらい経ったころ、仕事が終わるのを待ち伏せしているサラリーマンが

いて困ると由佳に相談され、途中まで送るようになった。

彼女の部屋で関係を持つまでに時間はかからなかった。

時々バイト帰りに一緒にコンビニに寄り、そして誘われるままに部屋を訪れる。

そんな関係が3ヶ月ほど続いた。

由佳についてわかったのは、彼氏と別れた寂しさを紛らわせるため

悟と寝ているらしいこと。

彼女は感情の起伏が激しくわがままなことくらいだった。


「もう来ないで」

ある日、突然言われて短い二人の関係は終わった。

きっと新しい彼氏でもできたのだろう。

悟は驚かなかったし、悲しくもなかった。

夏葉に告白されたのはそれからしばらく後のことだ。

由佳の綺麗な顔は、悟の記憶の中でもうぼやけ始めている。



「服着ようかな」

夏葉の声で悟は我に返った。

「どうして?」

「だって恥ずかしいもん」

「今更?」

夏葉はそれには答えずに手探りで、ベッドの周りに落ちているだろう下着と服を探し始めた。

「電気つけようか。俺、その辺に投げちゃったかも」

「やだ、待って」

慌てて二人が掛けていたタオルケットの中に、首までもぐりこんだ夏葉の髪をなでながら、悟は言った。

「好きだよ夏葉」

自分から、はっきりと口に出して言ったのはこれが初めてだった。



       ------------つづく-----------


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妄想ドラマ 『Snowflake』 (2)

2009年09月23日 | 妄想ドラマ『Snowflake』
どーも、バジルです。

今回はミント(11歳)には読ませておりません。

大人向けで難しいし激暗!と言ったら読む気ゼロに

よっしゃ!準備OK

何の?

大人向けにする準備です。“大人のひとりごと”ですから。

オタトークに登場するミントですが、ブログは見せてません。

夫にはブログやってることすら秘密。


では主題歌は嵐の『Snowflake』でどうぞ



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      妄想ドラマ 『Snowflake』 (2)



駅へ向かう間、悟は美冬にもらった名刺を眺めては、

楽しかった会話を思い出していた。

高校生だからといって子供扱いされることはなく、対等に接してくれたことも嬉しかった。



家に帰って携帯を見ると夏葉から何通ものメールが届いていた。

映画館で携帯の電源を切ったまま忘れていた。

具合が悪くて早退したと思っているので、心配している。

電話をかけるとすぐに出た。

「もしもし悟?具合はどう?寝てたの?」

「うん、大したこと無いけど、でもまた寝るからメールもらっても返事できないよ」

「じゃ明日連絡してね。待ってるから」

「わかった」

また嘘をついた。




夏葉は美術部の仲間で何となく気が合う仲間の一人にすぎなかった。

それが2年になってまもなく、ずっと前から好きだったと告白されて驚いた。

活発で積極的な彼女に押されてなんとなく付き合いだした。

みんなの前では強気な言動の夏葉だけれど、二人きりの時は別人のように遠慮がちで可愛い。

意外なことに今まで誰かと付き合った経験はなく、

初めてのデートの帰りにキスしたら泣いてしまった。

夏葉は悟が知っている女の子たちと比べると、ひたむきで幼く、

傷つけてはいけないと思った。



夏休みも終わる頃、悟の両親は出産のため里帰りしていた7歳上の姉を送って行き、家を空けた。

夏葉は親に嘘をついて泊まりに来た。

悟は彼女の密かな決心を感じていた。

もちろん口には出さないけれど。



夕飯は二人で仲良くカレーを作って食べ、

暗くなってから夏葉が買ってきた花火に火を点けた。

はしゃぐ彼女の横顔を見つめる悟の視線に気がついて、夏葉は急に黙りこむ。

「どうした?」

「だって悟がじっと見てるんだもん」

「いいじゃん見たって。なんか・・・可愛いなと思ってさ」

夏葉は照れくさそうに微笑むと喉が渇いたと言って、家へ入ってしまった。

こんなちょっとした瞬間に悟は彼女を愛おしいと感じる。

時々でいいから、こんな気持ちになれれば同じ人をずっと愛していけるのかもしれない。

雲の切れ間から月が顔を出した。



シャワーを浴びて自分の部屋へ行くと、夏葉がまだ濡れている髪を

時々思い出したようにバスタオルで拭きながら、

最近人気のお笑い芸人が出ているテレビを見ていた。

いつもはポニーテールにしている髪を下ろした夏葉は、

なんだか大人っぽく見えてドキリとした。

「この人たち面白いんだよね。私、好きかも。イケメンだしかっこいい!」

「そっか」

悟がベッドに寝転がると、夏葉はいつもよりおしゃべりになった。

お笑い芸人の一人をスタイルがいいとか、目がきれいだとか褒めまくる。

やがて振り返って悟に聞いた。

「妬かないの?」

「妬かない」

「つまんないの、もう!」

「だって・・・夏葉と今、一緒にいるのは俺だから」

悟はそう言って起き上がると、リモコンを手に取ってテレビを消した。

夏葉は慌てて悟から目をそらすと

「冷蔵庫にジュース残ってたよね。飲みたくない?」

と言って立ち上がった。

時が満ち、これから二人に訪れるであろう出来事に怯えている。

自分から望んでいたことなのに。

悟は夏葉の手首を掴んで引きとめ、できるだけ優しく言った。

「ジュースはいいから」

そして、そっと唇を重ねたあと抱きしめて聞いた。

「いいの?後悔しない?」

夏葉は悟に腕をまわしたまま小さく頷いた。



      ------------つづく---------


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あれまっ!どうしましょ?

この先はお好きに妄想しちゃってください。

なんてね

「なんでここでつづく?」と怒ってるお友達のラベンダーさんが目に浮かぶ

え~“大人向け”といっても“過激な”描写はいたしませんので

期待しないようにお願いします。

ソフトなのは有りかも?

ではまた
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妄想ドラマ『Snowflake』 (1)

2009年09月20日 | 妄想ドラマ『Snowflake』
妄想ドラマ第4弾を始めます

今回は最初にやった妄想ドラマ『トビラ』の<エピソード1>ってことで。

トビラで智が雅紀と出会う以前の話をやりたいと思います。

そう!センゴクプーとアマツカゼみたいにね。

なので智くんしか出てきません

しかも暗~いお話になりそう・・・だってねぇ・・・

トビラを読んでいただいた方はご存知のとおりですので。


そこで今回の主役には“大町悟”という役名をつけました。

大野智という名前でやるのは忍びない。

私の妄想の中では悟を演じているのは智くんですが、みなさんは5名様のうちの

誰かをご自由にキャスティングしてください。

高校生から始まりますのでビジュアル的にはちょっと前の嵐くんたちで


では主題歌は嵐の『Snowflake』で

できれば2,3回聴いて気分を盛り上げてからどうぞ




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       妄想ドラマ 『 Snowflake 』 (1)




高校2年の晩秋、大町悟は栗原美冬と出会った。


金曜の午後、仮病を使って学校を早退した悟は、自宅とは反対方向の電車に乗った。

前から観たかった映画がきょうで終わってしまうのに、アルバイトが忙しくて

まだ観ることが出来ずにいた。

悟のアルバイト先はチェーン展開しているコーヒーショップ。

スタッフが三人も急に辞めてしまったのに、代わりのアルバイトがなかなか決まらず、

悟は土日もフルタイムで出勤していた。

きょう、学校を早退することは3日前から決めていた。

頭が痛くて熱っぽいので早退したいと担任の女性教師に言うと、

少しも疑わずに

「気をつけてね」

と心配そうに顔を覗き込んだので、ほんの少し後ろめたかった。

隣のクラスの佐々木夏葉には早退すると一言だけのメールを送った。

付き合い出して半年、最近の夏葉は悟の行動をいつも把握しておきたがるようになった。

映画に行くと告げれば夏葉も早退するに決まっている。

でもこの映画だけは一人で観たかった。



映画館の最寄駅で降りると、コインロッカーにカバンと

制服のジャケットを入れ、変わりに私服のフードつきのコートを着た。


映画館はまばらにしか客が入っていなかった。

映画は一人の画家の生涯を描いたもので、不器用なその生き様にあきれながらも

最後は引き込まれて涙が流れた。

自分が映画を観て泣くような奴だなんて誰も知らないと悟は思う。

夏葉も、もちろん知らない。

悟は自分の心の中に誰も入れない領域があることを、小さい頃から漠然と感じていた。

それは成長するにつれ、徐々にはっきりとしてきた。

周りの人間が思っている自分と本当の自分とは違うと思うが、だからといってそれを修正しようとも思わない。

何がどう違うのかそんなことは他人にはどうでもいいことだろう。



館内の明かりがついて少ない客が出口に向かって動き出した。

悟も映画の余韻に浸ったまま、後方の出口に向かって階段状になった通路を歩いていた。

前を歩いていた女性が突然振り返り、低い段差を踏み外してつんのめった。

次の瞬間、その人は悟の腕の中にいた。


突然の出来事に、悟は彼女を抱きとめたまま体が固まったかのように動けなかった。

同級生の夏葉とは違う香りがした。

「ごめんなさい」

女性は慌てて悟から離れると、一言謝って横を通り過ぎようとした。

「痛っ!」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫・・・かな」

そう言って女性は恐る恐る一歩足を踏み出したけれど眉間に皺をよせた。

ヒールの細いパンプスを履いている。

捻挫したのかもしれないと悟は思った。


「あの、すみませんけど、少し下の真ん中あたりの席に紙袋忘れてしまって。

 足痛めたみたいなので取ってきてもらえませんか?」

女性が指差した方を見ると紙袋の赤い持ち手が見えた。

悟が座っていた席の近くだった。

悟は何も言わずに2段跳びで階段を駆け下り、紙袋を取ると、また2段跳びで戻って

女性に差し出した。

「ありがとう。助かりました。どうぞ先に行って」

紙袋を受け取ると、悟のために通路を空けたので悟は出口に向かった。

振り返るとその人は並んだ座席の背につかまりながら、痛めた足をかばい、

一歩進んでは立ち止まることを繰り返していた。

あたりにはもう誰もいない。



「荷物持つよ。俺に摑まって」

引き返した悟が手を差し出すと、その人は素直に紙袋とバッグを渡した。

それから前からの知り合いのように、ためらうことなく悟の腕に摑まった。

またいい香りがした。

香水をつけているのだろうか。

ロビーの椅子に腰を下ろすと女性は苦笑して言った。

「ありがとう。ほんとにドジなんだから恥ずかしい」

黒いスーツが彼女を大人っぽく見せていたが、

明るいところで見るとまだ二十歳くらいにも見える。

手入れの行き届いた髪を触る華奢な白い手が綺麗だと思った。


「これからどうするの?一人で歩けないでしょ」

「友達に車で迎えに来てもらおうかな。電話してみるから待っててもらってもいい?もし時間があるならだけど」

「いいよ。友達が都合悪かったら、通りまで一緒に行ってタクシー拾ってやるよ」

女性はクスッと笑って悟に聞いた。

「君、いくつ?」

「なんで?」

「親切にしてもらっててなんだけど、大人に対して生意気な口きくなと思って」

「たいして変わんないだろ」

「私は23、これでも社会人。君はまだ高校生でしょ?」

大人ぶったつもりなのに高校生だと言われて、悟はわざとぶっきらぼうに答えた。

「17」

「17か・・・純粋なんだね」

純粋という今まで言われたことのない言葉に悟は動揺した。

「若けりゃ純粋だなんて単純だな」

「そうじゃなくて、泣いてたでしょ?映画観て。私は感動したけど泣けなかった。

 大体こんな地味な映画を、高校生の男の子が一人で観にきてることが不思議だもの」

「バイトまで時間あるから暇つぶしだよ」

「そう。主人公みたいに絵を描いているのかなと思ったのに違ったみたいね」

悟は泣いていたのを見られたのに不思議と嫌ではなかった。


女性は誰かに電話をかけ終わると、バッグから名刺を取り出して悟に渡した。

名刺にはギャラリーFREESTYLE 栗原美冬と印刷されていた。

「迎えに来てくれるって。でもここまで30分くらいかかるからもう少し話しをしない?私は栗原美冬。君の名前は?」


それから、二人は今観たばかりの映画についてあれこれと話した。

同じ映画に感動したということが親近感を生み、心地よい時間が流れた。

やがて美冬の友人という男性が現れて、悟は映画館を後にした。

親切にしてもらったお礼がしたいからいつでもギャラリーに遊びに来てと言われ、頷いたものの

この人と会うことは二度と無いだろうと悟は思った。

 

       --------------つづく------------



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ちょっと長くなってしまいましたね

Snowflakeは嵐のシングル『Happiness』に入っている曲です。

そうStillと一緒にね。

さてあなたの中で悟は誰になりましたか?

私は智くんが美冬さんを抱きとめたシーンを妄想してうっとり!でした


では


拍手ありがとうございます。
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