さいとうゆたか法律事務所 解雇ブログ

さいとうゆたか法律事務所(新潟市中央区東中通1番町86-51東中通ビル5階、電話025-211-4854)のブログです。

賃金未払いについて経営者の賠償責任を認めた裁判例

2017-02-21 10:45:28 | その他

 鳥取地裁平成28年2月19日判決は、賃金未払いについて、会社経営者の賠償責任を認めています。

 同判決は、会社の取締役には労働者に賃金が支払われるよう最善の努力を尽くす義務がある、それは経営が客観的に困難である場合でも異ならないとの判断を示します。

 その上で、当該事案では、現金・預貯金の入出金・残高状況からみても従業員給与の未払が不可避と言える状況ではなかった、経営が困難であっても取締役としては倒産処理等も視野に入れつつ会社の再建可能性などを真摯に検討すべきであったなどとして、取締役には賃金未払について任務懈怠があったとしました。

 会社に資産がない場合、賃金を払ってもらえない労働者にとって会社の経営者に対する賠償請求権は有力な武器です。その賠償請求を明快に認めた裁判例として参考になるものと思われます。

 

 解雇、その他の労働問題でお悩みの方は当新潟合同法律事務所の弁護士(新潟県弁護士会所属)にご相談下さい。まずはお電話(025-245-0123)かメールなさってください。 弁護士 齋  藤  裕(新潟県弁護士会所属) 弁護士が解雇について解説する新潟合同法律事務所 解雇ブログのトップに行くにはこちらをクリックしてください。  


「退職したいと思います」との発言があっても退職合意を認めなかった裁判例

2016-09-05 10:31:32 | その他
 東京地裁平成27年12月22日判決は、労働者から「来年1月までで退職したいと思います」との発言があり、使用者がそれに承諾を示した事実があっても退職合意はないとの判断を示しています。

 これは、それまで当該労働者が退職勧奨を受けたことがないこと、「退職したいと思います」との発言がなされた面談でも当該発言まで格別退職が話題になっていないこと、簡単に退職を決意する動機も見当たらないこと、経過から反発心から出た発言とうかがわれること、退職を前提とした手続きがとられていないこと、「退職したいと思います」との発言の2日後には退職しない旨の発言がなされていることなどを踏まえたものです。
 
 職を失い生活にも関わる退職について、裁判所は安易に合意を認めないことがあります。当該事案では、退職について文書も作成されていなかったことが退職合意を認めなかった大きい要因として考えられるでしょう。退職合意の有無を考える上で文書作成の有無が重要だということを示す裁判例かと思います。

 ただし、そうはいっても、いったん退職をする旨発言すると、そのような真意がなかったとしても、退職合意がない前提での解決が困難になりますので、注意しましょう。


 解雇、その他の労働問題でお悩みの方は当新潟合同法律事務所の弁護士(新潟県弁護士会所属)にご相談下さい。まずはお電話(025-245-0123)かメールなさってください。

弁護士 齋  藤  裕(新潟県弁護士会所属)

弁護士が解雇について解説する新潟合同法律事務所 解雇ブログのトップに行くにはこちらをクリックしてください。



会社都合退職とは何か その2

2014-07-05 17:35:35 | その他
 会社が事業規模の縮小をはかる場合にも、会社都合退職が認められます

 一つは、事業規模若しくは事業活動の縮小又は事業の転換等に伴い、雇用対策法27条1項の届け出がなされ、大量の人員整理が行われることが確実となった場合です。

 もう一つは、事業規模もしくは事業活動の縮小又は事業の転換等に伴い、当該事業主に雇用される被保険者の数を3で除して得た数を超える被保険者が離職したため離職した場合です。ものすごく大ざっぱにいうと、3分の1を超える従業員が退職するような状況です。この場合、解雇された人はもちろん、退職勧奨や希望退職の募集に応じて退職しても会社都合退職となります。こ雇用対策法の届け出の有無も問題にならないことになります。

 
 解雇、その他の労働問題でお悩みの方は当新潟合同法律事務所の弁護士(新潟県弁護士会所属)にご相談下さい。まずはお電話(025-245-0123)かメールなさってください。

弁護士 齋  藤  裕(新潟県弁護士会所属)

弁護士が解雇について解説する新潟合同法律事務所 解雇ブログのトップに行くにはこちらをクリックしてください。



 

会社都合とは何か その1

2014-07-04 12:30:37 | その他
 失業保険を受給する上で会社都合退職の場合(特定受給資格者である場合)、自己都合退職の場合よりも有利に扱われる面があります。しかし、実際には、会社都合なのか自己都合なのか、判断が難しい場合もあります。

 何回かに分けて何が会社都合なのかについて説明していきます。

 会社倒産の場合には、会社都合退職とみなされうることになります。

 ここで倒産とは

1 裁判所に対し、破産、再生、更生手続きなどの申立がなされたこと
2 不渡手形が発生したこと(1回でもよい)
3 一定範囲の業務停止命令(1ケ月以上)により当該営業業務がすべて停止されたことにより、事業所の倒産がほぼ確実となった場合
などを言います。

 このような状況になった後に退職した場合、会社都合退職となります。

 再生、更生手続きの場合、民事再生計画、会社更生計画が決定されるまでの間の退職のみが会社都合退職となります。

 業務停止命令の場合は、業務再開までの退職のみが会社都合退職となります。


 解雇、その他の労働問題でお悩みの方は当新潟合同法律事務所の弁護士(新潟県弁護士会所属)にご相談下さい。まずはお電話(025-245-0123)かメールなさってください。

弁護士 齋  藤  裕(新潟県弁護士会所属)

弁護士が解雇について解説する新潟合同法律事務所 解雇ブログのトップに行くにはこちらをクリックしてください。



退職の意思表示撤回が有効とされた事例

2014-05-09 19:39:50 | その他
 旭川地裁平成25年9月17日判決は、町立病院勤務の臨床検査主任技師が退職の意思表示をし、それを後で撤回したことについて、その撤回を有効としています。

 同判決は、退職の意思表示の撤回は、退職承認処分の効力発生前では原則として自由、その撤回が信義に反するような特段の事情があれば撤回が許されないとの基準を立てています。

 その事案では、町は退職の意思表示の撤回の前に退職承認処分をしています。

 しかし、判決は、口頭での退職の意思表示があっただけで退職願の提出がない段階で退職承認処分をしたことについては手続きの慎重さを欠いた点がある、町は臨床検査主任技師には懲戒解雇に相当する事情がないのにあるかのようにして退職勧奨したなどとして、退職の意思表示の撤回は信義に反するものではなく、有効だとしました。

 労働者が使用者から強引に退職を迫られ、不本意な退職の意思表示をすることはままあります。それに歯止めをかけたものとして意義ある判決だと思います。


 解雇、その他の労働問題でお悩みの方は当新潟合同法律事務所の弁護士(新潟県弁護士会所属)にご相談下さい。まずはお電話(025-245-0123)かメールなさってください。

弁護士 齋  藤  裕(新潟県弁護士会所属)

弁護士が解雇について解説する新潟合同法律事務所 解雇ブログのトップに行くにはこちらをクリックしてください。