さいとうゆたか法律事務所 解雇ブログ

さいとうゆたか法律事務所(新潟市中央区東中通1番町86-51東中通ビル5階、電話025-211-4854)のブログです。

上司の指示命令に従わない従業員に対する解雇が無効とされた事例

2018-11-07 09:40:36 | 規律違反を理由とした解雇

  上司の命令に従わないことは有効な解雇理由となりえます。しかし、解雇が無効とされるケースも多くあります。

 この点、東京高裁平成30年1月25日判決は、上司の指示命令に従わない従業員に対する解雇を無効としました。

 原審判決は解雇を有効としており、地裁と高裁で結論が割れました。

 この従業員は介護職として勤務していましたが、平成25年に部署異動後、上司の指示に従わない、気に入らないことがあると大声を出し机を叩く、そのような言動があったため同僚も上司の指示に従わなくなるという状況がありました。使用者は改善を求めましたが、改善もなく、解雇にいたりました。

 裁判所は、この従業員が部署異動前には格別の問題行動がなかったこと、異動後の新しい上司が年下の女性であることに反発したこと、配置転換により状況を改善することが可能であったことなどを理由に解雇を無効としました。

 裁判例上、業務上の問題行動がある職員についても改善可能性がある場合には解雇は無効との判断が多くなされています。東京高裁判決はそれに沿ったものと言えそうですが、地裁との判断が分かれたところからも明らかなとおり、かなり限界事例と言ってよいと思います。

 

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賃金未払いについて経営者の賠償責任を認めた裁判例

2017-02-21 10:45:28 | その他

 鳥取地裁平成28年2月19日判決は、賃金未払いについて、会社経営者の賠償責任を認めています。

 同判決は、会社の取締役には労働者に賃金が支払われるよう最善の努力を尽くす義務がある、それは経営が客観的に困難である場合でも異ならないとの判断を示します。

 その上で、当該事案では、現金・預貯金の入出金・残高状況からみても従業員給与の未払が不可避と言える状況ではなかった、経営が困難であっても取締役としては倒産処理等も視野に入れつつ会社の再建可能性などを真摯に検討すべきであったなどとして、取締役には賃金未払について任務懈怠があったとしました。

 会社に資産がない場合、賃金を払ってもらえない労働者にとって会社の経営者に対する賠償請求権は有力な武器です。その賠償請求を明快に認めた裁判例として参考になるものと思われます。

 

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定年後再雇用の労働条件の相当性(トヨタ自動車ほか事件)

2017-02-20 15:59:25 | 高齢者と解雇

 名古屋高裁平成28年9月28日判決は、高齢者雇用安定法による継続雇用に関し、定年後再雇用の労働条件が相当性を欠くとして、企業側に賠償責任を課しています。

 同判決は、前提として、継続雇用における労働条件が、無年金・無収入の期間発生を防ぐという趣旨に照らして到底是認できないような定額の給与水準であったり、社会通念に照らして当該労働者にとって到底受け入れがたいような職務内容であるなど実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められない場合については、事業者の対応は高齢者雇用安定法の趣旨に反すると判断しました。

 その上で、大卒後事務職に従事してきた職員に対し、清掃など単純労務職の継続雇用を提示したことは高齢者雇用安定法の趣旨に反するとし、事業者の賠償責任を認めました。

 継続雇用について明文では職種の制限はありませんが、法の趣旨から考えると、高裁判決のいうとおり一定の限定があるとするのが自然かと思います。

 

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アスペルガー症候群と解雇

2017-02-07 10:51:10 | 規律違反を理由とした解雇

 京都地裁平成28年3月29日判決は、大学がアスペルガー症候群の准教授を解雇した事案について、解雇は無効だとしました。

 この准教授には、生協の職員に土下座をさせる、学生を告訴する、ナイフで自殺をはかり現行犯逮捕されるなどの行動がありました。

 大学は、これらの行動はアスペルガー症候群に由来するものであり、矯正不可能だとして解雇をしました。

 裁判所は、准教授はアスペルガー症候群に由来して行為の問題性を認識できていないかったのに大学において行為についての指導等がなされなかったとして、行為を改善する余地がなかったとは言えないとしました。

 裁判所は、障がい者基本法19条2項の理念などを踏まえ、障がい者の障がいの程度などに応じて一定の配慮をすべき場合もあるなどと判示した上、解雇を無効としました。

 アスペルガー症候群の方に対する解雇の効力について、障がいの性質に即した判断をしており、参考になるものと思われます。

 

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20年以上前の事情を理由とする懲戒免職が取り消された事例

2016-11-23 16:18:57 | 懲戒解雇

 福島地方裁判所平成28年6月7日判決は、昭和61年から平成1年までに、高校教員が顧問をしていた部活の女子生徒との間で頻繁にみだらな行為をしたことを理由として平成24年6月付でなされた懲戒免職処分を取り消しました。

 この事案では、平成2年ころ、女子生徒の母親が当該高校教員に対し慰謝料請求をし、結果として高校教員が50万円を支払うとの示談が成立しています。

 その後、平成19年ころ女子生徒は当該高校教員の妻に対して慰謝料1000万円を請求し、平成24年ころに女子生徒の母は1000~3000万円の請求もしています。

 女子生徒は平成24年に福島県教育委員会に告発を行い、それを受け本件懲戒免職処分がなされるに至っています。

 判決は、時の経過を主な理由として懲戒免職処分を取り消しました。

 確かに、高校の教員が女子生徒と頻繁にみだりな行為をしたことは懲戒免職に値する可能性はありますが、さすがに20年以上経過した後の懲戒免職は厳しすぎると思われ、基本的には妥当と思われます。

 

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