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ミリオンダラーベビー

2006年01月19日 | 気になる映画&TV
 アビエーターを見たときに、何でこの作品がアカデミー賞を取れなかったんだろう、この作品を越えた「ミリオンダラーベービー」はどれほどすごい映画なんだろうか、と思ったことをおぼえています。

 それにしても助演男優賞、主演女優賞、監督賞、作品賞の4部門を獲得したミリオンダラーベビーをみたのは、ずいぶんとあとになってからです。理由は簡単。女性ボクサーが年老いたコーチと一緒になってチャンピオンになる、いわゆるロッキーの女性バージョンに興味がわかなかったからです。

 映画の冒頭からはじまるボクシングのシーン、年老いたクリントイーストウッドのコーチがボクサーに作戦を与えているシーンから、これはやっぱりロッキーだなとあきらめの気持ちで映画をながめることになりました。

 薄暗くて活気のない貧乏なボクシングジム。淡々と進む物語。ニヒルで孤独なボクシングジムのオーナーと年老いたコーチのやり取りは、今のアメリカの老人たちが持つ影の部分を意識して写しているかのようです。

 主人公の女性ボクサーがジムのオーナーの器具を借りて練習していると、オーナーは返せと強気で言い放つ。貧乏な女性ボクサーが悲しい顔を見せると、こんどは逆に使っていいと言い、「私は新しいのを3つ持っているから」などと言わなくともよい話をする。強気とやさしさとちょっと世間ずれした正確を併せ持つ老人。

 オーナーは23年間も毎朝欠かさずに教会へ通っているわりには、キリスト教の内容はよく理解していない。そして最後の最後には教会の教えだけでは解決することができない、命の問題に突き当たることになる。

 この映画には、現実のアメリカ社会が潜在的に抱えている社会問題が、映画の背景に流れているように感じられるのは、私だけでしょうか。
 ロッキーの女性バージョンなどと考えていた私は、良い意味ではずされて良かったと思える映画でした。アカデミー賞がこの映画を選んだ、質の高さを感じられます。

ミリオンダラーベビー