公開:2013年
監督:バズ・ラーマン
原作:F・スコット・フィッツジェラルド「The Great Gatsby」
出演: レオナルド・ディカプリオ
トビー・マグワイア
キャリー・マリガン
ジョエル・エドガートン
物語は主人公ニックの独白の形で物語りは進んでゆきます。彼のいとこはニューヨークの大富豪と結婚して、彼も大富豪の友人として金持ちの暮らしを身近に垣間見ることが出来る立場にあります。しかし、彼自身は大学出のウォールストリートで働くただのサラリーマンです。ロングアイランドに小さな家を購入して住んでいるのですが、その隣には超がつく大豪邸があり、そこでは毎週末に盛大なパーティーが開催されています。
大富豪と普通のサラリーマンの対比が面白いし、だからこそ物語の奥深さが出てくるのかもしれません。隣に住む大富豪のギャッツビーと友人になったあとで、ギャッツビーはニックにこんなことを囁きます。「親切にしてもらう君にこんなことを言うのは何だけれども、君の収入はあまり多くないよね。私は証券取引で君に少しだけ得をさせてあげられるように思うのだけれども・・・。」
あからさまにお金をあげるというよりも柔らかめに言っているつもりのギャッツビーですが、ニックはすぐさま「いいえ。今回のことは、私の本当に親切心からすることなんですよ・・・。」そう言ってやんわりと断わるのです。
本で言えば読者、映画で言えば観客、どちらも大富豪といよりはニックの立場にちかい普通の庶民であるわけです。ニックの気持ちになって大富豪のギャッツビーに一抹の憧れとコンプレックスを抱くことになると思います。表面的であるのか、それとも深層心理のなかでの思いなのかは人によって違うかもしれませんが、この感情が物語を面白くしているのだろうと思います。
2012年ウォール街で「We are 99%」のプラカードを持ったデモが起こったことは記憶に新しいと思います。誰でもが大金持ちになってみたいという憧れ、しかし99%の人が叶わない夢、そこに沸いてくる複雑な感情は、ギャッツビーという謎の男への興味に向かってゆくのです。
1900年初頭のアメリカ。映画では、富を持つものはニューヨークの高級住宅街にすみ、持たざるものは外延部の石炭処理場で真っ黒になって働くところが描かれています。そんな時代から現代まで、アメリカの人々は富に憧れ、そして富を独占する人々に反発する、そんな気持ちを抱きながら生きているのかもしれません。
ちなみに、昨年のウォール街で99%のプラカードを持ってデモをしていたある女性のリーダーは、証券会社から仕事をしないかと誘われて、大喜びで今まで反対していた証券取引の世界に飛び込んで言ったそうです。これもアメリカっぽい話だなあ・・・。