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映画「華麗なるギャッツビー」大富豪とアメリカの夢について

2013年11月14日 | 気になる話題日報

公開:2013年
 監督:バズ・ラーマン
 原作:F・スコット・フィッツジェラルド「The Great Gatsby」
出演: レオナルド・ディカプリオ
  トビー・マグワイア
  キャリー・マリガン
  ジョエル・エドガートン

 物語は主人公ニックの独白の形で物語りは進んでゆきます。彼のいとこはニューヨークの大富豪と結婚して、彼も大富豪の友人として金持ちの暮らしを身近に垣間見ることが出来る立場にあります。しかし、彼自身は大学出のウォールストリートで働くただのサラリーマンです。ロングアイランドに小さな家を購入して住んでいるのですが、その隣には超がつく大豪邸があり、そこでは毎週末に盛大なパーティーが開催されています。

 大富豪と普通のサラリーマンの対比が面白いし、だからこそ物語の奥深さが出てくるのかもしれません。隣に住む大富豪のギャッツビーと友人になったあとで、ギャッツビーはニックにこんなことを囁きます。「親切にしてもらう君にこんなことを言うのは何だけれども、君の収入はあまり多くないよね。私は証券取引で君に少しだけ得をさせてあげられるように思うのだけれども・・・。」
 あからさまにお金をあげるというよりも柔らかめに言っているつもりのギャッツビーですが、ニックはすぐさま「いいえ。今回のことは、私の本当に親切心からすることなんですよ・・・。」そう言ってやんわりと断わるのです。

 本で言えば読者、映画で言えば観客、どちらも大富豪といよりはニックの立場にちかい普通の庶民であるわけです。ニックの気持ちになって大富豪のギャッツビーに一抹の憧れとコンプレックスを抱くことになると思います。表面的であるのか、それとも深層心理のなかでの思いなのかは人によって違うかもしれませんが、この感情が物語を面白くしているのだろうと思います。
 2012年ウォール街で「We are 99%」のプラカードを持ったデモが起こったことは記憶に新しいと思います。誰でもが大金持ちになってみたいという憧れ、しかし99%の人が叶わない夢、そこに沸いてくる複雑な感情は、ギャッツビーという謎の男への興味に向かってゆくのです。

 1900年初頭のアメリカ。映画では、富を持つものはニューヨークの高級住宅街にすみ、持たざるものは外延部の石炭処理場で真っ黒になって働くところが描かれています。そんな時代から現代まで、アメリカの人々は富に憧れ、そして富を独占する人々に反発する、そんな気持ちを抱きながら生きているのかもしれません。

 ちなみに、昨年のウォール街で99%のプラカードを持ってデモをしていたある女性のリーダーは、証券会社から仕事をしないかと誘われて、大喜びで今まで反対していた証券取引の世界に飛び込んで言ったそうです。これもアメリカっぽい話だなあ・・・。

映画「脳男」の功罪

2013年11月08日 | 気になる話題日報
タイトル「脳男」2013年公開
 監督:瀧本智行
 原作:首藤瓜於 「脳男」
出演者:生田斗真 ・・・ 鈴木一郎
    松雪泰子 ・・・ 鷲谷真梨子
    江口洋介 ・・・ 茶屋刑事

 最初のシーンからグロテスクな演出で始まり、苦手な人にはちょっと耐えられない映画かもしれません。原作を読んでいないので、本来の「脳男」の世界がどんなだかは知らないのですが、サイコ映画の分類になるのかもしれません。

 映画の中で脳男と呼ばれる鈴木一郎は、子供のときから自発的な行動を行わない人間で、ほうっておけば食事すらしない子供として描かれています。子供のときに預けられた精神病院の院長がよくよく調べてみると、一郎の記憶力は抜群で、本をパラパラとめくるだけで全部記憶してしまい、文章だけではなく記号や挿絵までも細部にわたって記憶してしまうことを発見します。


これはサヴァン症候群と呼ばれる症状で、映画「レインマン」でその症例の男をダスティンホフマンが演じています。自分以外の人間とは上手くコミュニケーションがとれない精神疾患を持つ男が、記憶力だけは抜群の才能を発揮することが描かれています。

 サヴァン症候群の患者は実際に数千年間のカレンダーを暗記していて、何年何月何日は何曜日だったか即座に答えられるという症例や、一冊の本をあっという間に記憶して、すぐその場で最後のページの最後の単語からさかのぼって話してゆくことが出来るという症例もあるそうです。

 ただし人とのかかわりがもてないので、映画の脳男のように他人を殺すことはありません。脳男の症例はまた違ったものであるということになります。まあ映画であるのだから、あまりくどくど言うとつまらなくなるのでやめておきます。

 原作の作者は、このほかに様々な事柄を調べ研究してこの物語に盛り込んでいます。まあ、気持ちの悪いシーンを我慢すれば結構面白く見られる映画であると思うのです。