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* 毎日デイリーニューズ「WaiWai」問題 おわびと調査結果 04

2008-08-17 | 毎日新聞
英文サイト問題検証(2) 読者受けを意識 過激に

 MDNが紙だった時代の「WaiWai」にも性に関する話題は掲載され、担当する外国人編集者が表現を和らげるよう指摘することもあった。担当記者も「編集者はバランスが取れている人で、あまりバカなことは書けなかった。ボツになった原稿もたくさんある」と話す。

 毎日新聞本紙では、記者が書いた原稿はデスクが目を通し、事実関係や表現について筆者に細かく確認を取ったうえで出稿される。さらに、紙面に掲載されるまでには、記事の扱いや見出しを決める部署や校閲部門、当日の編集責任者など何重ものチェックを経る。しかし、「WaiWai」ではこうした綿密なチェックは行われていなかった。原典の雑誌記事との照合も行われず、ほとんどが外国人スタッフの間で完結していた。

 ウェブへの移行後、事情はさらに変化する。「WaiWaiは人気コンテンツだし、週6本から8本にして毎日掲載しようという話になった」(担当記者)が、体制が追いつかず、チェック役を務めていた編集者も一般ニュースに集中せざるを得なくなった。

 日本人スタッフによるチェックはニュース原稿が中心で、結果的に「WaiWai」の原稿は編集者の目を通らず、リバイザーと呼ばれる英文の体裁を整える役目の外国人スタッフのチェックだけを受けて、そのまま掲載されることが日常的になった。

 外国人スタッフの一人は何度か内容について注意したが、担当記者は「批判されると僕も反発した。(編集長になってからはスタッフが原稿を)ボツにできる雰囲気ではなかったかもしれない」と振り返る。

 日本人上司である歴代の英文毎日編集部長はどんな役割を果たしたのか。編集部長は、週刊紙「毎日ウィークリー」の編集長も兼務していたことから、MDN全般についてはほとんどスタッフに任せ切りの状態が続いていた。

 02年10月に着任した編集部長は「WaiWaiは、全部ではないが、ウェブ掲載後のものを時々読んでいた。中には過激な表現もあったと思うが、総じて日本に興味のある外国人が読みたいと思う話をピックアップしていた」との認識を示す。

 当時を知る編集部員は「部長は、『ウィークリー』の改革に熱心で、MDNの内容についてはあまり口出しをしなかった」と証言する。

 後任の編集部長(05年4月~06年3月)=既に退職=は、英文関係の上部組織であるデジタルメディア局次長との兼務。事実上、局次長の職務が中心で、MDNの編集室にいることはなかった。

 部長は「WaiWaiの一部は読んでいて、内容は認識していた」一方で、「手が回らず、担当記者に全部やらせた」と反省する。担当記者の原稿がデスクの目を経ずに出ていたことについては「抵抗感はあったが、チェック体制が取れなかった」と話す。

 外国人スタッフは「WaiWaiはスラング(俗語)が多く、歴代の日本人編集部長が本当に理解していたのか」と、言葉の壁を指摘する。



* 英文サイト出直します 経過を報告しおわびします
* 再発防止へ体制強化 深刻な失態 教訓にします
* 英文サイト問題検証(1)
* 英文サイト問題検証(2)
* 英文サイト問題検証(3)
* 英文サイト問題の経緯
* 検証チームの分析
* 検証踏まえ2人追加処分
* 「開かれた新聞」委員会(1)
* 「開かれた新聞」委員会(2)
* 「開かれた新聞」委員会(3)
* 「開かれた新聞」委員会(4)
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(1面)[PDF/1.7MB]
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(特集面1)[PDF/966KB]
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(特集面2)[PDF/696KB]
* 英文サイト不適切記事問題 中旬に調査結果公表します(2008年7月7日)
* 役員・記者ら処分 英文サイトに不適切コラム(2008年6月28日)
* 英文サイトのコラム、読者におわびします(2008年6月25日)

* 毎日デイリーニューズ「WaiWai」問題 おわびと調査結果 03

2008-08-17 | 毎日新聞
英文サイト問題検証(1) チェックなく素通り 外国人記者任せ

 毎日新聞社は、英文サイト「毎日デイリーニューズ」(MDN)上のコラム「WaiWai」に不適切な記事が掲載された問題で、社内調査を続けてきました。関係者の事情聴取などで判明した検証結果と、調査をした特別チームの原因分析を報告するとともに、有識者による「開かれた新聞」委員会の委員の見解を掲載します。



 「WaiWai」は、毎日新聞が発行していた英字紙「毎日デイリーニューズ」のコラムの一つで、1989年10月に連載をスタートした。硬いニュースだけでなく、「軟らかい読み物」も扱おうと、国内の週刊誌や月刊誌の記事を引用しながら、日本の社会や風俗の一端を面白く紹介する狙いだった。

 英字紙の時代は、毎週日曜日に1ページを使って記事6本と雑誌の見出しだけを紹介するスタイルが定着した。英文毎日編集部の外国人記者や社外の外国人ライター3~5人が執筆。取り上げる雑誌も外国人が中心となって選択していた。執筆した外国人ライターの一人は「現在の日本はこうなっている、ということを描いていて、外国人記者の間で話題になっていた」と振り返る。

 今回、懲戒休職3カ月の処分を受けた担当の外国人記者は、96年10月から同編集部で働くようになり、「WaiWai」の執筆に加わるようになった。

 01年3月末、渡辺良行常務が総合メディア事業局長だった時にMDNは休刊となり翌月からウェブ上のみでの掲載となった。当時の英文毎日編集部長(故人)の編集方針で、紙面と同じ内容をネットで掲載することになり、「WaiWai」も継続された。

 英字紙時代の最後は外国人15人、日本人3人の計18人のスタッフがいたが、ウェブになってからは外国人5人、日本人3人の体制に縮小、のちに日本人は2人になった。「WaiWai」の執筆は、実質的に担当記者1人になった。

 担当記者は、ニュース翻訳の傍ら、1日1本のペースで「WaiWai」の記事(600語程度)を更新し、雑誌の選択も1人でした。途中から、英字紙時代の「WaiWai」に記事を書いていた外部の外国人ライター1人も執筆に加わり、担当記者が週7本、外部ライターが週1本のペースで記事を更新。その中に、性風俗などに関し、掲載すべきでない記事が多く含まれていた。

 担当記者は日本語を理解するバイリンガル。政治ニュースから話題物まで、硬軟双方をこなせる翻訳能力の高さを周辺は評価していた。

 05年4月に英文毎日編集部長の下で、MDNの編集長に就任する。編集長は社の職制上の肩書ではないが、担当記者はMDN全般を統括する立場となった。名刺には「毎日デイリーニューズ編集長」と表記した。

 当時デジタルメディア局長だった長谷川篤取締役デジタルメディア担当は「外国人スタッフのインセンティブ(やる気)向上のために抜てきした。非常に社交的で意欲があり、スタッフの中で最もよく仕事をしていた」と話す。

 一方で、担当記者が性的な話題をおもしろがることを心配する声もあった。

 担当記者は常にMDNに関心が集まることを意識していた。「母国での就職難のため来日した。仕事を失うことに恐怖感があり、MDNを閉鎖する言い訳を誰にも与えたくない」とも考えていたという。「性的な話題を取り上げるとユーザーの反応がよかったので、そういう話題を取り上げた」とも述べている。

 また、英字紙時代のMDN読者は、主に日本在住の外国人で、「WaiWai」に利用された雑誌がどのようなものか、あるいは毎日新聞がどのような新聞かある程度分かっている人々だった。ウェブ化によって、アクセスの60~70%が北米など海外になり、日本の事情を知らない人が読者になったが、担当記者は、記事内容について特に配慮することはなかった。

 担当記者は、正確さが問われるニュース記事と「WaiWai」とは別の扱いと考えていた。このため、紙面でもサイト上でも「雑誌記事の翻訳で、表現やその内容には責任を負いません。記事の正確さについても保証しません」との趣旨の断り書きを英文で載せていた。

 しかし、「ネット上では毎日新聞の記事と区別しない人がいたので、毎日にとってよくないかもしれないと思っていた」と振り返る。

 一方、著作権について、担当記者は知識も理解も十分ではなかった。

 「WaiWai」の執筆に加わった当初、ベテランの外国人ライターから「我々がやっている引用は許容範囲だ。単なる翻訳でなく、解説や説明も入れているから」と言われ、十分に検討しないまま大量の翻訳を繰り返していた。読者を引き付けようとして、元の雑誌記事にない個人的な解釈を盛り込むケースもあった。



* 英文サイト出直します 経過を報告しおわびします
* 再発防止へ体制強化 深刻な失態 教訓にします
* 英文サイト問題検証(1)
* 英文サイト問題検証(2)
* 英文サイト問題検証(3)
* 英文サイト問題の経緯
* 検証チームの分析
* 検証踏まえ2人追加処分
* 「開かれた新聞」委員会(1)
* 「開かれた新聞」委員会(2)
* 「開かれた新聞」委員会(3)
* 「開かれた新聞」委員会(4)
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(1面)[PDF/1.7MB]
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(特集面1)[PDF/966KB]
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(特集面2)[PDF/696KB]
* 英文サイト不適切記事問題 中旬に調査結果公表します(2008年7月7日)
* 役員・記者ら処分 英文サイトに不適切コラム(2008年6月28日)
* 英文サイトのコラム、読者におわびします(2008年6月25日)

* 毎日デイリーニューズ「WaiWai」問題 おわびと調査結果 02

2008-08-17 | 毎日新聞
2008年7月20日
英文サイト出直します 経緯を報告しおわびします

 毎日新聞社は英文サイト「毎日デイリーニューズ」上のコラム「WaiWai」に、極めて不適切な記事を掲載し続けていました。内部調査の結果を22、23面で報告します。日本についての誤った情報、品性を欠く性的な話題など国内外に発信すべきではない記事が長期にわたり、ほとんどチェックなしで掲載されていました。多くの方々にご迷惑をおかけしたこと、毎日新聞への信頼を裏切ったことを深くおわびいたします。監督責任を問い、総合メディア事業局長だった渡辺良行常務らを20日付で追加処分しました。

 皆様からいただいた多くのご批判、ご意見や内部調査で分かった問題点、有識者による「開かれた新聞」委員会の指摘を踏まえて再発防止のために次の措置を講じることにしました。

 8月1日付で「毎日デイリーニューズ」を新体制に組み替え、新編集長の下で9月1日からニュース中心のサイトに刷新します。新たに社説や「時代の風」など著名人による評論を翻訳して掲載し、海外の日本理解を深めるべく努めます。同時に西川恵専門編集委員を中心にベテラン国際記者らによるアドバイザリーグループを新設し、企画や記事の内容をチェックする体制をとります。

 今回の問題で失われた信頼を取り戻し、日本の情報を的確に海外に発信する英文サイトを再建するため、全力を尽くす決意です。

毎日新聞社
再発防止へ体制強化 深刻な失態 教訓にします

 毎日新聞社が英文サイト「毎日デイリーニューズ」(MDN)上のコラム「WaiWai」に不適切な記事を掲載し続けたことは報道機関として許されないことでした。日本についての誤った情報、品性を欠く性的な話題など、国内外に発信するにはふさわしくない内容でした。多くの方々に不快感を与え、名誉を傷つけ、大変なご迷惑をおかけしたこと、同時に毎日新聞への信頼を裏切ったことについて、深くおわびいたします。まことに申しわけありませんでした。

 内部調査の結果、問題のコラムは掲載の際にほとんどチェックを受けず、社内でも問題の大きさに気づかずにいたことがわかりました。何度もあった外部からの警告も放置していました。いずれも深刻な失態であり、痛恨の極みです。これに関連して関係者を内規に従い、厳正に処分しました。

 毎日新聞社は紙面の品質を維持するため社内に紙面審査部門を置き、有識者による第三者機関「開かれた新聞」委員会を設置して紙面の質向上に努めてきました。しかし、英文サイトで起きた今回の問題には目が届きませんでした。品質管理の仕組みが不十分でした。海外にニュースを発信する英文サイトの役割について十分な位置付けができていませんでした。

 今回、内部調査の結果や皆様からのご意見も踏まえて再発防止のための措置を決めました。

 MDNを刷新するのは、海外に向け正しい日本理解の素材を発信するサイトとして立て直すためです。また、今回のような配慮のないコラムが掲載され続けたのは、チェック体制の欠陥に加え、女性の視点がなかったことも一因という反省から、新たな編集長には女性を置くことにしました。アドバイザリーグループの新設も記事内容に対する適切な助言を得るためです。

 「WaiWai」は既に閉鎖しておりますが、過去の記事を転載しているサイトなどが判明すれば、事情を説明し、訂正や削除の要請を続けていきたいと思います。

 今回、初めて英文サイトについての見解を求めた「開かれた新聞」委員会の委員の方々には貴重なご意見をいただきました。今後も、英文も含めたウェブサイトについて目配りしていただきます。同時に社外からのご意見に対処する仕組みも強化します。

 今回、毎日新聞社は、英文サイトをジャーナリズムとしてきちんと位置づけていたのかという姿勢が問われました。この問題で失われた信頼を取り戻すため、全力を尽くす決意です。

毎日新聞社



* 英文サイト出直します 経過を報告しおわびします
* 再発防止へ体制強化 深刻な失態 教訓にします
* 英文サイト問題検証(1)
* 英文サイト問題検証(2)
* 英文サイト問題検証(3)
* 英文サイト問題の経緯
* 検証チームの分析
* 検証踏まえ2人追加処分
* 「開かれた新聞」委員会(1)
* 「開かれた新聞」委員会(2)
* 「開かれた新聞」委員会(3)
* 「開かれた新聞」委員会(4)
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(1面)[PDF/1.7MB]
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(特集面1)[PDF/966KB]
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(特集面2)[PDF/696KB]
* 英文サイト不適切記事問題 中旬に調査結果公表します(2008年7月7日)
* 役員・記者ら処分 英文サイトに不適切コラム(2008年6月28日)
* 英文サイトのコラム、読者におわびします(2008年6月25日)

* 毎日デイリーニューズ「WaiWai」問題 おわびと調査結果 01

2008-08-17 | 毎日新聞
 毎日新聞社は2008年7月20日、朝刊1面と特集面(22、23面=東京本社発行版)に英文サイトのコラムに関するおわびと内部調査結果などを掲載しました。1面掲載のおわびと特集面掲載のおわび(補足)は以下の通りです。その他の関連記事全文と紙面PDFについては、ページ下部にリンクを設けています。また、英訳は「毎日デイリーニューズ」に掲載しています。会社案内などは画面右上の「毎日新聞社トップページへ」からお入りください。
2008年7月20日
英文サイト出直します 経緯を報告しおわびします

 毎日新聞社は英文サイト「毎日デイリーニューズ」上のコラム「WaiWai」に、極めて不適切な記事を掲載し続けていました。内部調査の結果を22、23面で報告します。日本についての誤った情報、品性を欠く性的な話題など国内外に発信すべきではない記事が長期にわたり、ほとんどチェックなしで掲載されていました。多くの方々にご迷惑をおかけしたこと、毎日新聞への信頼を裏切ったことを深くおわびいたします。監督責任を問い、総合メディア事業局長だった渡辺良行常務らを20日付で追加処分しました。

 皆様からいただいた多くのご批判、ご意見や内部調査で分かった問題点、有識者による「開かれた新聞」委員会の指摘を踏まえて再発防止のために次の措置を講じることにしました。

 8月1日付で「毎日デイリーニューズ」を新体制に組み替え、新編集長の下で9月1日からニュース中心のサイトに刷新します。新たに社説や「時代の風」など著名人による評論を翻訳して掲載し、海外の日本理解を深めるべく努めます。同時に西川恵専門編集委員を中心にベテラン国際記者らによるアドバイザリーグループを新設し、企画や記事の内容をチェックする体制をとります。

 今回の問題で失われた信頼を取り戻し、日本の情報を的確に海外に発信する英文サイトを再建するため、全力を尽くす決意です。

毎日新聞社



* 英文サイト出直します 経過を報告しおわびします
* 再発防止へ体制強化 深刻な失態 教訓にします
* 英文サイト問題検証(1)
* 英文サイト問題検証(2)
* 英文サイト問題検証(3)
* 英文サイト問題の経緯
* 検証チームの分析
* 検証踏まえ2人追加処分
* 「開かれた新聞」委員会(1)
* 「開かれた新聞」委員会(2)
* 「開かれた新聞」委員会(3)
* 「開かれた新聞」委員会(4)
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(1面)[PDF/1.7MB]
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(特集面1)[PDF/966KB]
* 英文サイト問題検証の新聞紙面(特集面2)[PDF/696KB]
* 英文サイト不適切記事問題 中旬に調査結果公表します(2008年7月7日)
* 役員・記者ら処分 英文サイトに不適切コラム(2008年6月28日)
* 英文サイトのコラム、読者におわびします(2008年6月25日)

社説:視点 家計とリスク 「説教」の前にやることがある

2008-08-03 | 毎日新聞
社説:視点 家計とリスク 「説教」の前にやることがある

 小泉改革が絶頂期だったころ、当時の小泉純一郎首相や竹中平蔵経済財政担当相は「ハイリスク・ハイリターン」型社会の構築を目指した。現実は必ずしもその方向に行かなかった。

 「これではいけない」と慌てたのか、今年の経済財政白書が「リスクに立ち向かう日本経済」の副題を掲げ、企業や家計にリスクを取ることを求めた。さもないと経済が停滞し、成長もおぼつかないという。

 安心や安全の確保、地域の再生など小泉改革の負の遺産への取り組みに軸足を置いてきた福田康夫政権の白書としては、方向が違う気がする。

 成長戦略をぶち上げたものの、すぐに成果が上がるわけではない。原油や食糧の価格高騰も日本経済を直撃している。そこで、企業や国民に多少は危険にも挑戦してもらい、経済を元気にしようということだろう。

 リスクを取るとは、企業では新規事業に挑戦することや、業容の拡大や市場占有率を高めることを目指し買収・合併を行うことなどだ。家計では銀行預金や郵貯に偏っている金融資産の運用を株式や債券、投資信託など価格が市場で決まる商品に移すことである。ひとつの職場にしがみつくことなく、柔軟に転職することも、そうだろう。

 白書は、企業や家計がリスクを取っている国では成長率が高いという分析に基づき、論を進めている。少子・高齢化が世界的にも類例のない速度で進んでいる日本が、安心や安全の社会を築くには、成長率を高めなければならず、安全な道ばかり歩んでいてはだめという。

 企業にはこの指摘はほぼ当たっている。時代先取り的で、技術革新に積極的でなければ、発展はおぼつかない。

 しかし、「日本の将来のためだ。競争しろ。リスクを取れ」といわれても、家計は躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ない。米国のサブプライム問題に始まった市場のほころびはリスク社会の怖さを如実に示した。非正規労働の拡大は、若者に貧困はひとごとではないことを痛感させている。

 利回りは高いが、リスクも高い資産のうさん臭さを家計は感じている。鳴り物入りで対象業種が拡大された派遣も、企業の人件費削減の切り札だったことが明白になっている。

 福田首相のいう安全と安心には、社会的安全網の張り直しも含まれているだろうが、それは不十分なままだ。一方で、白書が長期リスクと位置付ける財政構造悪化の解決策はみえてこない。国民にリスクを取れと「説教」する前にやることがある。これは福田改造内閣の課題だ。
毎日新聞 2008年8月3日 0時03分

http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080803k0000m070097000c.html

ショートメール:匿名という安全地帯 /静岡

2008-08-02 | 毎日新聞
ショートメール:匿名という安全地帯 /静岡

 インターネット掲示板での事件予告が流行している。秋葉原の事件以降、有名人を名指ししたり、無差別殺人を予告して逮捕される事件が続いている。「ユーモアのつもり」「むしゃくしゃして」と理由はあろうが、匿名という安全地帯にいる甘えが背景にあるのは間違いない。

 自分の名前をネット検索したことがあるだろうか。例えば私の名前なら3000件ほど関連ページが出てくる。記事や報道姿勢への賛否両論もあるが、そのほとんどが匿名によってなされているのが気になる。これまで報道した事件について、誰かが匿名で記事と一緒に事実と違うことを書き込み、その内容を基に別の誰かが匿名で実名の加害者や被害者を批判するものがあった。匿名で中傷のような質問を会社にメールしてくる人もいる。

 批判や中傷という行為をするなら、自分への批判も受け止めるという意味で実名を記すべきだ。名前は単なる記号ではなく、誰かを傷つけることへの責任の所在を表す。【稲生陽】

毎日新聞 2008年7月31日 地方版
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20080731ddlk22070155000c.html

記者の目:安い割には美味 中国・台湾産ウナギ=小島正美

2008-08-01 | 毎日新聞
記者の目:安い割には美味 中国・台湾産ウナギ=小島正美

 夏バテ気味の子にウナギのかば焼きでも食べさせようとスーパーに行き、あまりの値段の高さに驚くお母さんの姿が目に浮かぶ。産地偽装で、国産かば焼きの値段が高騰している。

 日本の消費者は食品の国産志向が強い。だが、言われているほど中国、台湾産ウナギの品質は劣るのだろうか。8月5日は土用の(丑うし)の日でウナギがよく売れるだろうが、冷静に比較してみてほしい。

 7月18日、台湾産ウナギのPR会見が東京都内であり、郭瓊英(かくけいえい)・台湾鰻魚(まんぎょ)発展基金会長は「これからは台湾ブランドとして売っていきます」と自信をみせた。同席した涌井恭行・全国鰻蒲焼(うなぎかばやき)商組合連合会理事長も「消費者は違うと思っているかもしれないが品質に差はない」と述べた。会場の水槽には台湾産ウナギが泳いでいたが、国産ウナギと見分けがつくだろうか--。

 海外のウナギ養殖に詳しい舞田(まいた)正志・東京海洋大学大学院教授(水族生理薬理学)はきっぱりと言う。

 「私でも分からない」

 では、何がどう違うのか--。日本のウナギはハウス養殖されている。ボイラーで温めた水温の高い人工池に体長6センチ前後の天然ウナギの稚魚を入れ、約半年~1年育てた後出荷される。えさはアジやイワシなどの魚粉が主体だ。

 一方、中国、台湾のウナギは大半が露地の池で育てられる。加温しないため、育つ期間は約1~2年と日本より長く、えさはスケソウダラなどの魚粉だ。土地代などが安いため、飼育密度は日本のハウス養殖の10分の1~20分の1とゆったりと育てられる。

 意外なことに稚魚は日本、中国、台湾もフィリピン東方の北太平洋生まれで、遺伝子のDNAはいずれも同じだ。「あえて違いを言えばウナギの成長の速さと生産者の養殖知識のレベルくらいでは」(舞田さん)

 味や品質については、個々のかば焼き店に話を聞くと「素人には分からないだろうが、中国、台湾産の方がやや泥臭い」といった見方がある。しかし、東京都内で複数の国産ウナギのかば焼き店を経営し、品質に精通している三田(さんだ)俊介・東京鰻蒲焼商組合理事長は「味の好みは消費者によって異なるだろうが、特に国産の品質が優れているとは言えない」と話す。

 だが、価格差は大きい。

 中国、台湾産の生きたウナギの輸入価格は1キロ当たり(4匹)約2000円なのに、国産は約2400~2500円と2割程度高い。末端のかば焼きだと、国産は1キロ約5000円なのに対し、中国・台湾産は約2000円と2倍以上の開きがある。

 日本で生産・流通業者がぼろもうけしているからではない。加温設備や人件費など日本の生産コストが高く、価格に転嫁されているにすぎない。だから、安い台湾産を仕入れ、国産かば焼きとして高く売ればもうけは大きい。産地偽装はそこを逆手に取る。中国、台湾からウナギを輸入するセイワフードの原野茂樹・営業2部副部長は「とにかく中国、台湾産ウナギの評価が低すぎる」と嘆く。

 「食品の迷信」の著書もある食品アドバイザーの芳川充さん(45)は「日本の業者が消費者をだませたのはむしろ中国、台湾産は質がいいから。イメージで国産にこだわるのではなく、冷静に価格と価値をはかりにかけることが大切だ」と話す。まったく同感だ。

 一方、中国産ウナギの一部から合成抗菌剤のマラカイトグリーンの代謝物が検出された問題もあった。日本でも以前から使われ、法律改正で使用禁止となったのは03年7月のことだ。中国でも3年前から禁止されたが、検出されたのはごく微量で健康に影響するレベルではなく、以前に使われたものが池の底に残っていたか、水域汚染が考えられるという。ただ、中国、台湾ではウナギは重要な輸出品目だ。出荷時や加工段階、港の検疫と複数回にわたって動物医薬品の検査をし、その体制は日本より厳しい。日本では出荷時の自発的なサンプル検査が中心で、さらに充実させる余地は大きい。

 中国、台湾産のウナギの肩を持つつもりはないが、国産に比べ不当なまでに低い評価は、やはり冷静さに欠けると思う。

 愛知県犬山市の木曽川沿いで育った私は小学生のころ、竹を筒状に編んだ漁具を川底に沈め、よくウナギを捕った。いま最も心配しているのは、産卵する天然親ウナギが護岸工事やダムなどで海に帰る量が減り、日本、中国などの河口域で取れる稚魚が激減することだ。そうなれば、日本、中国、台湾の養殖自体が成り立たない。

 産地うんぬんよりも、食卓に上るウナギも身近な環境問題と密接にかかわっており、それがより重要だということにもっと目を向けてほしい。

 (生活報道センター)
毎日新聞 2008年8月1日 0時11分
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20080801k0000m070136000c.html

しらかば帳:交流の芽摘むな /長野

2008-08-01 | 毎日新聞
しらかば帳:交流の芽摘むな /長野

 松本市で予定された駐日韓国大使の講演と、東御市の日韓中学生の相互訪問が中止された。竹島問題のごたごたの余波という。講演中止は外交ゲームの一環だからやむをえない。

 しかし市民レベルの交流に水を差されたのは残念だ。しかも北朝鮮問題を巡り関係国が連携を強めるべき時期に、なぜ日本は竹島問題を持ち出したのか。

 冷静な議論の積み上げなくして領土問題の解決はない。官僚や政治家がもてあそぶ拙劣な「外交戦略」は、実は問題解決の萌芽(ほうが)となる草の根の交流活動を台無しにする。(龍)

毎日新聞 2008年8月1日 地方版
http://mainichi.jp/area/nagano/news/20080801ddlk20070049000c.html

竹島:韓国軍が大規模訓練 最新鋭戦闘機も投入

2008-07-30 | 毎日新聞
竹島:韓国軍が大規模訓練 最新鋭戦闘機も投入

 【ソウル中島哲夫】韓国海軍は30日、空軍、海洋警察と合同で「独島(竹島の韓国名)防御訓練」を実施した。竹島近海での訓練は毎年恒例だが、日程の事前発表や空軍の最新鋭戦闘機F15Kの参加は初めて。竹島領有権をめぐる最近の日韓摩擦を意識し、強硬姿勢を示す狙いとみられる。

 韓国軍によると今回訓練の全日程は29日から3日間。中心となる30日の内容について韓国メディアだけに事前発表した。

 聯合ニュースによると、訓練には海軍の3000トン級駆逐艦など艦艇6隻、海上哨戒機、対潜ヘリと空軍のF15K戦闘機2機、海洋警察の警備艇2隻が参加。日本海側から竹島に接近する国籍不明船をキャッチし、海空両面作戦で追い返すというシナリオで実施された。

毎日新聞 2008年7月30日 21時58分
http://mainichi.jp/select/world/news/20080731k0000m030103000c.html

記者の目:船場吉兆前社長ら書類送検=久木田照子(大阪社会部)

2008-07-29 | 毎日新聞
記者の目:船場吉兆前社長ら書類送検=久木田照子(大阪社会部)
 ◇久木田(くきた)照子
 ◇崩れた「料亭文化」への思い--業界の信頼回復、難しい

 賞味・消費期限切れ商品の販売、牛肉の産地偽装……。日本料理を代表するブランドが本当にこんなにひどいのか。どうしても自分の目でそれを確かめたかった。今春、料亭「船場(せんば)吉兆」(大阪市中央区、破産手続き中)の偽装事件の担当になり、実際に客として、本店を訪ねた。そこには、料理の味、盛りつけの美しさ、店を大切に思う仲居さんや料理人の心意気があった。まさに日本の料理界で長年培われてきた料亭の文化。「やり直すことができるかもしれない」と思った。だがそんな淡い期待はもろくも崩れ去った。

 船場吉兆ではその後、料理の使い回しが発覚し、店は廃業、先月にはついに湯木(ゆき)正徳・前社長(74)と長男の喜久郎・前専務(45)が大阪府警から不正競争防止法違反容疑で書類送検された。もう船場吉兆がよみがえることはないだろう。そしてその行為は、ブランドの失墜や、客への裏切りだけでなく、多くの人たちが築き上げてきた日本料理の文化すら危うくしたのだ。

 船場吉兆は、1930年に創業した吉兆グループの一つ。創業者の故・湯木貞一(ていいち)氏は調理技術のほか、もてなしに心を尽くした。法事の弁当には、ふたを開けた時に湯気が立つ状態の炊きたてご飯を詰めた。夏場には利休箸(ばし)を水で湿らせ涼感を伝えた。吉兆が日本料理を代表するブランドになったのは何も料理の味だけではない。貞一氏が追求したきめ細かな心遣いがあったからだ。

 船場吉兆の数々の不祥事は、こうした伝統の対極にあるように思えた。「偽装は従業員の判断」などと姑息(こそく)な責任回避に終始した正徳前社長の対応も許せなかった。だからこそ、「吉兆はあこがれ。頑張ってほしい」といった常連客らの激励の声に違和感を覚えた。一方で「本当は、伝えられるほどいいかげんな店ではないかもしれない」といった気持ちも芽生えてきた。その疑問を解消したかったのが、客として行ってみようと思った理由だ。

 料金は1人3万円以上した。広い座敷。生け花や掛け軸の配置が美しい。貝殻に載ったタイの子、ほろっと崩れる一口大の焼きサケ。わんのふたを開けると、ハマグリとだし汁、木の芽の香りが立ち上る。一気に料理に引き込まれた。

 途中、女将(おかみ)の佐知子社長(71)があいさつに現れた。昨年12月の記者会見で、長男の喜久郎前専務に小声で受け答えの言葉を指示した「ささやき女将」だ。「あの有名な女将さんですね」と話しかけると、「お恥ずかしいことで。ありがとうございます」とほほ笑みながら切り返された。さらに女将は「帰りにお写真でも一緒に」と続けた。女将目当てのやじ馬的な問いにも、サービスで応じる。余裕のようなものを感じた。

 女将は「今日はお誕生日か何かで」と尋ねてきた。同行した友人が「30歳を迎えた記念に」と答えると、女将はいったん席をはずし、「料理長からです」と小さな器で赤飯を出してくれた。客の思いをさりげなく探り、大事な時間を盛り上げる心配りがうかがえた。

 料理は終盤に差し掛かり、すき焼きが運ばれた。仲居さんは「鹿児島産です」と言う。前社長らは「鹿児島産」の肉を「但馬(たじま)牛」など兵庫県産として販売したとする容疑で送検されたが、偽装しなくてもおいしい肉だった。「不祥事の料亭」という思いはもはや消え、言葉も出せずに食べていた。落ち着いた空間で美味を楽しみ、幸せな気分で帰っていく……。そんなぜいたくな時間を提供するのが料亭の文化なのだろう。

 大阪文化に詳しく、なじみの料亭もあるという直木賞作家の難波利三(なんばとしぞう)さん(71)は「料亭は、食い道楽の街・大阪の中でも、一番の料理を食べさせる誇りがある店。年月を経ただけでは生まれない『伝統』に見合う料理に信頼を寄せ、お客はお金を払っている」と話す。そんな場であるからこそ、その後の船場吉兆の対応には、「いちげん客」の私も「裏切られた」と感じた。店を支えてきた人たち、常連客にはなおさらだったろう。

 一方、吉兆グループの他の店は売り上げが減り、嫌がらせのファクスも届いた。日本料理店の業界団体は「『お前のところもしていないやろな』と言われた店もある。日本料理界への打撃は大きい」と憤る。一業者だけの信頼失墜で済まないのが食品偽装の特徴だ。

 長い時間をかけて築いた文化すらぐらつかせた船場吉兆の事件は、それが顕著に表れたケースだった。一度失った信頼を取り戻すことは簡単ではない。そして、しっぺ返しを受けるのは自分たちだけではない。偽装に手を染めた事業者はそのことを肝に銘じてほしい。

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毎日新聞 2008年7月29日 東京朝刊
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