
島で食事をすることには少々の問題があります。食堂が極端に少ないからです。私が確認できたのは「富士食堂」と「光食堂」の2か所だけでした。島内で配付している(南大東村商工会が制作したもの)パンフレットなどによれば、この他にも食事を出す店や喫茶店、パン屋があるというのですが、いずれも開店休業の状態でした。開業している食堂が2店舗だけ、というのはそれで需要と供給のバランスが取れている状態だからでしょう。人口が増えたり、公共事業が発生して島外からの出張者が増えれば、休業している店舗も営業を再開することになるのです。
富士食堂は南大東島のガイドブックや観光パンフレットには必ず掲載されている、超有名な(南大東島だけですが)食堂です。その理由は、島の中心部にある唯一の食堂であり、観光客が昼食をとるにはここしか利用する所が無いからです。ホテルよしざととは道路の反対側に位置していて、昼食が出ないホテルの宿泊客のほぼ全員はこの食堂を利用せざるを得なくなります。
建物は木造平屋で質素な外観です。看板には大きく「大東そば」とあり、最初はそば専門店かと思っていたら、屋根の上に「富士食堂」の看板が出ていました。店内は極めて広く、テーブル席がざっと40席、10畳ほどの座敷がありました。島の面積に比べてこんなに広い食堂では採算が成り立つのか疑問に思うのですが、この富士食堂は島内では重要な給食施設なのです。顧客の主体は観光客ではなく、主な顧客は地元の会社に勤める会社員や付近に住む居住者なのであり、この食堂が閉鎖となったとしたら途端に島内で調理した料理を供給してくれる施設が無くなり、島での生活が機能しなくなります。独身者や長期滞在者にとっては、生活の基盤となる食生活を支援してくれる唯一の施設と考えて良いでしょう。味や内容はともかく、島では食べることができるのが重要なのです。
この日の昼食に入店しましたが、店内には役場に勤める公務員や独身者で混んでいまさいた。家族連れも見かけられ、さながら、島内のファミリーレストランと言った雰囲気でした。