
【あるオブジェ作家のお話を聞く機会がありました。彼女は熱心に語ってくれました】
よくアートと間違われるけど、わたしはそもそもアートとか芸術を創作しようとは思ってない。よくわかんないし。
わたしが追求してるのは、ただのエロ。エロと一口にいっても千差万別、十人十色。百人でも千人でも十色(naosu註:若干意味不明であります)。
ただのエロですが、わたしにとってエロとはこれ以外にはあり得ないのです。性別の境界を行ったり来たりするエロス。
男だけど本当は女かもしれない。女だけど男になりそう。そんな靄のかかった境界を行き来する天使たち。love!
ただし、男女という性別をそもそも無効なものとして、「どっちでもないわたし」を主張する手合いには、まったく興味なし。エロスに政治はいらないです。
つねに女と男のあいだを揺れ動いているのだから、「選択しない」というのもありえないんですよ。その時点では必ずどちらかだから。そもそも「選択しない」というのは、固定したカテゴリーですよね。こういうカテゴリーを創設するのは政治の領域です。カテゴリーからつねに浮遊するのがエロス。ねえ、わたしにこんな議論させないでよ。面倒な議論は終わりッ。
女という性、男という性、そのふたつを行き来するのは、肉体と心です。行き来しているうちにこのふたつが衝突します。つまり男の子の肉体と女の子の心がぶつかりあうのですね。
よろしいですか、男の子の体と女の子の心がひとりの人間の中でぶつかり合うのですよ。まあ、大変。
そうすると、どういう事象が起きるか。うーい、えもいえぬエロスが発生するんですよ。じつに濃密なエロスが醸し出されます。これなんです、わたしが求めているのは。
今回のテーマも、まさにそれです。そのエロスを発生させたくて、今回、ひとりの男の子(大学六年生、小学ではないですよ、大学。まあ、小学六年生に見えなくもないですが)に協力をお願いしました。
わたしは大変に幸運なことに、その男の子の致命的な弱みを握ったのでした。どんな弱みかとあなたはお訊ねになるのですね。いや、それは野暮というものですよ。言えるわけないでしょ。第一言ったら、もうそれは弱みではなくなっちゃう。わたしはその弱みをうまく活用して、男の子にモデルになってもらったの。弱みというのは、強みと同じで、これは活用するものです。強みとちがって使いづらいところはありますけどね。問題は時宜を得よということです(naosu註:このあたりも若干意味不明でありますね。よく話があちこちに飛ぶんです、この先生)。
わたしがこの男の子に求めたのはオブジェになってもらうことです。オブジェになって、美術展の会場を一定の規則にしたがって、ふらふら歩き回ったり、じっと静止したり(一回につき七分)してもらいます。
この美術展はエロスがテーマではありません。ほかの作家は自分たちの美、メソッド、物象による時代への問いかけをとことん追求して、わたしのようなエロ一筋はいませんでした。だからわたしはこの美術展に参加する資格がないように思いました。友人でかつてわたしの奴隷だったnaosuというチビ太くんが人を通じてわたしに美術展への参加を呼びかけた時は、もちろん断りましたわ(naosu註:ひどい言いよう。当人を前にしていることを忘れています)。わたしは芸術を創作してるのではなく、ただエロスを求めているだけですから、芸術の人たちと一緒に作品を展示したら、芸術の人たちに失礼じゃないかなと思ったのです。ところが、naosuの連れてきた主催者とかいう大柄な、ちょっとばかりセレブを気取った態度が鼻につく女の人は、それでいいと言う。エロス追求、エロスしか頭にないわたし、「エロスで性的な感興を高めるのがわたしのゴール」とほざいてのほほんと生きてるわたしに、「それもひとつの生き方ですよね。わたしたちはいろんな生き方をしてます。それを展示会という場で実感できればいいなと考えてるのです」とわかったようなことを抜かして、参加を勧めるのです。わたしは「ほう、そういうことなら」と思ったよ。参加した一番の理由は、ただで参加させてくれるってところかな。
オブジェになるにあたって、その男の子には脇からVIO、足を脱毛してもらいました。まあ、もともと薄かったから、たちまちつるつるの女の子みたいな肌になったわ。ええ、モデル代は払いませんでしたけど、この脱毛の費用と会場までの交通費は負担してさしあげましたよ。わたしだって血も涙もない鬼畜じゃないからね。
展覧会初日、開場の三時間前に約束どおり、男の子は控室にひょっこり姿をあらわしました。わたしは両手を上げて男の子を出迎え、言いました。「よく来たわね。約束をしっかり守ってえらいえらい。では、さっそくだけど、お洋服を脱いでください」男の子はびっくりしていました。そりゃそうよ。服を脱ぐなんて話は今初めてしたんだからね。でも、脱毛させた時点で察してもよかったかもね。意外に鈍い子だったわ。まあ、だからこそわたしに致命的な弱みを握られちゃったんだけどね。
「え、服を脱ぐんですか?」男の子は顔面を強張らせていました。「そうよ。服を全部脱いでよ」男の子はためらっています。わたしはついに癇癪を起こしました。わたしが癇癪を爆発させると、いろいろなものが壊れるのですが、この日は陶器のマグカップを四つほど壁に叩きつけるだけで済みました。男の子は恐れをなして、シャツのボタンを外し始めました。「それも」わたしは男の子の白いアンダーシャツを指して言いました。男の子は上半身裸になりました。乳首がかわいいです。「これで、いいの?」男の子が震えた声でききます。「何言ってるの。ズボンも靴も靴下も脱ぎなさいよ」わたしは冷たく言い放ちました。男の子は素直に裸足になりましたが、ズボンを脱ぐのはためらっています。わたしはまたもや苛々してきました。いつでもそうです。美術展本番前は、精神的に不安定になって、ジェイソンみたいに斧を振り回したながら、湖畔を歩き回りたくなるのです。わたしは斧の代わりに椅子を振り回しました。ちょうど控室に入ってきた男の人(運の悪い男というのはいるものです)のおでこに椅子の脚があたり、流血騒ぎになりました。しかしわたしの知ったことではありません。わたしは自分が握っている男の子の弱みのことを匂わせました。男の子はついに「わかりましたよ。脱ぐ、脱ぐから」と言って、ベルトを外し、ズボンを下ろしました。
縞柄のトランクスがあらわれました。縞柄のトランクス! ガーン。これを見た時のわたしのショックは大きかった。もうこの美術展、満を持したわたしのビックバン、わたしの求めてきたエロスがこれで台無しになったと思いました。もう帰ろうかな。いや、待て、と頭の中のもうひとりのわたしが命じました。そこでわたしは腕を組み、珍しく考え込みました。うーん、縞柄のトランクス、これはちがう、これでは全然エロスにならない。ではどうすればいいのか。そこでわたしは男の子の脱いだ衣類、靴と靴下と鞄を金庫に入れると、トランクス一枚の男の子を控室に残して、近くの衣料用品店に買い物に行きました。
安物のSサイズの白ブリーフを買って控室に戻りました。控室では男の子がトランクス一枚でほかの美術作家の女の人たちと談笑していました。そんなに恥ずかしそうではなかったのが、ますますわたしの癪にさわりました。これも縞柄のトランクスなどという、いかにも若い男の子が穿きそうで、女の子たちが「彼氏に身に着けていてもらたいたい下着ベストテン」に堂々とランクインしそうな下着を身に着けているからです。いいですか、男の子はパンツ一枚で女子に交じるのであれば、羞恥を感じさせなくてはいけません。もっと恥ずかしく、さもなければ死を、です。それにはやはり、ブリーフしかないのです。小学生の時の白ブリーフ、この呪いから男の子は逃れられません。色は白、これ一択です。まあ、黒もたまにはいいと思うけどね。ところでnaosuは今も白ブリーフなの?
わたしは、縞柄トランクス一枚の男の子に女子たちとの会話を中断させました。彼はわたしのオブジェですから、わたしの言うことには絶対に従わなければなりません。わたしは男の子にこう言いました。「ね、楽しそうにお話してる時に悪いんだけど、今すぐそのトランクスを脱いでくれる? その胸のむかつきをおぼえるくそトランクスを」
これには男の子だけでなく女の人までもびっくりして、空気がざわつきました。女の人の中にはわたしにあからさまな非難の目を向ける人もいました。しかしわたしは動じません。「早く脱ぎなさいよ」
椅子の脚が当たっておでこから血を流したおじさんが大きな絆創膏を貼って戻ってきました。男の子が今しもトランクスを脱ごうとしているのを見て、「おれも脱いだほうがいいかな」と言いました。だれも何も返しません。男の子の、今まさにトランクスを脱ごうとしている、その一挙手一投足にここにいる全員の注意が集中していることにおじさんは気づいていないのでした。
男の子は意外と素直に、女の人たちが見ている前で、トランクスを脱ぎました。これでとうとう素っ裸です。「気をつけ」とわたしは続けて命令しました。男の子は恥ずかしがりながらも、特に抵抗したり文句を言ったりもせず、命令に従いました。男の子の性器が露わになりました。脱毛させているので、子供のような代物です。最初からサイズは大きくありませんでした。むしろ脱毛したことで、少しは大きく見えたのではないかと思います(脱毛させたわたしに感謝してもいいくらいだ)。これで毛むくじゃらだったら、完全に隠れていたでしょう。もともと薄い陰毛だったのは、神の慈悲なのでしょうね。男の子の秘宝、オブジェが公開されると、女の人たちがなぜか続々と控室に集まってきました。素っ裸の男の子が気をつけの姿勢を保って晒し者になっています。
わたしは買ってきたブリーフの袋をあけて、男の子に渡しました。「これを穿いて」
不思議なもので、男の子がブリーフ一枚を身に着けると、控室の女の人たちは、それぞれの用事を思い出したのか、次々と出て行きました。
「あなたには、その白いブリーフのパンツ一丁で、会場内をうろついたり、指定した場所で静止してもらいたいの。その動き方についてはすでに教えたわね。覚えてる?」
「はい」と男の子は頷きました。めちゃくちゃ恥ずかしそうです。顔がほんのり赤く染まっているのは、あながち化粧のせいばかりではないのです。
「会場を歩き回ったり、止まったりするのは、承知してたけど、まさかパンツ一丁にさせられるとは思わなかった。なんで、僕を裸にするんですか? 恥ずかしいからパンツ一枚は勘弁してほしいです。せめて短パンでも穿かせてください」「だめよ」「シャツ羽織ってもいいですか。冷房が当たると寒いから」「だめよ。とんでもない。あなたは裸でいること。パンツ一枚があなたの制服なのよ。この格好で過ごしなさい。これは命令です」
「そんな、ひどい」男の子は声を震わせました。「なんだって、僕をこんなに恥ずかしがらせるのですか」
「それはね、エロスよ」とわたしはパンツ一枚の男の子にきっぱりと伝えました。真意を理解してもらえるかどうかはわからないけど、男の子はただのオブジェですから、彼が理解したかどうかは、大切ではありません。どうでもよいのです。大切なのは、この子が男の子の肉体を恥ずかしがりながら、恥ずかしがるという心の動きを通して、女の子に接近することです。心が女の子になると、男の子の肉体と衝突します。男の子の肉体はその時、変化して、限りなく女の子に近くなるのです。これは自然の驚異であり、原始エロスです。心が体に影響を与える瞬間です。美術展を訪れた人は、その貴重な瞬間を目の当たりにするでしょう。
ただエロスに目覚めたとしても、この美術展の中で男の子のブリーフを没収するような真似はご遠慮いただきたいと思います。この男の子は今日から三週間、朝の八時から夜の九時まで、毎日パンツ一丁になって、この会場内を歩き回ったり静止したりしなければならないのですから。
たった一枚身に着けているパンツを失ったら、素っ裸でそれを実行しなければならなくなります。わたしは無情にも、そう命じてしまいました。それはさすがにかわいそうでしょ?
でも、パンツを脱がすくらいならいいですよ。必ずあとで返してくださればね。これも原始エロス、途方もない自然のなせるわざですからね。
【おしまい】
>白いブリーフ履いてたnaosuくんがトランクスデビュー出来たのに結局女子の前で白... への返信
コメント、とても嬉しいです。
これからも白ブリーフへの偏愛をいろんな趣向で語っていきたいです。よろしくお願いします。
そして同級生の男女や近所の知り合いたちを招待して晒し者に・・・。
>ぜひ、パンツも脱がせてあげてください。... への返信
コメント、ありがとうございます。
そうですね。パンツも脱がしてしまいましょう。
これからも応援、よろしくお願いいたします。
>2025年11月18日をもちまして、goo blogはサービスを終了することとな... への返信
そうですね。引っ越し先を検討しているところです。決まりましたらお知らせします。