人間世界において悪事をなし、死んで地獄に落ちた罪人に、閻魔王が尋ねた。「おまえは人間の世界にいたとき、三人の天使に会わなかったか。」「大王よ、わたくしはそのような方には会いません。」
「それでは、おまえは年老いて腰を曲げ、杖にすがって、よぼよぼしている人を見なかったか。」「大王よ、そういう老人ならば、いくらでも見ました。」「おまえはその天使に会いながら、自分も老いゆくものであり、急いで善をなさなければならないと思わず、今日の報いを受けるようになった。」
「おまえは病にかかり、ひとりで寝起きもできず、見るも哀れに、やつれはてた人を見なかったか。」「大王よ、そういう病人ならいくらでも見ました。」「おまえは病人というその天使に会いながら、自分も病まなければならない者であることを思わず、あまりにもおろそかであったから、この地獄へくることになったのだ。」
「次に、おまえは、おまえの周囲で死んだ人を見なかったか。」
「大王よ、死人ならば、わたくしはいくらでもみてまいりました。」「おまえは死を警め告げる天使に会いながら、死を思わず善をなすことを怠って、この報いを受けることになった。おまえ自身のしたことは、おまえ自身がその報いを受けなければならない。」