中村如水随想録

身体論、体癖論、潜在意識、NLP、アレクサンダーテクニーク、インナーゲーム、引き寄せの法則、音楽。今、ここ。

133. イシューからはじめてはいけない人たち?

2011年10月01日 10時56分18秒 | 体癖
「イシューからはじめよ」は万人向けだろうか?たぶん違う。

犬の道の経験者、「解の質を上げる」ことの苦労を味わったことのある人は、この本によって新しい仕事の仕方を学ぶことが出来るかもしれない。しかし、まったく仕事を未経験の新人が読んだ場合、果たしてこの本がよい影響を与えるかどうか、私には自身が持てない。どうやらアマゾンのレビューでも多くの人が同じことを思ったようで、30歳過ぎくらいの人が読むとよい、などと書かれている。

世の中には「頭でっかち」な人というのはかなりの数いる。体癖論でいうなら上下型である。上下型体癖の新人がこの本を読むとどうなるか?この本の解くところは極めて合理的なので、書いてある通りにやってみたいと思うだろう。上下型は現実世界の鬱陶しさを常日頃から鬱陶しいと思っていて、言葉と論理を愛する人たちなので、「イシューの見極め」などと聞くと喜んで飛びつくのではないか?

そこまではよい。問題はその後、「解の質」を上げるための労力を惜しみなく投入することが出来るかどうかだ。上下型傾向というのはこういう地べたにおりての努力とかは本来性に合わないので、思ったとおりの結果が出なかった場合に、そこで踏ん張って突破口を見つけることが出来るか。私が危惧するのは、この時に、「ああ、うまくいかない。これはイシューの見極めが失敗したからだ。」と言って、現実世界の壁から背を向けてしまい、次なる「究極のイシュー」探しに逃げてしまうのではないか、ということだ。これをずっと繰り返していたらもちろんどこへも行き着かない。グダグダの「自分探し」によく似ている。

万一、こういう状態に陥ってしまうと、これは「犬の道」以下と言われても仕方ない。なんら実際の仕事をせずに、どの仕事をするか、何がよい仕事で何がよくない仕事かということばかりずっと考えることになるからだ。そして上下型は考えることで興奮し、満足するので、「イシュー」を頭の中でいじくり回すだけで自己完結してしまう危険性をはらんでいる。どこまで腹をくくってやり遂げる覚悟ができるているか、ブレない思考を維持できるか。その辺りが、ともすれば浮世離れした仙人になってしまいがちな上下型の人にとっては難しいのではなかろうか。

これがもし5種体癖なら、複雑な現実問題の処理こそ彼らが最も輝く瞬間なので、あらかじめイシューを上手に設定してさえあれば、「解の質」の向上については無我夢中でいろいろ試してやってのけてしまうように思える。そもそも売れっ子の勝間和代さんは典型的な5種体癖であるし、マッキンゼー・アンド・カンパニーという会社の文化自体が相当5種体癖志向なのではないかと疑っている。この本の著者の安宅氏がどういう体癖の持ち主かまだ分からないが、5種的な物の見方に馴染んだ人、ということは言えそうだ。

なので、この辺り、体癖や本人の経験によって、向き不向きや順序があるのかもしれない。捻れ型体癖の人たちは、「犬の道」を誰よりも遠くまで突っ走ることに生き甲斐を見つけそうだ。実務だけでなく「イシューの見極め」も「勝ち負け」の世界だ、と受け止めれたら、そして「イシューの見極め」の難しさを経験できたら、「イシュー」方向へ走ることも覚えられるかもしれない。左右型はどうだろうか。これは正直予測がつかない。彼らの得意とする食欲と感情の世界は、「イシュー」や「解の質」とはかなり異質だ。

上下型は言葉が得意なので「イシューの見極め」はたぶん喜んでやりたがるだろうが、いざコレ!という結論を下すのは、難しいかもしれない。論理だけをいじくっても常に無限に可能性があって、答えは収束しないものだ。そういう判断の部分では、本能の働きの強い開閉型、特に閉型9種が才能を発揮しそうである。そういう意味では左右型も本能的にかなりよい判断を下すことはできそうだ。

ところが、この場合、判断が本能的であるがゆえに、正しい判断であったとしても、それをうまく言語化できず、たとえば部下との間でゴールを共有できない、などという事態が発生するおそれはある。上下型にも言葉に頼るがゆえの長所として、論理的な説明力があるわけだ。言葉を通じて、はじめて他者とイシューを共有できる。

各種体癖に登場願ったため取り留めもない格好になってしまったが、頭でっかちな上下型の新人の「自分探し」的な「イシュー探し」は、大いに起こり得る事態なので、注意されたし、というのが今日の主旨だ。長い目で見ればそれで結局よいイシューを見つけて成功するかもしれず、必ずしも悪いとも限らないが、傍から見ていれば不安になることは間違いなし。

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