夏至の日を迎えるとこれから昼が短くなるんだなと思います。
有意義にすごさなくっちゃ。
気温はこれからまだまだ上昇しますね。
兼題:結
花は葉に吉の神籤を紐結び 幹夫
〇(瞳人)ははは、やっと吉が出ましたか。長いことかかりました。
〇(楊子)「吉」という中間どころの御籤がいいですねえ。いいことやよくないことを詠むより、何気ない平常日常を詠むことのほうがむずかしいです。
〇(あき子)音調と光景のバランスが整っていて、気持ちが良い。
世界中のため息結え夏銀河 宙虫
◎(カンナ)中七が良いですね。季語との距離も良いと思います。
七変化悪女と結びし縁かな 瞳人
○(吾郎)紫陽花の縁の微妙さ加減がよろしいかと
○(仙翁)悪女ですか。七変化も面白いですね。
○(宙虫)みんな裏を返せばどこかに悪女の芽を持っている。紫陽花が意味深。
(選外)(卯平)七変化と悪女は同心円の世界か。そこをみゆき節で「悪女とあぢさゐ」を活かしたら面白いだろう。但し中七下五の景から悪女を詠み手の伴侶だと言うはその反語(あぢさゐ)としても抵抗がある。七変化に理を感じる。
結婚後は大目に見ること水澄まし 泉
〇(瞳人)其処です、こっちもそうみてもらいたいよ。
逢うときのシニヨン高く結ぶ初夏 楊子
○(餡子)ドキドキしますね。「会う」ではなく「逢う」ですものね。襟足が美しいことでしょう。桂信子の「ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜」を思い出しました。
〇(あき子)はつらつとした高揚感が、言葉に乗ってリズミカルに描かれています。
◯ (アゼリア) 心の昂りが上手く表現されていると思いました。
〇(まきえっと)ちょっとした高揚感が「シニヨン高く」に表現されていていいですね。
病葉の落ちる宿靴紐を結ぶ 仙翁
御破算になった結末蝉の殻 カンナ
○(泉)強烈なパンチを受けました。
〇 (多実生) 結末の証を残す蝉の殻。
省略の多い結論南風吹く まきえっと
◎(楊子)「まあ、そんなところで」で終る結論を想像してにやりとしました。明るい季語がいいです。
〇(あき子)その結論に言いたいことはいろいろあると、ため息が聞こえてきました。
(選外)(卯平)上五中七は納得。季語「南風吹く」の「吹く」で選まで至らない。「南風かな」若しくは「南風(みなみかぜ)」であれば選を検討した。
森かいな結束素っ気ない刈藻 吾郎
〇(カンナ)回文面白いですね。
○(宙虫)海藻の森、刈ってしまうとあっけないものかも。
〇(まきえっと)海の中の様子が目に浮かびます。
黒南風や結び目堅く舫ひ綱 アネモネ
○(幹夫)時化の港に停泊の船が流されぬよう。
〇(珠子)ヤワな句を作っていながら、こういうかっちりした句に惹かれます。
○(卯平)景が見えて共感出来る。季語も違和感がない。中七下五「結び目堅き舫ひ綱」であれば十分に特選候補。
○(ちせい)硬い結び目が風に吹かれてもびくともしない光景をいいと思いました。
〇(まきえっと)きちっとしていていいですね。
結界の竹を越え行く黒揚羽 餡子
〇(珠子)竹で作られた結界を超えて消えてゆく黒揚羽。閑か。
○(吾郎)竹のような具象でなくてもよかったかな
○(仙翁)蝶には、竹藪の先は異界なのかも。
〇(めあもん)毎年、近くの神社で黒揚羽を見かけます。確かに、黒揚羽には結界を越えそうな雰囲気がありますね。
〇(藤三彩)「界を結する」結界石はわかる、が竹にひっかかる。茶道具の結界は道具畳と客畳の境に仕切りとして置くものだそうです。
○(ちせい)硬い結び目が風に吹かれてもびくともしない光景をいいと思いました。
(選外)(卯平)最初は選候補。再度の選で外した。理由は「結界の竹」。竹林が結界か、それとも一本の竹が結界か。何方にしても結界と竹の関係に違和感が残る。黒揚羽は上手い。
結ぶ手の温もり確か蛍の夜 多実生
○(泉)人と人との触れ合いは大切です。
○(幹夫)淡き恋それとも両親との思い出でしょうか。とんと見かけなくなった蛍です。
◎(瞳人)おお、蛍の舞う頃って、けっこう、空気は冷たいのですよね。
○(アネモネ)「温もり確か」が上手い。蛍狩りの闇の濃さが感じられます。
◯ (アゼリア) 手の温もりが感じられるように思いました。
(選外)(道人)やや既視感のある甘過ぎる句かも知れないが好きな情緒。「蛍火や手首細しと掴まれし」(正木ゆう子)
髷を結うまでのザンバラ五月富士 あき子
○(アネモネ)時代劇のようで面白いと思いました。
◎(餡子)総武線に乗るとこのようなお相撲さんをよく見かけます。まだまだ力士への道は遠いですが、がんばれ!と声をかけたくなります。富士を目指して。
(選外)(藤三彩)五月富士で力士を想起させようという意図が見える。
風呂敷を結ぶ人妻明易し 卯平
闇焦がす平家螢や結の村 道人
〇(春生)今では「結」も死語化してしまいましたが、この美しい伝統を守り抜いている村もあるんですね。
○(餡子)闇・平家蛍・結・村と並び平家の落人部落を思わせます。
◎(アゼリア)格調の高い句と思いました。
明易しあらあらかしこにて結ぶ 珠子
○(アネモネ)手紙を書く一生懸命さが見えてきます。「明易し」に得心。
結葉や遠き町より遠き音 めたもん
○(卯平)結葉の季語にここでは共感。中七下五には緩みは感じるが詠み手のノスタルジアだろう。
〇(藤三彩)結葉(むすびば)が気になり調べると「若葉どおしが相重なり合って結ばれたような形になること」近い景に遠い景を合わせたということか
結願の札所驟雨に煙りたる 春生
○(吾郎)この時期ならではの湿度
◯(アゼリア) 青空が迎えてくれると良かったですが、これはこれで忘れられない思い出になりそうです。
○(宙虫)ほっとした安堵感も見える。不思議な句。
お大事にと結ぶ手紙や遠郭公 アゼリア
〇 (多実生) 結ぶ手紙が郭公で想像が広がります。
◯(道人)故郷の友人へのお見舞い手紙だろうか。「遠郭公」が中々。
◎(めたもん)病気の友に宛てた手紙を描き終え聴く遠郭公。季語「遠郭公」が詠み手の性格や気持ち、更には二人の関係を伝えています。
根と結合して居る百足水をかけ ちせい
白玉を食べに茶寮の結界石 藤三彩
テーマ:雨
コンビの男と女喜雨の中 卯平
ビニールの包む新聞濃紫陽花 まきえっと
○(泉)言われてみれば、雨の日の新聞はビニールで包まれています。
◎(卯平)平明にして容易に共感。景も見える。相対的な特選。「ビニールの」か「ビニールに」か。
◯(道人)「雨」を使わず雨の景色がよく分かる句。省略と季語の斡旋の妙。
五月雨や出勤印の昔あり 餡子
〇(珠子)思い出しました。かな~り昔のことですが。
○(アネモネ)ありました!懐かしいなあ笑。
ヘリの音まるくくぐもる梅雨入かな めたもん
〇(あき子)思い出せない昔に、そんな体験があったような気がします。
○(宙虫)その気持ちよくわかる。
雨垂れの激しくなりぬ蝸牛 春生
◎(仙翁)蝸牛は、激しい雨に生きているのでしょう。
○(ちせい)素朴にいいと思いました。雨量にも負けぬ蝸牛の存在。
卯の花の村にモーゼの道はない 宙虫
〇(藤三彩)モーセ(Moses)は出エジプトだが、卯の花(うつぎ)、「卯の花腐し」の村との関係はほぼ不解明なつながり。
渇水より出水ばかりの今世紀 多実生
逆境の長きトンネル梅雨晴間 あき子
〇 (多実生) 逆境の中の梅雨晴間に希望が見えます。
(選外)(卯平)上五「逆境」に違和感。長いトンネルは当たり前だろう。寧ろ「短い隧道」に発見出来る景がありはしないか。
こぬか雨帰省相席目開かぬ児 吾郎
○(泉)見事な回文だと思います。
○(仙翁)光景が浮かびます。巧みに出来上がっていますね。
◎(道人)車窓に小糠雨とは、風情のある帰省。偶々就寝中の子連れと相席。自ずと親御さんとの朴訥な会話が色々想像される。味わい深い回文句。
〇(めたもん)こぬか雨の中、故郷に向かう親子の薄暗い情景。無心に眠る児を見つめる親の重い眼差しを感じます。
(選外)(卯平)句意としては「相席」なので列車で帰省している詠み手と同じ座席にいる児が「目開かぬ」、つまり眠っている。外を見るとこぬか雨ということか。発見として面白い。しかし「相席」が説明的ではないだろうか。また「帰省」と言う季語の位置がこの句で絶対なのか。こぬか雨がバックグラウンドとして景が明確かどうか等々の疑問を未消化のままの観賞で終わった。
五月雨の雨垂れとなる獣道 仙翁
〇(春生)山奥の幽玄さの感じられる一句です。
小雨降り鉢用意して蒸し暑し ちせい
〇(藤三彩)雨の日が多いし庭作業が進まない。熱中症になっても困るがゴーヤ苗の蔓はどんどん伸びてしまう。
伸びるだけ伸びては雨の蝸牛 アネモネ
〇(春生)蝸牛の生き生きとした姿が見えるようです。
○(吾郎)ぬめぬめとしながらも伸びる季節感
〇 (多実生) 蝸牛にとっては歓喜の雨、伸びては喜びの体の表現です。
○(餡子)カタツムリの独り言が 聞こえてきそうです。
〇(まきえっと)蝸牛の伸び伸びした様子が伝わってきます。
青梅雨やチェックアウトの靴の紐 珠子
○(卯平)最後の選。これが「梅雨晴間」であれば選外。単なる「梅雨」ではなく「青梅雨」で詩情を得た。
〇(瞳人)まさかと、想像をたくましくさせられて…
相傘の消える舗道に墜栗花雨 楊子
○(幹夫)「梅雨入り」を「墜栗花雨(ついりあめ)」なんて洒落てますね。
◯(道人)チョークか蝋石で歩道に書かれてあった相傘。雨で消えかかっている。胸がキュンとなる光景(偶々同じ趣向の句を最近作りました)
〇(めたもん)「墜栗花雨」は「梅雨入り雨」のことと初めて知りました。歩道の白い栗の花。大人の雰囲気を感じさせる句だと思います。
(選外)(卯平)類似類句はあるだろう。「墜栗花雨」の季語は美しい。「舗道に」か「舗道や」か。
梅雨入前卒爾とゆきし聖子かな 瞳人
白無垢に赤い番傘四葩雨 道人
○(幹夫)それぞれの色彩の対比が目出度い。
(選外)(卯平)June brideを言い切った句。この先が欲しい。
五月雨や涙はいつか乾くもの 幹夫
○(泉)無常観または風化、意味深な俳句だと思います。
〇(珠子)そうそう。今は泣けるだけ泣くしかありません。
◎(ちせい)五月雨と涙の組み合わせから来る詩的効果を思いました。
○(宙虫)それはそうだけどと突っ込みたくなるあっさり感。
母の忌もあの日も四葩雨に濡れ アゼリア
〇(藤三彩)四葩(よひら)の紫陽花が雨に濡れている。 妣を想う抒情と「あの日」が読み手を誘い込む。
防災情報メールがどっと来て梅雨に カンナ
老人のシワは幸せ梅雨晴間 泉
〇(楊子)そういわれて納得。梅雨の晴間は嬉しいのですがシワもよく見えます。
六月の宿雨進まぬ庭仕事 藤三彩
雑詠
ポケットに風を詰め込む梅雨晴間 まきえっと
◎(泉)清々しい俳句だと思います。
〇(カンナ)上五、中七が良いですね。
印結ぶ弥陀の一指の欠け薄暑 餡子
〇(カンナ)取り合わせが面白い。
◯(道人)「欠け」がいいですね。調べも格調高い。
(選外)(卯平)「印結ぶ弥陀指」と「薄暑」の響きは共感。「一指欠け」が勿体ない。
猿山の前を動かぬ夏帽子 アゼリア
◎(幹夫)作者の立つ位置が明確で、省略が佳く効いています。
〇(瞳人)動けませんよね、目の前は人間社会そのもだもの
〇(楊子)興味津々の小さな夏帽子だということがわかります。
○(仙翁)多分小さな子供でしょうね。気持ちが見えてきます。
〇(めたもん)猿と夏帽子の取り合わせのギャップが新鮮。猿山の何に興味を持ったのでしょうか。気になりますね。
〇(まきえっと)情景が目に浮かびます。
夏草や雨が供養の流人墓地 幹夫
◎(春生)お参りの少ない流人墓にとって、雨は供養になりますね。
〇(楊子)夏草と墓地はよくある句ですが、「雨が供養」がいいです。静かな雨でしょう。
◯(道人)訪れる者のいない夏草の伸び放題の流人墓地に「雨が供養」とはピッタリ。
◯ (アゼリア)季語が効いていると思いました。
水を打つ越の地酒の帆前掛 めたもん
〇(珠子)かっちりとした無駄のない句。映画のワンシーンみたい。
(選外)(卯平)「越の地酒」は「夏越の地酒」のことか。だとすると「水を打つ」をどう観賞すればいいのか。だから下五「帆前掛」で限定される場が醸す景が上手く伝わらないのでは。
急くことは無し梔子の風纏う 珠子
○(吾郎)爽やかな香りが楽しい時間を堪能
◎(あき子)いろんな感情を抱えながらそれでも生きていく、大きな肯定感を与えてくれる句。
蛍袋花の無数に傾ぎ咲く 多実生
見慣れしは切先殺気走れ波 吾郎
〇(カンナ)回文面白そうですね。つくってみたくなります。
五月闇二回目のコーヒー値上げ カンナ
○(ちせい)喫茶店かコーヒーハウスか、値上げの悲喜こもごも。
カレーセル降りて蛇への案内板 宙虫
○(卯平)下五は「カルーセル」のことか。そうだとすればこれは「手荷物ターンテーブル、空港用コンベヤー[1]などとも呼ばれる回転式ベルトコンベアシステムを指す」らしい。「日本では、単純にターンテーブルが一般的に使われる」と言う。だとすると句意は伝わる。但し「蛇」が生きるか否かは別であろう。
構内の立ち喰ひ蕎麦屋青嵐 卯平
〇 (多実生) 主要な駅には必ずある駅蕎麦、青嵐が旅心を掻き立てます。
沙羅双樹今日を生かさる一日花 藤三彩
○(幹夫)盛者必衰の理。
山女釣りながら患者を待ちにけり 泉
○(仙翁)どんな状況か想像しますが、何となく面白い。
○(餡子)面白い視点。山村の診療所のお医者さんでしょうか?昔の松竹映画のようです。森繁久弥あたりの姿が浮かびました。
(選外)(道人)こののんびり感は大好きですが、やや散文的かも。
水無月の茶会水無月てふ和菓子 春生
○(アネモネ)これは美味しそう!和菓子好きにはたまりません。
〇(あき子)水無月の繰り返しが心地よく、茶会に流れている時間を感じました。
生垣の間柱小さき蝸牛 仙翁
○(ちせい)梅雨時ともなればいろいろなところに蝸牛が居ますね。
石棺の丹は語らず黴雨に入る 楊子
〇(春生) 丹は無言にして、何かの知らせかもしれませんね。謎の解けるのが楽しみです。黴雨明けが待ち遠しいですね。
◎(珠子)丹は「あか」と読ませるのでしょうか。墓を暴いて「語らせ」ようとする現代人と、静かに眠り続けたい石棺と。石棺が背負ってきた歴史を「丹」の一字に託した省略が見事だと思いました。
○(卯平)舟形石棺。家形石棺でなく舟形石棺の必然性は観賞出来ない。ただ嘱目吟だとすると景は見える。
◎(吾郎)千年単位の過去への憧憬
〇(めたもん)吉野ヶ里遺跡の石棺のニュース。邪馬台国の謎については語ってくれなかったのでしょうか。味わいのある時事俳句だと思います。
○(餡子)あの吉野ヶ里遺跡にはドキドキしましたね。何も出て来ないと言うことも、残念ではありますが、まだまだ邪馬台国論争が続く楽しさが残されました。
◯ (アゼリア)ミステリアスな所に惹かれます。
◎(宙虫)生まれ変わりを信じていた石棺に置かれた人物。生まれ変われたのだろうか。
◎(まきえっと)「邪馬台国」に思いを馳せます。
多作多捨すてたる一句浮いてこい 道人
〇(カンナ)季語が上手いと思います。
〇(瞳人)動けませんよね、目の前は人間社会そのもだもの
◎(アネモネ)いいですねえ、この「浮いてこい」。リズムがなかなかです。
◎(多実生) 低レベルながら私も多作多捨です。確かに捨てた句からもヒントは得られそうです。
水虫や手の指で叩く足の皮 ちせい
彦十を正平継ぐと夏狂言 瞳人
○(卯平)「鬼平犯科帳」の登場人物の一人が「彦十」。その役を引き継いだ「火野正平」。自転車で日本を何回も巡っている中でのこの役。句材の面白さに共感。
父の日の少女厚底スニーカー あき子
〇(楊子)だからどうだったと言っていないのがいいです。反抗期の少女は心の行動が一致しませんね。
牧野博士(せんせい)は文久生れ竹煮草 アネモネ
◎(藤三彩)朝ドラ「らんまん」妻の西村寿恵子(小澤壽衛)役を演じる浜辺美波さんと結ばれたところの帰郷。これからの大業をケシ科の大形多年草が想起させます。
(選外)(幹夫)NHK朝ドラ「らんまん」見てま~す!
☆☆
次回をお楽しみに。
広島は最近は雨の日が多く、蒸し暑い気候になりました。これからが夏本番ですから、大変です。さすがにクーラーを入れないと、落ち着きません。七月に入ると、梅雨末期の大雨になるかも知れません。