黄泉に似た霧の甘さを浴びている 楊子
○(敏)「霧の甘さ」を、大いなる包容力と解して一句の世界に浸りました。
◎(餡子)黄泉には行ったことが無いので、わかりませんが、あの冬霧の中に入ると異空間に入るように感じるのは確かです。今度霧の中で甘さを意識しようと思います。
◯(道人)冬霧の深さには黄泉への誘惑がありそうです。
〇(宙虫)霧の味を文字にしたところがいい。
すめらぎの斯くも弥栄(いやさか)冬紅葉 幹夫
赤い影をかくして町の冬紅葉 宙虫
実南天雨に形を悟られて ちせい
○(仙翁)南天の実は集団で形を大きくしているのでしょうか。
◎(アネモネ)発想が面白い。
◎(あちゃこ)形を悟られては、詩的な言葉ですね。
しぐるるやいそげやいそげランドセル 藤三彩
○(まきえっと)いそげやいそげからランドセルを揺らしながら走っている姿が目に浮かびます。
○(ルカ)ひらがなの躍動とリズム感。
〇(多実生) 下校の児童の解放感に時雨。家まで突っ走ります。
我が庭に宝石のごと実千両 泉
〇(多実生) 上から見える千両が冬の庭を飾ります。
冬紅葉生きた証の詩が一編 あちゃこ
○(ちせい)季語は「冬紅葉」。あかし。生きた証の詩に冬紅葉が燃えている。
◯(アゼリア)どんな詩か教えて欲しいです。
○(幹夫)句のリズムも詩のようで、取り合わせに共感します。
○(餡子)どんな詩なのでしょうか。そんな詩(俳句)が残せるといいのですが・・・。
◯(道人)枯葉や落葉となる前の冬紅葉の一枚一枚に夫々一編の詩があります。
○(ルカ)季語が効いています。
〇(春生)「生きた証の詩」を書きたいです。冬紅葉のように。
〇(藤三彩)チヒロの詩か?『愛と死をみつめて1964年』小百合と光夫の映画のシーンか?
〇(宙虫)色合いが見えていい情感。
冬霧を抜けて浄土の色に酔う 餡子
〇(楊子)霧は現を別の世界にしてしまいますね。
○(敏)濃霧を抜けきった目に映えた鮮やかな風景を感じました。
◎(道人)重苦しい冬霧を抜けると楓紅葉や実南天などが鮮やかで、極楽浄土のようであった。三枚の写真吟行句。
◯(アネモネ)「冬霧を抜けて」がいかにも。
○(あちゃこ)対比が効いています。
不安消すために濃霧の中を行く まきえっと
○(敏)白い霧の世界に安らぎを求めたということでしょう。
○(泉)まるで心理学の様な俳句ですね。
祖父の声聴こえてきたり実千両 ルカ
◎(ちせい)季語は「実千両」。幻想か現実か分からぬ曖昧さが句の味となって居ると思いました。
〇(楊子)実直だった祖父を思い起こさせます。
○(餡子)父や母ではなく祖父(おじいちゃん)というところに作者の何か思いがあるのでしょう。
◯(道人)写真の霧の深さを背景に祖父の声と実南天がうまく響き合っている。
○(珠子)思い出している声は孫を心配してかけてくれた声の数々なのでしょう。
取り壊し決めし生家や村時雨 アゼリア
○(餡子)いつかはそうなるのでしょうが、自分の代での取り壊しを見るのはつらいですね。生家は父や母、兄弟もなく、従兄弟やその子たちの代となっていることが多いです。
◯(アネモネ)「村時雨」が切ないです。
〇(春生)寂しいけれどやむを得ないかも。
○(珠子)定期的に通って管理していた生家をとうとう手放し墓も移したという知人が何人かおります。それぞれ苦渋の決断だったことでしょう。
○(泉)村は過疎化が進んで行きます。
〇(藤三彩)先般のTV放映「家、ついて行ってイイですか?」を見た。北海道留萌の実家は半世紀が経ち原生林に戻っていた。家族離散の日本を見た気がした
(選外)(道人)やや硬い作り方のように思えるが、 過疎化の 実態がよく伝わってくる。
冬霧や内緒の話聞かれしか 敏
冬霧に沈む津軽のいびり唄 珠子
○(あちゃこ)母は津軽の出で、弥三郎節を口ずさむ事がありました。明るく楽しそうに。いびりも津軽人特有のユーモアで包んでいます。沈むは、やや重たい感がします。
冬霧の湧いて重たきマタギ村 アネモネ
◯(アゼリア)発想の飛ばし方が素晴らしいです。
○(まきえっと)冬の情景が目に浮かびます。
○(仙翁)熊もイノシシもこの時期よく現れますね。
○(餡子)秋田にあるようですね。厳しい風土の中での生きていく知恵の素晴らしさを感じます。
◎(ルカ)マタギの冬は長く重い。冬霧に閉ざされたマタギの村。ドラマがあります。
〇(春生)マタギ村の雰囲気が出ています。
○(珠子)霧に沈む奥羽山脈の中の村。「重たき」がいい。
◎(宙虫)いかにもいかにもの句で重厚感がいい。
諦念の光は深し霧の宿 仙翁
○(ちせい)季語は「霧」。諦念の内容は分からないながら、深い光が霧に混ざって来るような感じです。
(選外)(道人)「諦念の光」がとても良いですが、「霧の宿」の「宿」がやや残念。
鉢植えのイロハカエデも冬籠り 多実生
○(ルカ)冬籠の季語がいいですね。
(選外)(藤三彩)ただの鉢植えというよりか小品でも盆栽鉢と取りたい。楓と冬籠りの季の重なりが気になります。葉を落とすのか藁を敷くのか情景がどうだか
冬はつとめて靄の中なる月曜日 道人
◯(アネモネ)月曜日が効いています。
◎(珠子)暖房も満足にない時代の「冬はつとめて」の美学にはついてゆけませんが、現代の朝靄にはしっとりした雰囲気があります。今週はいいことがありそうな気のする月曜日。靄の中からふっとあこがれの君が現れるかもしれません。
〇(宙虫)月曜日という概念がもやもやと・・・・。
実南天里の書棚にスタインベック アゼリア
〇(楊子)寒い季節だからこそ、普段は地味な植物の実南天の赤さ実が沁みます。
工事夫は冬霧浴びて急ぎがち ちせい
○(泉)工事夫の気持ちが、良く伝わって来ます。
軽トラで足りる婚の荷実南天 アネモネ
◎(アゼリア)婚の荷は沢山でなくても希望が一杯ですね。
○(幹夫)目出度し!
〇(楊子)地方の昔の婚礼のつつましさと質素な晴れやかさが実南天に凝縮されています。
○(敏)華美を嫌った花嫁さんの気持ちが実南天に投影されているようですね。
○(ルカ)今は身軽に嫁ぐ。さらりとしていて味わい深い句です。
◎(春生)今では、婚の荷も少しですね。でも、輝いています。
〇(多実生) 最近は生活形態が変わりました。
○(泉)質素な結婚の荷物。素晴らしい二人の旅立ちです。
〇(藤三彩)実南天の小ささと軽トラの軽少さが釣り合っている感じ
冬霧に消えた少女のその後とは 餡子
◎(幹夫)メルヘンチック!
◎(仙翁)ミステリーですね。面白い。その後は ?
◯(道人)やや甘けれど物語性に惹かれました。
〇(藤三彩)最近の少女誘拐事件を想起する。怖い時世。
〇(宙虫)その後を思い描かせる展開がいい。
霧詰めて重たくなったランドセル 楊子
○(ちせい)季語は「霧」。錯覚がいい感じで句に。
◎(まきえっと)霧の状態を重たくなったランドセルで表現しています。
〇(春生)「重たくなった」の口語調が児童らしい。
◎(多実生) 霧詰めて重たくが滑稽俳句です。
○(珠子)今時の教科書は昔の何倍もの重さがあります。霧まで詰めてさらに重たくなって。
○(泉)「霧を詰める」と言う発想に驚きました。
看取りなき弔いひとつ草珊瑚 あちゃこ
◯(アゼリア)そっと自然に還っていくのも良いですね。
◎(敏)草珊瑚は千両の異名だそうですね。ささやかな一生を終えた方の奥ゆかしさを思いました。
○(珠子)家族がいても「死」は難しい。草珊瑚が千両の別名とは知りませんでした。珊瑚樹・冬珊瑚は知っていましたが、今秋初めて知った美しい実に「数珠珊瑚」があります。
◎(泉)「孤独死」でしょうか。重い課題ですね。
〇(藤三彩)孤独死というのが普通に起きる世相になったものだと空しい
仲間はずれの朝南天の実が濡れる 宙虫
○(仙翁)どんなことがあったのでしょうね、仲間外れとは?
○(餡子)あの写真の中を歩いている子供かしら。辛い毎日でしょうね。美しい紅葉の景色も、目に入らないかもしれませんね。
○(あちゃこ)悲しさと救いが同居している思いが伝わります。
地図になき路地の生家や実南天 道人
◯(アゼリア)私の生家にも南天がありました。南天は懐かしい感じで大好きです。
○(仙翁)地図にない路地と家、あるのでしょうね。
◎(楊子)人の暮す路地は入り組んでいるのがあたりまえでした。久しぶりに行くと赤い実南天が迎えてくれました。
◯(アネモネ)そんなことあるでしょうね。これも切ない。
一クラス七人冬の霧霽れる 珠子
○(ちせい)季語は「冬の霧」。少数精鋭の生涯学習だったのかもしれません。
◯(アゼリア)元気な子供達の声が聞こえてきます。
〇(楊子)教育は日本の基本です。人あっての政治経済です。日本須く幸せでありますように。
○(敏)村の分校でもありましょうか。映画「二十四の瞳」を思い浮かべました。
◯(アネモネ)なんのクラスでしょう。七人がいいですね。
一団の実南天喰ふ烏哉 幹夫
上空の鳥は見極む赤南天 多実生
○(幹夫)聡明な烏に狙われている南天の実!
南天の実に手をかざし見る未来 まきえっと
○(幹夫)希望ある未来だ。
〇(道人)南天には明るい未来が透けて見えそうです。
〇(多実生) 未来をかざし見る程の南天の当たり年。
○(あちゃこ)先日の泡立草の句がすぐ浮かびました。手をかざすで頂きましたが。
〇(宙虫)未来をのぞけそうな気がする。確かに。
無遠慮に南天の実の撓なる 仙翁
○(まきえっと)南天にたくさん実がついている感じですね。
紅葉や自然に優る画家はなく 泉
○(まきえっと)確かに。
○(ちせい)季語は「紅葉」。自然の優勢さ、精妙さに対する畏敬の念。
栞とす一葉足りる照紅葉 藤三彩
〇(多実生) 一度は何方も経験しそうです。
思い出のかたちの一つピラカンサ 敏
○(ルカ)思い出を色々想像させます。
○(あちゃこ)赤い光を帯びた思い出でしょうか。共有できる一句です。
立ち話短くなりぬ冬紅葉 ルカ
○(まきえっと)立ち話が好きな人っていますよね。
〇(春生)季語「冬紅葉」が効いています。
◎(藤三彩)「雨が続きますねえ」「お寒くなりました」とかご近所の会話ですね
○(仙翁)寒いと立ち話も、短く済ませますね。
★★★
次回はいよいよ今年最後の句会。
忘年会や年末の大掃除などのばたばたのなかかもしれませんが、たくさんの参加をお待ちしています。
次回当番はまきえっとさん!
今後とも、よろしくお願いいたします。
広島は何とか冬らしくなってきました。しかし、北国の雪景色を見ていると、瀬戸内は本当に恵まれている、と実感します。人間がボンヤリとして来るのも、仕方がないところでしょうか。それにしても、今年の広島カープは・・・?