自販機の灯に安堵する梅雨の夜 泉
○(まきえっと)学生時代は旅先の真っ暗な場所で車のライトを消してお化けごっこなどしましたが真っ暗は本当に怖かった。季語は動くかも。
○(餡子)車で旅に出ると、まずコンビニ、そして自販機。ほっとしますね。どっか違うよなあと思いつつお世話になっています。
夜勤終えリュックに二本缶ビール 餡子
〇(仙翁)缶ビール二本で済みますか。後は、焼酎か。
〇(瞳人)至福は間もなく
○(泉)夜勤が終って、缶ビールを飲む。正に至福のひと時です。
〇(アネモネ)これはもうダッシュで帰宅ですね。
〇 (多実生) 夜勤の記憶は殆んど有りませんが缶ビールは小さな幸せです。
◎(ちせい)季語は「ビール」。リュックに二本の缶ビールが印象的でした。
◯(宙虫)普通の生活をしている人と逆の世界。朝が来る。
缶ビールごとりと闇の販売機 幹夫
◯(ルカ)ごとり、の音が闇を呼んでいる感じがしました。
〇(瞳人)それでもおいしいのです
〇(仙翁)自販機のごとりという音、闇に響きそうですね。
〇(アネモネ)うまくいえませんが「闇の販売機」とリズムに魅かれました。
夏の月マイケル・ジャクソン歩き逝く 藤三彩
○(敏)マイケル・ジャクソンのムーンウォークといえば確かに夏の月は似合いでしょう。彼の世の人が彷徨い出てきそうな、そんな雰囲気。
○(幹夫)マイケル・ジャクソンのムーンウォークのパフォーマンスですね。
秋の夜人に明かせぬ風雲録 瞳人
○(藤三彩)「その昔、満州に渡って馬賊になった・・・」ってお話は好きだな
○(まきえっと)明かせぬとあると興味津々。
〇 (多実生) 言わぬが花でしょうね。
金亀子の夜の底飛ぶ真闇飛ぶ アネモネ
◯(ルカ)飛ぶのリフレインが、虫の動きをイキイキと表現しています。
○(敏)虚子の金亀子とは違って、こちらは自らの意志で真夜の底をうなりをあげて飛んでいます。小さな生きものの、大きな生命力。
〇(道人)「かなぶん」あるいは「ぶんぶん」。珍しい「ぶ」音のリフレインが佳い。
○(藤三彩)その金亀子(コガネムシ)が仰向けで起き上がれない。
○(幹夫)中句から下句へのリフレインが好きです。
(選外)(ちせい)季語は「金亀子」。虚子の五百句の中の句が思い浮かびました。
闇を消す街の灯りや風涼し 仙翁
○(泉)街灯の役割は大切です。特に最近は、夜の犯罪が多いですから。
自転車が横切る夜の驟雨あと 宙虫
○(まきえっと)雨の後ですがなぜか爽やかな感じです。
〇(アネモネ)「夜の驟雨」がなかなか。
螢火を手繰り深夜を彷徨す 敏
◯(あちゃこ)ミステリアスな一句。
熱帯夜自転車に乗り見る未来 まきえっと
〇(道人)熱帯夜は目的もなく外を走り回りたい。時々それらしきバイクの音も聞こえたりするが、自転車なら将来のぼんやりとした夢を見るにはぴったり。平明な言葉で青春の夏の夜の気分を言い止めている。
◯ (アゼリア) 私も自転車の少年が受験生で塾帰りかなと想像しました。希望校に合格を目指し頑張っている背中に見えます。
(選外)(ちせい)季語は「熱帯夜」。自転車に乗って見た未来。
短夜に夢を見るため帰宅する 多実生
〇(道人)季語「短夜」が動かない。「夢を見るため」が甘いようで巧み。
新月やおとこも見入る白粉花 道人
熱帯夜中央線の歪みたる 春生
◯(ルカ)実感に共感しました。
◎(仙翁)熱帯夜の熱気の冷めぬ街の様子がよく分かります。
◎(珠子)呼吸の苦しくなるような熱帯夜を、「中央線が歪む」と捉えたところが秀逸です。
○(泉)この暑さで、中央線も歪むかも知れません。
◯(宙虫)中央線が出てきたのがいい。熱帯夜に歪むものは多々あれど。
帰省せしマドンナ囲み梯子酒 アゼリア
◎(まきえっと)何かホッとする景です。マドンナはいくつになってもマドンナでいて欲しい。
◯(あちゃこ)良くある景です。気持ちは分かる。
○(藤三彩)昔マドンナ、今はただのオバサンに会えば何故かほっとする
〇 (多実生) 気の遠くなる様な昔こんな事も有りそう。
○(餡子)昔のあこがれの人。クラス会での帰省でしょうか?会場から居酒屋へ、居酒屋からスナックへ、スナックから縄のれんへ。わかるなあ・・・。夜の更けるまで、昔話に花が咲き。
(選外)(道人)同じような経験があり、今なお続いています。マドンナは良い役柄ですね。
八月忌センターラインオーバーす 敏
◎(アネモネ)取り合わせが面白い。
○(ちせい)季語は「八月忌」。戦争の記憶が外部から襲って来たのかも知れません。
沈みゆくブルース錆びた誘蛾灯 あちゃこ
○(敏)もう虫を寄せ付けなくなった誘蛾灯と、哀調を帯びたブルースとの融合。悲しみが増します。
◎ (アゼリア)アメリカ南部の農場で過酷な労働に耐えるアフリカンアメリカンの絞り出すようなブルースが聞こえてきます。
〇(珠子)今の誘蛾灯はおびき寄せて高電圧でやっつけるというもののようですが、これはきっと昭和の型の誘蛾灯でしょう。ブルースとの取り合わせが斬新。
◯(宙虫)ブルースと錆びた誘蛾灯。まさにと感じた。「沈みゆく」はやや言い過ぎな感はある。
「おおきに」と言ふ自販機や夏の月 アゼリア
◎ (多実生) 地方で自販機を使った記憶は薄いですが、土地言葉の「おおきに」は嬉しいですね。
〇(珠子)おしゃべり自販機も「おおきに」や「めんそ〜れ」だと、つい乗せられて買ってしまいそうです。
八月のリュックを背負う少年よ ルカ
遠ざかるテールライトや星涼し 幹夫
◎(瞳人)哀愁列車ですね
◯ (アゼリア) 何気ない三枚の写真からこんな詩情豊かな句ができるんですね。
○(ちせい)季語は「星涼し」。遠ざかるテールライトに抒情を感じました。
冷やし水この頃消えた給水機 多実生
埠頭へとつづく街灯明易し アネモネ
○(まきえっと)海の先から何が見えるんだろう。
◯ (アゼリア) 街灯をたどり夜明けの埠頭へと行きたい気分になりました。
〇(道人)街灯を辿って行けば「埠頭」とは、素敵です。誰かが、何かが待っている感じ。
○(餡子)そういえば、港町っぽいですいね。
〇(珠子)すっきりと立ち姿のいい句です。
○(ちせい)季語は「明易し」。海の風景が浮かんで来ました。
◎(宙虫)明け方の街灯の色や誰もいない景色が浮かぶ。埠頭という設定がいい。
雲の峰二十四時間消えない灯 まきえっと
◯(あちゃこ)あり得ない事が今は当たり前の世になりました。
〇(珠子)こんなに大規模な電気の無駄遣いをしながら、小市民に節電をと言われてもむなしくなるばかりです。孫の世代へのツケとなるのが切ない。雲の峰と大きくでたところが成功していると思います。
○(泉)言われてみれば、自販機の灯は二十四時間消えませんね。
自販機のコインじゃらじゃら終戦日 ルカ
◎(あちゃこ)終戦日は、日常に埋没してしまい…語る相手もわずかに。
◎(餡子)あれから、72年。自販機なる物もなく、じゃらじゃらのお金もない当時。夢のような高度成長。でも心はどんどん無機質になっていくようで怖いです。
◎(泉)「コインじゃらじゃら」と「終戦日」との対比が、際立っています。
○(幹夫)昭和20年8月15日は時代の一つの大きな区切りだった。敗戦に負けず日本は遮二無二経済成長を遂げていく。
バイト終へ夏の野菜を買ひに行く ちせい
◯(ルカ)夏の野菜が明日の活力をもたらしてくれそうです。生活実感のある句です。
〇(仙翁)生活感がよく出ていて面白いです。
自販機の灯に伸びる影熱帯夜 珠子
○(ちせい)季語は「熱帯夜」。夜の影は薄っすらとして神秘的だったのかも知れません。
手花火の残り香夜勤明けの朝 道人
◯(ルカ)残り香が、花火なのがいいですね。
〇(アネモネ)繊細な感覚がいいですね。
◯ (アゼリア) ご苦労様です。やっと休めますね。
木星をさがし深夜のコーラ買う 宙虫
◎(ルカ)空を見上げながら木星を探し、地上ではコーラを買う。心の情景が見えてきました。
○(敏)木星とコーラ、無限の隔たり、それを繋ぐのは詩人の感性。定形化するのが俳人。
○(まきえっと)深夜のコーラが爽快感を出しています。「木星」の語感が私には心地よいです。
◎(道人)「木星」が巧い。真夏の夜に合っている。
〇 (多実生) 最近は天体への興味も薄れ見上げても解る星は数える程、それに我が町から見える星は少ない。満天の星空を見上げた昔が懐かし限りです。
○(幹夫)自動販売機を木星に見立てたのが良い。
自販機や誘蛾灯無く早歩き ちせい
手を握る仮面ライダー夏祭り 藤三彩
◯(あちゃこ)ご当地ライダーも色々増えましたね。
〇(珠子)いろいろに取れますが、私は仮面ライダーのお面をかぶった幼子とパパととりました。あたたかな雰囲気です。
○(泉)「仮面ライダー」への飛躍に、驚きました。夏祭りの人気者ですね。
○(ちせい)季語は「夏祭り」。忘れられない記憶、夏の思い出。
どこからか人の声する熱帯夜 春生
〇(仙翁)何となく不気味でもあり、安心感もあり。
〇 (多実生) 暑い夏は窓を開けておくのと歩く人が多いので句の通りです。
○(餡子)熱帯夜の特徴をよく捉えた句ですね。寝苦しさに、声やら音やらが・・・。
〇(アネモネ)いかにも熱帯夜の感じです。
◯(宙虫)何気に見かける句材。熱帯夜のこういう光景は特殊かも。
眠る町に事件の匂い熱帯夜 餡子
○(幹夫)きな臭い事件の気配がする熱帯夜。
尖がっていたい少年火取虫 珠子
◯(あちゃこ)老人の方がトンガっているかもしれませんね。
○(敏)尖っていたいのは少年の特権でもあります。火を消しに集まる虫に、その心情が重なるようです。
○(藤三彩)髪はリーゼントで革ジャン・ツッパリのオジさんが原宿で踊っています
自販機の明かりの吠える夏の夜 仙翁
◎(幹夫)自動販売機から出てくる様子を「明かりの吠える」としたところが良い。
(選外)(ちせい)季語は「夏の夜」。夏の幻影でも見たのでしょうか。
避難所で按摩サービス梅雨出水 泉
◯ (アゼリア)ありがたいサービスですね。
◎(藤三彩) 助け合うしかない郷土愛。。やさしいなあ・・
夜の霧会ひたき人の路地に立つ 瞳人
〇(仙翁)ストーカーなら怖いですね。待ち合わせなら楽しいですね。
○(藤三彩)「夜霧よ今夜もありがとう」の裕次郎に会うのかも
◯(宙虫)ドラマあり。夜の霧・・・夜霧とした方がもっといい耳障りになりそうな・・。
(選外)(道人)これは夢想ですね。「霧想」にしましょう。
夏熟れてネオンを嫌うアスファルト あちゃこ
◎(敏)熟れた夏には、理屈は通用しません。どんな組み合わせも、胸に落ちます。「夏熟れて」にひたすらしびれています。
○(道人)アスファルトの気持になり切っている。中々こういう詠み方は出来ない。
★★★
なんとのろい台風でしょうか。
熊本はたいしたことはなく、風が吹いたかな?程度でした。
まだまだ影響の出ているところも、これから予想されているところも充分お気をつけください。
今回もたくさんの投句ありがとうございました。
次回句会はもう秋ですよ。
では。
広島は台風の影響が長引いて、毎日が曇り空です。暑さも酷いし、何だか夏らしい青空が見えません。三枚の夜の写真が、鬱陶しい今年の夏を表現している様です。