つづき
飢餓の子のつぶらな瞳麦の秋 アゼリア
◎(あちゃこ)すっと心に沁み入る一句。かつてユニセフで出会った女の子の淋しげな顔が浮かぶ。
〇(春生)ウクライナとロシアの戦争で、小麦の輸出が途絶えています。
青鷺の眼差し我も異邦人 めたもん
◎(道人)人間存在の一面を言い当てた句。
◎(藤三彩)青鷺が青い目という訳ではないだろうが国境を超えて移動しているにはちがいない
○(敏)青鷺の眼を見詰める作者もまた、同様の眼差しであることを自覚しているのでしょう。
〇(あき子)青鷺が我で、我が青鷺かも知れず。「異邦人」が効果的。
〇(春生)青鷺の孤独と作者の孤独が通じ合ったんですね。
○(ちせい)鷺を見て感慨に耽るいい機会だと思いました。
◎(宙虫)見えるものを区別する目。現代社会の問題に通じる。
麦秋や白地図に書くウクライナ 道人
〇(楊子)時事もこう書くと心情がより伝わります。
〇(仙翁)ウクライナ、早く戦争が終わってほしいですね。
◯ (アゼリア) ウクライナの国境が変わらないことを祈るばかりです。
◎(春生)テレビ等での報道で形などは分かりますが、世界地図の中での位置もしりたいですね。
女王の孤独百花に蜂の群 道人
◎(泉)頂点に立つ、ということは正しく孤独なのでしょう。
〇(藤三彩)女王蜂一匹が働き蜂や幼い蜂の養育係りなど生んで大家族をつくる。そして一年で儚くなる。
○(あちゃこ)蜂は春の季語だが、エリザベス女王と庭園の花々が浮かび、取り合わせでいただいた。
◯(アネモネ)不思議な納得感があります。
○(敏)どうしても、96歳になられたというエリザベス女王のニュースを思い起こします。そのお祝いに集い来たった何万人とも見える群衆は、まさに百花に群がる蜂のようですね。
○(餡子)女王の孤独・・そうかもしれません。群を率いるのですから。
生きるのに費やす時間麦の秋 まきえっと
◎(楊子)そうなのか時間を費やして生きているだけなのかと気づきました。麦の秋の豊かさとの取り合わせがいいです。
〇(藤三彩)マスクを外して心身のつくり直しに時間を使いたいものだ。また果実酒をつくるなど手仕事に時間をつかうのかも
◎(敏)一句によって、ウクライナに流れる時間はもとより私自身の「生きるのに費やした時間」を考えてみようと思いました。俳句によってそんな思いにさせられたのは初めてです。
◎(あき子)時間という題材を主役に、季語の黄金色の情感と響き合っています。
〇(めたもん)「生きるのに費やす時間」って何でしょう。心に残る措辞です。
○(宙虫)あっという間に使い切った・・・そんなこと言って人生が終わるのか。
(選外)(卯平)上五中七の措辞は少々言い古された叙。更にこのような叙と共鳴する季語は必ずしも麦の秋が絶対ではないだろう。
青葉若葉蜜から蜜へ唸る翅 珠子
◯(道人)観察眼とリフレインの表現の妙。
〇(まきえっと)忙しさを感じます。美味しい蜂蜜になれ。
緑さす湖面に魚影目を閉じる ちせい
真夏日や蜂蜜レモン一気飲み アダー女
◯(アネモネ)蜂蜜ドリンクは真夏日の最高のエナジードリンクです・
〇(春生)熱中症予防ですね。大事です。
○(瞳人)ビールよりおいしそう
(選外)(あき子)なんとも気持ちの良い一気飲み。
輸出できぬ麦や世界は飢餓の中 泉
○(瞳人)こういうことって、初めて知りました
〇(藤三彩)黒海封鎖の露軍を解除できないものか?
与ふるものある幸せや薔薇に蜂 アゼリア
○(アダー女)薔薇は蜂に蜜を吸わせてやる幸せ。蜂はそれを材料に蜂蜜を作り、人間や熊のプーさんに嘗めさせてやる幸せ。人間は?いっぱい与えられ、いっぱい与える一番幸せな存在ということかなあ?
〇(春生)薔薇に蜂の組み合わせに成功しています。
(選外)(あき子)こういう謙虚な気持ちでいられたら。
散乱の光ぶつかる聖五月 まきえっと
○(アダー女)確かに五月は一番安定した光溢れる美しい月ですね。マリア様の愛も溢れて。「ぶつかる」がいささか乱暴な表現のような気がしますが。
◯(アネモネ)いかにも聖五月の光りの在り方。
白鷺の白を灯してけだるき池 餡子
○(泉)「けだるき池」という表現に、全く同感です。
〇(あき子)白を灯して動かないのでしょうか、けだるき池に惹かれます。
◯ (アゼリア) けだるそうな池に白鷺の白が鮮やかです。
◯(道人)梅雨前の気だるさはこんな感じ。
〇(めたもん)字余りの下五「けだるき池」から 景の雰囲気が伝わってきます。
白鷺の影光る湖風薫る 仙翁
〇(まきえっと)初夏の感じを上手に詠んでいると思います。
スズメバチに取り憑き火の色の花 敏
○(あちゃこ)この視点は私にはない。作者の斬新な逆転の発想。
ぶらさがる蜂の重みや紅蜀葵 春生
◯(アネモネ)とても絵画的。素十的な発想に得心。
○(敏)私は今までのところ紅蜀葵(モミジアオイ)は未見ですが、写真で見るかぎり茎は細長く頭頂部に付ける赤い花はそうとうに大きく、蜂のぶらさがりには撓ってしまうのでしょうね。
◎(めたもん)「蜂の重み」は命の重み。「紅蜀葵」の細さが重みを映像化。ひらがな表記も上手い。
◯(ルカ)蜂の重みを感じる感性が素敵です。
薔薇の門潜る誉れはなけれども 瞳人
○(あちゃこ)共感の一句。いかなる門においても多少の感慨を覚えますが、薔薇の門は格別かも。
麦秋やひかりの波のうらおもて ルカ
〇(楊子)風にゆらぐたびに色や光が変わります。それを裏表と表して、納得です。
◎(アダー女)麦の穂がキラキラ輝きながら風に翻っている様子がよくわかり、黄金色に実った麦が光りそのものとなって揺れている様子が見事に表現されています。
〇(まきえっと)ひかりの様子を波のうらおもてとしたところがいいですね。
◯(アネモネ)「ひかりの波のうらおもて」いいですねえ!
〇(仙翁)光の波のうらおもて、良い表現ですね。
○(餡子)光に裏表のあることの発見がいいですね。麦秋の季節の日の光の特徴を捉えています。
〇(あき子)読めば目にうつくしく、口づさんでうつくしい。
◎(珠子)熟れた麦が波打つ様子は確かに「ひかりの波のうらおもて」です。燻し銀ならぬい燻し金の波です。
〇(めたもん)「ひかりの波」を更に「うらおもて」と詠んだところに美しい動きを感じます。
◯(道人)下十二、当たり前のことを新しい発見のように思わせる俳句表現の妙。
○(ちせい)光と書いて光(かげ)と読む感じでしょうか。
(選外)(卯平)「ひかりの波」を具体的にイメージ出来ない。可視光線などとすると景に近づく。麦秋とひかりは近似の関係だろう。
水占いを乱す羽音から薫風 宙虫
たらちねの白鷺ベイビー鳴いている 藤三彩
新樹光あの世を映す湖の面 楊子
○(あちゃこ)水面には様々なものが映り出るのですね。季語がいい。
○(敏)透明な湖面に差す光は、あたかも「あの世」を現出しているかに見えたのでしょう。
〇(珠子)水面に深々と映りこむ木々の緑は極楽浄土の初夏を思わせます。ときおりの風にさざ波が立てばそれも妖しく美しい。
◯(ルカ)新樹のひかりは異世界を映してくれそうです。
はぐれ蜂止まる羅漢の禿げ頭 めたもん
◯(道人)「ア」音の韻律の言葉の諧謔性が調和した面白い句。
◯(ルカ)面白い句。
◎(瞳人)滑り落ちないように気を付けて
花びらに花脈走りぬ梅雨晴間 あき子
鷺山に鷺が十二羽梅雨兆す アネモネ
◯ (アゼリア) 鷺山ー初めて知りました。十二羽と具体的な数字も効いていると思います。
麦秋や午後の風読む鷺の首 珠子
◎(まきえっと)鷺の首の様子をよく見ております。
〇(仙翁)白鷺と麦、上手く合わせましたね。
〇(めたもん)ゆったり何気なく動く鷺の首。観察がいきています。
◯(道人)中七の措辞が秀逸。
◯(ルカ)どこへ飛び立とうとしているのか。
○(ちせい)鷺が風を読んで居ると言うのは面白い発想だと思いました。
○(アダー女)午後になってちょっと吹き出した風を鷺が、その長い首で敏感に感じ取っているんですね。良い句です。
○(宙虫)鷺の首だけがわずかに動く。そんな景の静かさがいい。
麦の秋妬心の映る水鏡 あちゃこ
○(卯平)全体的には面白い句。水鏡と麦の秋の均等感が気にはなる。そこで「妬心を映す」とすると詠み手の位置が明確になり水鏡がより生きてくるのでは。麦の秋より例えば「薄暑光妬心を映す水鏡」だとすると中七下五はさらに生きるのではと観賞した。しかし句全体としての姿は共鳴出来る。
〇(まきえっと)妬心のない人間になってみたいです。
◎(アネモネ)やられました!「妬心の映る水鏡」なかなかです。
〇(あき子)妬心だけでなく隠された感情全て映されてしまうのは怖いけど、麦の秋が穏やかに微笑んでいる。
★今月の写真は、周辺にあったものをズームで撮影してみた。
阿蘇・・国道57号線沿いのため池に鷺たちの寝床が。鷺たちが年々増えていっているようだ。
★では、次回の告知をお待ちください。
広島は最近、雨が降ったり晴天になったりで、次第に暑くなってきました。しかし、まだ心地よい暑さです。
新型コロナは落ち着いてきましたが、ウクライナはますます泥沼ですね。小麦にしてもエネルギーにしても、世界中に影響が広がっています。正に大国ですね。