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知らないことや気になることをいろいろと調べて記録していきます
 




日本で最初の超高層ビル(ここでは100m以上のものとする)は1968年にオープンした霞が関ビルで、その後建築技術の進化に伴い多くの超高層ビルが建設されてきた。
近年での超高層ビルの増加は極めて著しく、以下のデータベースによると東京23区内では1988年時点で累積46棟だったのが1998年で144棟、2008年で359棟となっている。2003年以降東京23区内だけで毎月2~3棟新設されており、今後も増え続けそうだ。

超高層ビルとパソコンの歴史 竣工年代順・東京都(23区)・超高層ビルデータベース
http://www.eonet.ne.jp/~building-pc/tokyo/to-1968-2010.htm

一方で高層ビルは永久にそのまま残っているわけではなく、ビルの法定耐用年数が40~50年であることを考えると、2030年ぐらいから現在立てられている超高層ビルが解体される例が増えてくるだろう。従って我々は次世代に対して、100m超のビルをいかに解体するかという課題を与えていることになる。

上記のデータベースによるとこれまでに行われた東京23区内での超高層ビルの解体例は1件しかない。その1件とは台東区にあったソフィテル東京(110m)だ。



このビルは1994年に開業したホテルだが、さすがにこの奇抜な外観には賛否両論あったようで、ホテルは2006年12月に営業を終了し、その後2007年に建物が解体された。このビルの解体の様子をリアルタイムで見逃してしまったのは痛いが、写真を見つけることができた。



そして2例目として、1992年に立てられた大手町フィナンシャルセンター ビル(105m)も「東京プライムステージ」として生まれ変わるために現在解体工事が行われている。まだ20年以下であり何とももったいない話だが、せっかくなので是非現地に見に行こうと思う。



ニュースリリース~東京建物
http://www.tatemono.com/news/2007/ttknews070524.html

一般的にビルの解体方法は破砕解体工法かブロック解体工法だ。破砕解体工法は重機を使って建材を崩すもの、ブロック解体工法は建材を所定の大きさに切り離し吊り出して解体するものだ、高層ブルではブロック解体工法が適しているといわれている。海外の映像で見かけるダイナマイトを使って爆破する発破工法は飛散物が多く日本では困難だし、環境面から好ましいとはいえない。

そんな中で、2006年に鹿島建設が発表して施工した「鹿島カットアンドダウン工法」がとても話題になっている。

鹿島 プレスリリース 人と環境に優しい解体工法を実用化
http://www.kajima.co.jp/news/press/200804/22a1-j.htm

本工法は、いわゆる「だるま落とし」のように、ビルの下階から各階を順次解体するもので、地上レベル付近だけで解体作業を行います。本工法を採用することにより、従来の上階から解体する方法に比べて、騒音や粉塵の飛散の抑制、資源の分別・リサイクル作業の効率性向上、高所作業削減による安全性の向上につなげることが出来ます。
高層建物を下階から解体する工法では、建物を支える基礎部分と上部構造が施工時に地上付近の解体作業階で切断された状態となります。本工法では、解体中の建物が地震時に転倒することを防止するために建物内部に「コアウォール」構造体を新たに構築し、建物基礎部分と解体する地上階とを建物内部で連結させ、解体作業中においても既存建物と同等の安全性を確保します。さらに地上階の荷重を支えるジャッキ等には十分な支持力を持たせると共に、早期地震警報を活用した各種制御システムを組み込むことにより、解体工事の安全性を確保しています。つまり本工法は、当社がこれまで蓄積してきた耐震技術を適用すると共に、新たな技術開発を行うことで実現に至ったものです。

リンク先の動画はYou Tubeでも参照できるので埋め込んでおこう。



この工法の主なメリットとして、
1. 解体作業フロアが下層部に限定するため、騒音や粉じんなどの措置が固定化できるため、環境への影響を軽減できる(粉じんは3割減)
2. 特に市街地での解体工事では近隣への不安感を抑制できる
3. 解体で生じる廃材のリサイクル化もしやすい(リサイクル率が50%から90%前後に向上の見込み)
4. 作業の地上付近での集中化で、高所での危険性が減るため安全性が高まる
が挙げられている。
http://www.gamenews.ne.jp/archives/m/e/post_3404.html

この工法は2008年日経ものづくり大賞、2009年「日経BP技術賞」などに輝いている。
NIKKEI EVENT GUIDE 表彰事業
http://www.nikkei-events.jp/honor/mono.html
日経BP社 ニュースリリース
http://corporate.nikkeibp.co.jp/information/newsrelease/newsrelease20090323.html

これは下からビルを支えて行うものなので、200m級の超高層ビルに対して適用できるかどうかはわからない(解体したビルは75m)が、今後技術をより磨いて汎用性を高め、またうまくコストを押さえていくことができれば、来るべきビル解体時代には確立した手法として浸透しているかもしれない。

ビルではなくタンクの解体だが、2004年にベステラ社(東京・墨田区)が特許を取得した「リンゴ皮むき解体工法」は極めて画期的であり、その後順調に実績を積んでいる。



ともに既存の概念にとらわれない発想が画期的な方法を見出したようだ。高層ビル解体は将来必ず大きなニーズがあるので、更に新しいアイディアが出てきてほしい。
人が造り上げる建築物は芸術作品であり、その解体も「鹿島カットアンドダウン工法」や「リンゴ皮むき解体工法」のように芸術的なものであってほしいものだ。


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