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日本の通貨の製造は、紙幣は国立印刷局、硬貨は造幣局で行われている。ともに財務省が所管の独立行政法人で、職員の身分は国家公務員である。
このように政府の機関が通貨を発行することは我々の感覚では当然のように思われるが、必ずしもそうではない。

イギリスでは民間企業であるデ・ラ・ルー公開有限会社が紙幣印刷を担っている。

デ・ラ・ルー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%BC
https://en.wikipedia.org/wiki/De_La_Rue

デ・ラ・ルー公開有限会社(De La Rue plc)は、セキュリティ印刷・製紙・紙幣鑑別システムを扱うイギリスの企業。
高度なセキュリティ印刷技術・製紙技術を持ち、それを強みとした150種以上の紙幣製造を請け負う。デ・ラ・ルーの紙幣が採用されている銀行はイラク中央銀行、イングランド銀行、グアテマラ銀行、ケニア中央銀行、スコットランド銀行、スリランカ中央銀行、フィジー準備銀行、マケドニア共和国国立銀行、マン島政府、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド等がある。


In 1995, the company acquired Portals Limited which had been listed on the London stock market since 1904. For almost 300 years Portals had been one of the leading banknote paper manufacturers in the world, having manufactured banknote paper for the Bank of England since 1724.



そのデ・ラ・ルー社だが、必ずしも経営が順調ではないようで倒産危機にあるという報がある。

Coin Post (2019/12/10) - 英造幣局が倒産危機か、マネーのデジタル化が要因の一つとの見方も
https://coinpost.jp/?p=122092

イギリスに拠点を置き、紙幣やパスポート製造を行うデ・ラ・ルー公開有限会社が、倒産の危機に瀕しているとの声明を発表した。BBCが報じた。
同社によれば、事業再生に失敗した場合破綻リスクもあるとのことだ。デ・ラ・ルー社は株主への配当を停止しており、会計年度前半には損失を計上している。
同社は紙幣印刷業者として150年にわたり、英国ポンドの造幣の役割を担当し、現在では世界140の中央銀行を対象に紙幣の印刷を行い、全世界で2,500人規模の従業員を抱えている。最近では、同造幣局は新20ポンドの印刷を行うことが決定されている。
2019年9月28日までの6か月間で、前年同期の710万ポンドの利益と比較して、1,210万ポンドの税引前損失を報告したデ・ラ・ルー社だが、Markets.comで市場分析を行うNeil Wilson氏は、その経営不振の理由について、同社による「杜撰なマネジメントや悪手が主な理由」と分析を行っている。その他にも、マネーのデジタル化などが進み、中央銀行による紙幣の需要が減少している点や、取引先数に比べ競合他社が多い点などもその理由として挙げられている。


またアメリカのドル紙幣も、現在はアメリカ合衆国製版印刷局 (Bureau of Engraving and Printing、BEP) が製造しているが、かつては民間会社であるアメリカン・バンクノート社 (American Bank Note Company) が担っていた。

アメリカン・バンクノート社
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88%E7%A4%BE

1795年、創業間もないアメリカ合衆国造幣局で最初の公式彫版家ロバート・スコットが、Murray, Draper, Fairham & Company (後にScot's three partnersとなる) を創業した。この会社は、建国間もない人口増加中のアメリカで金融機関の発達と共に繁栄した。1857年恐慌後の1858年4月29日、国内で最も有名な機密印刷会社7社がアメリカン・バンクノート社に合併し、本社はニューヨーク市に置いた。それから2年もたたずに、別のいくつかの機密印刷会社も合併した。

最初の紙幣は南北戦争勃発時に、米国財務省によって発行された。議会は1861年7月17日と8月5日に「Demand Notes (要求紙幣)」 60万ドルを認可する法案を可決した。政府との契約の下で、新しい紙幣一般には「グリーンバックス」と呼ばれる紙幣が、ナショナル・バンクノート社とアメリカン・バンクノート社が製造することとなった。$4、$10、$20の紙幣が製造され、合計枚数は725万枚となった。
1862年の米国通貨の初期生産に続いて、アメリカン・バンクノート社は115か国の外国紙幣に販路を見出した。
1877年、連邦議会によって制定された法律に基づき、米財務省印刷局が発行する通貨のすべてをアメリカン・バンクノート社単独で生産を行うことが決定した。1879年に第二の大きな統廃合が行われ、ナショナル・バンクノート社とコンチネンタル・バンクノート社が吸収合併されることとなった。



現在でもアメリカン・バンクノート社 (AB Corp) は3D Printing、FinTechなど様々なサービスを提供している。

American Banknote Corporation
https://abcorp.com/

ABCorp’s history dates back to 1795, more than 225 years. We started out as secure printers – designing & producing better, more counterfeit-resistant currency for the First Bank of the United States. Our products & services have changed, but secure envelopes everything we do. Today, we design, manufacture, and personalize contactless credit cards, 3D print highly detailed prototypes & parts, and use digital content to elevate the customer experience in a secure envelope. These are just a few of the things we do.

他にも多くの民間の印刷・造幣企業が、外国の中央銀行から紙幣や硬貨の製造委託を受けている。
全ての国の政府が紙幣や硬貨に求められる最高峰のセキュリティ技術を持ち合わせているわけではないため、高い技術を求めて製造を民間企業に委託することは理にかなっている。
デジタル化やキャッシュレスの流れの中で、今後の紙幣や硬貨の動向を見守っていきたい。


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