けむる菊池渓谷

菊池渓谷は阿蘇外輪山の北西部、標高500~800㍍の間に位置し、
約1193haの広大な〝憩いの森〟。菊池川の源をなし、
うっそうとした天然広葉樹で覆われている。
その間を縫って流れる淡水は、大小さまざまな瀬と渕と滝をつくり、
その変化に富む渓流と美しい森林が織りなす四季折々の姿は絶景。
(2018年11月撮影)
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ああ、ついに、この孫娘にも抜かれてしまったか。
高校3年生の孫娘と背中合わせに立ってみた。
案の定だ。この子の母親、僕の次女だが、彼女が
「どれどれ、ほとんど変わらないね。髪の分だけ、この子が高くなったかな」
背比べをそう判定した。おまけに、お尻の高さが全然違う。
それは足の長さを意味しているわけで、これは完敗である。
これで最下位が確定してしまった。
「血筋」だとか「血のつながり」だとか、それを実感することもよくある。
僕の場合だと、下戸であること、それに足指が巻き爪であること、
これらは間違いなく父親の血を継いだものだと思っている。
それに加えて背丈もそうだろう。
若い頃は、生まれ育った家庭ではいちばん背が高かった。
とは言っても、せいぜい165㌢に過ぎなかったが……
つまり小柄な体格の血筋だったのだ。
つい先日、病院に行った際測ったところ161.4㌢しかなかった。
あの頃から3㌢以上縮んだわけで、ますます小さくなっている。
一方、妻の家系は比較的背が高い。特に義母がそうで、
4人の娘たちのうち長姉と一番下の妻がその血を受け継いだようだ。
その妻は若い頃より2㌢縮んだというが、すでに70を超える年齢ながら163㌢ある。
同じ年代の人たちと一緒にいるところを見ると、確かに大柄だ。
あくまで背の高さの話だが……僕は妻から少しばかり見下ろされていることになる。

さて、2人の娘を見てみよう。背が高いか低いか、
これは見栄えに大きく影響する。
やはり、高ければ格好が良いに違いなく、それに越したことはない。
その観点に立てば、娘は2人とも幸運だったと言える。
間違いなく母親の血を引いている。
まず長女だが、ほぼ170㌢あり、すらりとした体型だ。
さらに、その母親の血をそっくり引いたと思えるのが、その娘、
つまり孫娘で、母親よりさらに高いから170㌢を超えていることになる。
加えて、その弟は184㌢の長身だ。母の血を立派すぎるほど受け継いでいる。
この孫息子に対すると、自然と見上げるような格好になってしまう。
婿殿も170㌢の半ばはありそうだから、
4人全員が揃うと、部屋がいかにも狭い。
最初に紹介した次女。彼女も167㌢だから、
女性にしてはやはり大きい方だ。
そして、その一人娘が先の高校3年生の孫娘だ。
家族が全員集合すると、これまでこの爺さんと高校3年生の孫娘が
激しい最下位争いをしてきた。
とは言っても、こちらはこれ以上伸びる可能性ゼロ。
対する孫娘は、成長可能性たっぷりであり、爺さんを追い上げる一方だ。
そして背中合わせに立ち、ついにその日がきたと観念した。
孫娘に抜かれ、僕が家族の中でいちばんのチビとなってしまったのだ。
「大きくなったな」と喜ぶ一方で、何となく悔しくもある。
ここで我が家族の背丈ランキングを見てみよう。
1位 孫息子 184㌢ 大学3年生。中学入学時は爺さんの顎ほどだった。
2位 孫娘 170㌢超 1位の姉。社交ダンスで長身がひと際光る。
3位 長女 約170㌢ 1、2位の母。
4位 次女 167㌢ 高校3年生の孫娘の母。
5位 ばぁば 163㌢ 3㌢ほど縮んだとか。
6位 孫娘 162㌢? ついにじぃじを抜き去っていった。
7位 じぃじ 161.4㌢ とほほ、ついに最下位確定だ。

子や孫の成長を見ながら、縮んでいく爺さん、婆さん。
これも世の習いではある。