2人の娘は、それぞれアラフィフ、アラフォーの年齢になった。
もうすっかり、おばさんだ。
そして、長女には現在アメリカの大学に留学中で卒業を目前にする娘、
次女には高校3年生の娘がいる。つまり私の孫たちだ。
長女には、もう1人大学3年生の男の子がおり、孫は合わせて3人ということになる。
孫たちも大きくなり、それぞれに自分の世界をどんどん広げているようで、
成長するにつれ、娘が私たちに対しそうであったように反抗期があったり、
親に言えぬ隠し事、まあ、親はたいていのことには勘づくものだが、
そんなこともするようになる。
大きくなっていく我が子にしばしば手こずるのは、順送りみたいなものだ。
実際に母娘のいさかいの現場に出会ったことがある。
長女の場合、何が原因か知らないが、つむじを曲げて寝室に立てこもった
娘を持て余した挙げ句、こちらへ〝救援要請〟してきたことがあった。
次女はと言えば、娘が中学生の時の運動会で昼休みに皆が円になって
弁当を食べていると——これも原因不明だが、
いきなり娘の頬に平手打ちを食らわした。
「おい、おい」とたしなめると、
次女は「このくらい何でもないわよ」と平然たるものだった。
これしきの親子のいさかいは、さして珍しくもないのだろう。

一方で麗しいほどの母娘の光景もまた、少しも珍しくない。
久し振りにアメリカから帰省した娘を空港に出迎えた長女は、
大勢の人の前で恥ずかしくはないのかと思えるほど、
母娘でハグを繰り返し、背中をポンポンとたたき合う。
また、平手打ちを食らわせた次女は、母娘2人で旅行に出かけたり、
『嵐』のコンサートに行ったりと、まるで友人みたいに付き合っている。
そんな母娘の姿を見ると、
「子が成長するにつれ、親子の付き合い方もまた変化していくものだ」
ということを実感する。
新聞の読者相談コーナーの見出しに目がいった。
「幼い我が子 成長しないで」とある。
3歳と1歳の子を持つ主婦が、
「小さな子どもたちがかわいくて、成長が寂しくてたまりません。
……かわいい姿を日々失っていくような気がして、
さらに子どもが家から離れていく将来を
想像すると絶望します。できるなら時間を止めたい」
そうまで言っているのである。
これに対し、アドバイザーの作家は「あなたも成長しなさい」と柔らかい。
「親子ともども成長していく中で、
いくつもの新たな喜び、楽しみを見出すはずです」と。
確かに……。