舞台には桜の木がひとつだけある。そこにコウモリ傘を手にした男1がやってくる。
男1 「春です…、木に花が咲いております」
男1は木を眺める。
男1 「いつかもこうでしたよ? いつだったか私はこう言ったことがあるのです。木に花が咲いているねってね…。抜け毛が気になりますね?と突っ込まれましたがそうじゃありません。わたしは木に花が咲いたね? と言っただけなのです。そうしていたところに…」
と、そこに爆弾を持った男2がやってくる。
男2 「ここ、いいですか?」
男1 「何をですか?」
男2 「ここ、あなたの場所なんですか?」
男1 「いえ…、違いますけど…」
男2 「じゃあ、いいじゃないですか? …あなた、ちょっとここ見ててもらえます?」
男2は木の下に持ってきた爆弾を置く。
男1 「いえ…、そのわたしは」
男2 「すぐ、戻りますから」
男2は舞台下手に去る。
男1 「そういうものなんです。そして、その木の下には…」
老夫婦の男3と、女1が上手よりやってくる。
女1 「ここじゃないんですか?」
男3 「あぁ、ここだ、ここだ」
男3と女1、桜の木の下の爆弾に腰掛けようとするが男1にとめられる。
男1 「あ…、あのちょっと待ってください」
女2 「何ですか?」
男1 「そこは、あっちに行った人の…(舞台下手を指す)ものなんです…」
男3 「ガブリエルですか?」
男1 「だ…、誰ですか? ガブリエルって?」
女1 「何か、こう…。重そうなモノを持ってませんでしたか?」
男1 「爆弾を持っていましたが…」
女1 「ガブリエルです」
男3 「うん、ガブリエルだ…」
男1 「あぁ、良かった。ガブリエルさんが何か忘れ物をしたとかで…」
女1 「何を忘れたんですか?」
男1 「さぁ…」
女1 「さぁ…って、あなた? どうしてそんな大事なことをガブリエルに聞かないんですか?」
男1 「知りませんよ…。大体わたしはあの人がガブリエルさんだってことも知らなかったんだし…」
女1 「どこに行ったんですか…」
男1 「(舞台下手を指して)あっちのほうに…」
女1 「あっちのどっちに行ったんですか?」
男1 「知りませんよ? もう、まいったなぁ…」
そこに、男2(ガブリエル)が舞台下手よりコードのようなものを持って歩いてくる。
男1 「あぁ、来ましたよ。ガブリエルさ…」
女1 「何をやっていたの? ガブリエル…」
男2 「爆弾を持ってきたんだけど信管を持ってくるの忘れて…」
男3 「またか、お前は本当にもう…」
女1 「まぁ、いいじゃないの? じゃあ、今から爆弾を仕掛けましょう。 …あなたぁ?(男1)に向かって、この爆弾を仕掛けるの手伝っていただけます?」
男1 「いえ、わたしは…。そういうことで来たのではなくて…」
女1 「いいじゃないですか? 黙っていれば誰もわかりませんよ?」
男1は、女1と男2と女3と一緒に爆弾をしかけている。
そこに、男4がやってくる。
男4 「何をやっているんですか…」
男1 「いえ、ちょっと爆弾を仕掛けているんですけど…」
男4 「その配線間違っていますよ…」
女1 「ガブリエル! だから、いつも言っているでしょ? 配線は間違えないようにって…」
男3 「まぁまぁ、お前は黙って…」
女1 「この子はいつもそうなんです! 去年の爆破のときだって…」
男2 「母さん、それはもう聞き飽きたよ…」
男1 「親子喧嘩はやめてください。息子さんだって反省しているんだから…」
男4 「配線できました…」
男3 「ありがとうございます」
男4 「じゃあ、わたしはこれで…」
男4、舞台下手に去る。
男1 「あの人、何だったんでしょうかねぇ…」
男2 「わかりません…」
男1 「何者なんでしょうか…」
男3 「わかりません…」
女1 「せっかく、爆弾を仕掛けたんだから試しに爆発させないといけないわねぇ? (男1に向かって)ちょっとあなた少し向こうに離れて見てもらえます?」
男1 「わたしがですか?」
女1 「そうですよ、あなた以外に誰がいるというんですか?」
男1 「でも、それは変ですよ?」
女1 「いいから、離れて!」
男1 「わかりました…」
男1、舞台下手に立つ。
男3 「いいか? いちにのさんで爆破スイッチを押すんだぞ?」
男2 「いちにのさんと同時にスイッチを押すんだよね?」
女1 「何を言っているの? あなたは! いちにのさんのさんのさんを言った後にスイッチを押すのよ? 前回もそれで失敗したじゃないの?」
男3 「おい、お前!」
男2 「わかったよ、じゃあ、スイッチを押すよ? せーの、いちにのさ…」
爆死する男2と、男3と、女1。
男1は呆然とその光景を見ている。
舞台が暗くなり途方にくれて座り込んでいる男1。
そこに警官の格好をした男4が自転車でやってくる。
男4 「何をしているんだね? 君は?」
男1 「いや…、そこに複数の男女がやってきて爆弾をしかけて爆死しました…」
男4は、男2と男3と女1の死体に近寄り足で蹴る。死体はぴくりとも動かない。
男4 「たしかに死んでいるね。何があったんだい…」
男1 「さぁ、わたしにも意味がさっぱりわかりません…。ねぇ、おまわりさん。もう少しここにいてもらえませんか?」
男4 「いやだよ、わたしはそういったアレじゃないんだ…」
男1 「お願いです、一人にしないでください。おまわりさ…」
男4 「忙しいんだ…」
男4、舞台下手に去る。男1舞台に取り残される。
突如、「天才バカボンのこれでいいのだ」の歌がながれ死んでいた人たちがムクっと起き上がり曲にあわせて踊りだす。
男1は呆然とその光景を見ている。
暗転。
男1 「春です…、木に花が咲いております」
男1は木を眺める。
男1 「いつかもこうでしたよ? いつだったか私はこう言ったことがあるのです。木に花が咲いているねってね…。抜け毛が気になりますね?と突っ込まれましたがそうじゃありません。わたしは木に花が咲いたね? と言っただけなのです。そうしていたところに…」
と、そこに爆弾を持った男2がやってくる。
男2 「ここ、いいですか?」
男1 「何をですか?」
男2 「ここ、あなたの場所なんですか?」
男1 「いえ…、違いますけど…」
男2 「じゃあ、いいじゃないですか? …あなた、ちょっとここ見ててもらえます?」
男2は木の下に持ってきた爆弾を置く。
男1 「いえ…、そのわたしは」
男2 「すぐ、戻りますから」
男2は舞台下手に去る。
男1 「そういうものなんです。そして、その木の下には…」
老夫婦の男3と、女1が上手よりやってくる。
女1 「ここじゃないんですか?」
男3 「あぁ、ここだ、ここだ」
男3と女1、桜の木の下の爆弾に腰掛けようとするが男1にとめられる。
男1 「あ…、あのちょっと待ってください」
女2 「何ですか?」
男1 「そこは、あっちに行った人の…(舞台下手を指す)ものなんです…」
男3 「ガブリエルですか?」
男1 「だ…、誰ですか? ガブリエルって?」
女1 「何か、こう…。重そうなモノを持ってませんでしたか?」
男1 「爆弾を持っていましたが…」
女1 「ガブリエルです」
男3 「うん、ガブリエルだ…」
男1 「あぁ、良かった。ガブリエルさんが何か忘れ物をしたとかで…」
女1 「何を忘れたんですか?」
男1 「さぁ…」
女1 「さぁ…って、あなた? どうしてそんな大事なことをガブリエルに聞かないんですか?」
男1 「知りませんよ…。大体わたしはあの人がガブリエルさんだってことも知らなかったんだし…」
女1 「どこに行ったんですか…」
男1 「(舞台下手を指して)あっちのほうに…」
女1 「あっちのどっちに行ったんですか?」
男1 「知りませんよ? もう、まいったなぁ…」
そこに、男2(ガブリエル)が舞台下手よりコードのようなものを持って歩いてくる。
男1 「あぁ、来ましたよ。ガブリエルさ…」
女1 「何をやっていたの? ガブリエル…」
男2 「爆弾を持ってきたんだけど信管を持ってくるの忘れて…」
男3 「またか、お前は本当にもう…」
女1 「まぁ、いいじゃないの? じゃあ、今から爆弾を仕掛けましょう。 …あなたぁ?(男1)に向かって、この爆弾を仕掛けるの手伝っていただけます?」
男1 「いえ、わたしは…。そういうことで来たのではなくて…」
女1 「いいじゃないですか? 黙っていれば誰もわかりませんよ?」
男1は、女1と男2と女3と一緒に爆弾をしかけている。
そこに、男4がやってくる。
男4 「何をやっているんですか…」
男1 「いえ、ちょっと爆弾を仕掛けているんですけど…」
男4 「その配線間違っていますよ…」
女1 「ガブリエル! だから、いつも言っているでしょ? 配線は間違えないようにって…」
男3 「まぁまぁ、お前は黙って…」
女1 「この子はいつもそうなんです! 去年の爆破のときだって…」
男2 「母さん、それはもう聞き飽きたよ…」
男1 「親子喧嘩はやめてください。息子さんだって反省しているんだから…」
男4 「配線できました…」
男3 「ありがとうございます」
男4 「じゃあ、わたしはこれで…」
男4、舞台下手に去る。
男1 「あの人、何だったんでしょうかねぇ…」
男2 「わかりません…」
男1 「何者なんでしょうか…」
男3 「わかりません…」
女1 「せっかく、爆弾を仕掛けたんだから試しに爆発させないといけないわねぇ? (男1に向かって)ちょっとあなた少し向こうに離れて見てもらえます?」
男1 「わたしがですか?」
女1 「そうですよ、あなた以外に誰がいるというんですか?」
男1 「でも、それは変ですよ?」
女1 「いいから、離れて!」
男1 「わかりました…」
男1、舞台下手に立つ。
男3 「いいか? いちにのさんで爆破スイッチを押すんだぞ?」
男2 「いちにのさんと同時にスイッチを押すんだよね?」
女1 「何を言っているの? あなたは! いちにのさんのさんのさんを言った後にスイッチを押すのよ? 前回もそれで失敗したじゃないの?」
男3 「おい、お前!」
男2 「わかったよ、じゃあ、スイッチを押すよ? せーの、いちにのさ…」
爆死する男2と、男3と、女1。
男1は呆然とその光景を見ている。
舞台が暗くなり途方にくれて座り込んでいる男1。
そこに警官の格好をした男4が自転車でやってくる。
男4 「何をしているんだね? 君は?」
男1 「いや…、そこに複数の男女がやってきて爆弾をしかけて爆死しました…」
男4は、男2と男3と女1の死体に近寄り足で蹴る。死体はぴくりとも動かない。
男4 「たしかに死んでいるね。何があったんだい…」
男1 「さぁ、わたしにも意味がさっぱりわかりません…。ねぇ、おまわりさん。もう少しここにいてもらえませんか?」
男4 「いやだよ、わたしはそういったアレじゃないんだ…」
男1 「お願いです、一人にしないでください。おまわりさ…」
男4 「忙しいんだ…」
男4、舞台下手に去る。男1舞台に取り残される。
突如、「天才バカボンのこれでいいのだ」の歌がながれ死んでいた人たちがムクっと起き上がり曲にあわせて踊りだす。
男1は呆然とその光景を見ている。
暗転。