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muraのバトスピブログ

バトルスピリッツやガンダムウォーついてや日々の出来事、デッキレシピ、大会のレポ等を載せていく広島プレイヤーのブログ

重力に魂を惹かれるって意味を考えると面白い

2014-05-10 01:04:43 | その他
まず古代からオカルト(隠秘学)=神秘主義というものは地上世界・肉体を離れて魂を上昇させ神へ向かうことを目的としている
これが前提となる

キリスト教神秘主義思想的に言えば、宇宙は地球を中心にした同心球的な構造で
地球から遠ざかるほど位階が上がって一番外側に神がいる、ということになっている

ルネサンス期当時は地動説だったので地球(地・水・風・火)が中心で
外に向かって順に月→水星→金星→太陽→火星→木星→土星→恒星天→天使の九位階…神という風になっている

つまり宇宙に出て地球から遠ざかるほど神に近づいていく、ということになり
その逆方向、地球の中心に向かって魂を引っ張る(つまり神から遠ざける)力を
象徴的に「重力」と呼ぶ
たとえば20世紀の思想家シモーヌ・ヴェイユは『重力と恩寵』において
「重力」という用語を魂に作用する力という意味で使っている

近世までは魂が地球から遠ざかると言うのはあくまで象徴的な話だったが、
これが近代に入って技術的に本当に人間が地球から出ていくことの可能性が取りざたされると、
物理的・肉体的に人類が宇宙に出ることで神に近づくという発想が生まれ、さらに19世紀に提唱された
「進化論」と結びつくことによって、人類が宇宙に出ることで進化して神に近づくという「霊性進化論」と呼ぶべき思想が生まれる
たとえばロシア・ロケットの父として知られるツィオルコフスキーは、未来において地球の周囲に人工島が浮かび
その中に住む人類は天使的な存在となるというニュータイプ思想を先取りしたようなSF小説を書いている

こういった思想は第二次世界大戦後のカウンターカルチャーに流れ込んで影響を与え、
人間が地球から離れて木星まで到達することにより新たな段階への進化を促されるという「2001年宇宙の旅」などのSFや
人類がスペースコロニーに住むことで進化すると唱えたティモシー・リアリーなどにつながっていく

ファーストガンダムの作られた1979年という時代はそういったカウンターカルチャーの影響というのが濃厚で、
ニュータイプというのもいきなり富野がポッと思いついたわけではなく、以上のような思想的伝統を踏まえている
「地球の重力に魂を引かれた人々」というのもそれだけ取り出せばなんだこりゃだが、意味なくそういった用語を選んでるわけではなく
背景にはそれ相応の教養がある

富野的に言えばこの地球(地上世界・肉体)へ向かう力=「重力」に対する嫌悪が最高潮に達したのがTV版Zガンダムの頃だろうが、
F91あたりから反転し、Vガンダム、∀ガンダムと地球への回帰を謳うようになり、それに伴い「霊性進化論」としてのニュータイプ論は棄却していくことになる
新訳ZではTV版Zと同じ場面で全く違う主張を語るようになり、「本当に排除しなければならない」のは「地球の重力に魂を引かれた人々」だったのが
「地球の重さと大きさを想像できないあなたたち」へと180度変わり、「現実での生き死ににこだわるから一つのことしか見えない」とまで言わせた
過激な肉体的な生の否定から、幻覚でも意識だけの存在でもないファを抱けると言う生身の肉体のエロスへと転回を果たす
「重力」を巡っての思想的な変遷が富野ガンダム史とも言える

ちなみに富野新作の「Gのレコンギスタ」も中心にあるアイディアは地球から重力にさからって宇宙に延びる機動エレベータであり、
重力を巡っての言説がどう描かれるかに着目してみると面白いかもしれない

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