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アイデアの散策

仕事・研究・日常の中で気付いたことのエッセイ。

法医工文理の順序

2011年02月11日 | 教育・数学・心理学
 その昔、総合大学の学部を列挙する時、法学、医学、工学、文学、理学の順序で呼ぶのがしきたりだったらしい。

 先日読んだ、伊達宗行著『「理科」で歴史を読みなおす』ちくま新書のp219に、そう書かれてあった。当時、「法医工文理の順序」という小文が、「日本及び日本人」という雑誌の昭和3年9月号に正岡子規の未発表遺稿として掲載されたらしく、その小文には次のようなことが記されているという。

 おそらく、実用中心に並べたのだろうが、この順序は大変面白いもので、これを一本の磁石と考え、+法医工文理-と置くと、+極に近いほど陽気であり、-に行くほど陰気である。そしてどこで切っても磁石のように切り口に+-が現れるというのである。当時の法科は、政治、経済、官僚への人材養成所であり、陽気な若者が多いが、喧騒でもある。無頼の徒も多い。そして対極にある文学、理学は高尚な学問と自称するが、大体において陰気で鵜やせ我慢をしているように見える。

 以上、『「理科」で歴史を読みなおす』のp219から引用したが、今日、たまたま東京大学の学部・大学院を案内するウェブページを見たところ、学部は確かにその順になっていた。さすが、東京大学は伝統を守っている。
(参考) http://www.u-tokyo.ac.jp/index/c00_j.html

 ためしに京都大学、名古屋大学など、旧帝大のウェブページを見てみたが、この記事を書く時点で「法医工文理の順序」にはなっていなかった。

 また、1887年に規定された学位令では、第2条に
 博士の学位は、法学博士、医学博士、工学博士、文学博士、理学博士の5種とする。
と書かれてある。
 ちなみに、1888年(明治21年)5月7日に、各博士5人ずつ、計25人の博士が誕生したという。
(参考) 学校に関する日本初の一覧(ウィキペディア)

 いまでは、たくさんの学部の種類があり、多くの博士学位取得者がいるが、はじまりが法医工文理であったという点は知らなかったので、記事にしてみました。

性格はどの程度先天的?、後天的?

2011年02月05日 | 教育・数学・心理学
 誰もが、自分の性格は「生まれつき」なものなのか、「育ってきた環境」によるものなのか、考えたことがあると思う。無論、「性格」とは、そのいずれかによるものではなく、生まれつきの要素もあり、育ってきた環境による要因もあり、それらが相まって形成されているであろうことは、多くの人が経験的に実感している。

 今日読んだ本に、興味深いことが書かれてあったので、以下引用してみたい。

 性格のほぼあらゆる要素について、西洋社会では遺伝性が高く、別々に育てられた場合、一卵性双生児は二卵性双生児よりもはるかに性格が似ている。個人間の違いは、生い立ちよりもむしろ遺伝性の違いに負うところが大きい。
 現代の心理学者は、性格を五つの特質で定めている。それらは「ビック・ファイブ」と呼ばれ、開放性(Openness)、誠実さ(Conscientiousness)、外向性(Extroversion)、協調性(Agreeableness)、神経症的傾向(Neuroticism)である(それぞれの頭文字をとってOCEANと言われる)。
 アンケートをとると、各人について五つの特質のスコアが出て、それはおのおの独立して変化するように見える。あなたは、たとえば、開かれた心をもち(O)、生真面目で(C)、外向的で(E)、嫉妬深く(A)、穏やかな(N)人間になりうるのだ。
 そしてどの場合も、性格のばらつきの40%強は遺伝的な要因によるもので、共通の環境(たいていは家族)の影響が10%未満、個人が経験するユニークな環境(病気や事故から、学校での交際関係に至る何もかも)の影響がおよそ25%になる。残りの25%程度は、測定誤差である。
(マット・リドレー著、中村桂子、斉藤隆央訳『やわらかな遺伝子』紀伊國屋書店、p113より抜粋)

 以上が引用であるが、この本『やわらかな遺伝子』の原著のタイトルは「Nature via Nurture」らしく、「生まれは育ちを通して」という意味がもともとの原書のタイトルに込められている。どうやら、「Nature vs Nurture」(生まれか育ちか)という議論は、その英語の語呂がよいのも相まって、昔からなされていた。言い換えれば、要因は「遺伝子か環境か」という論点が古くからあったという。

 この、人間の性格を「ビック・ファイブ」により5つの特異性に分類する取組みは、何人かの心理学者によりなされており、いくつかの型があるようだ。ネットを調べてみると、OCEANという5つの分類は、コスタとマクレイによるものらしい(マクレイは、マックレー、マクレー、マクレアと表記されているものもある)。

 以下の資料が詳しい。
「第2章 性格にはいくつ次元があるか」
http://psycho01.edu.u-toyama.ac.jp/history_of_FFM.pdf

 その資料によると、コスタとマクレイによる5因子のほかに、ゴウルドバーグの5因子、タペスとクリスタルの5因子などが知られている。人の性格を5因子によって忠実に語ることには限界はあるだろうが、しかし5因子の軸があることによって整理できることもあるだろう。興味深く思ったので、久しぶりブログを書いてみることにしました。

理想の才能を求めて

2011年01月22日 | 教育・数学・心理学
 この記事のタイトル「理想の才能を求めて」は、ベストセラーになった『フラット化する世界』の第7章のタイトルから引用しました。第7章のはじめに、次のような文章があります。

 友人が、ノーベル賞を受賞している物理学者のイシドル・I・ラビに、どうやって科学者になったのかとたずねた。家に帰ると母親が授業のことを毎日質問した、とラビは答えた。何を習ったのかに興味があったのではなく、「きょうはいい質問をしたの?」とつねにきいた。「いい質問をすることで、私は科学者になった」とラビはいった。<『フラット化する世界』9頁より引用>

 「質問力」。最近、大切な能力のひとつだと感じるようになった。講演会でもいい。友人とのさりげない会話でもいい。本質につくような、核心に迫るような質問は、話題が膨らむし、考えさせられることが多い。

 いい質問ができるようになること。そのための教育は必要だと思う。大学のゼミはそのひとつの場だと思う。日本人は、そもそも質問を遠慮する傾向があるとよくいう。質問力が乏しくなると、問題発見力、問題解決力の低下につながるという仮説は正しいだろう。

 数年前、六本木ヒルズで行われるアカデミーヒルズの講演会によく参加した。何百人という聴衆の中で質問をするのには勇気がいる。その中でコーディネーターをつとめる一橋大学教授の米倉誠一郎先生は、しばしばこう言ったことがある。「今の質問はあまり良くなかったが、回答者の答えが良かったので、よしとしよう」。あるいは、「今の質問はいい質問だね。確かにどうなんだろうね」。
 質問の質が、対話をより充実したものへと導くかもしれない。よく見ると、「質問」という字は、「問いの質」と書く。

 電車に乗っていると、子どもに接する親御さんのタイプに大きく3種類あるような気がする。「何でじっとしていられないの。靴を脱ぎなさい。」「ビエーン。」という、子どもを親が押さえつけるようなタイプ。理念説得型とでも言おうか。
 一つは「なんで、あの雲は左から右に動くの?」「なんでだと思う?」という、親が子どもの疑問に向き合う対話型のタイプ。
 もう一つは「無関心」というタイプ。
 
 ある程度の才能は天分かもしれない。でも、その才能を伸ばすことができるかは、日々の環境に大きく左右されることも事実。ふとした疑問を持つこと。この繰り返しが知的好奇心を育み、深い思考を養うのかもしれない。理想の才能は、日々の環境の中で育てられる要素も大いにあると思う。

 自然現象を、社会現象を、人間模様を楽しむこと。面白いと感じる、その気持ちが、新たな創造の芽生えかもしれない。

 最後にもう一か所。『フラット化する世界』で気に入った文脈があったので引用したい。

 自分の好きな先生のことを思い出すとき、教えてくれた細かいことは思い出せないが、勉強が刺激的で楽しかったことは覚えている。頭に残っているのは、授けてもらった知識ではなく、学ぶ喜びを教えてくれたことだった。学ぶ方法を学ぶためには、学ぶことが好きにならなければならない。そうでなかったら、とにかく楽しむことだ。<『フラット化する世界』12頁より引用>

参考文献
 トーマス・フリードマン(2008)『フラット化する世界(下)』増補改訂版(Release3.0)伏見威蕃訳、日本経済新聞出版社

理想の教師像を語り合う

2011年01月19日 | 教育・数学・心理学
 昨日は 生徒を伸ばす教師の特徴 という少し思い切った記事を書いてみた。自分の経験則から書いてみたので客観的とは限らない。

 そこで、今日はその記事の補足をしようと思う。昨年、受講した東京理科大学の「教職概論」という授業科目で、授業時間の90分間すべてを使い、「理想の教師像」を挙げる講義があった。大学1年生、すなわち18歳から20歳あたりの学生たちが思う理想の教師像。33人の学生が一人一人、マイクを回しながら発表した。

 その結果を以下に紹介したいと思う。なるほどというコメントもいくつかある。

1.一方的でなく対話を大事にする 
2.教えるのがうまい 
3.教える科目の背景知識が深い 
4.面白い 
5.わからない人を理解できる 
6.教科書だけでなく、プラス解説がある 
7.公平である(個人の状況を勘案する)
8.途中で雑談を入れる 
9.部活を指導してくれる 
10.良く笑う 
11.声がとおる 
12.字がきれい 
13.サポート役に徹する 
14.冗談がすべらない 
15.注意すべき時には注意する 
16.何かを努力していて尊敬できる 
17.偏らない知識を持つ(引き出しが多い)
18.指導に一貫性がある
19.板書がうまい
20.生徒に親身に対応してくれる(生徒の目線に立つ)
21.生徒の名前を覚えている
22.有言実行
23.教師という仕事に誇りを持っている
24.質問がしやすく、きちんと答える
25.生徒が主役で考えさせる
26.自分が偉いと思っていない
27.生徒のやる気を引き出す(内発的動機づけ)
28.視野が広い
29.弱者と強者について教える
30.生徒に意見の発表の場を与える
31.言葉に威厳がある
32.優しい
33.学校生活に生徒と一緒に取り組む

追伸:その講義の翌週、より広く一般的に大学生がイメージする理想の教師像の紹介があった。大きく分類すると次の4つだという。

1.差別や「えこひいき」をしない
2.元気で明るい生徒の良き理解者である
3.ふれあいを大事にするが、けじめのある
4.指導力に長けているよりも、生徒との関係を大事にする

 あなたにとっての理想の教師像とは何ですか。

生徒を伸ばす教師の特徴

2011年01月18日 | 教育・数学・心理学
 Business Mediaに「MBA教員が教える「伸びる生徒」5つの特徴」という記事が掲載されている。

 その記事によると、「伸びる生徒」5つの特徴とは、次のようなものだと言う。興味深い内容だったので一部抜粋してみたい。

1.最初に話し始める(前向きに自分の考え方を表現する)
2.人に問いかける(問いを立てる)
3.社交的である(人と仲良くなれる)
4.好奇心にあふれている(人の話に興味を持つ)
5.インプットとアウトプットのバランスが良い

 確かに5つの特徴には、一理あると思う。逆に、伸びない生徒の特徴とは「自説にこだわり過ぎる」ことだという。これまた、そうかもしれない。自説にこだわり過ぎると、他者の意見を受容し難くなると思う。

 さて、この記事では「生徒を伸ばす教師」の特徴について考えたいと思います。これもまた議論になりそうなテーマかもしれません。あくまで「私はそう思う」という、一個人の経験的な見解です。ここでは4つの特徴に分類してみます。

1.話題が豊富で表現がうまい
 多彩な知識を持っていて、鋭敏な知恵を有していること。そして、わかりやすい授業ができる教師に生徒は惹きつけられる。尊敬できる教師の下では生徒の学習意欲は高まる。適切な「ヒント」を提示できる教師、話に拡がりを持たせる教師は生徒の潜在能力を引き出せる。教育への情熱もまた必要となる。

2.知的活動への理解がある
 知的好奇心が少ない教師の授業は、なぜか生徒も退屈に感じる。面白いことは何か、知的活動のツボを押さえている教師に習うことで、生徒側の「ものの見方」が磨かれてくる。生徒が何かを不思議に思う、興味深いと感じるセンスを養うためには、教師自らが多くの知的好奇心や知的興奮を味わった経験があるとよい。

3.思考をリード・サポートしてくれる
 生徒は未熟である。生徒は自分の考えを論理的に整理できないこと、自分の関心事に迷うことが多い。そのような時、考え方の道筋の「方向性」を示せる教師、関心事の良し悪しの「目利き」ができる教師は生徒の成長を助ける。生徒の思考成長に親身であること、生徒の思考過程に敏感であることも教師には求められる。

4.優しくも厳しさがある
 上から目線の自分の思想を押しつける教師は嫌われる。生徒の意見を大切にする教師は支持される。だが、単に優しいだけでは生徒は伸びない。時には厳しく多少無理をさせる教師の方が生徒も自走するようになる。教師は生徒に汗をかかせる必要もある。その上で褒めること。生徒の自尊心を尊重することが信頼関係を築く。

追伸:特徴を4つにまとめることに無理があるかもしれません。ここでは、あくまで主観的な観点からの整理です。