内分泌代謝内科 備忘録

内分泌代謝内科臨床に関する論文のまとめ

2022/07/20

2022-07-20 22:42:51 | 日記
アルコール性ケトアシドーシスはアルコール依存症患者が飲酒を中止した数日後に発症することが知られている。なぜ飲酒を止めるとケトアシドーシスを発症するのか?

まず、アルコール依存症患者では、インスリン分泌が低下する一方、コルチゾール、カテコラミン、グルカゴン、成長ホルモンの分泌が上昇しており、脂肪分解が促進されている。ケトン体は遊離脂肪酸を酸化した結果生じるアセチル-CoA 2分子から合成されるので、もともとケトン体を合成しやすい条件になっている。

一方、エタノールの代謝には酸化剤である NAD+が消費されるので、アルコール依存症患者の肝臓では NADH2/NAD+ 比が上昇している。糖新生の経路も NAD+ を必要とするので、アルコール依存症患者では糖新生は抑制されている。

飲酒をやめると、NADH2/NAD+ 比は正常化し、糖新生の抑制が解除される。そうすると、糖新生の基質であるオキサロ酢酸が枯渇する。オキサロ酢酸はクエン酸回路の基質でもあるので、クエン酸回路が進まなくなる。その結果、アセチル-CoA はクエン酸回路で代謝されずケトン体合成が進行する。

以上がアルコール依存症の患者が飲酒をやめるとケトアシドーシスを来す理由である。

参考文献:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2564331/
https://lifescience-study.com/1-genelation-and-use-of-ketone-bodies/