地理講義   

容量限界のため別ブログ「地理総合」に続く。https://blog.goo.ne.jp/morinoizumi777

146. 富士山(1) 文化遺産登録は3年限りか

2014年09月25日 | 地理講義

富士山の文化遺産は3年間の暫定指定
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」は2013年6月26日、カンボジアの首都プノンペンで開催した世界遺産委員会で、日本政府が推薦した「富士山」(山梨、静岡両県)を世界文化遺産に登録した。富士山から45km離れた「三保松原」を含む25地点が世界文化遺産の資産とされた。指定要件は信仰の対象と芸術の源泉だが、イコモスは3年後の再審査で、資産の改善が進まなければ、遺産登録は取り消される。
信仰の対象:独立成層火山としての富士山の形は,間欠的な火山活動により形成されたものである。噴火は古代から今日まで山岳信仰の伝統を鼓舞し続けてきた。頂上への登拝と山麓の霊地への巡礼を通じ、巡礼者は神仏の霊能を我が身に吹き込むことを祈願した。富士山の構成資産は,富士山の完全な形姿に対する崇敬を基軸とする、生きた文化的伝統の証拠である。
芸術の源泉:富士山の図像は、詩・散文その他の芸術作品にとって創造的感性の源泉であり続けた。19世紀初期の葛飾北斎・歌川広重により浮世絵に描かれた富士山は、西洋の芸術に顕著な影響をもたらし、富士山の荘厳な形姿を世界中に知らしめた。
富士山の所有権山麓~5合目は牧野組合・地方自治体の公有地40%、私有地37.9%、国有地21.4%である。5~8合目は国有地。8合目~山頂は富士宮市浅間神社所有地である。神社所有であるため、八百万の日本の神々が霊峰富士に、とんでもない宗教施設をつくることができず、ある程度の自然が維持されてきた面がある。
資産構成

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イコモスICOMOS
国連機関NESCOの下部組織のNGOで、1965年に発足した。正式名はInternational Council on Monuments and Sitesである。ICOMOSは富士山麓を自然遺産とは認めず、文化遺産として登録した。世界遺産の登録基準は(1)~ (6)が文化遺産、(7)~(10)が自然遺産である。
(1) 人間の創造的才能を表す傑作である。
(2) 建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値感の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
(3) 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
(4) 歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
(5) あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)。
(6) 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
(7) 最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
(8) 生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
(9) 陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。
(10) 学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。
富士山が自然遺産でなく、文化遺産とされた理由
富士山と同型の成層火山は国内外に多数あることである。富士山は5合目を越えると植生がほとんどなく、自然遺産となり得る貴重な動植物が存在しない。3プレートの交会する地殻弱点にできた、玄武岩質火山である点が貴重だが、ICOMOSには理解できない科学的知見であった。
文化遺産であることは浮世絵の素材としても、山岳宗教の象徴的存在として貴重である点である。山岳宗教とは山体そのものを神として信仰するものである。貞観年間(860年代)には三陸大津波、富士山の噴火があり、律令国家が天変地異を鎮めるために浅間神を祀るようになった(富士山本宮浅間大社)。
富士山8合目~山頂の所有権は、1974年の最高裁判決により、富士山本宮浅間大社の境内として認められた。最高裁判決判が、浅間神社による富士山頂独占を合法とみなしたことから、富士山をご神体と仰ぐ新興宗教に大きな打撃を与えた。また、富士山頂には、富士信仰の宗教施設乱立を防ぐことができ、富士山の景観保全の上では、有益な判決であった。しかし、観光客の増加には、神社が環境省の援助を得ても、有効な対策を見いだすことができずにいる。
登山 山岳宗教

 

 

 

 

 

 

21seiki登山

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。