地理講義   

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106.サバナ気候Aw 東南アジアの乾季稲作 ブラジルのカンポ 

2013年11月08日 | 地理講義

サバナ気候Aw
タイの場合、夏は赤道低圧帯が北上してで雨季、冬は亜熱帯高圧帯が南下して乾季である。乾季・雨季の月降水量には10倍以上の違いがあり、サバナ気候とみなされる。夏の雨季は洪水が多く、冬の乾季は砂漠同然である。
タイの雨季は5~10月、乾季は11~4月と明確である。タイの米収穫量は年3,000万トン、そのうち1,000万トンが乾季作である。

タイの浮稲
雨季の洪水常襲地域の農業である。灌漑網から外れた低地では、雨季には洪水が起こり、水位が高くなると、浮稲も水位と同じ高さまで成長する。雨季が終わるって水位が低下すると、浮稲も倒れ、穂先は腐った茎の上に残る。穂先はぬれないので、品質は低下せず、通常の水田の米と同等に扱われる。

タイの雨季稲作

日本同様、籾から苗を育て、水田には田植えを行う。5月に植えて10月までには収穫する。雨季の農業は、水路・農道・畦が水没しない程度の降水量であれば、日本の水田稲作農業のような機械化・合理化が可能だが、タイではしばしば大洪水が起こり、伝統的な農業になる。大洪水はタイの全土で起こるのではないので、国全体の収穫量はほぼ毎年、浮き稲を含め、水稲は2,000万トン程度である。

タイの乾季稲


Chao Phraya上流のSirikit Dam。
灌漑用ダムとして乾季稲作に必要な水を供給する。
しかし貯水量を増やすと、雨季の治水用ダムとしての機能が低下する。

もともとはカンボジアで雨季の洪水被害を避けるために、細々と行われていた稲作である。隣国タイではチャオプラヤ川の支流にはダムが建設され、チャオプラヤ川の本流・支流の洪水が、バンコク市街地や住宅の被害を減らす努力がなされている。水田は乾季には土が固まり、稲作はほとんど不可能であった。しかし、ダムからの水を得られる水田では、乾季の農業が可能である。乾季ならば、水位を調整しつつ農業機械を使うことも、農薬を使うことも、新しい品種を栽培することも可能である。
タイでは、乾季に稲作を行う農家が増えている。多収量品種の導入、農業の機械化、化学農薬や農薬を使用することが、計画的にできる。11~5月の冬の乾季稲作では、タイの米収穫量の3分の1にあたる1,000万トンが収穫されている。乾季稲作は雨季稲作とのセットつまり2期作として行われる。


タイの農業政策
20世紀中は乾季稲作は一部富農の農業に限られていたが、21世紀になって東南アジア各国の所得水準が向上すると、カンボジア・ベトナムなどの乾季・雨季の存在するサバナ気候地域では、政府援助があり、農業の基盤整備が進み、乾季農業が増加している。稲作に限らず、発展途上国の農業の近代化による増産は「緑の革命」といわれる。
2012年はタイ米の輸出急減:タイ政府与党が政権維持のため、2011年から、政府買い上げの生産者米価を10kg500円に引き上げた。形式的には政府がコメを担保に営農資金を融資する制度だが、実質的には国内市場価格の2倍で買い上げる政治加算制度である。農家の生産意欲が高まるとともに、輸出業者には売らずに政府へ売り渡した。その結果、政府米の過剰在庫と財政赤字に陥った。日本の1970年代の食糧管理法による農業政策と同じ構図である。
輸出業者は政府から半値で米を仕入れる政治工作を試みたが、汚職の批判があってうまくいかず、2012年はインドとベトナムよりも輸出量が少なかった。タイ政府はコメ買入価格引き下げと数量削減方針を示した。以後、財政赤字は縮小し、輸出競争力は回復する見込みではある。



タイ南部マレーシア国境に近いバンナラ川水門(日本の経済技術援助。2001年完成)。
海水がバンナラ川を逆流して、河口低地の水田に入るのを防ぐ。


 

カンポ
ブラジル高原のサバナは荒野カンポ(カンポセラード)であり、農業に不適当であった。
第1次石油危機(1973年)、日本の畜産を支えるアメリカ産飼料大豆が不作になり、日本への輸出を規制した。
日本の商社員は代替飼料を求めて国内外を奔走し、危機を乗り切った。
当時の田中角栄首相は1974年にブラジルを訪問し、カンポを農地に開墾するための経済・技術援助を約束した。
田中角栄の資源外交であり、カラジャス鉄山、ツバロン製鉄所、アマゾン横断道路の建設などに積極的援助が約束された。
セラードの開墾が[日本-ブラジル-セラード農業開発協力事業]である(1979年~2001年)。広さは240万km2である。
日本からは大型土木機械、農業機械、土木・農業の専門家が送り込まれ、荒地は農地に変わった。
大豆、とうもろこし、綿花などが栽培された。灌漑にはアメリカのセンターピボット農法が導入された。


※ 円形の農地一つが半径400m、面積60haである。とうもろこし・大豆などを交互に栽培する。


※ センターピボット農法で使う大型スプリンクラー。近くの河川水か地下水を利用する。
散水には、種子に応じて指定された化学肥料・農薬を混入し、大型トラックのエンジンで動かす。
アメリカで開発された遺伝子組み換えの大豆・とうもろこし・綿花などが栽培される。


大規模農業
ブラジルは所得格差が大きい。カンポの大規模プロジェクト
に参加したのは、経済力のある者に限られた。
アメリカの穀物メジャーが積極的に出資し、ブラジルの農産物輸出を支配した。
栽培する作物も、アメリカの開発した遺伝子組み換え作物の割合が、次第に高まった。
日本には、ブラジル産大豆・とうもろろこしの輸入量が増加した。
ブラジルの大豆生産は、アメリカの穀物メジャーの資金と技術により、アメリカに追いついた。
ブラジル産大豆は遺伝子組み換えも非組み換えも、味が悪くて食用にならず、飼料専用である。
ブラジルのセラードでも、豊富な飼料と広い土地を利用し、肉牛飼育・養鶏が盛んになっている


 

 



 


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