【APC study (Adenoma Prevention with Celecoxib)の概要】
目的:celecoxib投与による癌予防効果の証明
対象:腺腫様ポリープの切除を行った大腸癌患者 約2400例
方法:celecoxib200mg、同400mg、対象薬の3群に分け、それぞれ1日2回服用した。
結果:冠動脈性心疾患イベントの発症リスクが、プラセボ群に比べ、400mg群では3.4倍、200mg群では2.5倍に増大(平均治療期間=33カ月)。 本試験はこの結果を受け2004年12月17日で中止となった。
なんか、Vioxxの時とそっくりだ。Vioxxも癌予防効果の効能追加の治験中に、投与18ヶ月以上の長期投与で心疾患系の副作用が認められたんだよね。コキシブ系の選択的COX-2阻害薬の長期使用が、心疾患イベントの発生リスクを高めるというのは、もはや疑いがないと思います。
以下に私の仮説を記します、ただし根拠はありません。COX-2は血小板の凝固を抑制する方向に働いています。これは、COX-2がPGIの生成を抑制するためです。PGIは血小板に対して血小板凝集抑制作用と血管拡張作用を有しているため、心筋梗塞を予防する効果があります。COX-1はTXA2の生成し、血栓を生成しやすくします。TXA2は血小板に対して血小板凝集促進作用作用があるためです。つまりCOX-1とCOX-2は逆の作用を有するわけです。。あーややこしい。
アスピリンなどの非選択的COX阻害薬の低用量投与の場合、COX-1阻害による抗血小板作用とCOX-2阻害による抗血小板作用の抑制と相反する作用が起こりますが、COX-1阻害による抗血小板作用のほうがCOX-2阻害による抗血小板作用の抑制よりも優位に作用し、結果、抗血小板作用を発現します。
そして、COX-2の選択的阻害が大きくなるにつれ、COX-1阻害による抗血小板作用が期待できなくなります。そのため、COX-2活性が非常に高いコキシブ系では、COX-2阻害による抗血小板作用の抑制が優位に発現し、血栓が発生しやすくなる。そのため、心疾患イベントが増大するのではないでしょうか。
なにかに、似てませんか? そう、アスピリンジレンマです。アスピリンは低用量の場合は、先に述PGI生成阻害効果よりもTXA2生成阻害効果が強く現れます。TXA2は血小板を凝固させますので、低用量アスピリンは抗血小板効果を有しますが、ただし高用量では PGIの生成も阻害してしまい血栓の発現をかえって促進してしまいます。これをアスピリンジレンマといいます。このアスピリンジレンマは、用量に依存しているだけでなく、COX-1/COX-2の選択性にも依存しているのでしょう。このCOX-1/COX-2の選択性に依存するアスピリンジレンマを『コキシブジレンマ』、または『スーパーアスピリンジレンマ』と呼んでいいかもしれません。
ちなみに、非選択的COX阻害薬のnaproxenもFDAから警告でています。適用用量を超えた使用量では、やはり心疾患系の副作用のリスクが増大するとのこと。
http://www.fda.gov/bbs/topics/news/2004/NEW01148.html
ただ、こちらについてはアスピリンジレンマという周知の事実で理解できる問題ですので、大騒ぎする必要はないでしょう。。
目的:celecoxib投与による癌予防効果の証明
対象:腺腫様ポリープの切除を行った大腸癌患者 約2400例
方法:celecoxib200mg、同400mg、対象薬の3群に分け、それぞれ1日2回服用した。
結果:冠動脈性心疾患イベントの発症リスクが、プラセボ群に比べ、400mg群では3.4倍、200mg群では2.5倍に増大(平均治療期間=33カ月)。 本試験はこの結果を受け2004年12月17日で中止となった。
なんか、Vioxxの時とそっくりだ。Vioxxも癌予防効果の効能追加の治験中に、投与18ヶ月以上の長期投与で心疾患系の副作用が認められたんだよね。コキシブ系の選択的COX-2阻害薬の長期使用が、心疾患イベントの発生リスクを高めるというのは、もはや疑いがないと思います。
以下に私の仮説を記します、ただし根拠はありません。COX-2は血小板の凝固を抑制する方向に働いています。これは、COX-2がPGIの生成を抑制するためです。PGIは血小板に対して血小板凝集抑制作用と血管拡張作用を有しているため、心筋梗塞を予防する効果があります。COX-1はTXA2の生成し、血栓を生成しやすくします。TXA2は血小板に対して血小板凝集促進作用作用があるためです。つまりCOX-1とCOX-2は逆の作用を有するわけです。。あーややこしい。
アスピリンなどの非選択的COX阻害薬の低用量投与の場合、COX-1阻害による抗血小板作用とCOX-2阻害による抗血小板作用の抑制と相反する作用が起こりますが、COX-1阻害による抗血小板作用のほうがCOX-2阻害による抗血小板作用の抑制よりも優位に作用し、結果、抗血小板作用を発現します。
そして、COX-2の選択的阻害が大きくなるにつれ、COX-1阻害による抗血小板作用が期待できなくなります。そのため、COX-2活性が非常に高いコキシブ系では、COX-2阻害による抗血小板作用の抑制が優位に発現し、血栓が発生しやすくなる。そのため、心疾患イベントが増大するのではないでしょうか。
なにかに、似てませんか? そう、アスピリンジレンマです。アスピリンは低用量の場合は、先に述PGI生成阻害効果よりもTXA2生成阻害効果が強く現れます。TXA2は血小板を凝固させますので、低用量アスピリンは抗血小板効果を有しますが、ただし高用量では PGIの生成も阻害してしまい血栓の発現をかえって促進してしまいます。これをアスピリンジレンマといいます。このアスピリンジレンマは、用量に依存しているだけでなく、COX-1/COX-2の選択性にも依存しているのでしょう。このCOX-1/COX-2の選択性に依存するアスピリンジレンマを『コキシブジレンマ』、または『スーパーアスピリンジレンマ』と呼んでいいかもしれません。
ちなみに、非選択的COX阻害薬のnaproxenもFDAから警告でています。適用用量を超えた使用量では、やはり心疾患系の副作用のリスクが増大するとのこと。
http://www.fda.gov/bbs/topics/news/2004/NEW01148.html
ただ、こちらについてはアスピリンジレンマという周知の事実で理解できる問題ですので、大騒ぎする必要はないでしょう。。
今回、COX-2阻害剤の記事については、このようの様々な医療関係の方々からコメントやTBを頂き、勉強になりました。
グリタゾン系の糖尿病治療薬も肝機能に対する副作用がありますし、イレッサも副作用が問題視されている上、効果がないという烙印を押されそうで、新しいタイプの薬剤に対して風向きが悪いようですね。
アラキドン酸カスケードは複雑で生体内で実に多様な作用があるため、一つのルートを抑えると目的の反応とは異なった反応(つまり副作用)が現れ、それを全て予期するのは難しいということですね。
ただCOX-2阻害剤についてはその有益性は確かなので、使用中止にするのではなく、リスク・ベネフィットのトレードオフで決めるべきだと思います。市場は小さくなれば製薬企業に対する打撃は大きいとは思いますが。
今後ともよろしくお願い致します。
こちらこそ無断でTBしてしまい、すみません。そしてコメントありがとうございます。
>リスク・ベネフィットのトレードオフで決めるべきだと思います
同感です。ただ、コキシブ系の薬剤に関しては厳しいかもしれません。心血管への作用がコキシブ系の過度のCOX-2選択性が原因なのだとしたら、あえてコキシブ系を用いる必要がなくなります。COX-2阻害薬には、メロキシカムやエトドラクといった非コキシブ系の代替薬もあります。もちろん、コキシブ系にアスピリンを併用するという手段もありますが、それなら、重篤な胃腸障害を回避できるというコキシブ系のメリットが全くなくなってしまいます。以上を考慮すると。、コキシブ系の使用に制限がかかるのはしかたないのではないでしょうか。
なにより、Vioxxの製造中止が決まったとき、celecoxibを発売してたP社は、米国で『Vioxxの心血管系に副作用はVioxx固有の問題であり、celecoxibは問題ありません。Vioxxの代わりにcelecoxibの処方を医師にお願いしましょう』というカウンタープロモーションを大々的に行っていました。コキシブ系の薬剤全般に心血管系の副作用が、まだ疑われていた時期にです。このようなP社の企業姿勢は、非難されて当然でしょう。
ラウンジを設けており、癌関連のみですが、またいろいろ聞かせていただけるとありがたいと思います。
以下のブログ(10月のものですが)、お役に立つでしょうか。
http://www.corante.com/pipeline/archives/2004/10/07/how_bad_are_the_cox2_inhibitors_anyway.php
セレブレックスについては、Cox-2阻害剤の中でも癌予防に最も大きな効果が期待されており、単に鎮痛剤としてだけでなく、癌患者には切実な薬です。この騒ぎで使用が不可能になるのでなく、何とか副作用の管理が可能になればと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
しかし、非コキシブのメロキシカムはcelecoxibよりもCOX2選択性が高いにもかかわらず、重大な心血管系への作用が認められていません。つまり、コキシブ系の心血管副作用は、COX-2の選択性以外に、コキシブ系独自の作用が心血管系に働いている可能性も否定できないと思います。。。
>>セレブレックスについては、COX-2阻害剤の中でも癌予防に最も大きな効果が期待されており、単に鎮痛剤としてだけでなく、癌患者には切実な薬です。
なかなか微妙なところですね。現在、セレブレックスの臨床試験は中断されましたが、COX-2阻害薬が持つ癌予防の効果が否定されたわけじゃありませんし、心血管系副作用に対する解決策が出てくればいいのですが・・・
一番先に思いつくのがやはりアスピリンとの併用の可能性です。上に『COX-2阻害薬とアスピリンとの併用は意味がないだろう』と書きましたが、これはCOX- 2阻害薬の炎症薬として用いる前提でリスクとベネフィットを考えた場合で、ガン進展予防薬としてのCOX-2阻害薬を用いる場合では、事情が変わってくると思います。アスピリンの併用でコキシブ系COX-2阻害薬の心血管系副作用を軽減される可能性は十分考えられますが、現時点でデータがあるかどうか不明ですし、上部消化管障害のリスク増大の可能性も考えられますので、専門家の先生方がどのように判断するのか慎重に動向を見守りたいと思っています。