FIFA WORLDCUP2022準決勝の第二試合、フランス対モロッコの試合は2-0でフランスが勝利し、2大会連続の決勝進出を勝ち取りました。
その結果、2大会ぶり決勝進出のアルゼンチンと、ともに3度目の優勝を目指して決勝を戦うことになりました。
今大会エムバペ5得点・ジルー4得点で攻撃陣が好調のフランス、これまでわずか1失点のモロッコ。
攻撃陣が好調の「最強の矛」フランスと、これまでわずか1失点の「最強の盾」モロッコの興味深い対戦。
フランスはこれまで通り4バックの4-1-2-3でスタートし、準々決勝から先発を2名変更してはいますが、前線のCFジルー、左WGエムバペ、右WGデンベレと二列目のグリーズマンらはこの試合も先発。
モロッコは前の試合と先発を1名入れ替えて、守備的な5-4-1でスタート。ポルトガル戦で驚異的なヘディングを決めたエンネシリを1トップに堅守速攻の姿勢で臨みます。
しかし、試合は開始早々に意外な形で動きました。
フランスはDF陣でパスをまわしている間に、モロッコの最終ラインまでポジションを上げたグリーズマンの右前方への縦パスをCBのバランが選択。グリーズマンは後→前への揺さぶりの動きで整いきっていないモロッコのDFラインの裏を取ると、ペナルティエリアに侵入し、マイナスのグラウンダーのパスを選択。
ボールを受けたエムバペが数人に囲まれながら強引に打ったシュートは左にこぼれ、そこへ攻めあがっていた左サイドバックのテオ・エルナンデスが高いバウンドのボールを、GKが出てくる前にたたきつけるボレーを選択。ボールはGKの足元をすり抜けてモロッコゴールへ。5分経たずしてフランスが先制しました。
その後はモロッコのミドルをロリスが防ぎ、ジルーのシュートがポストを叩くなど一進一退の攻防。
モロッコは前半半ばで足を痛めていたとみられるCBサイスを下げて中盤のアマラーを入れ、4-1-2-3にシフト。ポルトガル戦と同じ布陣に戻します。
フランスは1点リードしたことで、モロッコが持つと早めに自陣に戻りブロックを敷き、その分モロッコのボールを持つ時間がやや多い印象。
反して、チャンスの数はショートカウンターやくさびのパスを効果的に使うフランスに多い印象の時間が続きます。
前半の終盤は1点を追うモロッコが攻める時間が続きます。
43分にはモロッコがコーナーキックからこぼれ球をオーバーヘッド。しかしこれはロリスがはじき返します。
その後、アディショナルタイム3分を含めてモロッコが押し込みますが、フランスがしのぎ切って前半終了。
後半はモロッコが左SBにアティアットヤラーを投入、フランスは交代なくスタート。
序盤はフランス左サイドのエムバペのスピードを生かして縦に入れるフランスが攻めるも、その後はモロッコが攻勢に出ます。
サイドから短いパス交換で侵入して中央に送る機会を伺う時間が続き、フランスもペナルティエリアに8人が下がる形でブロック。
その後もモロッコがボールを持ち、フランスが中盤で奪ってカウンターという流れが続きます。
フランスはジルーに代えてテュラムを投入、エムバペを中央に配して、テュラムは左WGに入ります。
テュラムは1998年の優勝メンバーのリリアン・テュラムの息子なんですね。
一方でモロッコは後半20分過ぎにいい形でボールが入らないエンネシリを下げ、ブファルを下げてアブクラルを入れ、前線をリフレッシュ。
フランスはさらにデンベレに代えてコロムアニを入れて前線のリフレッシュを図ります。前線の早いチェックとカウンターの鋭さを維持する狙いでしょうか。
すると、後半35分、中盤から縦へのパス、中央のエムバペがターンして左のテュラムヘ出すと、ペナルティエリアに侵入したテュラムは追ってきたエムバペにリターン。狭いエリアでエムバペが右に流したボールは、DFのブラインドから前に出たコロムアニがフリーでプッシュしてモロッコネットを揺らして2-0。
後半入ったテュラムが絡み、代わったばかりのコロムアニが決めて突き放しました。
試合はそのまま進みアディショナルタイム6分。
モロッコがボールを保持し続け、アディショナルタイム3分には独力で左サイドをえぐってマイナスのボール、シュートはあわやというところでフランスDFがクリア。
このまま試合は2-0でタイムアップ。フランスが2大会連続の決勝進出を勝ち取りました。
モロッコは0-0の時間を長く作るか先制点が欲しいところでしたが、早い時間にフランスが先制したことでフランスにとってはゲームプランを作りやすくなったと思います。
フランスはエムバペがペナルティエリア内でボールを持った際にDFを引き付けて、こぼれを決めるという2得点でしたが、エムバペが持つことによってモロッコにボールウォッチャーが増えて、フランスの他の選手がフリーになれるという、ある意味「最強の矛」の使い方の一つを示した格好です。
一方のモロッコは「最強の盾」を破られた格好ではあるものの、ボールを持たされるような形ではなく、短いパス交換やドリブルでのサイド突破から惜しいシーンを何度か作り、ベルギーやポルトガルを破った力がフロックでないことを示しました。
ただやはり、前線の決定的な仕事をするタレント不足は否めず、追う展開になった時の引き出しの多さに課題があったということでしょうか。
そして、決勝は前回大会ROUND16の再現となり、雪辱を果たして36年ぶり優勝を狙うアルゼンチンと、3か国目の連覇を狙うフランスの対戦。
アルゼンチンは準決勝をメッシとアルバレスの前線2人の活躍で快勝しましたが、今大会の象徴的なハードワークでの守備がはまっており、両サイドの精力的な攻め上がりと前線の2人の決定力を活かしています。
一方でフランスもエムバペとジルーの決定力が際立ちますが、右のデンベレのラインブレーク能力、二列目のグリーズマンのチャンスメークや正確なキックに、チャンスにはボランチのチュアメニや両SBも絡む厚い攻撃が持ち味。
となると、やはりポイントは両チームの守備でしょうか。
アルゼンチンは今大会前線と中盤から激しいハードワークを徹底していますが、サウジアラビア戦では一瞬の個人技に2点を奪われ、オランダ戦では高さにやられ2失点。
フランスはCFのジルーや、セットプレーの際には長身のCBも上がってくるので脅威です。
さらに、ペナルティに侵入した際にはエムバペの存在がやはり最大の脅威。サウジ戦のようなワンチャンスを何度も作られるかもしれません。
加えてGKのロリスの安定感と高さのあるCBで大崩れしないフランスのDF陣はここまで1試合2失点がなく安定しています。
一方でメッシやアルバレスほどのスピードある強力な攻撃陣を受けてこなかったこと、アルゼンチンのハードワークに対してチュアメニやグリーズマンらがどうボールを保持し、さばけるかがポイントでしょうか。
何となく攻撃のタレントの数ではフランスが上回って見えますが、個人的にはここでポグパやカンテがいない中盤がフランスのハードワークに耐えきれないことも想像しています。
結局なんだかんだありながら、私の妄想予想の決勝戦のアルゼンチン対フランスは実現しましたので、予想通りアルゼンチンが3度目の優勝を勝ち取ることを期待して、決勝戦を楽しみに待ちたいと思います。