気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

Your Love 3

2020-03-06 13:31:11 | ストーリー
Your Love 3





彼は何に悩んでいるのか
最近ずっと目の下にくまができている

先月 エレベーターで話しをしていた事で
まだ悩んでるのかもしれない

私が優秀な彼の力になれることなんて何も無いんだろうけど

彼の家にお泊まりした頃から二人きりで会えていない

寂しいな…


でも今の彼に私の個人的なわがままは言えない
会社で顔が見られるのがまだ救い


平日の日中も彼に内線が鳴っては
長時間 席を外すことが多くなった

退勤時間になっても席に戻って来ないまま… とか
休日も外せない用があるとか



でも今夜は久しぶりに

“19時には帰宅できると思う。久しぶりに二人きりで会いたいな!”

と彼から嬉しそうなメールが来た



18時半 ーー
晴樹の部屋を見上げると灯りが点いていた

早く着きすぎたけどもう帰ってた♪

ワクワクしながらチャイムを鳴らすとドアが開いた


「 えっ… 」


あなたは…




ーーー


19時には帰ると彼女には伝えてはあったが
予定より退勤が遅くなり19時帰宅はできそうもなくなった

彼女に電話をかけた

おかしい
出ないな …

自宅前に着き鍵を開けると
部屋に灯りが点いていた

なんで灯りが…


そこにいたのは百合だった
「なっ、なんでお前がここにいるんだ!」

「晴樹がなかなか時間を作ってくれないからよ。ここで待ってたら必ず会えるでしょ?」


なんで勝手に俺の部屋に!!


「もうお前とは何の関係でもないだろう!なんで勝手に入ってんだ!俺の鍵を早く返せ!!」


すると

「もしかして女のことを心配してるの?ならもう帰ったわよ。」


ーー なに!?


「ねぇ(笑) “アレ”があなたの言ってた彼女?
じゃないわよねぇ? だとしたらあり得ないんだけど(笑)」

その言葉に怒りが汲み上げ

百合から強引に俺の鍵を奪い
抵抗する百合を強引に部屋から追い出した



ーーー


百合とは合鍵を返してもらう間もなく別れてしまっていた

俺が部屋の鍵を変えなかったのは
当時の俺は百合にまだ未練が残っていたからだった

でももう彼女でもない百合に
希を追い返えされたことに腹が立った


希に電話をかけても出てくれないし
メールを送っても返事が来ない

俺は不安でそのまま部屋を飛び出した




百合の傲慢な性格を考え、もしかしたらこういう事態が起きるかもしれない、希を傷つけるかもしれない、と恐れ

俺達が交際関係であることは会社では伏せておいて欲しいと希に頼んだのに

それが こんな事になってしまうなんて

先に百合のことを希に伝えておけば良かった



ーーー


百合が突然社内で俺に声をかけてきたあの日 ーー
あいつは“またやり直したい”と言ってきた

きっとあいつは“あのこと”をどこかから聞きつけたからだろう

だからやり直そうなんて言ってきたんだ


百合は“好きな男ができたから”と一方的に別れを告げてきた

当時の俺は混乱した

今の俺にはもう付き合ってる女性がいると話したけれど 百合はひるまなかった

“どんな女か知らないけど、私ほどの良い女はいないでしょう?” と自信ありげに言い切った

あんな女でも付き合い始めは可愛い女だったんだが 百合は次第に変わっていった

いや、若かった俺には気付けなかっただけで
元々そういう女だったのかもしれない

でも今となってはそんなことはどうでもいい



ーーーー



希の部屋に向かう途中
俺は何度も何度も電話をかけ続けた

電車の中からメールも送った

でも 返答が無い
当然だろう

怒っているならまだ良い

恐いのは深く傷つき泣いていること…

百合が希にどう言ったのかは具体的にはわからないが

あの百合の性格を考えると
相当 酷い言葉を希に浴びせたに違いない

そして希が誤解したのも間違いない ーー



電車を降りて全力で走る
30も半ばでこんな学生のように全力疾走をすることなんてなかった

息が上がって苦しい


希の部屋に灯りが点いていて少しだけ安心した

チャイムを押しても返答がない
電話をかけるともう電源は切られていた

ドアの外から話しかけても
なんの言葉も返ってこない


どうしたら誤解が解けるのか ーー

どうすればいいか分からずドアの前で立ち尽くし


俺は
このドアが開くのを祈った



ーーー

彼の部屋から私はどうやって帰ってきたのか
記憶がない ーー

携帯に着信ランプが何度も光って
携帯の電源をオフにした

部屋のチャイムが鳴り
ドアの向こうから声がした

やっぱり彼だった

何度も何度も部屋のチャイムが鳴って
ドアをノックしてくる


「どうか… 頼む 開けてくれ… 」
声が震えてる



胸が痛い ーー



しばらくすると
静かになった

もう諦めて帰ったのかもしれない

胸が張り裂けそうに痛くて苦しいーー



やっぱり彼と付き合うんじゃなかった

わかってた
わかってたはずなのに

私と彼が吊り合わないことなんて始めから…



そもそも私は晴樹の彼女だったのかな

ただの遊び程度としか思われてなかったから
だからからかわれてたのかな


ーー 本当はずっとあの綺麗な彼女と続いていたのかもしれない

最近なかなか会えなかったのは彼女と会っていたのかもしれない

そんなネガティブな考えに囚われ
怒りより 悲しくて 情けなくて


夜通し泣いた



ーーー



翌朝
晴樹からの着信は100件を越えていた
メールも50通近く来ているけど

見たらもっと辛くなりそうで恐くて開けずにいた

彼はまだ彼女と繋がっていた…
だから彼の部屋にいたんだ

あれだけ泣いたのにまた涙が出てくる
どうして涙は枯れないんだろう


まぶたが腫れてるーー
ずっと冷やしてるのに腫れが引かない


こんなひどい顔じゃ会社に行けない

… それに今は晴樹の顔も見たくない



会社には欠勤の連絡を入れた
でも 明日はちゃんと仕事に行かなくちゃ…



ーーー



昨日から希と連絡が取れなくなり
朝 出勤するとやはり希から欠勤連絡が入っていた


退勤後 俺は真っ直ぐ希の部屋に向かった

部屋の灯りは点いていた


ドアの前から電話をかけても
部屋の中からは俺の着信音は聞こえてこない


音を消しているのだろうか

チャイムを押そうとした時
突然部屋のドアが開きお互い目が合って驚いた

偶然 出かける所だったようだ


ーー 目が赤い


「希、誤解を解きたくて来たんだ。話しをさせて欲しい。」

俺とは目を合わそうとせず うつむき少し微笑んだ

「そんな、私 誤解なんてしてないですよ(笑) 」

ーーえ?

「 明日は必ず出勤しますので。今日は帰ってもらえますか、」

「あっ、待っ、」

彼女はまた部屋に入り


ガチャッ ーー


部屋の鍵がかかった


その音で
俺は彼女の心から閉め出されたことを悟った


ーーーー


翌朝 言っていた通り希は出勤してきた

「おはよう、、中野さん… 」
いけない、つい ぎこちない笑顔になってしまった

「おはよう、ございます(笑)」

一瞬 目が合った
でも それだけだった


まるで今までの事がなにもかも無かったかのように俺達の視線が合うことは無くなった

メッセージを書き 彼女が席を外した隙に
そっと彼女の引き出しに忍ばせた

“誤解してる。だからその誤解を解きたい。頼むからちゃんと話をさせて欲しい。”

彼女が退勤し 彼女の引き出しを開くと
そのメッセージのメモはもう無かった

見てくれたんだろうか ーー

それでも彼女からメールは来なかった



会社を出ると 百合が俺を待っていた

なんて奴!! 信じられない!!


「待ってた(笑)」
なんで笑ってられるんだ!

また怒りが汲み上げてきた

俺は百合を無視し駅へと足早で向かった

「ちょっと、晴樹!待ってよ!」


ーーー こいつ!!


「いい加減にしろよ!ついて来るな!お前のせいで、、」

「あの女と別れちゃった?(笑) 」

こいつが男なら確実に殴っていた

「別れてなんかない!お前、勘違いも甚だしいぞ!彼女はお前なんかよりずっと良い女だ!
お前は自分は最高に良い女だと言ってるが 良い女ってのはお前みたいな性悪女のことじゃない!」

百合の表情が歪んだ

「あの女より私が劣ってるとでも言いたいの!? バカにしないでよ!!」

俺は百合に頬を思い切りぶたれ
百合は駅の方向に走って行った

俺の怒りはおさまらないまま携帯を開いた

携帯の中の希の写真ーー

君は今 どこにいるんだ
もう 俺の手の届かないところにいるのか…

早く君に“あのこと”を伝えなければいけないのに…


もう時間が無い



ーーー



俺は彼女に手紙を書いた

俺は 特営からの推薦で
正式に海外勤務の辞令が出ていた

それは誰が聞いても出世コースの栄転だった


俺がまだ20代の頃
出世するために必死で仕事をしていた

海外勤務は俺の夢のひとつでもあったからだ

ニューヨーク支社に移動…
以前の俺ならこんなに嬉しいことはないと喜べたはず

だけど今の俺は日本を離れることが辛い…


この辞令を断ることも考えた
でも長年の夢は捨てきれなかった

最近 ずっと多忙だったのは
海外勤務のための下準備や引き継ぎ業務が立て込んでいたからだ


この事を彼女に理解してもらってから日本を経とうと思っていた


何故なら
向こうに行けば最低5年は帰ってこられないから…

話さければいけないという思いの反面
悲しむ彼女を見たくないというそんな想いもあり 今まで言い出せずにいた

でももう日本を経つのは一週間後と迫ってきている…

百合のことなんて本当にどうでもいい事だし
そんなことは俺と希には関係ない

彼女が俺と百合の仲を誤解しているこの今の状況で日本を経ちたくはない

希の顔を見て 目を見て ちゃんと話したかった

でも それはきっと叶わないだろう…


5年もの長い時間

俺を待っていてくれなんて言えないし
待ってはくれないだろう…

結局 きっぱりと別れた方が彼女のためなのかもしれない


俺のことなんて忘れた方が…

駄目だ…


涙が止まらない






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