気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

Stay With Me 3

2018-12-11 21:20:55 | ストーリー
Stay With Me 3






あの夜から

つい寺崎さんのことを考えてしまうようになった


同じマンションでいつでも直ぐに会える距離だから余計に



もう帰ってるかな …



毎日 朝の挨拶と夜にメールか電話をくれる




同じマンションだから

できることならもっと会いたいな
なんて思うのは私だけなのかな





『お疲れさま。 今、帰った。』

今夜もメールはくれたけど…



『食事しました?もしまだなら持って行きましょうか? 多く作ったので。』

ドキドキしながらメールを送ってみた



『食事はまだだよ。いいのかな?お言葉に甘えても。』



『じゃあ持って行きますね!』

会う口実ができた!




急いで幾つかの料理を温め直し
炊き込みご飯をパックに詰めて

ドキドキしながら彼の部屋のドアのチャイムを押すと笑顔でドアを開けてくれた




「ありがとう。 どうぞ、あがって。」

初めて部屋に招き入れてくれた




同じ部屋の間取りなのに家具やカーテンとかで全く違う雰囲気









一枚板のテーブル
落ち着いた大きめのソファー
深いグリーンのカーテン

テレビの後ろに間接照明があって間接照明は見えなくしている


全体的にダークカラーで落ち着いている


一人暮らしを満喫しているのがわかる





「あっ、これ 」

料理が入ったバッグを手渡した





「へぇ、凄いな!いつもこんなに沢山作るの?」


嬉しそうに爽やかに笑った



「お皿に盛りましょうか、、(笑)」


食器に凝ってるのかな
しゃれた食器が並んでいる




「もしかして、寺崎さんは料理得意なんですか?」


「え? どうして?」


「食器、素敵なものばかりだから 」


「あー(笑) 実は僕、趣味で陶芸もしてるんだ。」



ーー 陶芸


寺崎さんが陶芸をしている姿は容易にイメージできた




「いつも仕事で無機質なものを扱ってるでしょ?たまに自然の温かいものに触れたくなるんだ(笑)

自分の手で形を作り ひとつのものが出来上がるって、凄くやりがいがあるんだ。」




私が知らない世界も沢山知ってて温かい人だな

料理を盛り付けて素敵な一枚板のテーブルに並べた



「旨そうだ(笑)」
彼の顔がほころぶ



その表情に私も顔がほころぶ

凄く美味しそうに食べる姿を見てるだけで心が温かくなる



「理奈ちゃんは料理上手なんだね。きっと素敵な奥さんになりそうだ(笑)」



“きっと素敵な奥さんになりそうだ”



「寺崎さんは今まで結婚を考えたことなかったんですか?」



私の顔を見た



「考えたこと、あるよ(笑)」


そうだよね
年齢的にあってもおかしくない



「なぜ結婚しなかったんですか?」



箸を置いて手を合わせた




「ご馳走さまでした(笑)凄く美味しかった。」

沢山持ってきたのを残さず綺麗に食べてくれた




ーー さっきの質問
しちゃいけなかったのかな



「食器は僕が片付けるから。」

慣れた手つきで食器や持ってきたパックを洗いだした




「さっきの質問の答えになるかわからないけど…


洗いながら話だした



「30代に入った時 結婚を約束した人がいてね。一緒に暮らし始めて上手くいかなくなって。男と女は一緒に暮らさないとわからないこともあるんだよ(笑) 」


暮らさないとわからないことってどんなことだろう


「じゃあ同棲してから結婚を決める方が良いってことでしょうか…



寺崎さんの手が止まった


「ん … そうだね(笑)」




寺崎さんが珈琲とチョコを出してくれて
私の顔を眺める



「理奈ちゃんは結婚とか考えることある?」








ドキッとした



「今はまだ… でもいずれは…」



「 …そうか。いずれ君も結婚するんだろうね。」

優しく微笑む彼




それは

私とは結婚しない、という意味?



私も結婚とかまだ考えてないけど
考えてなかったけど…


その言葉が他人事のように聞こえて
少し寂しさを感じる




「いつか結婚したいとか考えないんですか?」


「どうかな… 結婚は一人ではできないからね(笑)」




確かにそうだけど…




「じゃあ、そろそろ帰りますね 」
立ち上がった



「え?もう? あぁ、いつの間にかもうこんな時間か…
わざわざ持って来てくれてありがとう。

凄く旨かったよ。また理奈ちゃんの手料理食べたいな(笑)」



「また作って持ってきます(笑)」


「あ、ちょっと待って、部屋まで送る。」


彼は部屋の鍵を手に取った



彼はあの初めてのキスをした夜以来
私には全く触れようとはしない

紳士的なのかもしれないけど…


ドキドキしながら勇気を出して寺崎さんに抱きついた



「理奈ちゃん… 」

戸惑ってるのが声で伝わる



「好きです… 」

彼が優しく抱きしめてくれた





「僕も好きだよ。 ただ …」

身体を離して私の目を見つめる瞳が潤んでいた


「君に触れたら抱き締めたくなる。
抱き締めたらキスしたくなる。
キスしたら帰したくなくなる。

それでも… いいの?」


私が小さく頷くと
彼は優しく唇を重ねてきた






ーーーーー






しばらくして

私は彼から合鍵をもらった


そして時々
晩御飯を作って彼の帰りを待つようになった




「ただいまー」 彼の爽やかな笑顔


「おかえりなさい」 微笑む私




“ただいま”

その言葉を聞けることに幸せを感じる




「理奈ちゃん明日 休みでしょ?
良かったら陶芸、一緒にやってみない?」

「うん。やってみたい(笑)」




次の日

彼と一緒に陶芸工房で陶芸を体験した

初めてだからなかなか上手くできない




「こうするんだよ」



私の背後にぴったりとくっついて
私の手に彼の大きな手が添えられた


その綺麗な指を見ると胸がドキドキする


「…ゆっくりね …そうそう」



息がかかるくらい顔が近い
未だに慣れなくて照れくさい



「上手くできたね(笑)」


チョコを選んでいた時のような可愛らしい笑顔の彼に私もつられて顔がほころぶ




ーーー



「また行きたいな」 そう言う私に

「じゃあまた行こう」 と嬉しそうに微笑む




私が作った少し不格好なお皿は彼の作った食器と一緒に棚に並んだ


ひとつひとつ
私が作る食器が増えてきた頃





「あのさ… 」

照れくさそうに話しかけてきた



「僕の茶碗作ってくれない… ?」

それを照れくさそうに言う彼



「まだ寺崎さんみたいに上手くできないのに?」


「ん… それでもいいんだ… 」
頭を掻きながらはにかんでいる


「いいよ。まだ上手くできないけど(笑)」


「ありがとう…(笑)」




なんだろう …
なんでお茶碗?

でも嬉しそうだからいいか





彼が使うお茶碗かぁ…

私は陶芸の教室に通うことにした



納得できるものができるまで一人で何度も通った


毎日通えるわけではないから出来上がるまでに2ヶ月もかかった




ーーー やっとできあがった!


これで寺崎さんがご飯を食べてくれるのかな

想像するだけでなんだか照れくさい



木箱に入れて大切に持ち帰った



「お茶碗、できました。時間かかっちゃったけど。」



嬉しそうな表情をして自室から何かが入った箱を持ってきた


「実は僕も君のを作ったんだ(笑)」



箱を交換した



「僕から開けても構わない?」

彼は静かに箱の蓋を開いた




「あ…ありがとう 」

感無量な表情で丁寧に手に取り眺める




「凄く… 温かい… 嬉しいよ…

それ以上の言葉が見つからないような表情で
瞳を潤ませているように見えた


私も彼から渡された箱を開けてみると中には白に優しい桃色が入ったお茶碗が入っていて


私はゆっくり丁寧に箱から取り出し手に取り出した




わぁ…

嬉しい




手にしっくり馴染む


「可愛い … 嬉しい」

私のために…



私のことを想って作ってくれたことに
心から感動して胸が熱くなる



陶芸って凄いな

作り手の気持ちがこんなに伝わるものなんだ





「あの… 理奈ちゃん。僕と一緒に暮らさない?」



え?



彼は はにかみながら頭をかいてる



少し驚いたけど
私には迷いがなかった


「はい。」



嬉しそうな笑顔になった




「ありがとう。嬉しい!」


いっぱいシワを作って
心から嬉しそうに笑うこの人を



私は

この人を愛してる…






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