気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

恋愛小説のように 4

2020-12-05 21:57:00 | ストーリー
愛小説のように  4






遊はまるで学校の廊下みたいにパタパタと雑巾がけをしている

なんと!スカートで!!
パンツ見えんじゃねぇの〜?

身を乗り出して覗こうと思ったが見えなかった

今日は化粧なんかしてるし…


俺の彼女になったからか...??


掃除の時ぐらいいつものジャージでいいだろうに…


「ククッ(笑)」

「何か面白いことでも??」

「いや…なんでも。パンツ丸見えだったなぁ~と。」

「えっ!!」
慌ててスカートの裾を下に引っ張った

「ウソだよっ(笑) 惜しくも見えなかったなー(笑)」

「もうっ!」

「なんでスカートなんか履いてんだ?なんでいつものジャージじゃねぇの?」


「だって… 女らしい方が良いかなって 」
照れくさそうにモジモジした

「掃除ん時に女らしさなんて求めたりしねぇよ。それにジャージ姿は見慣れてるだろ?」

「 ... そうですけど 」

可愛いヤツ(笑)
 

「スカートはデートん時にとっとけー。来月8日から17日までの間で都合のいい日、教えてくれ。」

「デートですか!?」

「そう。したくない?デート。」

「したいです!」

「ハハッ(笑) なら日にち、いつがいい?」

「お泊まり…ですか?」

「なに?泊まり?」


それは考えてなかったな
泊まりか…


「旅行でもしたいのか?」

「えっ!?そういう、訳じゃ…  」

随分と可愛らしい反応をするようになったな(笑)


「お泊まりだなんて〜 遊チャンったらエッティなのね~(笑) うふふ♡」

「違っ!」顔を真っ赤にした

「ハハハッ(笑) お泊まりってことは〜?」


顔を覗きこんだら真っ赤な顔して両手で思いっきり両頬をバチンッ!と叩かれた


「イデッ!!遊ちゃん!!暴力!反対っ!」

「もうっ!!やらしいのはセンセですからっ!!」

ドスドスと部屋から出て行ってしまった

「遊チャ〜ン! 冗談だってぇ〜!遊チャ〜ン?(苦笑)」


遊はもう25歳だろ?
まだまだウブな反応すんだなぁ(笑)


ん? まさか
あいつ処女?


おっと、今はそんな場合じゃねぇ

原稿の締切りまでもう時間がない
その前に担当に草稿渡して目を通してもらう時間も必要だしな

それが終わったら少しまとまって休める


... 泊まりか
それもいいかもな

旅行なんていつぶりだろう...


いかんいかん、原稿原稿!


「あー、ほんと痛てぇなぁ... (苦笑)」

頬を摩った




ーーー



今の担当の女性 山﨑さんに草稿が入ったUSBを渡し山﨑さんは持参したパソコンにデータを移した


「柴田って... 今どうしてる?」

「柴田さん?柴田さんは今 、月刊誌の雑誌部門の編集長として頑張っていらっしゃいますよ(笑)」


雑誌...

「そうか... もう小説部門にはいないんだな。」


小説家になりたくてもなれなくて
だったら小説に携わっていたいから今の仕事に就いたと笑いながら言ったあいつの顔が浮かんだ...


「柴田さんは本当に仕事デキる人ですね(笑) この仕事にプライドを持ってやってます。 私の尊敬する方です(笑)」


「そっか... (笑)」

あいつは部下に尊敬されるような男になったんだな

良かったよ ...


「草稿、ありがとうございました(笑)」

「メールで送ってくれてもいいのになんでわざわざデータを取りに来るんだ?」

「先生のお顔が見たいからです(笑)」

「へ?」

「先生のコンディションも知りたいので(笑)」


はぁ...
コンディションねぇ


「変わってんな(笑)」

「作家先生の状態を知っておくのも担当の仕事ですよ(笑)」

「ふぅん。毎日忙しいだろうに(笑) 気にかけてもらって有難いよ(笑)」


山﨑さんは ふふっと笑った

「先生、最近良いことありましたか?」

「え?」

女は鋭いな
だから俺は担当は男の方がいいんだが


「別に。いつもと変わんねえなぁ?」

「んふっ(笑) そうですか(笑) では、私はこれで。」

なんか気付いた顔したな


「修正があんなら直ぐに連絡をくれ。校閲後の原稿もPDSで返信よろしく。」

「承知致しました(笑)」


担当の山﨑さんは帰っていった


まだ表紙をどんな風にするか打ち合わせしたりと、やることは山積みだが

まぁ、一先ず落ちついた


旅行か
一泊や二泊ぐらいなら時間は取れる

どこに行きたいとか希望はあるかな



暑いから避暑地がいい
平日ならそんな混んでないだろうし

南でスキューバダイビングをしに行くとかどうだろうか


遊に電話すると何処でもいい!と喜んだ

デートらしいことを一度もしていないことに遊は不満があったかもな


今夜飲みに行かないかと遊に電話をすると嬉しそうな声が返ってきた

やっぱり二人で出掛けたかったんだな


これが初デートになるのか...

一応、それっぽい格好しとくか




遊はやはりスカート姿で待ち合わせのデパートのモニュメント前に立っていた

「センセがジャケット着てるの初めて見ました!(笑)」

「一応デートのつもりなんでね。」

「エヘヘェ?(笑) デートならジャケット着てくれるんですね〜(笑)」

ニヤニヤして俺の顔を覗きこんだ

「なんだよっ、、さっさと行くぞ。」

出口に向かって歩き出した


「ちょっとセンセェ〜!待ってくださいっ!」


遊はいつもは履かないヒールの高い靴を履いて歩きにくそうに追いかけてきた


「お前ぇ... なんでそんな靴履いてくんだ。あっ、わかったぞ!そりゃフラグだな!?これから私コケますからねってフラグ!」


「そんなわざと転んだりしませんよぉ!脚が綺麗に見えるかなって思って、、買ったんですけど... 」


「無理してヨタヨタ歩いてたら全然キレイには見えねぇけど?ちょっと寄り道すんぞ。」


デパートの中に入っている靴屋で靴を買ってやった

遊への初めてのプレゼント


高さの無い
大人っぽいデザインの靴


「歩きやすいだろ?」

「ありがとうございます!センセからプレゼントしていただけるなんて...素敵な靴だし楽です!嬉しい♡(笑)」


「背は低くなったけどな(笑) よし 行くか。」



遊の手をぎゅっと握った


「センセ、手っ、、」

「お前トロいからはぐれそうだから、な...」

って言ったが本当は俺が繋ぎたかっただけなんだけどな


「センセは気にならないんですか?」

「俺と手ぇ繋ぐの、、イヤか?」

「照れくさくて... 」
可愛い照れかたをした


なんだ...
ホッとした


「こんくらいで恥ずかしがんなよ(笑)」



繋いだ手を強く握りしめた


「腹減ったなぁ!」

「…... 」

反応が無いからチラッと遊を見たら
嬉しさを噛み締めるように口を固く結んでいた


ほんと可愛い奴だな
あ〜この場でギュッてしてぇ〜なぁ〜!



「…何が食いたい?」

「そうですね... 」


それから考えてんのかまた黙りこんだ

「んじゃここにでも入ってみる?」



適当に入った店は洒落ていて
女性客が多くいた


あっれー、、
こりゃ俺 場違いか?


いつもは近所の居酒屋で近所のおっさんが多くいる店だから気ぃつかわなくても済むんだが...


「良い感じのお店ですね...(笑)」
遊は嬉しそうな顔をしていた

ここで正解だったかな

「そうだな(笑)」


いつも思うが
飯食ってる時の遊の頬は小動物のようだ

可愛いねぇ...(笑)

こうして眺めてるだけで癒される


「なんれす?」

「飯食いながら喋んなよ(笑) いやさ、お前ほんっと可愛いなって思って、」

「ぅがっ、グホグホグホ!!」
むせて真っ赤な顔になった

「ほら、そうなる(苦笑)」

「ゴホゴホ、、びっくりさせるからですっ」

「別に驚かせてないだろ?」


わかりやすいヤツだ(笑)




ーーー




先生は時々 
とても優しい表情で微笑む


“そういう恋愛、してみるか”


あれから先生は変わった

そういう視線にまだ慣れない...


「酒、弱ぇーくせに飲み過ぎだ(笑)」

「酔わないと正気が保てませんよっ」

「逆だろうが。酔うと正気が保てんヤツが何言ってる(笑)」


眉尻を下げ目尻にシワを作って優しげに笑う時の先生は本当に...


ーー 先生、またキスしてくれないかなぁ


グラスを持ってる綺麗な指を見つめた


「遊チャ〜ン?もう酔っちゃったぁ?(笑)」

「酔ってませんってば!」

「ハハッ(笑) そろそろ(店)出るか。」



もう一軒行くのかと思ったら駅に向かっている

「センセ?もう帰るんですか?」

「まだ飲む気か?」



だってまだ一軒目だよ?

「もっとセンセと一緒にいたいですよ、、」

「んー、どこ行きたい?居酒屋?」

「センセんちは?」


きょとんとした顔をしたと思ったら直ぐに考え込んだ 


「家事で毎週2回来てるウチだぞ?デート気分になんねぇだろ。」

「でも慣れてるから落ち着くし、、」


自分の大胆な提案に恥ずかしくなってきた...


俯く私の頭に先生の大きな手が乗った

「んじゃ〜俺んち来るか。来慣れた家だけどな(笑) 」

「良いです!センセといれば楽しいので!」

また駅に向かって歩き出した



「ウチで飲むなら幾らでも飲め...  」

そこまで言いかけて黙ってしまった




「...今夜、帰んなくても大丈夫か?」



先生の顔を見上げると真剣な表情で
急に心臓がバクバクしてきた



「もう25なんです、外泊ぐらい、、友達と出掛けると伝えてあるし... 」

「おぅ...そっか」 



握る手が強くなって
“今夜は帰さない” と言ってるように感じる


顔から火が出そう、、




恋人らしいことなんて

一度キスしたことと
今、こうして手を繋いで歩いてるぐらいだから...






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