宮城の作家希望

作品など

天使様

2020-07-30 10:22:00 | 小説
その日は朝から雨が降る天候だった、浸水の危険がある事から全員高台に避難指示が出た。
図書室は高い場所にあったので人々はこの図書館にも押し寄せた。
いつもの静寂は破られ騒然としている。その中で心さんは子供達を一ヶ所に集め『大丈夫だよ』と頭や体を撫でながら歌を歌っていた。
その心さん自身も震えながら必死に歌う事で誤魔化している様だ。

突然雷が鳴り響くと悲鳴こそ上げなかったが確かに心さんの体は強張っていた、それでも子供達を怖がらせまいと歌を歌い続けた。それに応える様に子供達も歌いだした。やがて歌は広がり周りの人達も歌いだした、雨に負けない様に力強く。雨が収まるまで続いた。

雨が上がると皆んなが心さんに声を掛けた『ありがとう』とか言うなかに『天使様』と言うのがあって、まさにそのとうりだと私は一人頷いた。



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