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色々レビュー

映画、ドラマ、小説、マンガなど色々なものの感想置き場です。基本マイナー好き。

『魔人探偵脳噛ネウロ』感想総括

2009-11-18 | 小説、漫画
 もうだいぶ前に最終巻が発売した『魔人探偵脳噛ネウロ』ですが今更感想などを書いてみようと思います。相当好きなマンガなので感想全部を書こうとすると最後まで気力がもたないだろうから、なるべくさらっと。のつもりが今回も長いです。先に謝っときます。

 1~23巻という長いストーリーを読み進めるうちに何度も思ったのは「一体いつから計算していたのか」ということ。ラスボスの存在やそれに繋がる人物、主人公に大きな影響を与える人物、最終戦のカギとなる人物とエピソード、勝敗を左右する人物。それら全てがこの長大な話の序盤ですでに登場している。
 22巻である人物が言う台詞が、5巻ですでにその片鱗を見せ、3巻でネウロが言った台詞を最終巻で弥子がもう一度なぞる。全てが序盤から伏線で繋がっていると言っても過言ではない。寄り道がなく迷いもなく、始まった瞬間から終わりを目指して一直線に進んでいるような、無駄のない展開だった。

 長期連載だと話の方向性が変わったり(ほのぼのからバトルものになるとか)、後から取ってつけたような設定があったり、どうしてもそうなりがちだが『ネウロ』にはそういうものが一切なかった。連載は人気によっては打ち切りになったり、逆に引き伸ばされたり、作者の希望通りにはならないこともたくさんある。いつ終わるか分からない中でこれだけ多くの伏線を張り、その全てを回収し、一つのテーマを変えずに貫く。それが出来た『ネウロ』は奇跡的な作品だと思った。
 しかし最終巻のあとがきを読むと、それが決して『奇跡』ではないことが判る。話の半ばで打ち切られる可能性もある連載という形の中で、作者は「(責任を持って始め、責任を持って終わらせる)」ことを最重要課題としていた。そしていつ来るか分からない終わりに備えて複数のストーリープランを用意していた。あちこちのレビューサイトで最終話が「きれいな終わり方」と評されていたのは、奇跡ではなく作者の努力による当然の結果だった。

 『ネウロ』の特徴や長所は数多くあるが、私が感心したことの一つは「最初から最後まで一つのテーマを貫いている」という点。読み終えて「このマンガのテーマは?」と聞かれたら誰もがすぐ『進化』と答えられるだろう。多くのエピソードとキャラを描きながらそれらを全て一つのテーマに集約させるのは相当難しいんじゃないだろうか。ほんとに読んでいて作者のストーリーの構成力に感心する。というか戦慄する!

 ストーリーも当然好きなんだけど、それと同様に『ネウロ』の魅力を占めているのがネウロと弥子の関係。『謎』を喰う為に弥子を脅して傀儡にし、弥子は仕方なく奴隷扱いを受けている。というはずだったのに、話が進むにつれて『そうだけどそれだけじゃない』関係になってきている。様々な人や犯人と接し、自分にできることを精一杯しようと成長していく弥子。食糧である『謎』を生み出そうと足掻く人間の『進化』を好ましく思う魔人。種族のまるで違う二人がお互いに影響し合い、変化していく過程がとても丁寧に描かれている。
 
 あと以前にも書いたけど、突っ込む気力も失せるほどのバラエティを極めたDVの数々が『ネウロ』の醍醐味。文章にするとすごすぎるので書かないけど、なんかもうDVっていうよりスキンシップくらいの気軽さ(笑)。しかしギャグテイストにしているもののネウロは毎回容赦なくドSを貫いている。対して弥子は精神的にはタフだし胃袋は四次元だけど、体格は標準よりほっそりして小柄。それが毎回鎖とかロープとか手錠とかのオプションが付いてていくらギャグでもどうなのそれ!?と床を転げまわりたくなるんだけど。DVなのにドキドキするんだけど。

 ネウロの容赦の無さと弥子のドライさが二人の間にある『性別』という差を完全に消しているにも関わらず、読者は二人がお互いにどう思っているのか気になってしかたがなくなるだろう。二人の間には終盤に進むにつれ信頼や絆が生まれるけど、二人の意識に『性別』が入ることは最初から最後まで絶対に無い。そこら辺の作者の抑制はハンパじゃない。普通ちょっとくらい恋愛っぽいものを入れたくなると思うんだ。そして読者もそういうのちょっとは期待すると思うんだ(笑)。
 しかしそれを抑制したからこそ、二人の間にある言葉で表せない何かを、「そこにあるのは何だ」と読者に思わせることができたのではないか。
 最終話手前での二人のやり取りと行動が、悲しくはないのに切なくてしょうがない。
 
 もう一つ二人に関して叫びたい事が。22巻のあるシーンで「膝かよ!!!!!」と叫んだファンは少なくないだろう。うああああすごい衝撃というか破壊力というか作者が爆弾落としてきた!とのた打ち回りたくなったよ…。


 やっぱり感想長い!ねちこい!でも一気に書いてしまおう。今までは一応客観っぽく書いてきたけど、ここからはバリバリ主観で叫ぶのでご了承を。
 主人公コンビ以外で一番好きなキャラは笛吹。最初は探偵である弥子に警察として嫌味ばかり言うポジションだったのに、どんどん有能さを発揮して最終戦では人間側代表として最重要人物に。もうかっこいいったらない!!22巻でかっこよさ爆発。嫌味でツンデレでメルヘン趣味なところが可笑しいんだけど、この人の潔癖さと強すぎる責任感が好き。どんな凶悪犯罪でも、たとえ相手がラスボスでも許さない。普通なら諦めと妥協が入るところなのに、絶対折れない。もー一番好きー!!笹塚も好きだったんだけど、弥子達を支える吾代も好きなんだけど、笛吹が上回りました。9巻あたりからノンストップ。

 そして個性がすごすぎる犯罪者達の中で、やはり群を抜いた存在はサイ。登場もすごいインパクト。犯罪動機も人間の枠から軽くはみ出している。7巻でのネウロとの戦闘はすごく興奮した!高層ビルのクレーンの上で、地面と平行に立つ二人が繰り広げるバトル。常に余裕だったサイが、ネウロの弱体化を知って孤独と不安に焦る。このシーンが好き。サイとは迫力あるバトルが多いなあ。

 HALの事件もすごい印象的。11巻での(HAL消去中のあのシーン)、普段ドライな作者が泣かせにかかるとすごいな!
 弥子の進化を『日付が変わる』と表現し、実際のものと関連させたりするセンスもすごいと思う。各話の扉絵にもそのセンスが窺える。
 
 もう一人犯人達の中で印象に残ったのが葛西。渋い!悪い!中年なのに何そのかっこよさ!美学を貫いた生き様!(シックスでさえ結局彼を思い通りにはできなかったんじゃないだろうか。駒としては動かせても、血族として生身を捨てさせることはできなかった。望みどおりシックスより長生きしてみせた葛西は、犯罪者ながら見事だった。でも次のラスボスにはなってくれないんだろうな。そんな柄じゃないとか言って。

 ちょっとびっくりしたのが石垣。最初から徹底してダメ刑事に描かれていて、もちろん急に良くなりもしなかったんだけど、(決して喪失感を引き摺らずに、等々力よりもよっぽどしっかり仕事に向き合っていた。笹塚に頼りきりだったが故に、かえって笹塚の言葉を実行できたんだろうか。見直したよ…(泣)

 あとはもう色々と。テラも面白かったな。ネウロは基本ボケなのに、それがツッコミにまわらざるを得ないほどのボケだった。ジェニュインのまつげすごい。吾代いい人!アカネちゃん(成仏してしまうエピソードあるかなと思ってたんだけど、とりあえずなくてホッとした。

 駄目だ、書いてるとキリが無い。このへんでそろそろ終わります。
 最後に。最終話で作者の優しさをすごく感じた。長く壮大なスケールの話の最後に、自分のありふれた日常へと目を向けさせてくれる終わり方だった。このマンガを読めた幸運と作者に感謝!

『魔人探偵脳噛ネウロ』

2009-03-28 | 小説、漫画
 どうも現在クライマックスを迎えているという噂の『魔人探偵脳噛ネウロ』。終わる前に一度日記で書いておかねばと思っていました。二年ほど前から購読しています。きっかけはわりと辛口なレビューサイトでなかなかの評価を得ていたことから。古本で試しに買ってハマりました。
 これは知名度はどのくらいなんでしょうね。一応ジャンプというメジャー雑誌で連載されているのに、微妙に、いや相当マイナーな雰囲気がします。

 どういうマンガなのか説明すると……えーと、説明が難しい……。作者本人が「推理ものの皮を被った娯楽漫画」と言っているので、とりあえず基本はそんな感じです。しかしとてもそれだけでは済まされないマンガです。内容を知らない方の為に説明を書こうと思ったのですが、無理!とんでもなく長くなるだろうし、なんかもう上手く言い表せない。ので私の感想だけを書きます。端的に!ねちっこく長たらしくならないように書く!じゃないととても書き終わらないわ。
 
 まず一番強く思ったのが、「終わりを見てみたい」。好きなマンガなら長く続いて欲しいものだし、『ネウロ』に関してもそうなんだけど、それ以上にどんな終わり方をするのかを見たい。10巻あたりでそう思った。初期のエピソードでは推理と言いながらぶっ飛んだ展開を見せたり、そこが面白かったりしたけど、そのうち複雑な伏線が張り巡らされ、それが見事に回収される。その伏線もかなり長期的なものもあり、作者はどこからどこまで計算しているのかと思ってしまう。
 連載の期間は人気によって左右されるものだろうけど、この作者ならいつ終わりになっても計算ずくのラストを見せてくれるのではないか。そんな期待をしてしまう。続いて欲しいのに終わりを見たい。

 連載というのは長くなると細かい部分で破綻したり、当初の目的がさっぱり忘れられたり、一貫したテーマというものが読者の印象に残らなかったりする。しかし『ネウロ』はストーリーにもキャラクターにも一本筋が通っていて決してぶれない。そのあたりは『DARK EDGE』を思い出させた。キャラがそれぞれ確立した人格を持っていて、お互いに影響しあい徐々に変わったり成長したりしていく。雰囲気は全然違うのに、『ネウロ』と『DARK EDGE』はなんだか似ている気がする。

 あとやっぱりギャグが面白い。鋭いツッコミがステキ。こういうのって頭の良さが必要なんだろうなあと思う。ギャグテイストになってはいるけど、実は拷問やらDVやらが満載。って文章で書くとヤバイな。でもそれがこのマンガの醍醐味。

 キャラもみんな良いんだけど、やっぱりネウロと弥子が好きだなあ。メイン二人。セットで。色々とぶっ飛んだところのあるマンガだけど、何が一番やばいって、弥子はめちゃくちゃ健全な思考の持ち主なのに、ドSな魔人と一緒にいること自体がおかしい。やばい。(別にMってわけじゃないしネウロに一応反抗もするんだけど、なんであのDVを甘んじて受けているのか。そこにあるのは一体何なんだ。いや、わかるけどさ!魔人も奴隷だとか拷問とか言ってるけどよく見ると実はスキンシップ過多。何だろう、この甘さのかけらもないのに絶対普通じゃないお前らそれおかしいよっていう関係。

 各エピソードの中心である推理と『謎喰い』はツッコミ入れつつ楽しむのが良いかと。犯人当ても面白いしそれ以上に犯人の豹変が見所。豹変の描写として外見が人外のものに変わるので、それが何かを当てるのが楽しい。
 そして全体の大きな流れの展開が、よく練られ丁寧に描かれていて感心する。主人公の成長を描くのはよくある話。しかしこのマンガでは弥子の成長がネウロの『弱体化』と連動して描かれているのが面白い。最初に魔人の圧倒的で不条理な強さを見せておいて、話が進めば進むほど弱体化していく。それをフォローするために、弥子が成長せざるを得なくなる。それだけではなく人間と魔人という根本的に違う二人が、その違いゆえに影響しあう。一つのクライマックスを迎えた10巻は最高に面白かった。この10巻にちょうど(『1と0の狭間』)という副題がきたのは偶然なのか計算なのか。

 まだまだ語り足りないけど、このへんで一応終了。端的に書くつもりがまたこの長さ。まあ、最終回を迎える前に書けて良かったです。
 『魔人探偵脳噛ネウロ(1)』
 『魔人探偵脳噛ネウロ(20)』

『うつろわざるもの~ブレスオブファイアⅣ~(1)(2)』

2009-03-22 | 小説、漫画
 『うつろわざるもの~ブレスオブファイアⅣ~(1)』 



 『うつろわざるもの~ブレスオブファイアⅣ~(2)』 

いつの間にか出ていた『ブレスオブファイアⅣ』の漫画版。原作ゲームは7年前発売。何故今になって漫画化なのか不思議だけど、作者さんの絵やストーリー展開、演出などはまったく文句なし。原作のインパクトのあるシーンは覚えているけど、シナリオの細部はほどよく忘れているので(笑)、ゲームをプレイしていてもストーリーを楽しめる。

 原作であるゲームはPS2で発売。OPだけアニメが使用され、他は全て3Dのドットでキャラも4頭身くらい。無理にCGを使わない淡い色合いの画面がとても良かった。そしてキャラのグラフィックはかわいいのにシナリオは容赦ない。ちっちゃいキャラやシンプルなドット絵背景で悲惨なストーリーが繰り広げられる、そのアンバランスさがまた独特の雰囲気を出していたと思う。

 今回の漫画版はどうかというと、ストーリーはほぼ原作どおり。テンポ良く順番に進んでいる。しかし『画面の見せ方』は当然ながら大きく違う。ゲーム画面では出来ない人物のアップが可能なので、表情を見せることによって感情表現が豊かになっている。ゲームの方でも小さなキャラがよく動いたり、セリフの間を取ったりして感情表現をがんばっていたけど、やっぱりその点においてはマンガが有利だとつくづく思った。
 作者の画力がまたレベルが高い。私はそんなに専門的な判断は出来ないけど、なんだかすっごい安定している、という印象を受けた。ニーナがかわいくてもうどうしようって感じでどうしよう(笑)。
 そして見開きや変わったアングルや集中線などを使って『見せ場』を一気にガッと盛り上げる演出もすごい。自由に描ける分、ゲームよりドラマチックにできるんだなあと感心した。サイアスの居合い斬りがめちゃくちゃかっこよくて嬉しい。あとかっこよかったコマは、リュウの覚醒、泥竜や風竜との対面、マスター登場。マスターのドアップ、いいなあ(笑)。

 ゲーム版の主人公リュウは、いわゆる『喋らない』主人公。首振ったり汗かいたりアクションはあるけど、意思表示は「はい/いいえ」だけ。漫画版はそうもいかないので当然喋っている。性格付けは、ゲーム時の印象からそう遠くない。素直で天然、感情の上下は少なく、お人よし。しかしゲーム版と大きく違う点がある。それは「誰かに会いに行かなければ」という正体不明の感情に支配されていること。それまでの記憶もなく、ただ会いに行かなければと焦る気持だけがある。基本的にのんきな性格なのに、漠然とした不安と焦りを持っている不思議な主人公。私は結構好き。

 クレイ、サイアス、マスターなど他のキャラは原作どおり。ニーナはかわいさ倍増。目がおっきくて体が細くて。フォウルも期待を裏切らないかっこよさ。ユンナはたぶん憎さ倍増するな、きっと。
 先が非常に楽しみであると同時に、気が重くもある。だって、この画力であのシーンをやるのか……!どうなんだろう。多少ソフトな表現になっているのか。いや、今までがわりと原作に忠実だから、そこは容赦なく描写されてしまうんじゃないだろうか。あああ……としか言えない。

『学園キノ』

2006-11-03 | 小説、漫画
 最近サイトの更新がなかったので、TOPを変えました。『学園キノ』はだいぶ前に読み終わって、絵もその時の勢いで描いて、なんとなく放置してました。TOPはゲーム系の方がいいかなあと漠然と思っていたのですが、まあいいか、元々よろずサイトのようなものだし。
 
 ついでにちょこっと『学園キノ』の感想を。本編のキノとどう違うか説明すると、全編があの『後書き』のノリで書かれた学園ものです。ギャグ満載、銃器満載。『学園』のキノは、大らかで大雑把で大食漢な少女。本編のキノが旅に出ないで平和な環境で育っていたら、こんなふうになったかもしれない。シズは、普段は普通にかっこよさげだけど、『普段』じゃなくなると、もうすごい。作者自らぶっ壊してるので誰も何も言えないだろう(笑)。陸は、こういう形で出てくるとは思わなかった。まあ、『キノ』ってレギュラーが少ないしね。(シズへの恨みの理由は一体何だろう。今後語られるんだろうか)。一番笑ったのは(師匠の変身後の登場シーン。スケールの凄さが笑える。某変態仮面は勝手に持ち出したラジカセでBGM流したのに対し、師匠は広域防災スピーカー、自衛隊アクロバットチームのスモークで空に名前が!この名前にも感心した)。
 学園だから、当然表紙や挿絵はキノのセーラー服。これを見ると、なんだか…萌えというものを理解できそうな気がする…。

のだめ15巻

2006-09-27 | 小説、漫画
 『のだめカンタービレ』15巻感想。先生の推薦で、リサイタルに出ることになったのだめ。まだ、アクの強さや気まぐれな演奏が直っていないのに、大丈夫かどうか。千秋、ターニャ、黒木くんを引き連れてブルターニュへ。ターニャと黒木くんが見事に真逆で面白い。ロシアのコギャルと日本の武士。
 リサイタルの主催者は、モーツァルトマニアの貴族。城にはモーツァルトの肖像画があったり、城主が当時の宮廷ファッションで出てきたり、モーツァルト弾くのがまだ苦手なのだめに確実にプレッシャーを与えていく。千秋曰く「のだめが緊張…。人の子みたいだな」。のだめは今まで演奏に悩む事はあったけど、試験など人前で弾く事にはまったく緊張していなかった。ほんとに人の子じゃなかったみたいに。私にとっては羨ましい事この上ない。人前で弾く時はいつも胃が痛くて冷や汗ダラダラだったなあ。

 モーツァルトの功績やその生涯は、伝記も読んだしテレビでもよく特集されるので、大体は知っていた。が、この書簡集についてはまったく知らなかった。まさかモーツァルトが、こんなほとんど親父ギャグのような言葉遊びだらけの文章を書いていたとは!こういう韻を踏むようなギャグ(?)は当時では普通だったんだろうか。それとも天才の感性によるものか。

 のだめリサイタル当日、持参したドレスが着られず、どんな格好で出てくるかと心配していたら、(モーツァルトの仮装で来たか)!うわー、かわいい!(カツラが意外と似合っていて、ほんとに少年期のモーツァルトみたい)。
 普通、リサイタルなどで演奏者が挨拶の言葉を述べることはないんだけど、わざわざ挨拶するのがのだめらしくてほのぼのする。お辞儀まで宮廷風でかわいいったらない(笑)。
 演奏は、大丈夫だった!実はこのリサイタルで失敗の経験をするのではと思っていたけど、それどころか大成功。は~、良かった。モーツァルトでも突飛なアレンジはせずに忠実に弾いた様子。『キラキラ星』の選曲はナイス。子供も馴染みやすいし、変奏もちゃんと弾き応えあるし。
 ラヴェルやリストなどは、やっぱり得意分野らしい。モーツァルトとまったく違う時代や形式の曲ながら、モーツァルトマニアだった城主もバッチリ惹きつけた。そして二年前コンクールで苦労したシューベルトを持ってくるとは。のだめの成長ぶりが窺えて感慨深い。けど千秋は、感動でも嬉しさでもなく『覚悟』の必要を感じた。そこが面白かった。色々な覚悟ってなんだろう。もはや見守る立場ではなく、指揮とピアノの違いはあるけど二人は同じ土俵の上にいるということだろうか。

 のだめリサイタルが終わって、次は千秋のオーケストラのオーディション。千秋のパートになると、オーケストラの裏側が見られて楽しい(笑)。団員の技術レベルが下がったのは、ちゃんとしたオーディションをしていなかったから。なんで反対してたんだろう。しかもシモンはオーディション賛成だった。審査において千秋とも意見が合っているし、この人はマルレ・オケのことを真剣に考えているらしい。前任の指揮者や千秋への反発ぶりは、やっぱり単に楽曲分析が合わなかったんだろうか。
 いきなり登場したポールに笑わされた!ちょっと最高なんじゃないかポール。堂々とバソン持って笑顔。こうなったら技術で審査員達を捻じ伏せてしまえ!

『のだめカンタービレ』14巻

2006-08-20 | 小説、漫画
 『のだめカンタービレ』14巻感想。常任を前に、急遽マルレ・オケを指揮することになった千秋。団員は練習が足りず、古株のコンマス、シモンは若造千秋の言う事をまったく聞かない。ああ、なんか、こういうのってありそうだな、本当に。プライド云々の問題だけでなく、作品分析も今と昔でだいぶ違ってくるから、それで言う事を聞かないんだろうか。そしてオーケストラの本番は、笑い混じりの拍手で終わり。結果から言えば失敗なんだろうけど、ちょっと応援したくなるお客さんも出てきた様子?しかしプロはそういうわけにはいかない。お客さんは素晴らしい演奏にお金を支払うのであって、団員の頑張りや努力の経過にお金を出すわけではない。演奏という、形の残らないものでお金を稼ぐのは大変だ。
 ノックアウトされたボクサー状態の千秋は、シュトレーゼマンを思い出す。やっぱりミルヒーは千秋に多大な影響を与えているんだなあ。指揮のきっかけはヴィエラ先生だったけど、具体的な作品分析は結構ミルヒーに教わっていたから。今回ミルヒーは登場しなかったけど、こういう形でちらっとでも出てくると嬉しいなあ。むしろ実際の登場より回想のほうがかっこいいか(笑)。
 
 すでに指揮者として活躍している松田のエピソード。千秋の数倍『オレ様』な性格は、まさに指揮者向きと言えるのでは。このくらいパワフルじゃないとやっていけないだろうな。予定は未定だが自力で決定にしてみせるぜー、みたいな(笑)。千秋も頑張れ~。

 のだめは黒木くんとポールと室内楽(ピアノ、オーボエ、バソン)の練習。独奏とはまた違った苦労と楽しさがあるアンサンブル。こういう経験もすごく大事。私は学校の部活や実習でアンサンブルを経験できて、すごく楽しかった覚えがある。アバウトなフランス人ポールと黒木くんはやっぱり合わせるのが大変。しかし黒木くんも「何でもノンって言うな!」と負けていない。逞しくなったー!フランス編は黒木くんの成長も密かに楽しみ。
 そういえば、のだめのバッハ練習、各声部を歌いながら別の声部を弾くという方法は私もやったことがあります。こんな練習まで出てくるなんて、ほんとにこのマンガは取材がしっかりしているなあと感心しました。4つの声部を同時に弾けって、無茶だよバッハ。腕は二本しかないんですけど……って当時何度も思いました(笑)。

 のだめの実技試験は、技術的には文句はないものの、アクの強さが問題らしい。個性や大胆さは、他の先生にも高評価。ドビュッシーなどの印象派や近現代が得意で、その反面モーツァルトなどの古典が苦手。やっぱり!演奏は、演奏者の個性が出るものの、基本的には作曲者の曲である。作曲者の意向に背く演奏は絶対禁止。これがクラシック。自由奔放なのだめにはまったく不向きな音楽だと思う。それでものだめは苦労しながらも楽しそうに弾いている。私は一時期、演奏が嫌いで、演奏なんて再現でしかないと思っていた。自分の手で再現する楽しさはあったけど、わざわざクラシックでなくてもいいとも思っていた。でものだめを見ていると、大変だったけど少しは楽しかったことを思い出す。もう少し頑張って勉強していたら、もっと楽しさが見つかったかもしれない。在学中にのだめ読んでたら、結構クラシックに対する意識が変わっただろうなあと思う。

『のだめカンタービレ』13巻

2006-08-18 | 小説、漫画
 『のだめカンタービレ』13巻感想。クリスマス(ノエル)に子供の劇の代役をすることになったのだめと、無理やり連れてこられた黒木くん。このエピソードで彼は外国で暮らしていくコツを学んだ様子。のだめの「フランス人に負けない自己主張」は、ほんとに日本人としては珍しい。だいたい日本のレッスンでは、先生の言った弾き方以外で弾くとダメって言われるから。もちろん先生も生徒も様々いるから、皆がそうとは言わないけど、外国のレッスンとは多少傾向が違うのは確か。まあ、のだめはまったく心配ないな。いざという時は誰の言う事も聞かないだろう(笑)。
 一方千秋は、クリスマスにのだめから放っておかれてブチ切れる。のだめに、イベントを重視するような一般常識を期待するのがそもそも間違っているような(笑)。どうやら千秋は、一般的な恋人のように、自分に執着して欲しかった様子。確かにこれまで、のだめは千秋が好きな割に、自分が音楽に夢中になると千秋を放置していた。でものだめにとっては、千秋を好きなことと、音楽を一生懸命やることは同義なのかもしれない。千秋はまだ一般的な恋愛しようとしているけど、元々この二人は音楽無しの恋愛なんかしてないんだから、それは無理な話なのでは。そしてそこが『のだめカンタービレ』の面白いところだと思う。
 
 千秋に『ルー・マルレ・オーケストラ』の常任指揮の依頼が来る。と、同時に中国人のピアニスト、ルイが留学。のだめは以前彼女の演奏に触発されて、色々焦ったりしていた。けど、ルイ本人は結構かわいい性格。のだめを巻き込んでフランス生活をエンジョイしていた。
 その一方で千秋が大変。マルレ・オケは伝統あるオケだけど、団員の技術レベルが落ちてきて、実際の演奏はボロボロ。本場のオーケストラ事情の裏が分かる興味深いエピソードだ。客演指揮者が直前でキャンセル、演奏者が足りない、ゲネプロ一回で本番。お金を取るプロの演奏会でこんなことがあるなんて驚き。アマチュアの方がかえって熱意を持って演奏できるんじゃないだろうか。
 千秋は才能以外にも、努力を苦にしない勤勉な性格で大抵の事は何とかできるだろう。けど、プロになるとこういった自分一人ではどうにも出来ない状況もある。千秋は大変だけど、非常に楽しみな展開になってきた。

いかがですか大人買い

2006-04-04 | 小説、漫画
 『DARK EDGE』の感想絵をちまちまと描いています。今までDARK絵は結構描いてきたけど、それでも難しい。ちょっと武者修行します。そうして頑張って『DARK EDGE』の普及に励もうと思います。うーん、普及ってどうやったらいいのか。とりあえずここで宣伝するか。みなさま、ちょうど完結したことだし、ここらでどーんと全15巻買ってはいかがでしょうか。多すぎ?うん、そうね…。とりあえず最終巻のリンクでも…。
 最終巻読み終わってまず何をしたかというと、感想のメールを送りました。相川先生本人に。だって本人のサイトにメルアド載っていれば送りたくなるって。そしてなんとお返事頂きましたよ。ギャー嬉しい!お忙しいのに有難いことです。

マイナーでも好き

2005-12-03 | 小説、漫画
風邪はだいぶ良くなってきました。ほとんど終わりに近いです。今回は進行が速くて、つらいのは一日だけでした。
高畑京一郎の小説の新刊が出ているはずなんだけど、どこにも見当たらない。同じ時期に出た他の本はたくさん置いてあるのに…。マイナー!?薄々気づいてはいたけどマイナーなのか?でも、クリスクロスの頃から読んでる高畑京一郎の小説に、相川有の挿絵とくれば、買う以外の選択肢は無かったよ…。H2Oシリーズの本編で好きなのは村雨。ポジション的には(主人公の友人ということで今後死にそうな気がする。いや、それよりも小澤かな。どっちも生き延びてほしい~。)番外編で好きなのは、一也。忠犬ぶりがかわいい。気になるのが佐々木。(これだけ非情な人が、天本博士に気遣いを見せるのが不思議。ただの恩師じゃないんだろうか)。

小説『魔術師』

2005-10-16 | 小説、漫画
 小説『魔術師』(ジェフリー・ディーヴァー)感想。リンカーン・ライムシリーズ5作目。今回の敵はマジシャン(イリュージョニスト)。マジシャンのテクニックが犯罪に使われるとこんなに恐ろしいものだったとは。人の目を欺き、ミスリードし、錯覚を信じ込ませる。警察を翻弄するテクニックの数々がすごかった。いつものごとく新キャラはまず疑うのですが、やっぱりいい人で疑い続けるのが大変だった。(前作のソニーと同じく、カーラの性格が魅力的でアメリアとも仲良くて、裏切られたらへこむ!と思っていたら前半でああなって、「疑って悪かった~!」と思ったらまた一転して。前作も読んでいるシリーズファンはコロコロ騙されるのでは。私はもう作者の思うがままに騙されました。それが楽しい(笑)。
 ローランド・ベルがまた出てきて嬉しかった。この人は性格が穏やかで、しかも有能でとても好きです。デルレイが出てこなかったのがちょっと残念。ちょこっとゲストで、他の作品『悪魔の涙』の主人公で文書鑑定士のパーカー・キンケイドが出てきて興奮したー!こういうのって楽しいなあ。ライムも彼の作品にゲスト出演しています。キンケイドの次回作はまだかなあ。
 カーラが披露するマジックの数々は、映像で見ていないのに文章の描写だけでも充分楽しかった。マジックってほんとに魔法だな。そしてイリュージョニストの魔法はもう凶悪だった!(自分の生死さえ捜査官に錯覚させるってすごい。ミスリードに次ぐミスリードで、いつも以上に気が抜けなかった。ようやく犯人が捕まって、もう大丈夫かと気を抜いた時にカーラが!やめてよ、カーラ気に入ってるんだから!(笑)
 相変わらず、次回作がとても楽しみです。またよろしくお願いします友人(笑)。