進撃の巨人 第10話「応える ――トロスト区攻防戦6――」
「人間です!」
そう答えた筈のエレンだったが、全ての記憶を取り戻した時、ミカサとアルミンを守るため親指を噛んだ。
公式HPより
巨人が人に化けている──恐怖が伝染した戦場では、エレンやアルミンがどんな申し開きをしようと、誰も聞く耳を持つ者はなかった。 エレン達にむかって放たれる砲弾。その刹那、エレンは上半身を巨人化させ、ミカサとアルミンを守ることに成功した。蒸気とともに消えゆく巨人の骨格のなかで、エレンが選択するのは……!?
街では、恐怖でパニック状態に陥る者も出てきていた。
仲間が目の前で食われても自分じゃなくて良かったと思い。でも、きっと次は自分が!
そんな状況を眺めていたジャンは、箝口令が改めて必要だったと実感。
これでもし、エレンの事をみんなが知ってしまったら・・・
だが、その次の瞬間一発の砲弾の音が。
事情がわからない兵士たちは、壁の中の爆音と煙に騒然となる。
我慢が出来なくなったのか?様子を見に飛びあがるライナーにベルトルトにアニが続く。
慌てて追いかけるジャン。
その壁の内側では、2人を守るために巨人化したエレンの姿が。
「どうなってんだ?これは」
唖然としているライナー達。
「ベールマン隊長!」
声を掛けられても恐怖に竦んでいるキッツは待機を命じるばかり。
一方、巨人化したエレンだが、巨人の中で意識は無く。
だが、意識を取り戻したところで首筋のところから姿を現す。

「なんだ、これは?」
「エレンが私たちを守った。今はそれだけ理解できればいい」
パニくっているアルミンに対し、相変わらずエレン絡みだと漢なミカサ。
その言葉に落ち着きを取り戻すアルミン。
見ると、骨格の中に何故か花が。
「おい!大丈夫か?おまえら」
巨人の身体から抜け出したエレンが駆け寄る。
巨人の死骸と同じで、じきに蒸発するから離れようと言うエレン。
しかし、自分たちを取り囲んでいる兵士たちは放心しているのか?様子見か?
だが、とにかくこんなモノを出してしまった後にきちんとした会話がなされるかの自信は無い。
「1つだけ思い出した。俺んちの地下室。そこに行けば全てわかるって親父が言ってた!」
こうなってしまったのも原因は親父。そしてきっと地下室に行けば巨人の正体もわかる筈。
だが、よく考えれば、なぜ隠したのか?
調査兵団がこれだけの被害を出して戦った末に知識を得てきた。その情報は人類の希望だった筈。
それが、つい5年前まで住んでいた家の地下室に隠していた?
父親に対して怒りが抑えきれないエレン。
「そもそも、俺たちを5年も放っておいて・・・」
つい、恨み事を口にしたエレンに、ミカサは今は他にやる事があると声をかける。
その言葉に冷静になったエレンは、ミカサやアルミンと共に移動を開始する。
煙が晴れてきた。
姿が見えると共に攻撃しようという声が上がる中・・・
突然、崩れ始めた巨人。
「俺はここを離れる」
どんな方法でもイイから壁を越えて地下室を目指すと。
まずは巨人になって・・・
「そんな事が出来るの?」
「自分でもどうやってるのかわからん。でも、出来るって思うんだ」
人間がどうやって手足を動かしているのか意識もしていないように。
さっきは砲弾から2人を守るしか考えていなかったからあの程度で朽ちた。
「今度はもっと強力なヤツを!」
15m級のになってやる!と言うエレンだったが、その傍から鼻血が流れて来る。
それだけじゃなく、顔色も悪く呼吸も荒い。
明らかに体調がおかしい。しかし、今はそんなのどうでもいいと考えは変わらない。
エレンの考える作戦は2つ。
まずは、とにかく自分を庇わなければ、ミカサとアルミンは命までは取られないだろうという前置きで
「俺はここから単独で動こうと思う」
驚いたアルミンは自分もと言おうとするが、それを遮り私も行くと言い出したのはミカサ。
追い付けなければ置いていってイイ代わりに、エレンの言葉に従う理由もないと聞かない。
それに対し、エレンもまた、ミカサの弟でも子供でもない。いい加減にしろと真っ向からぶつかる。
「隊長、次の攻撃をいかがしましょう」
リコに声をかけられたキッツは相変わらずの状態で合図を待てとだけ。
そしてエレンとミカサのやり取りを聞いていたアルミンは、駐屯兵団からの攻撃はまだ無いと判断。
もしあれば、ミカサが気付いているだろうから。
攻撃があったとしてあと20秒ほどか・・・その間にエレンは行ってしまう・・・
そんな時に思い出すのは昔、いじめっ子達から自分を助けてくれたエレンとミカサの姿。
どうして今?
「これが僕たちの最後だから?」
あの時も隅っこで震えていた自分。
結局、自分は最後まで臆病者以外にはなれなかった
助けられてばかりで、自分が2人を助けた事は一度も無かった。
「これでどうやって対等な友人と言えるだろうか?
どうやって僕も一緒に行くなんて事言えるんだ!」
ついていける自信もないくせに・・・

「もうこれで、3人が揃う事もないだろう」
そんなアルミンの傍で言い合いになっている2人だったが、ここでエレンは考えが2つあると言っただろうとひとまずミカサを黙らせ、アルミンを見る。
「アルミン、あとはおまえ判断に任せる」
自分の判断が現実性を欠いているのはわかっている。
そしてこの力は兵団の下で計画的に使われてこそ有効だという事も。
そこで、自分が巨人化しても危険じゃないという事を本当に説得出来るというならば、アルミンに従うと言い出したのだ。
だが、出来ないならば先ほどの最終手段に。
全てはアルミンに委ねられたのだ。
決断までの時間は15秒以内。出来るか出来ないか。
「俺はどっちでもおまえの意見を尊重する」
だが、なぜそんな決断をよりにもよって自分に託すのか?
臆病者の自分に・・・
「おまえってヤバイ時ほど、どの行動が正解か当てる事が出来ただろう
それに頼りたいって思ったからだ」
でも、そんな記憶ない!
しかし、エレンは微笑みながらいろいろあっただろうと言う。それに、5年前もアルミンがハンネスさんを呼んでくれなかったら・・・エレンもミカサも今頃巨人に食われていたと。
その言葉にハッとするアルミン。

「僕が勝手に思い込んでただけだ」
勝手に無力で足手まといだと
2人はそんな事全然思っていなかったのに・・・
そんなアルミンの背後で巨人の身体がまた大きく崩れていった。もう時間が無い!
自分に命を預けると言ってくれた2人は自分がこの世で最も信頼している人間。
「これ以上の説得力がどこにある!」
スクッと立ち上がったアルミンは必ず説得してみせると2人に誓う。

2人には極力抵抗の意思が無い事を示して!と言い残し、説得へと向かう。
まだ、考えはまとまってはいないが、エレンが巨人化して戦っていた時から引っかかっていた事があった。
とにかくやってやる!と。
そして装備を外し駐屯兵団の前に飛び出した。
両手を高く上げ、そしてエレンが人類の敵ではない事を高らかに宣言した。
そして、自分達には知り得た情報を開示する意思があると。
しかし、恐怖に取り付かれてしまっているキッツは貸す耳など持たないと拒否。
違うと言うなら証拠を出せと。
「証拠など要りません!」
自分で発しながら、証拠など要らない事に気付くアルミン。
「彼をどう認識するかは問題ではないのです!
大勢の者が彼を見たと聞きました。ならば彼が巨人と戦う姿を見た筈です!」
そしてそんなエレンに巨人たちが群がっていった事実を。
それはすなわち、巨人達がエレンを捕食対象として見たという事。
アルミンの言葉にみんなの心が揺れ始めた。
その事実は間違いない。だが、巨人が味方になる?
「迎撃態勢を取れ!!」
しかし、そんな部下たちの動揺を見たリッツはあくまで排除の道を取る。
人間の皮を被り、自分たちを惑わそうとしているというリッツの言葉に、一度は下げた剣や銃を再びアルミンの方へ向ける。
「ダメだ・・・考える事を放棄している」
思わず背後の2人を見たアルミンに向かい、深く頷くエレン。
それを見たアルミンは兵団の敬礼をし、誓いの末に命が果てるなら本望!と叫ぶ。
エレンの巨人化する力と兵力が組み合わされば、街の奪還も夢ではないと再度説得を始めた。
人類の栄光を願い死にゆくまでの間に
「彼の戦術価値を解きます!」
必死のアルミンの言葉に動かされる者も出たが、キッツはあくまで考える事を拒否。
上げられるリッツの右手を見ながら、ミカサは剣に手を掛け、エレンは親指を口元へと近付けていく。
もう片方の方法を取るしかないのか?!
「よさんか」
リッツが今にも手を振りおろそうとしたその時、止めた者がいた。
ドット・ピクシス指令だった。
「あの者の見事な敬礼が見えんのか?」
リッツを小鹿のような繊細な男と称したピクシス。
ここに到着するまでに早馬からの情報でだいたいの事態は把握しているようだ。
その上で、リッツには増援に回し、話は自分が聞くとリッツに告げる。
よかったという表情でへたり込むアルミン。
調査兵団の報告によると、巨人は南から現れるとされていた。
その証拠に襲撃されたのはウォールローゼの南に位置するシガンシナ区。
次に狙われる可能性が高いのはトロスト区
今回、エレン達の前に現れたピクシス指令はトロスト区を含む南側領土を統括する最高責任者だった。

「やっぱり見当たらんか。超絶美女の巨人になら食われてもいいんだがのぉ」
なかなかに肝の据わったお方ですな~(^^ゞ
リッツは当然承服など出来ていなかった。
が、生来の変人としても知られているピクシスの考えは誰もわからずで。
エレンは知り得る全ての事をピクシス指令に伝えた。
信じて貰えるか?というエレンの言葉に、エレン自身が確証も得ていない情報なので、頭の中に留めておくと言い、とにかく3人の命は自分が保障しようと微笑む。
「あれは本当にそう思ったのか?それとも苦し紛れの命乞いか?」
先ほどのアルミンの言葉の意味を再確認するピクシス。
「それは・・・両方です」
実は、あの時のアルミンの言葉の裏には、巨人が開けた壁の穴を巨人のエレンに大岩で塞いで貰うとかもっと単純な思い付きだった。
とにかくあの場は、エレンの力の利用価値を知って貰いたかったのだ。
「助かりたい一心・・・一番信用出来る言葉だ」
そう言って酒をグビッと飲むとエレンの前に座り込む。
「お主は穴を塞ぐ事は出来るか?」
指令の質問に、自分の持っている知識もアルミン達と大差ないため、いい加減な返事は出来ないと真面目に返す。
それを聞いたピクシスは質問を変える。
「お主はやるのか?やらんのか?」
今度は声を低め、今までにない厳しい表情。
そしてその視線の先には市民達の住む街が。
「やります!穴を塞げるかどうかわかりません。でも、やります!」
今回は本当にもう、彼のイメージがかなり変わるほどのアルミン「漢」回でした。
この子は窮地に立ったり、腹を括った時にこんなに持ち味を発揮する子だったのですね。
もちろん、先日の立体機動装置のガスを奪い返す際の作戦もすごいとは思ってましたが、やっぱり言動にはどこか「アルミンらしさ」が残ってましたから。
今回の方がよりアルミンの底力を発揮した回だったんじゃないかと。
リッツさんはある意味人間らしいけど、こういう部隊の上に置いておくにはあまりに小者な印象が(^^ゞ
小鹿のような繊細さって・・・あんまり褒め言葉じゃないんじゃ?(苦笑)
そんな中、きちんと現状を把握し動ける人が上にいたのは助かりましたね。
でも、それだけスゴイ人となると、エレンに対しての言葉といいいろんな意味でやり手な人なんでしょう。
これからのエレンがどうなっていくのかも気になります。
それと、巨人化した後のエレンの衰弱ぶり。あとは、ここに残る事を選択し、地下室を後回しにした事がどうだったのか?
その辺も正直気になるところです。
でも、とにかく今回は無事でよかった・・・
「進撃の巨人」オリジナルサウンドトラック(仮称)《06月予約》
「人間です!」
そう答えた筈のエレンだったが、全ての記憶を取り戻した時、ミカサとアルミンを守るため親指を噛んだ。
公式HPより
巨人が人に化けている──恐怖が伝染した戦場では、エレンやアルミンがどんな申し開きをしようと、誰も聞く耳を持つ者はなかった。 エレン達にむかって放たれる砲弾。その刹那、エレンは上半身を巨人化させ、ミカサとアルミンを守ることに成功した。蒸気とともに消えゆく巨人の骨格のなかで、エレンが選択するのは……!?
街では、恐怖でパニック状態に陥る者も出てきていた。
仲間が目の前で食われても自分じゃなくて良かったと思い。でも、きっと次は自分が!
そんな状況を眺めていたジャンは、箝口令が改めて必要だったと実感。
これでもし、エレンの事をみんなが知ってしまったら・・・
だが、その次の瞬間一発の砲弾の音が。
事情がわからない兵士たちは、壁の中の爆音と煙に騒然となる。
我慢が出来なくなったのか?様子を見に飛びあがるライナーにベルトルトにアニが続く。
慌てて追いかけるジャン。
その壁の内側では、2人を守るために巨人化したエレンの姿が。
「どうなってんだ?これは」
唖然としているライナー達。
「ベールマン隊長!」
声を掛けられても恐怖に竦んでいるキッツは待機を命じるばかり。
一方、巨人化したエレンだが、巨人の中で意識は無く。
だが、意識を取り戻したところで首筋のところから姿を現す。

「なんだ、これは?」
「エレンが私たちを守った。今はそれだけ理解できればいい」
パニくっているアルミンに対し、相変わらずエレン絡みだと漢なミカサ。
その言葉に落ち着きを取り戻すアルミン。
見ると、骨格の中に何故か花が。
「おい!大丈夫か?おまえら」
巨人の身体から抜け出したエレンが駆け寄る。
巨人の死骸と同じで、じきに蒸発するから離れようと言うエレン。
しかし、自分たちを取り囲んでいる兵士たちは放心しているのか?様子見か?
だが、とにかくこんなモノを出してしまった後にきちんとした会話がなされるかの自信は無い。
「1つだけ思い出した。俺んちの地下室。そこに行けば全てわかるって親父が言ってた!」
こうなってしまったのも原因は親父。そしてきっと地下室に行けば巨人の正体もわかる筈。
だが、よく考えれば、なぜ隠したのか?
調査兵団がこれだけの被害を出して戦った末に知識を得てきた。その情報は人類の希望だった筈。
それが、つい5年前まで住んでいた家の地下室に隠していた?
父親に対して怒りが抑えきれないエレン。
「そもそも、俺たちを5年も放っておいて・・・」
つい、恨み事を口にしたエレンに、ミカサは今は他にやる事があると声をかける。
その言葉に冷静になったエレンは、ミカサやアルミンと共に移動を開始する。
煙が晴れてきた。
姿が見えると共に攻撃しようという声が上がる中・・・
突然、崩れ始めた巨人。
「俺はここを離れる」
どんな方法でもイイから壁を越えて地下室を目指すと。
まずは巨人になって・・・
「そんな事が出来るの?」
「自分でもどうやってるのかわからん。でも、出来るって思うんだ」
人間がどうやって手足を動かしているのか意識もしていないように。
さっきは砲弾から2人を守るしか考えていなかったからあの程度で朽ちた。
「今度はもっと強力なヤツを!」
15m級のになってやる!と言うエレンだったが、その傍から鼻血が流れて来る。
それだけじゃなく、顔色も悪く呼吸も荒い。
明らかに体調がおかしい。しかし、今はそんなのどうでもいいと考えは変わらない。
エレンの考える作戦は2つ。
まずは、とにかく自分を庇わなければ、ミカサとアルミンは命までは取られないだろうという前置きで
「俺はここから単独で動こうと思う」
驚いたアルミンは自分もと言おうとするが、それを遮り私も行くと言い出したのはミカサ。
追い付けなければ置いていってイイ代わりに、エレンの言葉に従う理由もないと聞かない。
それに対し、エレンもまた、ミカサの弟でも子供でもない。いい加減にしろと真っ向からぶつかる。
「隊長、次の攻撃をいかがしましょう」
リコに声をかけられたキッツは相変わらずの状態で合図を待てとだけ。
そしてエレンとミカサのやり取りを聞いていたアルミンは、駐屯兵団からの攻撃はまだ無いと判断。
もしあれば、ミカサが気付いているだろうから。
攻撃があったとしてあと20秒ほどか・・・その間にエレンは行ってしまう・・・
そんな時に思い出すのは昔、いじめっ子達から自分を助けてくれたエレンとミカサの姿。
どうして今?
「これが僕たちの最後だから?」
あの時も隅っこで震えていた自分。
結局、自分は最後まで臆病者以外にはなれなかった
助けられてばかりで、自分が2人を助けた事は一度も無かった。
「これでどうやって対等な友人と言えるだろうか?
どうやって僕も一緒に行くなんて事言えるんだ!」
ついていける自信もないくせに・・・

「もうこれで、3人が揃う事もないだろう」
そんなアルミンの傍で言い合いになっている2人だったが、ここでエレンは考えが2つあると言っただろうとひとまずミカサを黙らせ、アルミンを見る。
「アルミン、あとはおまえ判断に任せる」
自分の判断が現実性を欠いているのはわかっている。
そしてこの力は兵団の下で計画的に使われてこそ有効だという事も。
そこで、自分が巨人化しても危険じゃないという事を本当に説得出来るというならば、アルミンに従うと言い出したのだ。
だが、出来ないならば先ほどの最終手段に。
全てはアルミンに委ねられたのだ。
決断までの時間は15秒以内。出来るか出来ないか。
「俺はどっちでもおまえの意見を尊重する」
だが、なぜそんな決断をよりにもよって自分に託すのか?
臆病者の自分に・・・
「おまえってヤバイ時ほど、どの行動が正解か当てる事が出来ただろう
それに頼りたいって思ったからだ」
でも、そんな記憶ない!
しかし、エレンは微笑みながらいろいろあっただろうと言う。それに、5年前もアルミンがハンネスさんを呼んでくれなかったら・・・エレンもミカサも今頃巨人に食われていたと。
その言葉にハッとするアルミン。

「僕が勝手に思い込んでただけだ」
勝手に無力で足手まといだと
2人はそんな事全然思っていなかったのに・・・
そんなアルミンの背後で巨人の身体がまた大きく崩れていった。もう時間が無い!
自分に命を預けると言ってくれた2人は自分がこの世で最も信頼している人間。
「これ以上の説得力がどこにある!」
スクッと立ち上がったアルミンは必ず説得してみせると2人に誓う。

2人には極力抵抗の意思が無い事を示して!と言い残し、説得へと向かう。
まだ、考えはまとまってはいないが、エレンが巨人化して戦っていた時から引っかかっていた事があった。
とにかくやってやる!と。
そして装備を外し駐屯兵団の前に飛び出した。
両手を高く上げ、そしてエレンが人類の敵ではない事を高らかに宣言した。
そして、自分達には知り得た情報を開示する意思があると。
しかし、恐怖に取り付かれてしまっているキッツは貸す耳など持たないと拒否。
違うと言うなら証拠を出せと。
「証拠など要りません!」
自分で発しながら、証拠など要らない事に気付くアルミン。
「彼をどう認識するかは問題ではないのです!
大勢の者が彼を見たと聞きました。ならば彼が巨人と戦う姿を見た筈です!」
そしてそんなエレンに巨人たちが群がっていった事実を。
それはすなわち、巨人達がエレンを捕食対象として見たという事。
アルミンの言葉にみんなの心が揺れ始めた。
その事実は間違いない。だが、巨人が味方になる?
「迎撃態勢を取れ!!」
しかし、そんな部下たちの動揺を見たリッツはあくまで排除の道を取る。
人間の皮を被り、自分たちを惑わそうとしているというリッツの言葉に、一度は下げた剣や銃を再びアルミンの方へ向ける。
「ダメだ・・・考える事を放棄している」
思わず背後の2人を見たアルミンに向かい、深く頷くエレン。
それを見たアルミンは兵団の敬礼をし、誓いの末に命が果てるなら本望!と叫ぶ。
エレンの巨人化する力と兵力が組み合わされば、街の奪還も夢ではないと再度説得を始めた。
人類の栄光を願い死にゆくまでの間に
「彼の戦術価値を解きます!」
必死のアルミンの言葉に動かされる者も出たが、キッツはあくまで考える事を拒否。
上げられるリッツの右手を見ながら、ミカサは剣に手を掛け、エレンは親指を口元へと近付けていく。
もう片方の方法を取るしかないのか?!
「よさんか」
リッツが今にも手を振りおろそうとしたその時、止めた者がいた。
ドット・ピクシス指令だった。
「あの者の見事な敬礼が見えんのか?」
リッツを小鹿のような繊細な男と称したピクシス。
ここに到着するまでに早馬からの情報でだいたいの事態は把握しているようだ。
その上で、リッツには増援に回し、話は自分が聞くとリッツに告げる。
よかったという表情でへたり込むアルミン。
調査兵団の報告によると、巨人は南から現れるとされていた。
その証拠に襲撃されたのはウォールローゼの南に位置するシガンシナ区。
次に狙われる可能性が高いのはトロスト区
今回、エレン達の前に現れたピクシス指令はトロスト区を含む南側領土を統括する最高責任者だった。

「やっぱり見当たらんか。超絶美女の巨人になら食われてもいいんだがのぉ」
なかなかに肝の据わったお方ですな~(^^ゞ
リッツは当然承服など出来ていなかった。
が、生来の変人としても知られているピクシスの考えは誰もわからずで。
エレンは知り得る全ての事をピクシス指令に伝えた。
信じて貰えるか?というエレンの言葉に、エレン自身が確証も得ていない情報なので、頭の中に留めておくと言い、とにかく3人の命は自分が保障しようと微笑む。
「あれは本当にそう思ったのか?それとも苦し紛れの命乞いか?」
先ほどのアルミンの言葉の意味を再確認するピクシス。
「それは・・・両方です」
実は、あの時のアルミンの言葉の裏には、巨人が開けた壁の穴を巨人のエレンに大岩で塞いで貰うとかもっと単純な思い付きだった。
とにかくあの場は、エレンの力の利用価値を知って貰いたかったのだ。
「助かりたい一心・・・一番信用出来る言葉だ」
そう言って酒をグビッと飲むとエレンの前に座り込む。
「お主は穴を塞ぐ事は出来るか?」
指令の質問に、自分の持っている知識もアルミン達と大差ないため、いい加減な返事は出来ないと真面目に返す。
それを聞いたピクシスは質問を変える。
「お主はやるのか?やらんのか?」
今度は声を低め、今までにない厳しい表情。
そしてその視線の先には市民達の住む街が。
「やります!穴を塞げるかどうかわかりません。でも、やります!」
今回は本当にもう、彼のイメージがかなり変わるほどのアルミン「漢」回でした。
この子は窮地に立ったり、腹を括った時にこんなに持ち味を発揮する子だったのですね。
もちろん、先日の立体機動装置のガスを奪い返す際の作戦もすごいとは思ってましたが、やっぱり言動にはどこか「アルミンらしさ」が残ってましたから。
今回の方がよりアルミンの底力を発揮した回だったんじゃないかと。
リッツさんはある意味人間らしいけど、こういう部隊の上に置いておくにはあまりに小者な印象が(^^ゞ
小鹿のような繊細さって・・・あんまり褒め言葉じゃないんじゃ?(苦笑)
そんな中、きちんと現状を把握し動ける人が上にいたのは助かりましたね。
でも、それだけスゴイ人となると、エレンに対しての言葉といいいろんな意味でやり手な人なんでしょう。
これからのエレンがどうなっていくのかも気になります。
それと、巨人化した後のエレンの衰弱ぶり。あとは、ここに残る事を選択し、地下室を後回しにした事がどうだったのか?
その辺も正直気になるところです。
でも、とにかく今回は無事でよかった・・・
