「守秘義務違反に当たるかどうか」などという話が騒がれているが、公務員の立場で知り得た情報で、公に機密と指示されている情報を、個人的な判断で指示を破った点は、公務員としてやってはならない点。当然、懲戒免職に値すると思う。やってはいけないとわかっていながら、それができる状態にあるからやってしまう、というのでは、社会人として失格。公私混同も甚だしい。たぶん「世論が支持してくれる」という甘い読みがあるんだろう。たとえ国民が指示したとしても（私も見たかった画像が見られたのでお得感がある）、公務員・公的立場の社会人として許されない軽はずみな行動である点は、厳しく追及されるべきだと思う。それとこれとは別だ。
自分だけ事前に供述を得たスクープとして喜んでいるのかどうかはわからないが、読売放送のニュースを見ると、「国民が知りたい情報を勇気を持って公開した」というニオイ（あくまでニオイですが）ぷんぷんのコメントが優先的に並んでいた（私のうがった見方かもしれないが）。こういうのを見ると、事前に供述をした裏に、この“犯人”の立場を擁護する報道を前提条件にしていたのではないかとさえ思ってしまう。そういう視点を失わずに、このニュースは“読んで”いたいと思う。
ビデオの流出源についてもあんまり報道されないのはなぜなのかと思う。石垣の海保が持っていたビデオなら、石垣の海保に流出を手助けした“犯人”がいるはずなのに、その供述も報道もまったく出てこない。「海保内ならだれでも見られる状態にあった」のなら、機密の指示を無視してそういう状態にしておいた石垣海保内の“犯人”をまず捕えるべきだろう。これもうがった見方になるが、神戸の“犯人”がやたらと「ひとりでやった」と言っていることに、わずかながら違和感を覚える。一人でやったかどうかなどは、詳しく正確に供述すればわかることだ。それを逮捕前から口にすることは、逆に誰か（たぶん流出あるいは神戸のこの男にリークした“犯人”）をかばっているんじゃないかと疑ってしまう。
「政府のゆるい対応が海保の緩みを招いた」ということよりも、政府が厳しく海保全体を追及するよう圧力をかけることが大事なのではないかと思う。そういうことができない政権なら、失格と言わざるを得ない。
だいたい「国家機密」というけど、誰もが目にすることのできるアンテナ（たぶん自衛隊の軍事用）が地図に掲載されていないことを国会で質問された当時の中曽根首相が「そのようなものが存在するという認識はない」という趣旨の答弁をしたことを聞いたことがある。知りたくても、そして存在するとはっきり分かっていることでも、機密といえば機密。それを通すところが、いかにも中曽根首相らしいが（笑）、機密といえば公務員誰もがそういう対応をするのが当然なのだ。そういう機密があることがきな臭くて私は嫌いなのだが、しかし個人の感想ではなく、国として維持すべきことは維持するのが当然であることは確か。それを「国民が知りたいから、公務員としてしてはならないことをしても許される」という前例を残すなら、国家としてのタガを国民の力ではずしていくことになる。
私は、その方をまず危惧する。
まぁ、対応が何かと弱腰だから、市民どころか公務員にまで甘く見られている政府には、ここらできっちりと意志表示してほしいものだ。この情勢で政権交代でばたばたするわけにいかないからね。ますます足元を見られるだけだから。
